なでしこジャパン

2017年4月9日 日本女子代表 対 コスタリカ女子代表

2017/04/13(木)

キリンチャレンジカップ2017 ~熊本地震復興支援マッチ がんばるばい熊本~
2017/4/9(日) 19:04 熊本県民総合運動公園陸上競技場
日本女子代表 3-0(1-0) コスタリカ女子代表

3月のアルガルベカップでアイスランドとノルウェーに勝ち、スペイン、オランダに敗れたなでしこジャパンの今年の国内初戦が、キリンチャレンジカップとして
熊本で行われ、コスタリカ(FIFAランキング30位)に3−0で勝利した。

なでしこジャパンはワールドカップ優勝の澤穂希の時代から技術や戦術の高さだけでなく、活動量の点で相手チームを上回っていた。新しいなでしこもFIFA順位では格下のコスタリカを相手に、まず動きの量で勝っていた。日本の女子の技術レベルは、いま上昇中だが、国際舞台ではまず動きの量が必要で、この日はその点でまずますと言えた。ボールを左右のサイドへ散らし、フィールドを広く使うことで、フリーでボールを扱う時間が生まれ、そこを起点として攻撃を仕掛ける回数も多かった。

1点目は前半23分、ペナルティエリアいっぱい、正面近くからの横山の左足シュートだった。これは(1)右サイドでのキープから高木が内へ真横にドリブルして、ゴール正面の横山の足下へパス。(2)横山は右足インサイドで止め、(3)背後からマークする相手DFを左へかわして、(4)左足でシュート。(5)ボールはゴールキーパーの上を抜いてネットを揺らした。シュートレンジでボールを受けた相手のストライカーにタックルにゆかないで、間合いをあけていたところにコスタリカのDFの甘さが見られたが、ここはパスを受けて、ターンをしてシュートへ持っていった、日本のストライカー横山の能力の高さが発揮されたというべきだろう。もちろん、横山が右足で止めた時に、その右側を駆け上がった高木、右に開いた田中、左に上がっていった市瀬たちがいて、相手DF陣の中央へのマークを分散させていたことも覚えておきたい。

1−0となってからも、日本は攻撃の手を緩めず、コスタリカもドリブル攻撃を仕掛けて、互いに攻め合った。両チームともクロスを含めたラストパスの精度がもう少し高ければ試合はもっと緊迫したものになったはずだが…。またコスタリカは攻めながら守りを気にして前方へ送る人数が少ないために、攻撃の効果は小さかった。

後半に入って、コスタリカは挽回の意欲を高め、攻めに出てきた。ただし日本のゴールから25メートルあたりまでキープしながら、そこから先はゴール前への「放り込み」が主で、熊谷、市瀬たちはヘディングでも負けなかった。

互いの攻撃のなかで、日本側のチャンスが増え、スタンドでも、テレビの前でも期待が高まった29分に日本が2点目を決める。自陣でボールを奪い、ロングボールを送ったのを相手に防がれた後、相手DFのクリアキックが短くて、ハーフウェイラインに届かないのを佐々木(宇津木と後半18分に交代)が取って、すぐ前の長谷川へ。長谷川が左前方へ走った上野(横山と交代)にパス。上野がペナルティエリア左、すぐ外から中央へクロスを送った。ライナー性のボールがワンバウンドするのに、田中が左足で合わせた。自陣でボールを奪われたコスタリカは日本の左サイドからの攻めに対応できなかった。

勢いづいた日本はこの3分後にもチャンスをつくるが、シュートを蹴りそこない、その直後にも左CKのチャンスにヘディングしたがゴールにならなかった。

リードを広げられたコスタリカは、それでもゴールを奪おうと攻める意欲は衰えないが、日本は37分に3点目を加えた。左でボールを受けた長谷川からのグラウンダーのクロスを、右サイドで詰めていた籾木(中島と交代)が押し込んだ。

なでしこジャパンの快勝。後半に出場した交代メンバーを含めて、高倉監督の新しいチームの技術が高いことを示し、1対1の奪い合いでも相当な力を持っているように見えた。ここしばらくの日本代表を見ると、男子も含めてボールを扱う技術は平均して高いが、ボールを蹴る力、キックの力はいま一息のようにみえる。今度のなでしこも、それぞれのポジションに必要なキックの能力を高めることが必要だろう。

