日本代表(A代表)

5月24日 日本代表 vs 韓国代表(続)

2010/05/29(土)

キリンチャレンジカップ2010
5月24日19時20分キックオフ(埼玉・埼玉スタジアム2002)
日本代表 0(0-1、0-1)2 韓国代表
 得点 韓国:パク・チソン(6)パク・チュヨン(90'+1)

――韓国戦、日本の良かった点は?

賀川:選手の体調把握ができたことだね。GKの楢崎正剛やCDFの中澤佑二の調子が良くなってきている。それから森本貴幸が30分程度出場して、思っていた通りにプレーできたこともある。ボツボツ彼をFWの主力の一人と考えてもいいのじゃないかな。

――賀川さんなら、戦術練習やフィジカル調整以外に何か考えますか?

賀川:無理をしてはいけないけれど、ボールを蹴らせることだね。ゴールに向かってボールを蹴ること、シュートすることで、どの選手もシュート位置に立つことに自信を持つようになるハズです。

――岡田監督には何を望んでいますか?

賀川:アフリカというのは人類発祥の地。学問上では類人猿がこの地で二足歩行のヒトへ進化したということになっている。その土地で、二足歩行だからこそできるフットボールのワールドカップが史上初めて行なわれ、そこへ日本代表として乗り込むのだから、人類の歴史のうえでも、SAMURAI BLUEはまことに素晴らしい場にゆけるわけだ。その折角の楽しい試合を、さらに楽しくして帰ってくるためには、もうひと踏ん張りして、勝って帰ることですよ。
 英国のブックメーカーでは、日本の優勝は賭け率200対1。グループE突破は9対4。ワールドサッカー誌の順位予想はE組4位となっている。気を楽にして、ちょっと彼らの鼻をあかしてほしいネ。


【つづく】


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5月24日 日本代表 vs 韓国代表(下)

2010/05/28(金)

キリンチャレンジカップ2010
5月24日19時20分キックオフ(埼玉・埼玉スタジアム2002)
日本代表 0(0-1、0-1)2 韓国代表
 得点 韓国:パク・チソン(6)パク・チュヨン(90'+1)


――パク・チソンの先制ゴールはさすが、マンチェスター・ユナイテッドのレギュラーという感じでしたね。

賀川:日本側はパスで崩されたのではなく、中盤でのヘディングの応酬のあとボールを拾われ、そこから突破された――いわば突発的なゴールと考えているようだが、そういうゴールを取れる選手が韓国にはいる、ということでしょう。
 パク・チソンがボールを取ったとき、長谷部誠が奪いに行ったが、パクが粘り勝ちして自分のものにした。ビデオを見直すと、腰を低く下げ、いかにもアジア人というスタイルのボールキープで粘った。そのあとドリブル発進したのだが、彼は自分の右手側から体を入れようとする今野泰幸を右手で押えて排除し、ゴールへドリブルして右足でしっかり蹴っている。やはりいいプレーヤーですヨ。
 韓国のサポーターはもちろん喜んだことだろうが、日本のサッカー好きにとっても、パク・チソンのこのゴールは国内で見る好プレーの一つだと思う。

――大久保嘉人が頑張りました。

賀川:彼は、こういう緊迫の試合にはしっかりプレーするタイプ。それだけに、前半21分のシュート――ペナルティエリア外やや左寄りからのシュート――を決めてほしかったネ。あの位置からのシュートなら、サッカーのプロを志すプロにはシュートの型が決まっているハズですよ。惜しいけれど、彼ほどの選手なら決めてほしいものです。

――岡崎慎司はほとんど出番なし。本田圭佑も良くありませんでした。

賀川:本田の場合は、ちょっと気合が入りすぎていたのかも知れない。固い感じだった。いろいろな話題を持つ人だが、決して生まれつき特別に図々しいというタイプじゃないからネ……。
 岡崎の場合は、中村俊輔からいいボールが出なかったのは大きい。前を向いて飛び出すのを得意とする選手だが、それだけでゆけるかどうかだろう。特に、第2列からのバックアップがなければネ。

――長友佑都とパク・チソンの「ボールをめぐる戦い」は沸かせましたね。

賀川:長友はパクを相手によく戦った。彼が奪ったボールをパクが長い距離を走って奪い返したときは、長友贔屓(びいき)の私でも拍手しましたヨ。

――日本はこの完敗劇をどう生かすかですね。

賀川:岡田監督が試合後に、1年間に二度も韓国代表に敗れた――ということで、犬飼会長に「このまま監督を続けていいのですか」と尋ねた、いわば進退伺いをした。犬飼会長は「続けてやれ」と言ったということだが、このことを記者会見の席上でメディアに語ったものだから、スポーツ紙の多くは岡田進退問題を大きく取り上げた。

――ちょっと軽率だったという意見もありました。

賀川:どうせ記者会見で、メディアの方から進退問題を聞いてくる。それなら先に言っておこうということだろうが、自分から言い出さなくても良かっただろうネ。「自信を無くしたのか」「敵前逃亡」などとも言われた。そうしたことより、これから2週間で選手たちのコンディションを整えることだ。チーム全体の調子を上げることが大切だろう。
 2006年は大会前のドイツとの試合までは良かったが、日本代表の本番での試合が始まると思いのほか体調の優れない選手がいた。今回は20日前に一部の選手の故障が明らかになったのだから、前大会よりは条件は悪くない。しかし、次の試合で調子の悪いベテランを休ませ、回復させて本番に出場させるのか、あるいは休ませるのか、非常に難しいところですヨ……。


【了】


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5月24日 日本代表 vs 韓国代表(上)

2010/05/27(木)

キリンチャレンジカップ2010
5月24日19時20分キックオフ(埼玉・埼玉スタジアム2002)
日本代表 0(0-1、0-1)2 韓国代表
 得点 韓国:パク・チソン(6)パク・チュヨン(90'+1)


◆韓国戦のおかげで、本番3週間前の選手の体調が明らかに


――完敗でしたね。パク・チソンに6分に先制され、同点ゴールを狙って後半、前掛かりになったところをロスタイムにカウンターで2点目(PK)を奪われました。

賀川:試合そのものは面白かった。日韓戦らしく気迫のこもったプレーが見られた。2月以来の代表の試合に比べると、この点はとても良かったと思いますよ。

――それでも負けました。

賀川:いい負け方だったと思うよ。いつも言っているように、このチームは全員が揃って、しかもいいコンディションに仕上げて、気持ちのうえでも充実すれば相当なことができる。しかし、そういう条件のいくつかが欠けると、そうはゆかなくなる。

――闘莉王がいない、内田篤人がいない、そういえば松井大輔や稲本潤一もベンチにも入っていなかった。

賀川:内田の代わりに長友佑都を右に回し、左に今野泰幸を配した。闘莉王の代役には阿部勇樹をおいた。それぞれしっかりプレーしたが、どこか違っていて当たり前ですヨ。それよりも、チーム全体が韓国の激しいプレッシングに浮足立ってしまったからね。

――中村俊輔もよく奪われたし、本田圭佑も持ち堪えられませんでした。

賀川:相手のプレッシングが強くても、例えばこれまで、右サイドで俊輔と内田、時に岡崎慎司に遠藤保仁が加わったりするとボールを動かせてキープすることもできた――という見方もあるが、この日の韓国のプレッシングでどうだったか――。そういう意味で、せっかくの相手との試合に予定のメンバーを組めなかったのはもったいなかった。

――しかし、本番ではケガもありますから。常に同じメンバーとはいかないでしょう。

賀川:そう。選手たちはこれからの2週間で受験勉強をして、互いの呼吸が合うペアプレーやトリオの連係をつくらなくてはならない。無理とは思っていないがね、ただ、韓国ほど日本に対して真剣にプレッシングするところは少ないからね。それで、惜しい機会を逃したと言っているのです。南アフリカ大会のためだけでなく、選手たちにはいい経験だから。

――さすが、少年期から韓国のチームと試合をしてきた経験者の話ですね。
 そういえば、賀川さんは韓国は対日本代表の「テ」を知っていると言っていましたが、それがこのプレッシング?

賀川:そう。プレッシングで追いこんで、いいパスを中盤から出させないようにする。奪ったら随所に1対1を仕掛ける。それも前へ走ってスピードを上げることで、彼らの体の粘っこさを生かそうとする。もちろん、ボールを上げることもそうだ。朝鮮半島の人たちは昔から、日本人は小さいと思っていた。今度の両チームのメンバーでも身長がずいぶん違った。

――公式のスターティングリストを見ると、韓国は平均身長182.2cm、体重75.5kg。日本は178cm、73.8kgでした。

賀川:ついでにいえば、韓国の24人の平均も182cm、76.4kg。日本の22人は178.6cm、74kgとなっている。ただし僕は、平均を出すやり方がいいとは思えないので、いつも私流の身長比較をする。

――185cm以上が何人、というのでしょう。

賀川:そう。今度の韓国の登録24人のうち、GKの3人を除くフィールドプレーヤーは
 ▽185cm以上 4人
 ▽180-184cm 12人
 ▽177-179cm 5人(合計21人)となっています。

――GKを勘定しないで、フィールドプレーヤーの高さを見るわけですね。

賀川:そう。日本側の、3人のGKを外した19人は
 ▽185cm以上 3人
 ▽180-184cm 3人
 ▽177-179cm 6人
 ▽174-176cm 3人
 ▽170-173cm 4人

――つまり、韓国は全て177cm以上で、180-184cmのクラスが12対4(人)と圧倒的に多い。

賀川:いま世界ではリオネル・メッシをはじめとするバルセロナの小型選手のプレーが注目されていて、必ずしも「大きいことはいいことだ」とは言わないのだが、スポーツの世界で180cmといえば昔の中肉中背という時代だからね。

――まあ、小型選手については賀川さん自身がそうだったから一家言あるでしょう。それは別にして、韓国の大きさもそこそこあって、その一人ひとりの足腰が強いというのはテレビでも充分見せつけられましたよ。

賀川:そういう韓国、日本の事情も知っていて、速く激しいプレッシングを仕かけてくるのに対して、埼玉では有効なプレーができなかったわけです。


【つづく】


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【Result】5月24日 日本代表 vs 韓国代表

2010/05/24(月)

キリンチャレンジカップ2010
5月24日19時20分キックオフ(埼玉・埼玉スタジアム2002)
日本代表 0(0-1、0-1)2 韓国代表
 得点 韓国:パク・チソン(6)パク・チュヨン(90'+1)

【日本代表メンバー】
GK: 1楢崎正剛
DF: 22中澤佑二(cap)15今野泰幸、5長友佑都
MF: 10中村俊輔→19森本貴幸(63分)7遠藤保仁→3駒野友一(79分)2阿部勇樹、17長谷部誠、18本田圭佑→14中村憲剛(72分)
FW: 16大久保嘉人→12矢野貴章(87分)9岡崎慎司
SUB:23川口能活、21川島永嗣、13岩政大樹、25酒井高徳、24香川真司、27山村和也、26永井謙佑

【韓国代表メンバー】
GK: 1チョン・ソンリョン
DF: 30カク・テヒ、17イ・ヨンピョ、25イ・ジョンス、24チャ・ドゥリ→4オ・ボムソク(67分)
MF: 22キ・ソンヨン→7キム・ボギョン(76分)28キム・ジョンウ、14パク・チソン(cap)→20イ・スンリョル(76分)27イ・チョンヨン
FW: 10ヨム・ギフン→19パク・チュヨン(46分)12イ・グノ→15キム・ナミル(46分)
SUB:21イ・ウンジェ、18キム・ヨングァン、5キム・ドンジン、23キム・ヒョンイル、2チョ・ヨンヒョン、6ク・ジャチョル、29シン・ヒョンミン、8アン・ジョンファン


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4月7日 日本代表 vs セルビア代表(下)

2010/04/10(土)

キリンチャレンジカップ2010
4月7日(大阪・長居スタジアム)19:24
日本代表 0(0-2 0-1)3 セルビア代表



◆諦めるのはまだ早い
 2ヶ月半の努力で一歩でも速く、1センチでも高く、全員の能力アップが組織力を高める


――試合後に選手たちの話をメディアが取材するミックスゾーンの空気も、沈んでいたとか……

賀川:僕も行ってみたが、明るくないのは当然でしょうね。何しろ90分間で1ゴールもなかったのだから。

――こんなときは、どうするんですか。

賀川:そのうちにW杯の出場メンバーを発表することになる。そしてチームとしての練習が再開し、韓国とのキリンチャレンジカップのあと、欧州での合宿練習、そののち南アフリカに乗り込むというスケジュールはこれからそんなに変わらないだろう。
 選手たちはそれまでに、Jリーグの戦いの中で自分のコンディションを整えてゆくことでさらに練習を重ねるという、当たり前のことを懸命にすることですヨ。

――岡田武史監督へのアドバイスはありますか?

賀川:彼は立派な監督で、今回がW杯も2度目です。自分で苦しみ、自分で工夫し、きちんと仕事をしてゆくでしょう。それを応援するだけですヨ。

――サッカーの先輩として一言……

賀川:選手への話というより一般論だが――。サッカーでどうしようもなくなったとき、ゆきづまったとき、私はまず“走ること”そして“ボールを蹴る”ことだと思っている。走って、ボールを蹴る。もちろんシュートも走ってシュートする、走り込んでシュートをする。ヘディングの強い者はもう一度、ジャンプヘディングのタイミングを体で確認し、自信をつける。
 ディフェンダーならタックルの一番基礎のスライディングタックルの繰り返しで、自分の間合いを再確認する。走ってのスライディングも、立ったまま足を出すスライディングもですヨ。
 もちろん、仲間での1対1の接触プレーもいいだろうし、中盤から前の選手に大切な技の一つであるスクリーニングも自分で心掛ければ、体を練るためにもステップワークを上げるためにも大事な練習の一つです。
 うんと走れば、うんと動けば、たくさんボールを蹴ることで道は開けると思う。サッカーというのは難しそうでシンプルなスポーツだからね。

――選手同士の話し合いも大切でしょうね。

賀川:そんなことは人に言われなくても、代表選手なんだから……。まあ、パスの出し手と受け手、どこでもらうか、どこへパスを出すかは大切だからね。互いに話し合うことも必要でしょう。話し合いが不必要になるくらいまで。

――J開幕から今まで代表選手の多くはACLもあって試合数も多く、決していい条件でなかった。これからの回復力に期待しましょう。

賀川:何といっても、危うい基礎の上に立っているのだから、何かあるとグラグラするのは仕方ない。それはJスタート18年以来の諸々の、選手育成の流れが係わっていることであって、その中で育った選手たちに責任を全部かぶせるのは気の毒ですヨ。それよりも、選手一人ひとりが自分たちの現状を考えて、ここから2ヶ月半の間どれだけ精進するか。その精進は彼らの人生にとっても大きなプラスとなると思う。それは監督はじめコーチ陣にとっても同じことです。
 まあ、いつも言うように、自分や仲間のために一生懸命にやること――。ただし、僕たち古い人間が経験したような「負ければ死ぬ」戦いと違って、結果が出なければまた努力をすればいいという“平和の戦い”だということを忘れず、諦めないでほしいネ。