もちろん、澤穂希時代のなでしこの実績が華々しいので、それに比較される今の代表は大変だが、澤さんとその仲間たちも、ひたすら反復練習の繰り返しで、個人もチームも成長した。若く、いい素材が多いとされてるいまの「なでしこ」が再びかつての高みに上るためには、まだしばらく練習を重ねなければなるまい。コスタリカとの試合は、多くのサッカーファンの未来のなでしこへの期待を高めたと言えるだろう。

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2015年5月28日 日本女子代表 対イタリア女子代表(続)

2015/06/04(木)

――第1戦の対ニュージーランド、第2戦のキリンチャレンジカップ対イタリア、ともに1-0の勝ちでした。澤穂希の復帰があり、大儀見優季がストライカーとしての本領を見せたプレーもありました。カナダでのFIFA女子ワールドカップへの見通しは少しよくなってきましたね?

賀川:宮間あや主将のパスが必ずしも上々とは言えなかったが、FKやCKの精度は相変わらず高いものでした。少し長めのパスが多く、それが仲間とタイミングが合っていない点もあったが、彼女自身は自分で試したいようでもありました。

――ワールドカップでの優勝以来、その主力だったINAC神戸のプレーヤーに進化を見つけにくい、とよく言っていましたが…

賀川:今年に入ってINACの選手たち全体に動きの量が戻ってきました。それだけでもほっとしたのですが、折角神戸のいい練習環境にいながら、もう少しレベルアップが見られれば…

――それでも、その主力が少し上向きになってきたと…?

賀川: INACの7人だけでなく、阪口夢穂や岩清水梓、熊谷紗希といった選手たちの調子はよさそうだし、新しく加わった長身のゴールキーパーの山根恵里奈も、その背が高いという特性を自分で生かせるようになっています。

――宇津木留美といった左のキックのしっかりした大柄フィールドプレーヤーも加わりました

賀川:佐々木則夫監督はポルトガルでのアルガルベカップの9位という成績からチーム編成を考えてきて代表メンバーを選んだのでしょう。

――主力が4年前の優勝メンバー、それだけ年齢も高くなっていますが

賀川:経験ある彼女たちと佐々木監督は、本番の1次リーグの3試合で徐々にチームをまとめノックアウトシステムへ進む、と考えているのでしょうね。

――そううまくいきますかね?

賀川:ワールドカップは今回は24チームが参加となり、6月6日の開幕試合から6組のグループリーグで、各組上位2チームと3位の4チームが6月20日からのノックアウトステージに入ります。その1回戦(ラウンド16)が20~23日、準々決勝が26、27日、準決勝が30日と7月1日、3位決定戦が7月4日、決勝が7月5日に行われます。

――女子サッカーが世界に浸透したと主催のFIFA(国際サッカー連盟)が判断しての拡大政策でした

賀川:FIFAは4年前のドイツ大会を大きなステップと見ていた。その大会で、日本という新興国が優勝して、世界に大きな刺激を与えました。

――ロンドンオリンピックでも、日本とアメリカの決勝は8万の大観衆が集まりました

賀川:サッカーの母国イングランドの聖地ウェンブリーでの8万ですからね。

――ヨーロッパでは37カ国で51試合全部がテレビ放送されるそうです。北米大陸はもちろんです。日本でも全試合がテレビで放送されますね

賀川:女子のワールドカップは回を重ねるごとに世界へのアピール度を高めてきました。日本はそこに割り込んで行くのですが、気がかりもあります。

――人口芝のピッチですね

賀川;大会はバンクーバー、エドモントン、ウィニペグ、オタワ、モントリオール、モンクトンの6都市が会場となりますが、全部が人工芝です。北の気候を考えての人工芝の選択のようです。