――そうですね。賀川さんがいつも言われるように、選手は、2ヶ月半のトレーニングでヘディングのジャンプが1センチ高くなればそれだけチームと自分にチャンスが増えるのですから……。


【了】


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4月7日 日本代表 vs セルビア代表(中)

2010/04/09(金)

キリンチャレンジカップ2010
4月7日(大阪・長居スタジアム)19:24
日本代表 0(0-2 0-1)3 セルビア代表

Crow
会場で配られていた「SAMURAI BLUE CROWプロジェクト」の折り紙。
日本代表へのメッセージを記した折り紙でカラスを折り、南アフリカに送ろう、というもの。

※日本代表 vs セルビア代表(上)はこちら


◆少数でも攻めて点を取ったセルビア。個人の戦いにサッカーの原点

賀川:スタンドの記者席から見て、上手い蹴り方だ、ベッケンバウアー式のトウ(足の先端)を使ってのチョップキックかなと思った。家へ戻ってビデオを見直したら、ラドサフ・ペトロビッチは右足のアウトサイドのトウでボールの下を蹴ったようだった。ボールにスピンがかかり小さく上がって、落下してから少し後戻りしたから、走り込んできたムルジャにとってはおあつらえ向きのボールだった。近ごろは無回転ボールの話が賑やかだが、こういうボールを蹴れることも大切ですヨ。
 74年W杯の決勝のときにベッケンバウアーのロングボールが相手エリア近くの芝生の上で弾みながら前へゆかずにむしろ戻る感じに見えたのに感嘆したことがあるが、それほどでなくても、21歳のキャプテンのこのボールは素晴らしかった。

――そうそう、マッチデープログラムを見たら、原博実技術委員長のインタビューが掲載されていて、その中に「ほんの小さなプレーで勝敗は変わる」という言葉がありました。

賀川:その通りですヨ。ただし、それを相手が上手くやって、こちらができないのでは苦しいネ。
 そう、98年のクロアチア戦の話が出たから言うけれど、当時の岡田武史監督は日本の力が相手より下、特に1対1では負けそうだからと組織プレーを強調していた。したがって、攻めにも出たが守りも重視していた。だからバックパスを奪われた第1次攻撃はいったん防いだが(辛うじて井原の足に当たった)リバウンドを拾われて右へ送られ、そこにストライカー、ダボール・シュケルがいて、トラップしDFをかわして得意の左足シュートへ持っていった。

――今回は、いったん防ぐということもなかった。

賀川:栗原勇蔵と中澤佑二の二人は横浜F・マリノスのCDFのペアだが、こういう相手とは初体験だし、相手の引きの早い守りに、むしろ攻撃の方に頭がいっていたのかもしれない。日本のDFの要(かなめ)の中澤も、ここのところ相手への寄りやタックルの間合いなどにこれまでと違って少し迷いが出ているのかもしれない。まあ、国内の試合ではほとんど自分の方が体格的に有利な相手と当たる。それがアジア勢でなく久しぶりにセルビアの大型で上手な選手との対戦を経験したのだからね。

――1点だけならともかく、8分後に2点目を取られました。

賀川:これも左サイドで攻めに出たとき、阿部勇樹と長友、岡崎で短いパスをつなごうとして、阿部―長友のやり取りに失敗した。手詰まりになりかけていたから、一度この地域からボールを大きく動かせばよかったのだが……

――こちら3人に対して相手も3人囲みに来ました。

賀川:長友は、前日の練習を見て体調が良さそうだった。この試合でも体のキレも良くていいプレーがいっぱいあった。しかし、このときは狭い地域でトラッピングがほんの少し大きくなった。相手が詰めてきたので阿部へ渡した短いボールが阿部の利き足でない左へ行った。阿部は右のキックの上手な選手で、左も使えるが、こういう接近戦のときは苦しい。体を寄せられ、左足でダイレクトで前に送ったパスをカットされた。そこから相手の攻撃が始まった。

――セルビアは試合後の記者会見で、日本側のミスを上手く掴んだのが良かったと言っていたそうですね。

賀川:このカウンターからの展開は面白かったね。第1波の攻撃の右からのグラウンダーのクロスを中澤がクリアすると、それをセルビア側が拾って、今度も同じ右からパブレ・ニンコフがファーサイドへ浮いたクロスを送った。それをドゥシャン・タディッチが右足ボレーでシュートし、右ポスト際へ飛んで来たのを、ムルジャが右足に当てた。GK楢崎がいったん止めたが、それをまたムルジャが倒れた体を起して左足で決めた。

――パスを奪われてカウンターを食らったとき、岡崎が懸命に戻ってそのクロスを防ぎに行きましたが、結局は取れませんでした。

賀川:岡崎は相手の第2波の攻撃のときにクロスを出すニンコフに向かってゆき、そのボールがゴール前に戻ってきてムルジャが最初の右足タッチをしたときにゴールラインから上がっておればムルジャをオフサイドにできたのに、と反省していた。まあ、そこまでできればいいがネ。

――後半に石川直宏が栗原に代わり、玉田圭司が興梠に代わった。でも玉田はケガもあって82分に矢野貴章が交代で出場しています。また、山瀬功治が中村俊輔に代わって70分から登場しました。これはどうご覧になりましたか?

賀川:石川と玉田は突破力に期待したのだろう。多数防御を破るには、パスだけではよほどの精度がなければネ。ドリブル突破は当然、大切な攻撃の手だから……。

――しかしゴールは生まれなかった。

賀川:海外の強いチームに勝つ、あるいは互角の試合をするためには、何度も言うように、今の候補に入っている選手のベストメンバーがいい体調で戦って初めて結果が期待できるのですヨ。

――体が強くて、キック力のある本田圭佑も必要だと。

賀川:そういうレギュラークラスがいかにうまく組合わされて一つのチームになるかどうかだからね。サイド攻撃といっても、サイドでまずボールを持てる、あるいはそこから崩してゆけるという強さがなければならない。そこで初めて攻撃の広がりもあって、中央から攻めるスペースも生まれるわけ。そういうためにはいいドリブラーは必要だが、そのタイプの選手にしても、ドリブルができるだけではダメで、ドリブルで相手の痛いところに行って何ができるか――が大切なのですヨ。

――3点目はFKで取られました。

賀川:いいシュートだったね。サイドキックでああいう強いボールを蹴る力がある。蹴るということの重要さがよく分かるでしょう。しかし、日本側にも、たとえばCKをしっかり仲間の上へ送り込める遠藤や俊輔もいるわけで、中澤や栗原のヘディングの落下点で誰かが合わせればゴールなんですヨ。
 いつも言うように、選手一人ひとりが自分の技術を最高に発揮すればいいので、決して悲観することはありません。

――今度のキリンチャレンジカップ、対セルビアは有意義だったでしょうか?

賀川:とても良かったのじゃないかね。皆の関心が高まった大会近くになって、いつもやっている日本式サッカーとはまた別のサッカーのやり方があることを見せてくれた。そして、それをするには個人的な力がとても大切だということを、多くのサッカー人が改めて考えることになったのだから。

――ちょっと長くなりましたね。今日はここまでにしておきましょう。


【つづく】


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4月7日 日本代表 vs セルビア代表(上)

2010/04/08(木)

キリンチャレンジカップ2010
4月7日(大阪・長居スタジアム)19:24
日本代表 0(0-2 0-1)3 セルビア代表

*両チームのメンバーはこちら

100407program
日本対セルビア戦の公式プログラム。
原博実技術委員長のインタビューやセルビアサッカーの歴史、EXLILEのインタビューなど内容盛りだくさん。



――0-3の完敗。少しずつ良くなっているハズの日本代表が、セルビア代表の2軍、というより若手主体の代表に零敗ですからね。ガッカリしました。

賀川:まあ、そうも言えるだろうが、この前のバーレーン戦でもACLでもお話したように、今の日本代表は中村俊輔ヤット(遠藤保仁)をはじめとするレギュラーメンバーが揃い、調子が良くて運動量も多く、組合せの練習も充分というときに初めて実力の出るチームだから、その何人かがいなくて、しかも本番で戦う選手の何人かの当否をここで決めようというのだから、チーム全体のモチベーションとしても、必ずしも死力を尽くしてでも勝とう、点を取ろう、守り切ろう――といった気分ではないだろう。
 火曜日に試合前の練習があるというので新しい堺市立ナショナルトレーニングセンターまで見に行ったが、グラウンド全体にそういう気迫はなかったネ。

――Aマッチといっても親善試合ですからね。

賀川:ところが、相手のセルビア代表(B)はそうではない。この日の試合登録18人のうちの何人かは、南アフリカ行きのセルビア・フル代表にひょっとすると加えられるかもしれない、ということだった。

――セルビアの選手は、個人能力の高いことで知られています。

賀川:近ごろ不勉強で若い人ほど海外からの通信を読まなくなった私でも、ヨーロッパのビッグ5リーグで27人のセルビア人が働いていることは知っている。

――ビッグ5といえば、プレミアリーグ(イングランド)リーガエスパニョーラ(スペイン)セリエA(イタリア)ブンデスリーガ(ドイツ)と、少し落ちますがリーグ1(フランス)ですね。

賀川:そう。ことしの各国リーグのメンバーリストを見ると、イングランドとスペインで2人、イタリアで5人、ドイツは10人、フランスでは8人がプレーしているハズだ。その後、多少変わったかもしれないが、なかには、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)のセントラルディフェンダー(CDF)ネマニャ・ビディッチやインテル(イタリア)のMFデヤン・スタンコビッチ、バレンシア(スペイン)の長身202センチのニコラ・ジギッチといった、僕でも名前を知っているスターもいる。

――そういう、いわばチャンピオンズリーグの上の方に出てくるバリバリがいる、ということですね。日本にも今、本田圭佑がいますが。

賀川:彼と同じCSKAモスクワ所属のクラシッチもセルビアですヨ。もちろん日本にも中村俊輔というスターがいるのだが、要はそのレベル、そのすぐ下のレベルがセルビアにはぞろぞろいるわけ。長谷部誠のボルフスブルクにも、松井大輔のグルノーブルにもセルビア人が複数いる。

――来日した若手選手の意気込みが分かりますね。

賀川:実は、こういう条件のときの若手主力のチームは日本代表にとってとてもやりにくい。強い体、長いリーチを使ってバンバンぶつかってくる。東京五輪の前の強化試合で西ドイツ代表の若手選抜が来たときにも、大敗したことがある。ベテランのスター選手がいるチームよりも、日本選手にとっては体のハンディキャップがまともに出てくるから、スタンドで見ているより選手たちはやり難いのですヨ。

――そういえばテレビ解説者が、日本仕様のやり方ではこういうクラスを相手にするとボールを取られることが多い、速さもリーチも違うと言っていました。

賀川:しかも、このチームは日本と戦うためのしっかりした戦略を立ててきた。

――アウェーだからまず守備を厚く、ボールを奪われたら引きを早くする。

賀川:そう。監督さんのいう試合戦略にどこまで合わせられるか――というのも、上のチームに上がる選考基準になるから、トップの選手も奪われれば日本のDFにプレスをかけて押さえにかかり、その間に防御体制を素早く取る。そして日本のボールを奪うとカウンターに出る――というわけ。ごくシンプルだが対日本には最も効果的な戦略ですヨ。

――日本の選手にとっては、ボールを奪って前を向いたら相手のMF4人がいて、その背後にDF4人が控えている。背が高く構えが大きいし、リーチが長いから、パスを通す隙間を探すのに苦労する――というわけですね。

賀川:さすがに中村俊輔はタイミングを少しずらせたり、うまい持ち方をして隙間を作っていくつかの好パスを出していたね。

――前半20分には長友佑都からのクロスに興梠慎三と岡崎慎司が飛び込んで、岡崎がタッチした惜しい場面もありました。

賀川:例によって、なかなか点にはならなかったけれどね。


◆98年W杯の苦い経験。バックパスを奪われた失点


――こちらがパスをつないで攻めるのに対して、相手はカウンター1発で先制ゴールを決めました。

賀川:先制ゴールを見て、ボクは98年の岡田武史監督の日本代表がクロアチアに0-1で負けた、その決勝ゴールを思い出した。

――ワールドカップ(W杯)の第2戦でした。そういえば、あのとき頑張った名良橋晃さんが、ハーフタイムに場内の大画面のリプレーにコメントしていましたね。

賀川:12年前のあの試合は、この日の長居の寒さとは全然違っていて、ナントの会場はものすごく暑かった。暑さの苦手なクロアチアの選手たちはとても疲れていたが、日本の命取りとなった1点は、中田英寿のバックパスを奪ったクロアチアの攻撃からだった。

――今度も、バックパス。

賀川:そう、日本側がハーフラインでボールをキープし、俊輔が仲間からのパスを確かダイレクトで興梠に送った。相手のCDFミロバン・ミロビッチを背にボールを受けた興梠は、余裕が少しあったのに習慣的にダイレクトでバックパスをした。中村俊輔が上がってくると見ていたのだろうね。ところが俊輔よりも7番をつけたリュボミール・フェイサがその位置へ先に入ってきた。
 セルビアはおそらく、日本代表がトップに上がってからいったんバックパスをするのをチームとして把握していたのだろうし、また、試合が始まってすぐ、その傾向を確認したのだろう。

――いわれてみて、ビデオを見直しましたが、フェイサはためらうことなくそこへ戻っています。

賀川:そのあとが上手かったネ。奪ったボールはすぐにラドサフ・ペトロビッチに渡った。

――キャプテンですね。21歳の若さです。29歳のミロバン・ミロビッチをはじめ、24~26歳の選手もいるのに……。

賀川:彼のことはよく知らないが、多分、それだけ技もあり試合の流れも読める選手だから、若いのに主将になっているのだろう。彼がドリブルして日本のDFの裏へ小さく浮かせたボールを落とした。スタンドで見ていて、いいボールを出したなと思った。ドラガン・ムルジャという18番をつけたストライカーの位置がオフサイドでなかったとしたら、このパスで決まりというボールだった。

――というと?


【つづく】


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【Result】4月7日 日本代表 vs セルビア代表

2010/04/07(水)

キリンチャレンジカップ2010
4月7日(大阪・長居スタジアム)19:24
日本代表 0(0-2 0-1)3 セルビア代表

【日本代表メンバー】
GK: 1楢﨑正剛
DF: 22中澤佑二(Cap.)19栗原勇蔵→16石川直宏(HT)21徳永悠平、5長友佑都
MF: 10中村俊輔→8山瀬功治(70分)20稲本潤一、7遠藤保仁→18槙野智章(82分)2阿部勇樹
FW: 9岡崎慎司、13興梠慎三→11玉田圭司(HT)→12矢野貴章(82分)
SUB:18川島永嗣、24永井謙佑

【セルビア代表メンバー】
GK: 1ジェリコ・ブルキッチ→12ミラン・ヨバニッチ(86分)
DF: 2パブレ・ニンコフ→3ミロスラフ・ブリチェビッチ(64分)6ミロバン・ミロビッチ、13マルコ・ロミッチ、4ボイスラフ・スタンコビッチ
MF: 7リュボミール・フェイサ→14ニコラ・ミトロビッチ(70分)5ラドサフ・ペトロビッチ(Cap.)10ドゥシャン・タディッチ→17アレクサンダル・ダビドフ(52分)8ネマーニャ・トミッチ→16ニコラ・ベリッチ(85分)
FW: 18ドラガン・ムルジャ、9デヤン・レキッチ→11アレクサンダル・ダビドフ(78分)
SUB:15ミラン・ビロティッチ

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【Preview】4月7日 日本代表 vs セルビア代表(下)

2010/03/31(水)

※【Preview】4月7日 日本代表 vs セルビア代表(上)はこちら


賀川:幅68.5、縦105メートルの広さのなかで、高さ2メートル44、幅7メートル32の大きさのゴールへボールを入れるために、あるいは自分のゴールにボールを入れさせないために、双方同数、ゴールキーパー以外は手を使えない10人ずつが戦うこの競技では、自らどこへ行けばこういう技術、こういうプレーが必要ということが出てくる。
 例えば、日本の内田篤人のように、右前へ出て行って攻めに加われば、ゴールライン近くまでサイドを走り上がり、あるいはドリブルしそこから中へ仲間あるいはスペースへパスを送る技術が必要になるし、また自らシュートする。こういうプレーが、それぞれの位置で要求され、何十年も昔からポジションプレーと呼んでそれぞれのプレーヤーが練習してきた。
 ストライカーのプレーもそのポジションプレーの一つにすぎないが、ここで点を取ってくれないとせっかく攻めを組み立てても勝てないことになる。

――ワールドカップ(W杯)本番間際になって改めて、基本的なポジションプレーの話が出るとは思いませんでした。

賀川:いつの時代でもサッカーの基本が一番大切ですね。いまサッカーマガジンで連載しているウェイン・ルーニーは、若いうちから右足でも左足でもシュートして点を取った。
 90年W杯優勝の西ドイツのキャプテン、ローター・マテウスは中盤の選手で右足が得意で左は駄目だったのが、27歳でイタリアのインテルへ移ってから左足を練習して、左足のすごいシュートを決めるようになった。
 今ごろ、こういう基本をむしかえすのはおかしいかも知れないが、サッカー選手はいつでも技術の向上を心がけ、また向上するものなんです。
 先日、セレッソの試合の前に選手たちがボールを蹴っているのを見たけれど、自分のいちばん得意な形に入れて蹴るといった着意、走り込んで蹴るとかペナルティエリアの根っこへドリブルして入ってきて中へどの角度で流し込むとか――そういった実戦用のコースや型をしないでただ止めてボカーンとシュートしている者が多かったネ。
 W杯の本番が近付き、キリンチャレンジカップのような大事な試合に直面するたびに、僕は、この選手はこの前見たときから何本ボールを蹴り、どの点を改良し、どのプレーを身につけたかを見るようにしているのですヨ。

――基礎プレーと代表一人ひとりのコンディション、そして彼らの連係ぶり。欲張っていい試合を見たいですね。

賀川:相手のメンバーが未発表だが、セルビアの選手だから個人はしっかりしたテクニックと体を備えているハズ。彼らの一人ひとりの強さに、こちらがどれだけ対応できるかも面白いですヨ。ストイコビッチの育ったところだから、僕も楽しみにしているのです。


【了】

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【Preview】4月7日 日本代表 vs セルビア代表(上)

2010/03/30(火)

キリンチャレンジカップ2010
4月7日19時20分キックオフ(大阪・長居スタジアム)
日本代表 対 セルビア代表

――対セルビアの日本代表メンバーが3月29日に発表されました。会場へは行かれたのですか?

賀川:久しぶりに岡田武史監督の顔を見たいので上京する予定だったのだが、急用ができてゆけなかった。まあ、4月7日には大阪・長居でも会えるわけだから……。

――今回はヨーロッパ組は呼んでいませんね。

賀川:各チームとも、ヨーロッパはいまシーズンの追い込み期だからね。今回はフランスにいる松井、ドイツの長谷部ロシア本田、イタリアの森本たちへの招集はなく国内選手ばかりだ。

――といってもいまは、中村俊輔(横浜FM)と稲本潤一(川崎F)という、これまでの欧州組が日本に帰っています。

賀川:いつも言っているように、中村俊輔と遠藤保仁の二人が揃って出場することでチームの柱はできるだろう。

――俊輔の体調を、前から心配されていましたね。

賀川:32歳の中村だけでなく30歳の遠藤もですヨ。彼らだけでなく中澤佑二も32歳。年齢が高くなったうえに試合が多く、小さなケガでもあとで大きく響くことになりやすい。各チームのフィジカルトレーナーや代表のコーチングスタッフが体調管理に充分目を向けてほしいネ。2006年のジーコ監督のときは、本番になって調子が下降してしまったから。

――若いDFの栗原勇蔵(横浜FM)やFWの永井謙佑(福岡大)も呼ばれました。

賀川:栗原は184センチと長身で、マリノスで中澤とともにDFとして働いている。中村俊輔のクロスをヘディングしてJリーグで得点もしている(3月20日、川崎戦)。鹿島に岩政大樹という長身のいいDFがいるが、監督は栗原も試したいのだろうね。
 山瀬功治(横浜FM)も興梠慎三(鹿島)も石川直宏(F東京)も、攻撃プレーヤーとして少しずつ違うが、速さが魅力。長いあいだケガでリーグも代表も休んでいた石川がどうか――というのは誰もが考えるところだろう。

――矢野貴章以外は大型がいませんね、FWに。永井が177センチですが……。

賀川:不勉強でこの選手のことはよく知らない。長居では試合に出なくとも練習だけでも見てみたいネ。

――賀川さんはFWを見るとき、まず何を重点にするのですか?

賀川:もちろん全体にゴールの能力があるかですよ。ただし、それには基礎となる技術や体の強さ、速さなどもある。何といってもボールを蹴る能力、そして相手との対応力です。

――若い選手が右足だけ、左足だけでなく右も左も蹴れるかどうかを、賀川さんはいつも指摘されます。

賀川:とても大事なことですヨ。もちろん、相手と競り合いながらの高速プレーとなれば、利き足を使うことになるだろうが、点を取るためのシュートというのは時にピンポイントのキックもあれば、やや“おおまか”に「あの辺へ蹴っておけ」という場合――それでも蹴らないよりマシなこと――もある。

――そういう、しっかりした基礎がないと、いいストライカーにはなれない。

賀川:まあ、そうでしょうね。ただし僕は、ストライカーが全てと言っているのではないんですヨ。


【つづく】


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4月セルビア、5月韓国戦に向けて(下)

2010/02/26(金)

――5月の韓国戦はライバル同士の壮行試合という形。ところで、東アジア選手権の3位、とくに韓国との1-3でずいぶん代表の評価が落ちました。岡田武史監督への風当たりも強いですね。

賀川:監督更迭論を真剣に唱える人もいるようだネ。

――賀川さんはどう思います?

賀川:2月シリーズではコンディショニング――気持ちも含めての失敗につきるね。いちばん点を取っている岡崎慎司も出遅れていたでしょう。

――監督云々は……

賀川:もともと日本代表は、例えばリーガエスパニョーラに加わってそのベスト4を目指すというチームではない。しかし、W杯という1ヶ月の大会なら、強い方でどのくらい上位にゆけるかはやってみなければ分からないものですヨ。大会が近付けば対戦相手それぞれについての勉強も進み、対策を練って、そこで初めて自信のようなものが生まれてくるかもしれない。

――しかし、そこで本当に勝つにはもっと技術・体力が必要でしょう。

賀川:日本の歴史で大人のチームが世界大会でメダルを取った(ベスト3に入った)のは1968年のメキシコ・オリンピックだけ。このときは日本の高地対策が非常に上手くいって、勝つための、負けないための、そして6試合を戦い切るコンディションの維持ができた。他のチームの中には高地対策の不十分なところもあったという。2002年大会は、日本の蒸し暑さがヨーロッパにチームのハンデになっていたのは確かだろう。

――そういう有利な環境条件は、今度はどうですかね。

賀川:ドイツ大会は開幕直前までドイツらしく涼しかった。それが始まった途端に暑くなった。それは乾燥した暑さで、日本の選手たちには堪えたハズですよ。
 技術的なミスが出ると、その疲れはいっそう大きくなった。今度は気温が低いと予想され、ヨーロッパ勢には好条件でしょう。もちろん日本のラン・サッカーにもいいわけだが、別に大プラスというわけではない。

――だから技術も体力も少しでもレベルアップが大切だと……。

賀川:いつも同じことを言うけれど――。
 2月24日のACLの2試合で、広島がホームで中国チームに敗れ、ガンバはアウェーで韓国No.1の水原と0-0で引き分けるのをテレビで見た。技術力と、それをもとにしたチーム力の高いガンバは、苦しい試合だったがまずいい試合をした。この試合を見ても、まだ左右からのクロスが仲間に届いていない。
 初めて見た平井将生(ひらい・しょうき)というガンバの若いFWは速くて、二度シュートチャンスをつかんだ。左右1本ずつ入らなかったのだが、それを本人がこのあとどう考え、どう工夫するかですよ。
 どの選手も上手だし、よく頑張るし、素晴らしいのだが、もう一つ上の基本技術――特に蹴る技術を上げておけばいいのになぁと思いながら見ていた。そういう例は広島にもたくさんあったし、いまの日本代表にも通じることなんです。

――成長期の練習が足りないとおっしゃる?

賀川:それもある。しかしサッカーは27歳になってもまだ上手になりますヨ。

――中村俊輔が横浜へ戻ってくれば……?

賀川:そういう噂だね。それはそれでいいことでしょう。ことしの彼にも非常に大きなことになるだろうからね。


【了】

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4月セルビア、5月韓国戦に向けて(上)

2010/02/25(木)

――キリンチャレンジカップのスケジュールが発表されました。4月7日にセルビア代表と(大阪・長居)5月24日に韓国代表(埼玉)と、ということです。

賀川:その前(3月3日)にアジアカップ予選の対バーレーン(豊田)があり、このキリンチャレンジの2試合のあと5月30日と6月4日に強化試合としてそれぞれイングランド(会場オーストラリア)コートジボワール(同スイス)との試合が組まれている。これは本番前のヨーロッパでの強化合宿中のハズ。

――3月6日に始まるJリーグが5月15、16日の第12節で中休みになり、そこから6月11日開幕のワールドカップ(W杯)までの約1ヶ月(実際の日本の第1戦は6月14日、対カメルーン)をどういうふうにもってゆくかでしょうが、その前にある国内の2試合もファンには嬉しいことですね。

賀川:4月7日といえば、第5節と第6節の間の水曜日。Jの試合で代表も体が動くようになっているだろう。

――ACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出るチームは3月9、10日にも試合があるから、日程が込んでいますけれどね。

賀川:自分のチームでそれぞれのチーム特有の戦い方もあり、また外国人選手もいるわけだから、このあたりで代表が顔を合わせておくのは悪くはないだろう。それに相手はかつてのユーゴスラビアが分裂したあとのセルビア――つまりスラブ人の本流だからね。ストイコビッチ名古屋監督)の育ったところのハズだ。

――ボールテクニックが高いこと、それにスラブですから大柄な選手もいるでしょう。

賀川:マンチェスター・ユナイテッドのネマニャ・ビディッチが有名だが……。ことしのヨーロッパのスペイン、イタリア、イングランド、ドイツ、そしてフランス――いわゆるビッグ5リーグのメンバー表を見ると、セルビア人のプレーヤーはプレミアリーグ(イングランド)とスペインに2人ずつ、イタリアに5人、フランスに8人、ドイツには10人がいる。代表メンバーもほとんどがこうしたレベルの高いリーグで働いている。

――いい選手が揃えば強いのですね。彼らも本番前の一つとして極東へ遠征するのは、体力的にはともかく気持ちをまとめるのにはいいでしょうね。

賀川:全部が揃わなくても、久しぶりにかつてのユーゴスラビア的なプレーを見たいね。


【つづく】

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2月2日 日本代表 vs ベネズエラ代表(下)

2010/02/04(木)

ベネズエラのプレッシングに押され不満足な試合
それでも休養明けに小笠原、平山たち新戦力を試すことができた
走る原点に返って東アジアのライバルに勝つこと



キリンチャレンジカップ2010
2月2日(大分・九州石油ドーム)19:13
日本代表 0(0-0 0-0)0 ベネズエラ代表

*両チームのメンバーはこちら

――小笠原満男はどうでした?

賀川:彼らしくプレーしていた。シュートも2本あった。もともとこの選手はパスもうまいがゴール近くに現れたときに、ボールを止めて蹴るという技術がしっかりしている。だから落ち着いてシュートへ持ってゆくという点で岡田監督は前の方でプレーさせたいと考えているのだろう。1本目の右足でゴールキーパーの右へ(キッカーから見て)蹴ったシュートは、もう少しコースが上だったらゴールになったかもしれない。

――平山相太は後半に出場しました。

賀川:東アジア選手権でも使うつもりなのだろうネ。彼はかなり長い間、まわり道をしていた感があって、昨シーズンにJ1リーグに出場するようになってから少し意欲的になったようだ。城福監督のおかげだろうが、大事な成長期に必ずしもしっかり蓄積したかどうか分からないから、少し調子が上がってきたいま、どしどし代表でプレーし調子を上げつつ、技と体力、走力をつけることだろうね。
 長身でヘディングが強いといっても、40年前の大型FW釜本邦茂に比べてもヘディングが上手だとはいえない。ただ、いまは自分でゆけると思いノッているようだから、いまの日本では珍しい大型FWをステップアップさせるチャンスだろうね。

――もちろん、他にもFWはいますが

賀川:小型のストライカーはそれ自体が一つの特色だから、大型ばかりを求める必要はないが、テンポの変化ということもあり、攻撃陣は多様な素材があっていい。

――これからの3試合をどう見るのですか

賀川:中国は身体の大きさが一つの特色。激しくくることもあり、ファウルも少なくない。駆け引きもうまいから、体の接触のあとの挑発に乗らないよう冷静な試合運びを身につけるのに良い相手だ。
 香港は日本のことをよく知っていて、厚く守ればどの程度持ちこたえられるかを考えてくるだろう。そういう相手から点を取ることもできなければなるまい。
 韓国は永年の好敵手で、伝統的にもっとも日本のことをよく知っていて、中盤でプレスをかけにくるのか、ロングボールでくるのか。日本の嫌なこともやれるチームですヨ。
 こういうそれぞれの相手国を乗り越えて優勝することは、チームの自信につながるでしょう。

――初戦で0-0という結果になりましたが、まあ良いクスリだと思って、東アジア勢を相手にいい試合をして勝ってほしいものですね。

賀川:サッカーはうまくゆかないときはまず走ることだと私は思っている。ベネズエラのおかげで、選手たちも目が覚めたことだろう。日本の選手たちは体調を上げて、走ることで組織力も個人力も増すことが多い。初戦の不満足試合を糧に、今度はいい試合をしてくれるだろうと思っていますヨ。


【了】

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2月2日 日本代表 vs ベネズエラ代表(上)

2010/02/03(水)

ベネズエラのプレッシングに押され不満足な試合
それでも休養明けに小笠原、平山たち新戦力を試すことができた
走る原点に返って東アジアのライバルに勝つこと



キリンチャレンジカップ2010
2月2日(大分・九州石油ドーム)19:13
日本代表 0(0-0 0-0)0 ベネズエラ代表

*両チームのメンバーはこちら

――楽しみにしていたのに、さっぱりという感じでした。

賀川:取材申請もし、出かける予定だったが腰の調子が思わしくなくて、結局私は今回はテレビ観戦になってしまった。まあ私はどんな試合でも面白いと思える方ではあるが、代表選手の中には重い感じのする選手もいたネ。失望したファンも多かっただろう。
 折角、相手のベネズエラがしっかり準備して遠征のハンデを克服して良いプレーをしてくれたのだから、こちらもいい体調でゆきたかったネ。

――休養期間明けで、日本代表一人ひとりの体調はシーズン中に比べると良くないのでしょうがね。2月2日にこの試合が予定されていて、準備合宿が1週間前からスタートする。そう決まっていれば、選手たちはそれに合わせて休養期間中にもコンディションを整えてゆくのと違うのですか?