――人工芝のピッチは初期のころから見るととても進歩していますが、それでもやはり天然芝と比べるとピッチが固く、選手に疲れなどの影響も出るという懸念もあるそうです。

賀川:アメリカのワンバック選手などは反対意見を述べていました。ボールのバウンドや転がる速さなど、日本選手も馴れなければなりませんが…。

――女子サッカーは日本でも急速に普及しています。ここで、やはりベスト4に進み、メダルを取ってほしいですね。

賀川:4年前は澤さんが120%働き、選手たちはすべての試合で100%の力を出したように見えました。それをもう一度するのは大変ですが、彼女たちの人生にとっても、参加する新しいプレーヤーにとっても、世界の舞台でのチャレンジはとても重要でしょう。もう一度、彼女たちの諦めない戦いを見せてほしいものです。

――なでしこが一段上のレベルに上がるチャンスでもあるでしょう。その技術的、戦術的な話を本番でも、語り合いたいものです。   

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2015年5月28日 日本女子代表 対イタリア女子代表

2015/06/01(月)

キリンチャレンジカップ2015
5月28日 長野
日本女子代表 1(0-0、1-0)0 イタリア女子代表

――強化シリーズの第1戦、対ニュージーランド戦では澤穂希が代表に復帰しました。

賀川:得意のボレーシュートで唯一のゴールを決めましたね。

――第2戦の対イタリアがキリンチャレンジカップとなりました

賀川:対ニュージーランドが香川の丸亀で、キリンチャレンジカップは長野市でした。四国はかつてはサッカーの後進地でしたが、女子の日本代表を迎えて盛り上がりました。

――丸亀は、その四国では古い時期の女子のサッカーがあったとか?

賀川:第一次世界大戦のときに日本が中国・山東省の青島(チンタオ)にあったドイツ軍港を攻撃し、多くのドイツ人捕虜が日本に来ました。香川県にもその収容所があってドイツ人たちがサッカーをした影響で大正年間に女子校の運動会でもサッカーをしたということです。広島が似島の収容所のドイツ人たちのおかげでサッカーのレベルがアップしたのと似ています。

――信州にはそういう話はない?

賀川:第一次世界大戦のドイツ人捕虜の話は、収容所の多くが長野以西でしたからね…。長野県の松本山雅というJリーグ1部のチームが人気を集めているときに、なでしこジャパンが長野の新しいスタジアムで試合をしたのは、JFA(日本サッカー協会)のヒットですね。

――なるほど

賀川:信州は昔から文化人を多く生み出し、新聞の編集者たちも輩出しています。こういう土地でサッカーが市民の間に浸透してくれればとてもうれしいことです。なんといっても北アルプスや上高地という名勝もありますからね。その長野県で松本と張り合う長野に立派なスタジアムができたのですよ。長野県に二つのサッカースタジアム…人口の多い、スキー発祥地の神戸を持つ兵庫県と比べてみてもすごいことですよ。

――その長野の5月29日の試合では
賀川:丸亀では澤さんの復活、ここでは大儀見のストライカーの証(あかし)でしょう。

――そういえば、多くの新聞も大儀見のゴールがトップでした

賀川:相手のイタリア代表は今度の女子ワールドカップ・カナダ大会には欧州の予選で敗退して出場しません。だから次の代表への立て直しの時期で、若い選手もいて、それだけにボールを取ると攻めに出てきました。したがって互いに攻めあうことになり、とても楽しかったのですが、その中で唯一のゴールが大儀見のシュートでした。

――後半6分でした

賀川:クロスを相手DFがヘディングで防いだのを①澤さんがペナルティエリア外側で拾って、落として、弾んでいるのをしっかりコントロールし、②グラウンダーのパスを右サイドにいた宇津木に渡しました。③宇津木はドリブルし、5歩目の右足を大きく踏み込んで左足サイドキックで中央へパスを送りました。

――宇津木は左足はうまいですからね

賀川:宇津木にボールが渡ったときには日本の菅沢と大儀見はその前のクロスに備えてゴール前につめていたから、相手DFよりもゴールの近くにいた。

――オフサイドのポジション、相手DFの背後ですね

賀川:④宇津木がドリブルする間に大儀見はすばやく、CDFリナリの背後に近づき⑤宇津木の速いパスがリナリの前に落下する直前にリナリの前へ右足を出し、その右足アウトサイドでボールをとらえました。⑥飛んできたボールは鋭く方向を変えてゴールへ、⑦GKジュリアニの右手側を抜いてポストギリギリにゴールへ飛び込んだ。

――賀川さんは、これまで大儀見の進化を強調していました

賀川:ポルトガルでのアルガルベカップをはじめ、国際試合では、女子日本代表の試合ぶりは必ずしも良くはなかったが、昨年から今年にかけての彼女のレベルアップはとてもうれしく見ていましたよ。日本のセンターフォワード的なストライカーとして、男、女と通じて歴史的にもレベルの高い方だろうとまで書いたりしていました。

――24日は良くなかった?

賀川:欧州から戻ってきた時差の関係なのか、後半は多少よくなったが、彼女らしくなかった。相手のCDFが強かったせいもあったかも…

――イタリア戦では生き生きしていました

賀川:澤さんのいないなでしこジャパンでは、攻撃は宮間あやのパスと大儀見の決定力が大きな武器だった。しかしその大儀見を生かせる、横からあるいはゴールライン際からのクロスでなく、スルーパスが多かったのには首をひねりました。良いストライカーがいると相手DFの裏を狙いたくなるのだが、横からのパスの方が、ストライカーには相手DFのかけ引き、いわゆる「消えて出てくる」がしやすいこともあって点につながるのに、などと愚痴っていました。

――今回は斜め左からのパスでした

賀川:うーん、スロービデオを見直すと、オフサイドを取られても…という形だが、レフェリーにもそう見えないほど、パスに対する相手の背後からの動きが速く、したがってディフェンダーは完全に意表をつかれたのでしょう。

――右足アウトサイドでのシュートは

賀川:あれは右利きのCFなら、ひとつの型でしょう。大儀見は日本女子としては、168cmで大きく、リーチがある方だし、瞬間的に足を出すのが早いから生きますよ。

――宇津木もしっかりパスを出した

賀川:相手のDFのヘッドのクリア、いわゆるこぼれ球を拾った澤さんがすぐ前へ仕掛けず(2人のFWはオフサイド位置だった)左サイドの宇津木へボールを出したのが、このゴールを生む第1のポイントです。バウンドしているボールをコントロールして、全体の状況を察知して、一旦ボールを左へ送って(横パス)、2人のFWの体勢を立て直す時間の余裕を持たせたところは、さすがでしょう。宇津木のボールが渡ったときにファー(ボールから遠い方)にいた大儀見が内へ、菅沢がファーサイドへ動いたのも見事でした。この間、相手の2人のDFの視線は宇津木とボールに注がれていて2人の動きを見ていなかったはずです。

――いいゴールが生まれると賀川さんの口調も滑らかになりますね

賀川:もちろん、このキリンチャレンジカップでの満足、不満足はまだあります。宮間のパスについても、両サイドの攻めについても、もちろん澤さんについても…少し長くなるので今日はここまで。

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2013年6月20日 日本女子代表 vs ニュージーランド女子代表

2013/06/25(火)

キリンチャレンジカップ2013
2013.06.20(木) 19:20キックオフ(佐賀/ベストアメニティスタジアム)
日本女子代表 1-1(前半1-0) ニュージーランド女子代表
 得点 大儀見 優季(21)、アナリー・ロンゴ(83)


なでしこジャパンの九州初登場

――久しぶりのなでしこジャパン2011年ワールドカップ優勝メンバーの主力が勢ぞろいしました

賀川:キリンチャレンジカップが女子の試合もバックアップしてくれるようになって、女子サッカーのためにもとてもうれしいことです。多くの観客の前で外国チームとの試合ができるのですからね。