賀川:そのあたりのことはどうだろう。試合を見た限りでは、例えば大久保嘉人はこの試合にかける意気込みが相当に見えていた。本番で代表メンバーに入るために、このシリーズ(2月4連戦)でどれだけのプレーをするかが重要だと感じているハズだからね。
 まあ大久保の話はともかく。私がこの休み明けの初戦で不思議に思うのは、コンディショニングもそうだが、それぞれの基礎の技術がシーズン中よりも落ちていることですヨ。もちろんケガなどでボールを触れない選手もいるだろうが、サイドからのクロスといった一番初歩的で大切なポジションプレーが、前より下手になって出てくる。そしてシーズンに入ってまた少し伸びてゆく――という繰り返しになっているように見える。

――その原因はどこにあるのでしょう。

賀川:まあ、だいたい察しはつくが、それは別の機会にしておきましょう。
 試合の場面でいうと、前半に遠藤からのパスを長友佑都が左サイドのペナルティエリア近くからクロスを出すことになったとき、相手の足に当たって止められている。
 また、大久保が右サイドへ出て中へクロスを送った。彼は少し浮かそうとしたが、相手がその高さを読んで足を少し上げたからこれも不成功だった。
 内田篤人に代わって先発で右サイドを務めた徳永悠平も、クロスパスを送るという点では良くなかったネ。
 こういう技は調子が悪いとかいいとかいうものでなくて、ボールのどこを足のどこで蹴るかという形が身についておれば良いわけですヨ……。私は、それはシーズンオフでもシーズン中でも上手になろうと思えば上手になれると思っている。

――練習のスケジュールなどの問題もあるのでしょうが……

賀川:近ごろは練習するのにいろいろ制約もあるらしいけれど、必要な練習は繰り返さないと落ちますヨ。


【つづく】

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【Result】2月2日 日本代表 vs ベネズエラ代表

2010/02/02(火)

キリンチャレンジカップ2010
2月2日(大分・九州石油ドーム)19:13
日本代表 0(0-0 0-0)0 ベネズエラ代表

【日本代表メンバー】
GK: 1楢﨑正剛
DF: 22中澤佑二(Cap.)4田中マルクス闘莉王、21徳永悠平→3駒野友一(59分)15長友佑都
MF: 25小笠原満男→26金崎夢生(75分)7遠藤保仁、8稲本潤一、14中村憲剛→20平山相太(59分)
FW: 16大久保嘉人→17香川真司(84分)9岡崎慎司→13佐藤寿人(75分)
SUB:18川島永嗣、23西川周作、12岩政大樹、15今野泰幸、6内田篤人、24石川直宏、2阿部勇樹、10乾貴士、19興梠慎三

【ベネズエラ代表メンバー】
GK: 1レオナルド・モラレス
DF: 18ジオバニー・ロメロ、3ホセ・マヌエル・レイ (Cap.)6ガブリエル・シチェロ、4カルロス・サラサール
MF: 8フランクリン・ルセナ→2グレンディー・ペロソ(84分)5ジャコモ・ディ・ジョルジ、20アグネル・フローレス→13フアン・フエンマジョル(73分)14アレハンドロ・ゲラ→10ヘスス・ゴメス(81分)
FW: 15アレハンドロ・モレノ→19エデル・ファリアス(90分)7フェルナンド・アリスティギエタ→9アレクサンデル・ロンドン(68分)
SUB:12ダニエル・バルデス、16ヘンリー・ペルニア、11ヘスス・ルゴ、17オルランド・コルデロ

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【Preview】2月2日 日本代表 vs ベネズエラ代表(下)

2010/01/22(金)

――平山相太は復活……いや、初めてのA代表参加ですね。

賀川:私は、彼はもっと早くA代表に入っているべき選手だと思っていたが、Jでは実績がなく、ずいぶん遠まわりをしてきた。

――このサイトでもブログ(片言隻句)でも、何度も語ってこられましたね。それでも、イエメン戦での3ゴールがモノを言いました。

賀川:ストライカーは、何といっても実績だからネ。私が今でも釜本邦茂を例に挙げると多くの人は「今さら釜本でもあるまい」と言うが、歴代日本代表の通算最高得点、それもAマッチだけでなく当時の日本代表に比べて実力の上のアーセナル(イングランド)ボルシア・MG(ドイツ)パルメイラス(ブラジル)といった一流プロチームを相手にしてのゴールを含めてのゴール数を見れば、誰も納得ということになる。
 平山の今度のイエメン戦でのゴールは、彼にも日本サッカーにも岡田監督にも、とてもいいきっかけとなったと思う。

――テレビ放送があればよかったのに。

賀川:そう、平山といえば、昨年秋はFC東京で出番をもらって懸命にプレーする姿をテレビで見ていた。ただし、背を丸めてトコトコ走る姿勢に、高校を出てからの大切な成長期を日本のコーチ達や彼自身はどういう過ごし方をしたのか、寂しく思っていたものですヨ。
 それでも、彼のように才能を持つ大型FWが、調子がよければ代表に入れますよ――という岡田監督の意思表示には大賛成。日本人は小型が多いから敏捷性を生かすというテーマはいいけれど、大型でいいストライカーがいれば役に立つものだ。

――体格も含めて、日本人にはストライカーの資質がないという評論家も多い。

賀川:まあ、その話は別として、平山にはこれをきっかけに上昇してほしい。実際は大切な期間を空白にしておいたから、これから一段上にあがるのは大変だと思うけれど、せっかくの素材が、ともかく24歳までサッカーを続けたのだから、満25歳になる6月のW杯にはぜひ出られるように頑張ってほしい。
 たとえ出られなくても、ここしばらくの努力は将来決して無駄にはならないと思うヨ。ヨーロッパのスーパースター、ウェイン・ルーニークリスチアーノ・ロナウドも同じ1985年生まれだからね。もっと平山自身も、周囲も、彼の資質を大切に思ってほしい。


【了】

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【Preview】2月2日 日本代表 vs ベネズエラ代表(上)

2010/01/19(火)

さあ、日本代表2010冬の陣


キリンチャレンジカップ2010
2月2日19時10分キックオフ(大分・九州石油ドーム)
日本代表 対 ベネズエラ代表



――キリンチャレンジカップ2010、日本代表対ベネズエラ代表(2月2日19時10分、大分・九州石油ドーム)の日本代表メンバーが発表されました。このあと東アジア選手権大会(2月6日-14日、東京)の試合が3試合あるので、キリンチャレンジカップに始まる2月2日から14日までの4試合は6月のFIFAワールドカップ(W杯)に向かってのとても重要なシリーズになりますね。

賀川:Jリーグの2010シーズンが3月6日にスタートする。各クラブにとっても、この2月は大切なトレーニングの時期だが、日本代表にとっても1月25日から2月2日まで9日間、指宿(いぶすき/鹿児島県)で代表候補を集めて練習できるのはとてもいいことだ。そしてその後も対中国(6日、味スタ)対香港(11日、国立)対韓国(14日、国立)と試合が続くので、国内組の候補たちはずっと一緒にいることになる。

――発表されたメンバーはこれまでのお馴染みの顔ぶれですが、DFの村松大輔(湘南)が私たちには新しい名前です。また、大分から名古屋に移ったMF金崎夢生や、セレッソの香川真司も入りました。しかし何といっても注目は大物の小笠原満男(鹿島)の代表への返り咲きと、長身FW平山相太でしょう。

賀川:GK3人、DF9人、MF8人、FW5人がまず発表され、そのあとでフランスから日本に戻ってくる稲本潤一(川崎)が追加され、合計26人の名が挙がった。
 小笠原については実績のあるプレーヤーで、Jリーグ3年連続優勝チームのキャプテンという看板もある。彼のような選手を代表に入れ、今のチームの強化になるかどうかを見るのには、この時期だと考えていたようだ。

――一度やってみて、チームに合わないから次のチャンス――というような選手ではないということ?

賀川:チームの考え方もどうやら共通になってきた現段階の代表に、小笠原といういい個性がどういう働きでチームのプラスになるかを知りたい。実力はある程度分かっている。性格も、代表の仲間にもよく知られている。

――それが、今まで代表に呼ばれなかったのは……

賀川:彼の働き場所がどこにあるか、周囲との組み合わせはどうか、ということだろうね。そして、もっと早い時期に入れて難しいことになった場合は、本人にとっても日本サッカーにとってもプラスにならない。

――岡田監督は、そういうことまで考えるのですかね?

賀川:うん。物事をしっかり考え、そして今どうするかを決めているのだろう。だから、今回が小笠原を呼ぶ最後のチャンスと見たのだろう。

――中盤のプレーヤーはいっぱいいるでしょう、日本代表は。

賀川:そうだね。小笠原は相手の攻めの芽をつぶして、そのボールをこちらの攻撃に転向するのがうまい選手で、鹿島でもボランチ役で成功している。そこから出ていって点を取ることもできる。

――発表されたときの記者会見で、岡田監督は攻撃的MFで使ってみたいと言ったそうですね。

賀川:ボクも聞きましたヨ。ボールを受ける前を含めた視野の広さ、ボールを持ったときの落ち着き、パスに移る早さなどが、いわゆるプレーメーカー役としても生きるとみているのだろうね。

――ここには、中村俊輔というこれまでの大黒柱もいる。そこに新たに小笠原が加われるかなぁ…

賀川:俊輔のいないチームで、彼がどんなふうに働くかも楽しみだ。
 一般論でゆくと、今のサッカーのやり方で、今の日本人選手がヨーロッパのビッグリーグでプレーメーカー役として活躍するのは非常に難しい。相手のマークやプレスが厳しいから、技術だけでなく体の強さやリーチの問題もある。中田英寿でさえ、セリエAのペルージャではともかく、ローマというクラスになると(スター選手がいたこともあって)このポジションを好きでありながら、実際にはそこで使ってもらえなかった。
 小笠原も海外での経験の上で、鹿島に戻ってもう一つ後ろのポジションでチーム全体を動かすことに成功したのだが、日本代表というチームは海外のトップリーグのチームではなく、また別のカラー、別の性格、別の力を備えたチームだから、小笠原がその気になれば――と私はある種の期待を持っている。


【つづく】

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【Member追加招集】2月2日 日本代表 vs ベネズエラ代表

2010/01/15(金)

 日本サッカー協会は15日、キリンチャレンジカップのベネズエラ戦(2月2日・九州石油ドーム)に臨む日本代表に、川崎加入が決まったMF稲本潤一を追加招集すると発表した。
 これでメンバーは計26人。稲本は21日から川崎の合宿に入るが、その後25日には鹿児島・指宿での代表合宿に移動する。

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【Member】2月2日 日本代表 vs ベネズエラ代表

2010/01/13(水)

ベネズエラ戦に25選手招集、小笠原が復帰


日本サッカー協会(JFA)は13日、来月2日のキリンチャレンジカップ、対ベネズエラ戦(九州石油ドーム)に向けた代表メンバーを発表した。

国内組のみの招集となった今回、岡田監督は昨季JリーグMVPのMF小笠原を選出。06年ドイツW杯以来、3年7ヶ月ぶりの復帰のチャンスを与えた。
このほか、若手主体のイエメン戦(6日、3-2)のメンバーからは、この試合3得点のFW平山と、負傷のため遠征を途中離脱したDF村松が選ばれている。

チームは25日から鹿児島・指宿で合宿に入り、2日にベネズエラと対戦。その後メンバーは東アジア選手権に向け23人に絞られる。

メンバーは以下のとおり。

【GK】
楢崎正剛(名古屋)川島永嗣(川崎)西川周作(広島)

【DF】
中澤佑二(横浜M)田中マルクス闘莉王(名古屋)駒野友一(磐田)
岩政大樹、内田篤人(以上鹿島)
今野泰幸、徳永悠平、長友佑都(以上FC東京)村松大輔(湘南)

【MF】
小笠原満男(鹿島)遠藤保仁(G大阪)中村憲剛(川崎)石川直宏(FC東京)
阿部勇樹(浦和)大久保嘉人(神戸)金崎夢生(名古屋)香川真司(C大阪)

【FW】
玉田圭司(名古屋)佐藤寿人(広島)平山相太(FC東京)
岡崎慎司(清水)興梠慎三(鹿島)


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10月14日 日本代表 vs トーゴ代表(続)

2009/10/19(月)

――トーゴ戦の話をもう少し。
 後半はあたまから大久保嘉人森本に代わり、本田圭佑が遠藤に代わりました。CDFは中澤佑二と田中マルクス闘莉王はそのまま。右の徳永悠平に代えて内田篤人が出場しました。終盤に石川直宏や佐藤寿人も入りました。

賀川:遠藤は体調がよくないということだった。日本のMF陣はいま絶頂期だが、年齢的にも大事な時期。それだけに故障も起こり得る。中村俊輔のプレーも相変わらずホレボレするが、ケガをしないことを祈りたいね。ただでさえ運動量の多い日本サッカーだから、海外の選手も含めて、代表の体調管理にはJFA(日本サッカー協会)も(クラブと協力して)気をつけて欲しいヨ。

――その後半の20分に、岡崎が3点目を取った。2試合連続ハットトリックだということですが……

賀川:オランダでの対ガーナでも、稲本からのロブをヘディングで決めていた。今度は右からの長谷部のクロスだったが、狙う位置もいいしヘディングもうまかった。相手が彼のプレーを防ぎにゆけず、見ているだけという感じだったのは感心しないが、かといって岡崎のヘディングのうまさ、いつも自分の点になる位置を狙う“気組み”の素晴らしさは賞讃して当然でしょう。

――ただし、彼自身、取り損ねたチャンスもありました。チーム全体にも、こういうときに点を取っておきたいという「点にならないチャンス」も少なくなかった。

賀川:シュートのタイミングの問題、そしてシュートのときのインパクト(ボールの捉え方)といった基本的な問題もある。日本代表のFWといっても、成長期に自分のシュートの型をきっちりと作り上げてきたかどうかについては及第点といえない者もあるからね。一人ひとり個々の技術についてはここでは言わないが、一般的に指導者が若い選手のシュート練習のときになぜシュートがバーを越すのか、なぜ右へ外れたのか、なぜみすみすGK(ゴールキーパー)の正面へ行ったのか(強くてはじくようなボールでないのに)などについて、その理由を選手とともに考え、指導し、修正しているかだろうね。

――走り込んでのシュート練習や反転してのシュートなどもやっているのですかね。

賀川:横浜の対スコットランド戦にでかけるとき偶然、釜本邦茂さんに会ったヨ。近頃は子どもたちの指導に身を入れているようだが、彼の話によると、やはり一般的にはボールを回す練習時間が多く、ゴールを目指す練習が少ないところが多いと言っていた。


【つづく】

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10月14日 日本代表 vs トーゴ代表(下)

2009/10/18(日)

対トーゴ戦、5得点の評価


■ボールが動いている間の森本の動き

――そういえば、長友が森本にパスを出す前の、ボールの動かし方が面白かったと?

賀川:まず長友のドリブルにはじまり、10本以上のパスを交換してボールを動かしておいたあと、最後に遠藤と俊輔のリターンパスから遠藤がダイレクトで再び左前の長友に送り、ここで長友がパスを森本に送ったのだが、ボールを動かして相手の目を引き付けている間に森本が少しずつ動いて自分のポジションをずらせ、ボールが長友に渡ったときはマーク相手のアキンソラの前(ボールのニアサイド)へ入ってボールを受けている。

――いつもいう、ストライカーはいったん消えて出てくるというヤツですね。

賀川:21歳の彼はそのコツを知っているところがいい。彼のターンにアキンソラはついてゆけず、もう一人のDFマンゴが絡みにきたがダメだった。

――もちろん、これがオランダ代表のDFだったらどうかとか、相手のコンディションがもっと良かったらどうなのか――という話にはなりますが……

賀川:だからといって、森本がこうしたプレーを日常的にできるという値打ちを下げることにはならない。もっと上のクラスに通じるかどうかはやってみればいいわけだから。そして、そういう相手との試合でも、何回かやれて、それが成功すればいいわけなんですヨ。

――やっぱりストライカーの話になると力が入りますね。


【了】

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10月14日 日本代表 vs トーゴ代表(中)

2009/10/17(土)

対トーゴ戦、5得点の評価


――NHKのテレビでは解説者の山本昌邦さん(元・日本代表コーチ)が、ペナルティエリアぎりぎりからのクロスだったら距離が短くて、それだけ到達する時間が短く、相手DFに対応する余裕がない、だから効果的と言っていましたね。

賀川:そう、そのとおり。ボクたち神戸一中の中学生は非力だったから、右タッチ沿いからのクロスが中央に届くのは時間がかかるだけでなく、蹴るのも力んでコントロールが難しい。ペナルティエリアの根っこからだと、ゴールの中央までたかだか20メートルで楽にコントロールパスができるということもあった。当時はそれほど理屈をいうのでなく、そのあたりからやればうまくゆくと思っていたので、チーム全体では攻めるときはペナルティエリアの左右の幅を使うという風に考えていた。

――いまのガンバの攻撃がそうですね。

賀川:いつの時代でも考えることはあまり変わりませんヨ。ただし、いまの代表は何度も言うようにそう、色々なテというより一つ、外からの速いクロスパス、それも人に合わせるというよりスペースへ送り込む――ということに重点を置いているようだ。

――それが得点を生むことを試合で見せたのですね。

賀川:そう。前半の11分で3ゴールした。最初の得点は5分に遠藤が左から斜め前へ速いクロスを送り、これを森本がコースに入って相手DFが潰れる形となってボールを通し、その背後へ出てきたボールを岡崎が右足で合わせてゴールを奪った。一つのボールのコースに二人のFWが入ってきた効果で、森本がノータッチでいったのが意図的かどうかは別にしていいプレーだった。

――エリア内での相手の多数防御を破る一つのテは、パスでかわすことでなくボールのコースにいる相手を妨害すること、つまり潰すこと――だとよく言ってましたね。

賀川:どこの国のFWでも常識の一つだが、二人のトップが初めて組んだ公式試合で演じたところが、うれしいネ。まあこのときに、岡崎が反応しているのに、岡崎をマークしていた相手が無反応だったところに手放しで喜べないところもあるのだが……



■飛び出す岡崎の本領とパートナー・森本


――2点目も岡崎。中村憲剛の右からのクロスでした。

賀川:7分の得点だネ。右CKで俊輔と憲剛のパスのやり取りのあと、いったん後ろにボールを下げておいて俊輔-遠藤のやり取りがあって、闘莉王が右前にいる憲剛へ送る――という日本のMFらしいタイミングのずらせ方で、憲剛がノーマークで受けすぐにクロスを送って岡崎がニアへ走って右足インサイド(かかと)で決めた。相手もついてきたが、余裕があった。
 このとき、ビデオを見直すと、ペナルティエリア中央少し入ったところにいた森本と岡崎の二人が、憲剛へボールが出たとき右斜めつまりニアへ走ったが、森本は岡崎が近いのを見てファーへ方向を変えた。このあたりはサッカーを知ってるナという感じ……。

――3点目が森本のターンとシュートですね。

賀川:簡単にいえば長友から送られたゴールラインに並行のクロスをゴールを背にして左で止め、右へ出て右足でシュートした。相手DFに絡まれたがそれを振り切ってシュートをゴール左下へ決めた。

――代表初得点、彼の株がまた上がりましたね。

賀川:ゴールを背にしてボールを止めターンしてシュートへ持ってゆくこの形は、対スコットランド戦と同じ方向変換だが、今回はスペースがあるので大きなターンをして蹴っている。ニュースか何かの場面で彼は左へも開いてシュートしたシーンを見たことがあるから、反転シュートはどちらの側も出来るのじゃないかネ。そして彼はこのとき、蹴り足のインパクトがきちんとボールを捉えている。ここが彼のストライカーとしての一つの資質だといえる。いまの日本の選手はせっかくいいところへ出てきてもシュートするときに足首が寝ていることが多い。

――賀川さん流の言い方ですね。“寝ている”というのはインステップで蹴っていないということですか?

賀川:まあテレビのスロー再生をみて、もう一度確かめて下さい。森本はきちんと叩いているハズですヨ。


【つづく】

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10月14日 日本代表 vs トーゴ代表(上)

2009/10/16(金)

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スコットランド、トーゴ戦のマッチデープログラム


対トーゴ戦、5得点の評価


キリンチャレンジカップリンカップサッカー2009~ALLFOR2010!~
10月14日(宮城・宮城スタジアム)19:35
日本代表 5(3-0 2-0)0 トーゴ代表
得点者:岡崎(日5分、8分、65分)森本(日11分)本田(日85分)

 *両チームのメンバーはこちら


――森本貴幸岡崎慎司の2トップが実現しましたね。

賀川:いまの勢いを見れば、誰もが2トップを組ませてみたいと思うでしょう。
 長谷部誠、遠藤保仁、中村俊輔、中村憲剛のMFにこの2トップ、そして右に徳永悠平、左に長友佑都と配した先発メンバーを見ると、ちょっとワクワクしたでしょう。

――右サイドが内田篤人でなかったのは……

賀川:内田の体調もあっただろうし、こういうときに徳永を出しておきたいという(監督の)意図があったのだろう。FC東京の徳永は国見高校、早大のころから注目されていた。180センチで大きい方ではないが、小さくはない(内田は176センチ)。体も強い。長い疾走を繰り返すこのポジションの選手は試合中の交代にも必要になる場合もある。また、相手選手との相性もあって、違ったタイプがいてもいい。この時期に彼が登場するようになったのはいいことだと思っていますヨ。

――5-0と大量点になりましたが、トーゴ代表がワールドカップ(W杯)予選に負けた直後で気落ちしていたこと、アデバヨールをはじめレギュラーが来日しなかったことで、“喜びもなかばなり”という感じでした。

賀川:強化試合としてあまり役に立たない――という人もいたネ。マッチメークはそう易しいものではないが、もう少し頑張れる相手を選びたかったヨネ。来日してくれた選手たちにとっても、慣れない遠距離移動もあって大変だったハズです。


■サイド攻撃の狙い


――といって全く、5ゴールの評価はそれ相応のものがありますか?

賀川:キリンチャレンジカップ第1戦、対スコットランドの2ゴールが全て、右サイドの駒野友一からの速いクロスだった。これに見られるように、速いクロスを相手のゴールキーパー(GK)とDFラインの間に入れてそれに合わせるという攻撃を、ここしばらく代表は強調し、練習しているらしい。

――それも賀川さんのいうペナルティエリアすぐ外、あるいはせいぜい10メートルぐらいの外からのクロスというわけですね。

賀川:うーむ。今回は必ずしもそうではないが……

――2008年の欧州選手権(EURO2008)でスペイン代表が演じたペナルティエリア内での攻めが、小柄な選手の多いスペインらしくて日本でもこのやり方がいいという人も増えているそうですが。

賀川:それをいうなら、1940年代からすでにその傾向はあったヨ。私たちは少年の頃、ペナルティエリアの根っこ、つまりペナルティエリアの縦のラインとゴールラインとの接点へは外から入る、あるいは揺さぶってそこから仕掛けるのが一つの手法だったからネ。
そんな昔話はとにかくとして、いまの代表の狙いはそこまでペナルティエリアに近づかなくてもDFラインとGKの間にスペースがあればそこへ速いボールを送り込むというのが、とりあえずのテのようだネ。


【つづく】

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【Result】10月14日 日本代表 vs トーゴ代表

2009/10/14(水)

キリンチャレンジカップサッカー2009~ALLFOR2010!~
10月14日(宮城・宮城スタジアム)19:35
日本代表 5(3-0 2-0)0 トーゴ代表
得点者:岡崎(日5分、8分、65分)森本(日11分)本田(日85分)

【日本代表メンバー】
GK: 1川島永嗣
DF: 22中澤佑二(Cap.)4田中マルクス闘莉王、24徳永悠平→6内田篤人(46分)25長友佑都
MF: 10中村俊輔→21石川直宏(82分)7遠藤保仁→20本田圭佑(46分)14中村憲剛→15今野泰幸(69分)17長谷部誠
FW: 9岡崎慎司→13佐藤寿人(78分)28森本貴幸→16大久保嘉人(46分)
SUB:18西川周作、3駒野友一、26岩下敬輔、5稲本潤一、8松井大輔、

【トーゴ代表メンバー】
GK: 1ドジ・オビラレ(Cap.)
DF: 13セナ・マンゴ、5セルジュ・アカッポ、12ブサリ・アキンソラ、6アシミウ・トゥレ→3ジョナタン・トクプレ(78分)2マニエマ・タワリ
MF: 14サポル・マニ、8ギヨーム・ブレネール、10ユロージュ・アホディクペ→11ドヴェ・ウォメ(69分)
FW: 7リアベ・クパトゥンビ、18セルジュ・ガクペ
SUB:16オモル・ジャバカティエ

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10月10日 日本代表 vs スコットランド代表(4)

2009/10/14(水)

――さて、アジアカップ予選の対香港戦と、このキリンチャレンジカップの対スコットランドの2試合を見ての総まとめは?

賀川:岡田武史監督がオシムの後を継いで最初に日本代表の試合をしたのが2008年1月26日のキリンチャレンジカップ、対チリ戦だった。31試合(~オランダ遠征)をして、その中でFIFAワールドカップ・アジア3次予選6試合(4勝1分け1敗、得点12失点3)アジア最終予選8試合(4勝3分け1敗、得点11失点6)を勝ち上がって南アフリカ大会への出場権を握った。
 アジアの予選では一貫して速く組織的で運動量の多い攻守を心掛けてきた。そして守りではときに1対1の場面で防ぎ切れず失点し、攻撃はチャンスの作り方は良くなってきたがフィニッシュがまずいことがはっきりした。

――そこでメディアも各クラブのコーチも異口同音に「思い切ってシュートを」と叫び出した。

賀川:ボールを止める、正確で強いシュートあるいはコントロールシュートができるという基礎はともかく、代表もJリーグもゴールを狙う積極性が出てきた。少しずつ代表の得点力もアップしているように見えたが……

――9月にオランダに完敗しました。

賀川:まあ、その次のガーナ戦では、相手のコンディションもあったが4ゴールした。勢いのついた代表は、だからオランダ戦の無得点も自分たちで嘆くのでなく、いい勉強で、プラスにしようと考えた。

――スコットランドはオランダよりも弱くても、さらに上昇への足掛かりとなりましたか?

賀川:組織的なパス交換でキープすることと同時に、対スコットランドでは個々の仕掛けのドリブルやシュートの気配をちらつかせるドリブルというものの効果を見られるようになった。本田や森本たちが加わったことで、日本代表にも新たなバリエーションが少し増えた感じだネ。

――少しだけ?

賀川:まだまだ代表はよくなるだろう。選手たちも、いまサッカーが面白いときでレベルアップすると思いますヨ。


【了】

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10月10日 日本代表 vs スコットランド代表(3)

2009/10/14(水)

賀川:代表チーム全体としては、初のCDFフル出場の岩政に安定感があり、阿部勇樹もしっかりした守りを見せていた。徳永も相手のサイドからの突破に競り負けなかった。交代メンバーが入ってから、中村憲剛が今野とともにボランチに入り、ボールの回りがスムースになって、左の松井と右の本田というキープ力のある人の前に、それまでワントップだった森本が大久保と2トップの形になり、ボールタッチの回数が増えた。
 タイムアップ間際の2点目は、日本のGK川島からのロングボールを森本がDFとヘディングを競るところから始まった。相手陣25ヤードでの競り合いヘッドは相手DFが取った。が、ボールは今野がヘディングで前へ、相手側に渡ろうとしたのを
 (1)森本が鋭い速い動きで自分のものにし
 (2)中村に渡した。中村はこれを左の今野に
 (3)今野からさらに左の駒野へとパスがつながる。
 (4)駒野が短くドリブルして、中へ速いグラウンダーのパスを送ると、そこに森本がいた。
 (5)森本は左ポスト前ゴールエリアの手前にいて、ゴールに背を向けた形でこのボールを左で止めて右足でシュート
 (6)このシュートがDFの足に当たって転がったのが本田の足元へ。
 (7)彼は左足サイドキックでしっかりボールをとらえてゴール右ポストぎりぎりに蹴り込んだ

――反転シュートという、いつも話題にしているストライカーの技術が森本クンのところで出てきましたね。

賀川:得点の一つのチャンスはゴールを背にしているとき――と、前にも話しました。ことしのコンフェデ杯決勝で、ブラジルのルイス・ファビアーノ(セビリア)が後方からのボールを相手DFを背に止めて左足でシュートしてゴールしたのがブラジルの勝因の一つと語りもし、書きもしました。こういうプレーはストライカーとしては必須科目のプレーの一つですが、森本はごく普通にこういうシュートをすることもできることをみせたのです。彼のマーク相手でなく一つ下がったポジションにいたDFの足に当たってリバウンドし、それが本田のところへ転がっていったのが良かったのですが、こういう場面をつくれるようになってきたところに、日本の進化があるといえる。
 そう、このときの森本が、1点目と同じポジションでなく中村にボールを渡したあと、いったんファーポスト側へ動いておいて、駒野からのパスが来るときにはニアサイドへ入ってきているところも注目しておきたい。