――台風接近の予報が出ているなかで、たくさんの観衆が観戦し、声援しました。雨も激しくて選手たちには目に入って走りにくいのじゃないかと思われるほどでしたが…

賀川:鳥栖のベストアメニティスタジアムの芝はしっかりしていた。かつての日本の多くのピッチは国立競技場でさえ、この日ぐらい雨が降る中で試合をすれば、ぬかるんだり、水たまりができたものでした。それがスリップすることはあってもいいコンディションだったから、日本のサッカー環境はすばらしいと思った。このスタジアムは私も松本育夫さん(メキシコオリンピック銅メダル、日本サッカー殿堂入り)がいたころに訪れたことがあったが、JRの駅のすぐ目の前にある便利さと、サッカー専用でスタンドとピッチが近くてとても見やすいのですよ。

――陸上競技場供用だとトラックがあってスタンドから少し遠くなる。その点、専用だと臨場感が違います

賀川:私は大阪女子マラソンに関わっていたことがあって、その時道路で応援する人たちがランナーが目の前を通り過ぎる時の速さに驚いたと言っていたのを覚えています。近くで見ると好選手のスピードに改めて驚くものなんです。

――そういう意味でも、九州で初のなでしこジャパンが鳥栖のスタジアムに登場したのもよかったわけですね。さて、その九州でのなでしこジャパンの試合はどうでした?相手はニュージーランド代表でしたね

賀川:サッカーは九州で非常な勢いで浸透していて、高校生の世代では日本ナンバーワンのチームも相次いで出ている。遠藤保仁のようなすばらしい日本代表も鹿児島から送り込んでいるが、女子ではやや遅れています。その女子の普及、浸透のためにはこの日の試合は大きな一歩だったと言えるでしょう。多くの少女やその親たちがナマで観戦し、またテレビでなでしこの試合を見つめた(鳥栖での試合ということで、その地域の関心は高まるものです)ことはとても大きいといえます。

もうひとつの目的、なでしこの強化という点と、なでしこという女子の模範になるプレーを見せるという点では、いささか頭をひねることになります。

大儀見のファインゴールはあっても、かつてのなでしこのパスワークはない

――スコアは1-1。前半終了間際に宮間あや主将がイエロー2枚で退場処分となり、10人で戦う不利になったこともあったが、ワールドカップチャンピオンの当時の試合ぶりからはほど遠かった

――逆にニュージーランドの進歩が目立ちました

賀川:もちろん代表の個々のプレーのなかには「さすが」と思わせるものもあり、目の肥えたファンにも楽しんでもらえるところもあったが、なでしこジャパン特有の巧緻なパスワーク、息の合った攻撃展開はほとんど見られなかった。

――先制ゴールは九州出身の右サイドバック有吉佐織の長いクロスに合わせた大儀見のダッシュとシュートによるもので、ドイツリーグの得点王・大儀見の実力と伸び盛りの有吉の合作プレーでした

賀川:ビューティフルゴールでしたね。この後、もう少し距離は短いがやはり右サイドの川澄奈穂美が送った右後方からのパスに合わせた宮間のシュートもあった。ボールはゴールのバーを越えたが、これも「あうん」の呼吸のあったいいプレーだった。

――と言って賀川さんは不満も多かったらしい

賀川:レフェリーの判定について意義を申し上げるつもりはない。最終決定はレフェリーにあるということで、宮間が退場したのはいかにもフットボールらしいが、JFAの審判部としては、選手たちにこの日イエローカードを出された日本側の二つのタックルがイエローとなるのかどうかについて、説明しておくべきだろう。もしそれが世界規準である(はずなのだが)なら、徹底しておくべきだろう。

――10人になった影響はあったにせよ11人の時から必ずしも「なでしこ」らしい試合ぶりではなかった

賀川:澤穂希は故障を抱えて、万全の体調ではなかったらしく後半14分に交代した。従来のレギュラーのDF右サイドの近賀ゆかり、左サイドの鮫島彩の2人が故障で不参加。変わって前記の有吉と宇津木瑠美が出場した。岩清水梓、熊谷紗希のCDFとボランチの沢と彼女のペア阪口夢穂、攻撃的MFの川澄と宮間、そしてFWに大儀見と安藤梢と顔をそろえたから、まずはかつてのベストメンバーに近い顔ぶりだった。近賀と鮫島の両サイドは守備はもちろん攻撃でも日本の展開の外側を支えてきたため、その欠場は大きいことは確かだが、これだけの選手が集まっていて、かつてのチームワーク、パスの展開のうまさが、ほとんど見られなかった。