――いったん消えて出てくるやり方ですね。
 試合後の岡田監督の談話で、色々ないい選手がいいプレーをするようになって、選手選出に嬉しい悩みが出てきたとありました。

賀川:そう、誰と誰が組めばどういう風になるか。私は森本や本田という新しい素材が入ってきたこと、2人とも個人的にキープとキックがしっかりしていることがとても嬉しい。そして、森本という、これまでになかった(大柄とはいえないが)CFタイプの体も技術もしっかりした若いFWが加わったことで、いよいよ日本のサッカーは楽しく強くなると思ったのです。もちろん、DFに岩政だけでなくもう一人くらい大型が欲しいのと、このFWの争いに平山相太が加わっていないことに、本人へというより日本サッカー全体への不満はありますがネ。

――中村憲剛がよく働いていましたが、得点できなかったことについても。

賀川:これは別の機会にしましょう。彼は自分で反省しているだろうが、俊輔も遠藤もいないこの日のメンバーでは、彼の仕事の比重が別の方にかかっただろうからね。
 なんといっても、日本代表の試合のやり方では体力の消耗が激しい。いくら練習を積んでも、その日の調子の問題もあるので、試合中の選手交代も大切だし、ひとつの短期間の大会では途中でメンバーを大幅に変えなければならないときもある。だからいまはどれだけのトップクラスが互いにどれだけ相互理解をするかが大切。そのために、一つの試合や合宿によって「あうん」の呼吸のパスや守りができるメンバーが増えなければならないのですヨ。

――その意味で、このキリンチャレンジカップはいいチャンスですね。

賀川:そう、もうひと試合、仙台でのトーゴ戦があるからね。


【つづく】

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10月10日 日本代表 vs スコットランド代表(2)

2009/10/13(火)

――日本の2ゴールは……

賀川:1点目も2点目も森本の仕掛けで始まったのが面白かった。

――ふーん。

賀川:このゴール(82分)の1分前に、代表チームに選手交代があった。稲本潤一を駒野友一に代えた。

――稲本はキャプテン章を腕につけて、この試合ではずいぶん頑張っていました。

賀川:彼はガーナ戦(9月9日)とこの試合で日本のサポーターにも稲本復活を印象付けた。この試合でも良かったが、疲れが見えはじめていた。試合後の話では足がつりそうになっていたらしい。それを見て監督は稲本をひっこめた。ボランチはそれまで左DFだった今野泰幸をあて、左サイドに駒野を置いた。すでに右サイドは内田篤人を徳永悠平に代えていた。同時に橋本英郎大久保嘉人に代わっていた(65分)。この辺りが、交代プランをよく考えているという感じだった。81分の駒野の登場は明らかに、駒野からのクロスという戦術的な目論見(もくろみ)があったハズ。

――そういう布陣で、左サイドの相手スローインのボールを奪って森本がドリブルを始めた。

賀川:左タッチ際で松井が自分のミスでスローインにしてしまった。この相手のスローインを松井と森本とで奪って、
 (1)森本が外から内へ向かってドリブルし
 (2)ペナルティエリア左角から少し中央へ寄ったところで突破できないとみてゴール正面25mの本田にパスした
 (3)本田はパスを受け、ちょっと右への小さなフェイクのあと、左へボールを動かしてシュートの構えに入ろうとしたが、相手の一人に体を寄せられ、その背後にも2人のDFがいたからシュートを諦めて左へパスを出す

――森本が外から内へドリブルして、今度は本田が中央から左へシュートチャンスを狙う……。エリアすぐ近くの攻防の面白いところですね。

賀川:もちろん実際はほんのわずかな時間のことだが、2人の仕掛けに対してスコットランドのDFが防ぎに入る――。サッカーの一つのスリルですヨ。
 そして、このシュートチャンスは無理とみて本田が左外へ一度ボールを散らす。

――そこに駒野がいるわけだ。

賀川:そう。駒野はこれをペナルティエリア左外7~8m、ゴールラインから12~13m辺りで左足のダイレクトで蹴った。

――サイドからの速いボールということですね。

賀川:この前に、本田にパスを送った森本は、本田が中央から左へ流れているうちに左前から中央へ、さらに少し右へとボールを見ながらポジションを移していた。テレビのリピートをスローで見ると、ボールが駒野に渡る前に森本は手を挙げて駒野に自分のポジションを知らせている。

――駒野は狙ったのかな

賀川:駒野がボールを少し浮かそうとしたのをみれば、森本へ届かせようと思ったかもしれない。しかしボールは高くは上がらず、低いライナーでゴール前を通った。それを防ごうとDFクリストフ・ベラが足で止めようとしたが無理だった。足に当たってボールはゴールに飛び込んだ。

――テレビの解説ではセルジオ越後さんが、ベラは背後に森本が来ていることを知って、防ごうとしたんだろうと言っていましたよ。

賀川:そうだろうね。スローで森本が手を挙げたあたりから、そのマーク役であるCDFの彼は森本の気配は察知していただろう。
 森本がゴール前を、本田のドリブルの方向とは逆にスタスタという感じで右へ開いていったところが、やっぱりなぁ――という感じがした。いいポジションへ入ってチャンスを待つというのが、このCFタイプのストライカーの一つの条件だからね。

――オウンゴールではありましたが、森本が仕掛けて、最後のチャンスにも顔を出そうとしたところに賀川さんは森本の存在感を見たわけですね。


【つづく】

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10月10日 日本代表 vs スコットランド代表(1)

2009/10/12(月)

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試合会場では、売店のドリンクカップも大会仕様


キリンチャレンジカップサッカー2009~ALLFOR2010!~
10月10日(神奈川・日産スタジアム)19:21
日本代表 2(0-0 2-0)0 スコットランド代表
得点者:オウンゴール(日 82分)本田(日 90+分)

 *両チームのメンバーはこちら


――森本、良かったですね。キリンチャレンジカップ第1戦の次の日の新聞の見出しは森本貴幸(もりもと・たかゆき)でした。

賀川:横浜スタジアムに集まった6万1,285人の観客のほとんども、彼に期待していたのだろう。56分(後半11分)に前田遼一と交代で森本の名が告げられたとき、すごい歓声が上がったからネ。

――賀川さんがわざわざ腰の痛みをおして芦屋から出かけたのも、ナマの彼を見るためだったんでしょう?

賀川:日本代表の試合のなかでも、10日の試合は大切なものになると思っていた。森本のプレーを私は残念ながらこれまでナマで見ていない。映像でもほんのチラリ程度だった。ただし、そのチラリでも、彼が左足でシュートする場面はとても魅力的だった。体がしっかりしていて足の振りが速い。180センチで特別に大きい方ではないが、いまの多くの日本代表のFWと比べると上背もある方だ。それに動きが速い――ということもあって、ぜひナマで見たいと思っていた。

――で、良かった?

賀川:試合に出た時間は30分少々だったが、良かったネ。岡田武史監督は運がいいと思った。10年以上も前になるが、ナマの中田英寿を大阪の長居で初めて見た(97年6月15日、キリンカップサッカー97第2戦1-0トルコ)とき、これで日本代表はフランス・ワールドカップに行けるだろうと思ったのと同じ感じですヨ。あのとき、中田は中盤の軸になるだろうと思った。
 そのころから日本はMF陣に人材が集まるようになった。いまの代表もMF陣はなかなかのものだが、FW難――とくにむかしでいうセンターフォワード(CF)タイプ――が続いてきた。そこへ森本貴幸が現れたということだ。

――30分間でそんなに良い印象ですか。

賀川:本当のところは、もっと長く見たかった。野次馬的に言えば、岡田監督に「出し惜しみしないでよ」と言いたいところだが……。

――監督には監督の都合や手順が……

賀川:もちろんだ。アジアカップは公式試合だから、香港とは力の差はあると知っていても、やはりキッチリと勝っておきたいこともあるだろうし、2戦目にこれまでの控えのメンバーを主に出場させて、3戦目の対トーゴで本番のMF陣と新しい攻撃プレーヤーの組み合わせを考えたのだろう。

――岡田監督のことはよくご存じですからね。

賀川:思い切りもいいが、非常に綿密に練って考えるようだからね。まあ私とすれば、横浜で30分間であっても見せてもらったのがとても良かったヨ。
 10月10日は1964年の東京オリンピック開幕の日。それを体育の日という祝日にしていたが、私にもこのキリンチャレンジカップの日は12年前の6月のキリンカップで中田を見た嬉しさに匹敵する。

――2得点に絡みました。

賀川:日本代表の2得点とも、試合の終盤だった。

――コメンテイターの中に、相手の動きが落ちてきたからだと言っている人がいました。

賀川:そのとおり。それに違いないが、とにかくゴールはゴール。いくらベストメンバーでないといってもスコットランド代表で、少なくとも香港よりは上。長旅の疲れやW杯予選を戦った(結局は本大会には出場できないが)主力が6人欠けた――ということはあっても、ここのプレーヤーは真面目に、懸命にプレーをする。その点はまことに素晴らしい。その彼らを相手に、いわば日本代表のリザーブメンバーに途中から森本を入れたチームで2-0で勝ったのは立派なものですヨ。


【つづく】

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【Result】10月10日 日本代表 vs スコットランド代表 ほか

2009/10/10(土)

キリンチャレンジカップサッカー2009~ALLFOR2010!~
10月10日(神奈川・日産スタジアム)19:21
日本代表 2(0-0 2-0)0 スコットランド代表
得点者:オウンゴール(日 82分)本田(日 90+分)

【日本代表メンバー】
GK: 1川島永嗣
DF: 2阿部勇樹、12今野泰幸、15岩政大樹、6内田篤人→24徳永悠平(65分)
MF: 27橋本英郎→16大久保嘉人(65分)5稲本潤一(cap.)→3駒野友一(81分)14中村憲剛、21石川直宏→8松井大輔(65分)20本田圭佑
FW: 19前田遼一→28森本貴幸(56分)
SUB:23山本海人、4田中マルクス闘莉王、26岩下敬輔、10中村俊輔、7遠藤保仁、13佐藤寿人

【スコットランド代表メンバー】
GK: 1クレイグ・ゴードン
DF: 13クリストフ・ベラ、5ガリー・コルドウェル、4スティーブン・マクマナス(Cap.)3スティーブン・ホイッテカー、15リー・ウォレス
MF: 10チャールズ・アダム→6スティーブン・ヒューズ(67分)8グラハム・ドランズ、18ロス・ウォレス→19ドン・コウィ(46分)11ロス・ウォレス→16デレク・リオーダン(74分)
FW: 17リー・ミラー→9スティーブン・フレッチャー(46分)
SUB:21ジェイミー・ラングフィールド、12デービッド・マーシャル、14ダレン・バー


AFCアジアカップ2011カタール予選
10月8日(静岡・アウトソーシングスタジアム日本平)19:20
日本代表 6(2-0 4-0)0 香港代表
得点者:岡崎(日 18、75、78分)長友(日 29分)中澤(日 51分)闘莉王(日 67分)

【日本代表メンバー】
GK: 35西川周作
DF: 3駒野友一→36徳永悠平(60分)4田中マルクス闘莉王、22中澤佑二(cap.)25長友佑都
MF: 7遠藤保仁、10中村俊輔、17長谷部誠、
FW: 11玉田圭司→8松井大輔(33分)16大久保嘉人→27佐藤寿人(75分)33岡崎慎司
SUB:23川島永嗣、5稲本潤一、15今野泰幸、57本田圭佑

【香港代表メンバー】
GK: 28張春暉
DF: 2李志豪、24鄧景煌、30高尼路(Cap.)32沈國輝→5利偉倫(53分)
MF: 12盧均宜、23林嘉緯→21李威廉(69分)29李康廉、35白鶴
FW: 7陳肇麒、26巣鵬飛→6高文(46分)
SUB:27葉鴻輝、13張健峰、25黄展鴻、8徐德帥

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【Preview】10月10~14日 日本代表 vs スコットランド、トーゴ代表(下)

2009/10/08(木)

キリンチャレンジカップ2009 ALL FOR 2010!
10月10日19時20分キックオフ(神奈川・日産スタジアム)日本代表 対 スコットランド代表
10月14日19時30分キックオフ(宮城・宮城スタジアム)日本代表 対 トーゴ代表


――賀川さんはいつも、岡崎慎司と中村憲剛に期待をかけているフシが見えますが?

賀川:岡崎は上背はともかくヘディングが上手だし、ニアへ飛び込んでゆくのが強い。足のシュートも練習すればまだ上達しますヨ。インサイドを使うのとインステップで蹴る使い分けがしっかりできるといいのだが……。飛び込み型で走り込んでのシュートのときにも体が崩れない強さがあるのがいい。

 中村憲剛はプレーヤーとしての充実期のいま、点を取る意欲が湧き、そのためどこへ走り込めばよいかをつかんできた。
 シュートの型を若いうちに身につけた――というわけではないが、何でも出来るプレーヤーだから、この位置ならこの形で蹴れば入る――とつかんでしまえばそこでのシュミレーション、反復練習で腕は上がる。

――本番の9ヶ月前でも、上手になると。

賀川:サッカーマガジンをはじめ多くの雑誌やテレビでの選手たちのインタビューを見聞すると、多数のプレーヤーがシュートの練習をはじめとする技術力アップや体力アップに取り組もうと言っているようだ。本番が近付いてからのレベルアップは、日本代表の成功例にいくつかあるけれど、私は1968年のメキシコ・オリンピックの本番の9ヶ月前に釜本邦茂が西ドイツのザールブリュッケンへ留学し、ユップ・デアバル・コーチのマンツーマンの2ヶ月の指導で一気に開花したのを見ている。
 メキシコ五輪の銅メダルは高度対策をはじめ周到な準備と監督コーチ、選手たちの全員の頑張り、それをサポートしたJFAということになるが、そうした全体の努力があってもなおかつ、釜本邦茂のズバ抜けた得点力が必要だったことは、多くの人の認めるところだろう。その釜本は本番9ヶ月前にステップアップしたのですヨ。

――もともと、天性のストライカーという話でしたが……

賀川:もちろん彼は稀に見るゴールゲッターの素材だった。右も左もシュートできた。トラッピングも自ら工夫して上手になっていった。しかしそうしたいくつかの技術が組み合わされ見事にまとまって、シュートを成功するようになってゆく。その動きのスピードやまとまりの良さなどが一段上に上がった。
 彼はこのステップアップのあと、あの5月の対アーセナル戦のスーパーゴールをはじめヨーロッパ遠征でプロの強チーム相手に点を取るようになって、チームの仲間から信頼を得たのですヨ。

――一番の点取り屋が国際クラスになったのは大きいですネ。

賀川:いまの代表に釜本がいるかといえば、彼のようなタイプのFWはまだ現れていない。しかし、本田圭佑は左足でボールを叩くことに関しては高校を出て名古屋グランパスに入ったときからすでに出色だった。オランダに行ってからパスだけでなくシュートすることを覚えて実体をつかんできた。
 森本は動きのスピードという点で本田の頑健とはまた違ったものを持っている。そしてシュートそのものはイタリアでも注目されている選手です。
 彼らがこのチームの中でどうすれば有効に働き、自らの特色を生かして、またチーム全体に貢献するかも、このシリーズで見えるでしょう。

――いままで頑張ってきたFWたちの進化と本田や森本という新しい選手への期待がふくらみますね。

賀川:1968年の古い話を持ち出したけれど、サッカーというのはいつの時代にもゴールを奪わなければ勝てないですからね。この秋の日本代表の3試合、とくにスコットランドトーゴといったレベルの高いチームと戦う試合で、誰が、どのようなプレーを見せるかを、とても楽しみにしています。


【了】

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【Preview】10月10~14日 日本代表 vs スコットランド、トーゴ代表(上)

2009/10/07(水)

キリンチャレンジカップ2009 ALL FOR 2010!
10月10日19時20分キックオフ(神奈川・日産スタジアム)日本代表 対 スコットランド代表
10月14日19時30分キックオフ(宮城・宮城スタジアム)日本代表 対 トーゴ代表



――28人の選手を選んでの日本代表は8日からの1週間、3試合を戦います。イタリアでプレーしている森本貴幸(カターニャ)やオランダで活躍中の本田圭佑(フェンロ)も加わっていますね。

賀川:中村俊輔(エスパニョール)稲本潤一(レーヌ)松井大輔(グルノーブル)長谷部誠(ボルフスブルク)も呼んでいる。

――GKも楢崎正剛の故障もあって、山本海人清水西川周作大分)の2人を入れています。

賀川:ワールドカップ(W杯)まであと9ヶ月だから、せっかくのチャンスに監督としては選手たちの特徴や彼ら同士の組合せを見ておきたいのだろう。試合に出なくても、練習を一緒にするだけでも見るところはあるハズですヨ。

――私たちファンにとってはアジア予選を突破してきたチームに新しく誰が加わるのか、それによってチームがどう進化するのかを見たい。

賀川:そうですネ。岩政大樹はまだ代表でAマッチを戦っていない。鹿島で実績を積んだ実力者だが、今度のチャンスで実際にプレーするだろう。中央に大型ディフェンダーの数が少ないのが気になっていたのだから……。

――DFには今度は清水の岩下敬輔が入っています。

賀川:チームワークを大切にする日本のディフェンスは、新しい顔を加えるのに慎重になるだろう。いつも言っているように、岡田武史監督のもとで、初めて大型(185㎝以上)の2人のディフェンダーが定着したのだが、試合日程を考えるともう二人では厳しいハズだ。

――Jリーグで得点王争いの上位に顔を出しているストライカーが選ばれています。

賀川:オシムさんが病に倒れて岡田監督に代わってから、キリンカップ(キリンチャレンジカップを含む)10試合、東アジア選手権3試合、アジアカップ予選2試合、W杯予選14試合、オランダ遠征2試合の合計31試合を戦ってきた。
 これまでの日本代表の伝統的な戦いの上に、岡田監督は一段と動きの量を多くすることを心掛けていた。ゴールを奪うためのパスワークも良くなってきた。あとは点を取るだけで、それについてもまず、代表の攻撃陣に入った選手たちがゴールを奪うことに積極的になってきたのが目立っている。
 そして彼らのそうした勢いがいまのJでの得点ランキングに日本人選手の名が多くなった理由ともいえる。

――さて、それが本番でどういうことになりますか……

賀川:本番の前に、キリンチャレンジカップやアジア選手権の試合で自分たちの攻撃力を確認するのはとても有益ですよ。

――賀川さんは、シュート力アップ、得点力アップに割合、楽観的に見えます。

賀川:「ゴールが見えたら打て」と言ったのは、1922~24年に日本の学生たちを教えたビルマ(現・ミャンマー)人のチョウ・ディンの話です。昔から、点を取ろうと思わなければ――言い換えれば、シュートをどんどん打ってゆかなければ、ゴールは奪えません。石川直宏東京)がことし点を取っているのも、これまでタッチライン沿いに走って中へクロスを送っていたのを、中へ切れ込んでゴールに向かってシュートをするようになったからです。

――それが得点力アップに。

賀川:彼は縦に走って横に蹴るクロスはそれほどうまくはなかった。いわば“彼の”キックの角度は、一番低い球を蹴る角度も、もっと浅いもの。つまり、持ち込んでのシュートに向いている。そこで一気に開花したのだと思いますよ。しばらくJでの得点が足踏みしていたが、また決めるようになっている。シーズン初めの頃の思い切りの良さが戻ってきている感じに見える。


【つづく】

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5月31日 日本代表 vs ベルギー代表(4)

2009/06/06(土)

最終予選6月シリーズに向かって代表全員が一つのチームに――(4)

リンカップサッカー2009 ~ ALL FOR 2010! ~
5月31日(東京・国立競技場)19:24
日本代表 4(2-0 2-0)0 ベルギー代表
得点者:長友(日 21分)中村憲(日 23分)岡崎(日 60分)矢野(日 77分)


―――後半の2得点はサイドからの速いクロス、右から左からと絵にかいたようなゴールでした。

賀川:60分(後半15分)は橋本-本田-内田-大久保と右でつないで、大久保からの低いクロスが飛び、ニアへ岡崎が飛び込んだ。これは、ベルギーが攻めて、右寄り30メートルのFKがあって、相手のキックをGK楢崎正剛がキャッチしてからの攻めの続きだった。
 この攻めはいったん左タッチに出て、そのスローインから中央の橋本に渡り、橋本が右に振ってタッチラインから本田が内へドリブルし中にいる内田へ、その内田から右外の前方にいる大久保へとボールが回り、大久保が低いライナーをゴール前へ送った。
 14番のDFアルデルウェイレルドの前(ニアサイド)に岡崎が低い姿勢で飛び込んでヘディングした。ビデオのリピートを見たら、さすがに大久保はしっかりボールを注視して、カーブをかけて蹴っていた。

――大久保はアシスト2本です。

賀川:こういうプレーは上手だからネ。77分(後半32分)の4点目の後で、相手GKの蹴ったボールに当たって倒れるといった災難もあったが…

――4点目は70分に岡崎と交代で入った矢野貴章が決めました。

賀川:このゴールは、本田が倒されたFKから橋本が短く前に出し、本田が受けて得意のスタンディングキックでスルーパスを送り、長友が相手側ペナルティエリア外ギリギリ、ゴールラインから5メートルで速いクロスを送り、ファーサイドから走り込んできた矢野がDFにスピードで勝ってスライディングシュートで決めたものだった。

――これで2戦続けての4得点、キリンカップ3連覇を達成した。それで、ウズベキスタン戦は? となりますね。

賀川:もちろん、キリンカップの優勝、2試合で8ゴールを決めたことが直接ウズベキスタンの試合に当てはまるかどうかは別の話。しかし、岡田監督はキリンチャレンジカップやキリンカップなどを経て、昨年の11月から半年かかって岡崎慎司というFWを代表の一人に育て上げた。岡崎だけでなく、自分の特徴を出せるプレーヤーが増えてきて、代表チームの層は厚くなっているといえるだろう。
 そして、得点力不足といわれていたなかで、ともかくも、チームとしてゴールを奪うためのパスコースの設定やタイミングの取り方、それぞれの選手の得意な技の組み合わせが形となって表れてきた。あとは高い目標を実現するために、選手たちが自分たちの力を出し尽くすことだと思う。
 予選突破はもちろん、来年の本大会に向けて、これからまだまだ選手たちは上手になり、強くなると思っている。

――俊輔は大丈夫ですかね?

賀川:いまやどの選手も代表には欠かせぬプレーヤーだが、俊輔は何といっても実績からいっても実力から見てもチームの柱といえる。彼自身が自分の体調を考え、プレーするだろう。

――まずウズベキスタンからの朗報を待つことにしましょう。

賀川:最後に、余計なことだが…。何しろアウェー、何が起こるか分からない。もしここで決まらなくても、まだ後があるわけですヨ。余裕を持って、強く戦ってほしいネ。


【了】


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5月31日 日本代表 vs ベルギー代表(3)

2009/06/05(金)

最終予選6月シリーズに向かって代表全員が一つのチームに――(3)

リンカップサッカー2009 ~ ALL FOR 2010! ~
5月31日(東京・国立競技場)19:24
日本代表 4(2-0 2-0)0 ベルギー代表
得点者:長友(日 21分)中村憲(日 23分)岡崎(日 60分)矢野(日 77分)


―――2分後の23分に2点目、中村憲剛が決めました。

賀川:中村憲剛の第2列からの“飛び出し”の成果を多くのファンも見たいと思い、監督も考えているのだろう。チリ戦でも彼はシュートもしたし飛び出しもあったが、シュートそのものは感心しなかった。

――この得点は文句なしでしたね。

賀川:これは日本側がいったん自陣深くへバックパスしたあと、闘莉王中澤のパスのやり取りから、闘莉王が左へ開いた大久保へ長いパスを送った。

――大久保がフリーで取りました。

賀川:ベルギーは20分間バンバン攻められながらなんとか無失点できたあと、21分に奪われた。少しガッカリしたかもしれない。どこでプレスをかけるのかも曖昧になっていた。(1)闘莉王のパスの出し方が上手だったこともあって、大久保がノーマークで受けた。そのとき岡崎が中央の2人のCDFの間にいた。
(2)大久保が内へターンした外の左タッチ際を長友が前進していた。
(3)大久保は中村憲剛の動きを視野に入れていたのだろうか、顔はもっと内側に向けていて、巧みなフェイクとタイミングでパスを前方に流し込んだ。
(4)憲剛はペナルティエリアに入ったところやや左寄りでボールを取った。右足のアウトでの深い切り返しが効いて追いつくのに精一杯だった相手は大きく離れてしまう。
(5)中へ持ち込んで蹴った位置は憲剛の“角度”だったから、ボールはニアポストぎりぎりに転がり込んだ。

――勝負アリ、ですね。

賀川:前半23分でネ。力が違うことは、やっている日本選手は体で感じている。点差が2になったとなれば誰もが一息つきたくなる。2点目から前半が終わるまでシュートは3本だけだった。

――後半は中村俊輔を休ませ本田圭佑を入れ、長谷部誠に代えて橋本英郎を登場させました。

賀川:俊輔は故障や疲労を考えてのことだろう。前半でも段違いのプレーを見せていた。長谷部も、チリ戦同様にしっかりしていたが、もう出来ることが分かっているから、本番でのことを考えて橋本を起用したのだろう。橋本は後半いいパスを出し、相変わらず流れの中でのうまいプレーを見せたからね。

――ハーフタイムに監督が雷を落としたとか…

賀川:試合後の記者会見で、岡田監督は25分を過ぎて動きが落ちたことを厳しく言ったそうだ。面白かったのは、ベテランの記者が、「スタートから息もつかせぬ勢いで攻め立て、なかなか点につながらなかったのが2-0となった。選手たちの動きが落ちるのも自然のように思うが――」と訊ねたら、監督は「相手は中一日で戦っている。こちらは休養十分なのだから前半のあの程度のことで調子が落ちるのは許せない。そういうところをちゃんとやれるチームだと思っているから、ハーフタイムにも厳しく言ったのだ」と返していた。

――それだけ望みが高いということですね。

賀川:後半また動きが速くなって、雨で滑る芝のおかげと、チーム全体がパスを速くすることを考えたせいで、この日は全体にパスにスピードがあって見た目にもとても良かった。いつもヨーロッパの試合のテレビを見ると、日本とパスの速さの違いを思うのだがネ…。


【つづく】


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5月31日 日本代表 vs ベルギー代表(2)

2009/06/04(木)

最終予選6月シリーズに向かって代表全員が一つのチームに――(2)

リンカップサッカー2009 ~ ALL FOR 2010! ~
5月31日(東京・国立競技場)19:24
日本代表 4(2-0 2-0)0 ベルギー代表
得点者:長友(日 21分)中村憲(日 23分)岡崎(日 60分)矢野(日 77分)


――岡崎慎司が点を取りましたね。

賀川:後半15分(60分)の、右からのクロスをダイビングヘディングで決めたチームの3点目だね。彼らしいいいゴールだったが、私はこの日の先制ゴールに岡崎の良さが表れたと思っている。

――たしか、中村憲剛が左の長友佑都にパスをして、長友がダイレクトシュートをニアに蹴り込んだのでした。

賀川:21分のこのゴールは、日本のDFの間でボールを動かしておいて、
(1)田中マルクス闘莉王が左サイドの中村憲剛へパス
(2)受けた憲剛は右斜め前へドリブルして岡崎の足元へ
(3)岡崎はこれをすぐ左の大久保へ渡した
(4)大久保がトラップをして、潰しにくる相手DFをかわそうとする
(5)そのボールをDFのアルデルウェイレルドが取ろうと前に出ようとしたとき
(6)すぐ近くにいた岡崎が体を入れてそのボールを自分のものにし、
(7)横へ移動してきた憲剛へ短いパスを送った
(8)ペナルティエリアいっぱいでこのボールを受けた憲剛は、一つ止めてそれをエリア内、左サイドへ侵入してきた長友にパス
(9)長友がニアサイドにズバリと決めた


■ゴール前で潰れる・潰す効果


――クロスを予測したGKスティーン・スティーネンの逆をとった、見事なシュートでしたね。

賀川:ビデオを見ると、解説の城彰二がそう言っていた。彼はストライカーだからね。そう、やはり解説の武田修宏も、岡崎が粘って取ったところをちゃんと説明していた。専門家だけあってしっかり見てくれているわけだが、私はこの相手ボールになりかけたのを体を入れて奪い返したところに、岡崎慎司というFWの本質があると思う。大久保の“切れ味”に比べると華やかさはないが、接触プレーに強く、ポストプレーのときでも少々のプッシングでは倒れない。このときも、姿勢を低くして腰を入れ、持ち堪えてボールを取ったからね。

――賀川さんがいつも言っている、多数防御を破るテの一つですね。

賀川:相手DFのやろうとしたプレーを潰したから、ペナルティエリアから5~3メートル辺りでの大久保、岡崎と相手の2人のDFの絡み合いにベルギーはさらに2人、DFが寄ってくる。取れるという感じになったから、第2列の選手たちは戻らない。だから岡崎が奪ったときには中村とその左の長友もフリーになっていた。中村にボールが出て、慌てて戻る相手MFを尻目に中村から長友にボールが渡ったときは全くのフリーだった。

――それまで速いパスと動きで「これは」というチャンスがありましたが…

賀川:この21分の長友のゴールまでに、11本のシュートと6本のCKがあった。8本がゴール枠内に飛んだが、GKに防がれたり、相手選手に当たったりした。見た目にパスがスムースに回ってシュートになったのが入らなくて、一度絡まれて、奪い返したのが先制ゴールになるのだから。この面白さについては、サッカー好きの間でしばらく話題になるだろう。

――もちろん、相手DFの強さにもよるのでしょうが…

賀川:相手のCDF(セントラルディフェンス)がカンナバーロであれば、そこで岡崎がボールを取れたかどうか、また、取ったあと、ベルギーのDFは離れてしまった――日本のDFも、局面で一度取り合いを演じたあと相手から体を離すという、気になる傾向がないでもない――が、カンナバーロなら取られたあとも追い詰めてくるだろう。
 ベルギー側は疲れもあっただろうが、長友も矢野も走る速さで勝っていたところが、いまの日本サッカーの一面を表していた。だから試合での成果を論じるときに相手のレベルが問題になるのは当然だが、とりあえず私は日本代表のFWにこういうプレーができるようになり、それを自分の普通の仕事として演じられるFWが出てきたということが嬉しい。もちろん、このチャンスでそれぞれ、各選手がいいポジションをとって役割を果たしたことは、チーム力の進歩としてとてもいいことだ。