――久しぶりに集まって、練習の日数も少なかった

賀川:それもあるが、本来選手たちの体にも、心にも頭にもしみこんでいるはずのなでしこジャパンのチームワークがほとんど外にあらわれていなかった。

――ニュージーランドのプレッシングも強かった

賀川:それもある。しかし個人的に体格や走力の上の相手と戦うのは、日本の女子サッカーの代表、なでしこの宿命で、それに勝つためのチームワークであり、ボールテクニックであり、パスワークのはずなのだが。

――ということは、自分たちのチームではなでしこのサッカーはやっていない?

賀川:大儀見や安藤、宇津木、熊谷たちはヨーロッパのチームにいるから当然としても、日本のなでしこリーグも名は「なでしこ」だが、代表「なでしこ」とは各チームが違ったことをしているのでしょう。

――そういえば、リーグを見ても必ずしもパスサッカー、テクニックの高い試合というわけじゃない

賀川:どのチームもよく走るようになっているが、決して個々の技術、ボールを止める蹴るレベルが大きく上がっているわけではない。

――INAC神戸はなでしこジャパンの主力がいますが

賀川:私が見た限りでは、INACもいい選手が多くて、断然強いはずではあるが、試合展開はかつてのなでしこジャパンとはかなり違っている。

――アメリカ人のストライカーもいる

賀川:それは決して悪いことではないが、個人技を組織サッカーのなかで活かすことを心掛けなければならないのに、そのためのトラッピング、キックの精度などがINACといえども向上しているとは言い難い。

――ふーむ。そういえば、なでしこジャパンの佐々木監督は「パスの精度も低い。チームコンディションもよくなかったが、こういうことではワールドカップの連覇どころか、1次リーグを勝つこともできない」と言っていました

賀川:日本が10人で1人少なかったこともあり、後半ニュージーランドはガンガン攻めてきた。奪われたのは1点だけだったが、後半38分のそのゴールは…
(1)日本の右サイドからの攻めを防いだニュージーランドはアーセグが前方へパスを送り(2)ロンゴがこれを受けて(3)右前のグレゴリウスへパスをつなぐところから始まった(4)10番をつけた小柄でタフなグレゴリウスは丸山桂里奈に追走されながらドリブルで進み(5)右外を走りあがるパーシバルの前方へパス(6)パーシバルはゴールライン手前でゴールに追いつき、ダイレクトでクロスを中央へ(7)強く速いライナーが右ポスト前9メートルあたりに届くところを走りこんできたロンゴが見事に右足に当てて(8)ボールはGK海堀の上を抜いてゴールに飛び込んだ。1-1。なでしこ側は、ペナルティエリア内に5人のフィールドプレーヤーがいたが、ニュージーランド側の速い攻撃に対応できず、ロンゴはノーマークシュートだった。

――クロスを送ったパーシバルも最初のドリブルを始めて、シュートを決めたロンゴも自陣の深いところからのスタートで、パーシバルは60メートル、ロンゴは50メートルくらいの長い距離を走ってのクロスであり、シュートでした

賀川:ニュージーランドはラグビーで有名ですが、女子は陸上競技にもいいランナーが出ているところで、少女のサッカー人口も増えているそうです。こういう国や地域もこれからどんどんレベルアップするでしょうから、佐々木監督がなでしこジャパンもこれから大変だというのも当然でしょう。

不満、不安の確認もキリンチャレンジカップの効果

――なでしこは6月26日と29日にヨーロッパでイングランド代表、ドイツ代表との試合を予定しています

賀川:この2試合は強豪相手の親善試合ですが、7月20日からの東アジアカップ(会場:韓国)で中国、北朝鮮、韓国との公式試合があります。東アジアはもともと中国や北朝鮮などレベルが高いところ。韓国も急上昇しいい選手がいます。

――その前になでしこの状況をつかめた

賀川:そういう意味ではキリンチャレンジカップはとてもいい経験だったと言えます。私自身はニュージーランドの選手たちのひたむきなプレーを見ることができてとてもよかったと思います。

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