【つづく】


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5月31日 日本代表 vs ベルギー代表(1)

2009/06/03(水)

最終予選6月シリーズに向かって代表全員が一つのチームに――(1)

キリンカップサッカー2009 ~ ALL FOR 2010! ~
5月31日(東京・国立競技場)19:24
日本代表 4(2-0 2-0)0 ベルギー代表
得点者:長友(日 21分)中村憲(日 23分)岡崎(日 60分)矢野(日 77分)

【日本代表メンバー】
GK: 1楢﨑正剛
DF: 22中澤佑二(Cap.)4田中マルクス闘莉王→5山口智(74分)15長友佑都、6内田篤人
MF: 10中村俊輔→19本田圭佑(46分)7遠藤保仁→2阿部勇樹(62分)14中村憲剛→13興梠慎三(67分)17長谷部誠→27橋本英郎(46分)
FW: 16大久保嘉人、9岡崎慎司→12矢野貴章(70分)
SUB:18都築龍太、23川島永嗣、3駒野友一、20今野泰幸、21槙野智章、25香川真司、24山田直輝、11玉田圭司

【ベルギー代表メンバー】
GK: 1スティーン・スティーネン
DF: 14トビー・アルデルウェイレルド、5セバスティアン・ポコニョリ→9イエル・ボッセン(69分)3ティミー・シモン(Cap.)6ヒル・スウェルツ、4トマス・ベルメーレン
MF: 7ファリス・ハルン、13ケビン・ローランツ→18ムッサ・デンベレ(82分)17リッチー・ドゥラート
FW: 10マールテン・マルテンス、15ビア・ムヤンジ→11ステイン・フイセヘムス(62分)
SUB:12オリビエ・ルナール、21ブライアン・バンデンブッシェ、2フィリップ・ダームス、8ヨアヒム・ムヌンガ、16リッチー・キトコ、19ラジャ・ナインゴラン


――4-0、チリ戦に続いての快勝で、2戦2勝の優勝ということですね。ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選の6月シリーズに向かうためにも良い準備になりましたね。

賀川:チリは1対1で厳しく競り合いになるのがいい経験だろうと見ていた。攻撃的に来てくれて、そのためにこちらの攻撃も効果が表れて4-0という試合結果が生まれた。ベルギーは守りを厚くしてカウンター狙いになるだろう――その多数守備からどうして得点するかが課題になる。誰もがそう予想していたことでしょう。

――その厚い守りから4ゴール奪ったということですね。

賀川:ボールがよく動いて、選手たちもよく走ったからネ。

――相手が弱かったから、本番の準備としてはどうか? という声もあるようですが…

賀川:ベルギーは1904年にFIFA(国際サッカー連盟)が設立されたときのファンディングメンバーで、W杯でも1986年メキシコ大会でベスト4に入ったこともある。前回の対談でもふれたとおり、2010年大会の予選では4位と不振、来日したメンバーはその代表のレギュラーというわけではない――まぁ、いまの日本代表から見ればそれほど難しい相手ではないと見ていた。

――それでも、試合をした価値はありましたか。

賀川:もちろんですヨ。相手が強くても弱くても、幅7メートル32、高さ2メートル44のゴールの大きさは変わりないのだから…。この枠の中へボールを入れる、それを4回も成功したのだから、値打ちはあります。
 一般的にいって、相手のプレッシングが強く厳しければチャンスをつくるための最初のボールポゼッションが難しくなり、相手のエリア付近での組織的な守りが上手で、また一人ひとりの守備能力が高ければ、チャンスをつくることも、チャンスに得点することも難しい。また、ゴールキーパーが難攻不落のように見えるほど調子が良ければ、それだけでも点を取るのは難しくなる。本番前の試合である以上、本番のためにこういうことを経験しておきたいという希望もあるでしょうが、相手側にも代表チーム構成については問題もあるでしょう。こちら側とすれば、まず自分たちがどういう意図でプレーするかということが大切になってくる。

――最後まで動きが止まらなかった点や、トップ下でプレーした中村憲剛が“飛び出し”でゴールに絡み、自らも奪ったこと、また、サイドからの早いクロスで得点したことなどは良かったということですか。

賀川:そうそう、その通りですよ。まず、チーム全体に、岡田武史監督のいう守から攻への切り替えの早さ、そのためにも足を止めるな――という動きの量も質も少しずつ上がってきていること、そしてゴールへの意欲が強くなっていることなどがプレーに表れていた。


【つづく】


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5月27日 日本代表 vs チリ代表(3)

2009/05/30(土)

代表チームを勢いづける4-0の快勝(下)


キリンカップサッカー2009 ~ ALL FOR 2010! ~
5月27日(大阪長居スタジアム)19:35
日本代表 4(2-0 2-0)0 チリ代表
得点者:岡崎(日 20、24分)阿部(日 52分)本田(日 92+分)

――日本の“代表力”は上がりましたか?

賀川:上がっているでしょう。ただし、この試合が4-0であったことをそれほど私は喜んではいない。チリが攻撃的に来てくれたことで、こちらのチャンスも増えた。もしチリに98年のイバン・サモラーノマルセロ・サラスといったクラスのFWがいれば、長居の試合は先に点をとられたかもしれない。そうなるとまた形勢も変わったものとなっただろう。今回は、いろいろな意味でいい相手だった。

――しかし、4ゴールは4ゴールです。

賀川:そう、4点というのはゴールの枠の中へ4度ボールを入れることだから、それは大いに誇っていい。ベルギー戦には中村俊輔が加わるだろうが、相手がどのような出方をするかも面白い。そして、ベルギー戦を経てウズベキスタンへ乗り込むことになる。


■強気でしかも慎重に本番へ


――ここでしっかり勝って、グループ2位の確保、本大会の出場権を獲りたいですね。

賀川:アウェーの本番試合は厳しいものになるだろうが、しかし、そういう今後のことを考えてもいろいろな不満もあり、不安もないではないが、ともかくキリンカップの第1戦で勢いのあるプレーをして勝ったことは、いまのサッカー全体のために良いことだ。
 若い選手もベテランも、日頃(代表で)控えであった選手たちが力を発揮してみせたのは、彼らにも、サポーターにも嬉しいことだった。

――最後に、香川選手はどうでした?

賀川:時間は短くて真価発揮とはゆかなくても、J2でも少し“仕掛け”が早くなってきているように見える。山田といういい刺激もあっただろうしネ――。


【了】


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5月27日 日本代表 vs チリ代表(2)

2009/05/29(金)

代表チームを勢いづける4-0の快勝(中)


キリンカップサッカー2009 ~ ALL FOR 2010! ~
5月27日(大阪長居スタジアム)19:35
日本代表 4(2-0 2-0)0 チリ代表
得点者:岡崎(日 20、24分)阿部(日 52分)本田(日 92+分)


■“場”で出来た長谷部


――ブンデスリーガ・チャンピオンのボルフスブルクで働いた長谷部は?

賀川:前のキリンシリーズのときにも語ったハズだが――
 27日の長谷部はグラウンドで大きく見えていた。いわゆる“場(ば)”で出来たということだね。バイエルン・ミュンヘンをはじめとする名だたる強チームを抑えてブンデス王者になった。そのチームでしっかり働いたことが、体に備わっていた。だから局面局面でも余裕があった。


■新時代の申し子たち


――玉田圭司が足を痛めて交代したのが、なんと18歳の山田直輝でした。

賀川:浦和でのプレーをテレビで見ていたから驚きはしなかった。18歳といえば大迫勇也たちと同じだから、私たち戦前戦中派の感覚でゆけば、いまの高2が旧制中学の5年生、高3は昔の大学予科1年。したがって山田クンや大迫クンは大学予科2年にあたる。ベルリン・オリンピック(1936年)のCFで逆転劇の口火を切るシュートを決めた川本泰三は早稲田の予科2年のときに全東西対抗の東軍に出場してゴールしているから、決して早すぎることはない。ペレは17歳でW杯のブラジル代表で大事な試合のゴールを決めているしね。

――日本にもそういう時代がきました

賀川:1990年生まれといえば、彼らが3歳のときにJリーグが開幕している。いわば、彼らが物心ついたときには日本の社会にはプロサッカーというものがあった。このキリンカップが始まったのは1978年、その次の年の1979年に日本で第2回ワールドユースが開催された。

――マラドーナがアルゼンチン代表で優勝したとき。ラモン・ディアスもいました。

賀川:私はJFA(日本サッカー協会)の技術委員会で開催招致の動きがあったときに反対した。それは、生まれたときからプロになろうと思ってサッカーを志している外国の若者と、アマチュアの日本リーグが最高峰である日本のユースとを戦わせることには無理がある――という理由からだった。

――ようやく、同じ環境でプレーヤーが育つことになったわけですね。


■岡田監督の狙いが徐々に――

賀川:岡田武史監督は、病によるオシムさんの退任を受けて、このキリンカップ、キリンチャレンジカップとW杯予選、アジアカップ予選などの合計25試合を重ねて、徐々に自分の考えを浸透させつつ、個々のプレーヤーの実力アップを図ってきた。

――代表チームのコンセプトは、攻守の切り替えの速さ、ボールを奪われれば奪い返す、ボールを奪えば有効な攻めにつなげること。そのためには運動量を多くする、ですね。

賀川:もちろん、それぞれのポジションプレーの上達も大切だ。しかし代表になってから練習することも重要なことだが、同時に少しでもいい素材を発見し、チームの層を厚くすることも図ってきた。

――得点力不足といわれてきたFWに、興梠慎三や岡崎慎司が加わり、サイド攻撃に内田篤人や長友佑都がきましたね。

賀川:安定した力は分かっていても、万一を考えてガンバのベテラン山口智を今回加えたのも岡田監督らしい。


【つづく】


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5月27日 日本代表 vs チリ代表(1)

2009/05/28(木)

代表チームを勢いづける4-0の快勝(上)


キリンカップサッカー2009 ~ ALL FOR 2010! ~
5月27日(大阪長居スタジアム)19:35
日本代表 4(2-0 2-0)0 チリ代表
得点者:岡崎(日 20、24分)阿部(日 52分)本田(日 92+分)

【日本代表メンバー】

GK: 1楢﨑正剛
DF: 22中澤佑二(Cap.)3駒野友一、7遠藤保仁→27橋本英郎(61分)
MF: 14中村憲剛→25香川真司(83分)2阿部勇樹、17長谷部誠→5山口智(78分)19本田圭佑
FW: 11玉田圭司→24山田直輝(39分)9岡崎慎司→12矢野貴章(71分)
SUB:18都築龍太、23川島永嗣、21槙野智章、6内田篤人、16大久保嘉人、13興梠慎三

【チリ代表メンバー】
GK: 1ミゲル・ピント(Cap.)
DF: 17ガリー・メデル→7ホセ・フエンサリダ(46分)18ゴンサロ・ハラ、6ロベルト・セレセダ→2ホセ・ロハス(67分)4イスマエル・フエンテス
MF: 13マルコ・エストラーダ、ロドリゴ・ミジャル、10ホルヘ・バルディビア→5エドソン・プッチ(46分)
FW: 14ファビアン・オレジャナ、11エステバン・パレデス、15ジャン・ボセジュール
SUB:12ネリー・ベロソ、16マヌエル・イトゥーラ、3ブラウリオ・レアル、9ダウ・ガサレ


■粘り腰のゴールゲッター・岡崎慎司

――ワールドカップ(W杯)の南米予選で現在3位、アルゼンチンよりも上にいるチリ代表に4-0の快勝。すごいですね。

賀川:チリ代表は南米予選を戦っているレギュラーというわけじゃないが、個人力のしっかりしたチリの選手を相手にそれぞれの局面で「負けないゾ」という意欲を見せたこと。その意志力に運動量の優位が加わって局面で余裕を生み、好パス、好シュートにつながってゴールを生んだ。

――岡崎慎司が2得点しました。キリンチャレンジカップのシリーズで、前にも岡崎の話をしていましたね。

賀川:兵庫県の滝川第二出身で、黒田和生先生の弟子だからネ。私が買っているのは、
(1)ひたむきさ
(2)大きくはないが体がしっかりしていること。特に膝と腰に粘りがある感じがすること
(3)いつもシュートを狙っているから、シュートの構えに入るのが早く、右利きだが左でも点を取れる
(4)ヘディングがうまい。ニアへ入り込んでくるときはズカズカという感じでとてもいい
(5)ヘディングが強いということは空中のボールへの自信につながり、それがロングボールの落下点での処理などで力を発揮する

――1点目も高いボールの落下点での勝負に勝ったのですよね。

賀川:中村憲剛が右後方からペナルティエリアぎりぎりのところへ、ロブ(空中に上げたボール)のパスを送り、その落下点で2人に囲まれながら見事に処理して、後方からフォローしてきた本田圭佑にパスを送り、本田がシュート。彼らしい強いボールをGKミゲル・ピントがセーブしてはじいたのを、岡崎が走り込んで右足ダイレクトでシュートで決めた。

――2点目も岡崎でした。

賀川:右サイドのカウンター攻撃で長谷部がボールを取ったときに、右外側を中澤佑二が走り上がる。長谷部からボールを受けた中澤が中央に飛び出す岡崎にパスを送り、彼がいいトラッピングをしてゴールキーパーをかわしてシュートをゴールへ送り込んだ。
 何度も言うとおり、岡崎の足腰の強さ、バランスの良さが、こういう風に相手DFラインの間を走り抜けてシュートする――私がいつも言う、走り込んでのシュート――ときに姿勢が崩れないし、また、引っ張られたり絡まれたりしてバランスが崩れかけてもそれを回復する復原力がある。かつての釜本邦茂にあったそんな“しなやかさ”と“強さ”が岡崎にもある感じだネ。


■持って生まれたキック力に経験がプラスされた本田


――本田圭佑のシュート力が生きましたね。

賀川:金沢の高校生のとき(星稜高校)から名古屋グランパスでのプロの初期にも、彼はズバ抜けた左足のシュートを持っていた。今はベテランの部に入る阿部勇樹が同世代の中で長い正確なキックで群れを抜いていたのと似ている。こちらはより攻撃的なキックだがネ。それがオランダで試合を重ねることで体が強くなり、奪いに来る相手を手で押さえ、体でカバーして左右でパスをし、ドリブルし、シュートへ持ってゆける強さをつけてきた。1点目のシュートも、左へドリブルしながら完全に叩く形に持っていったからね。

――オランダといっても2部リーグですが…

賀川:まず、常に試合に出ることだよ。伸び盛りの選手が、いくら外国のトップクラブにいても試合に出ないのなら、日本でしっかりしたコーチの下でマンツーマンの練習をした方がマシですよ。本田は試合を重ねることで身につけたプレーと自信が、この日のプレーに表れていたヨ。


【つづく】


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【Preview2】5月27~31日 日本代表 vs チリ、ベルギー代表(3)

2009/05/27(水)

本番を控え、好敵手とのドレスリハーサル
勝ちへの意欲を高め、調子を整え上げてゆくチャンス(下)



■キリンカップ、30年の歴史の意味

――そういえば、キリンカップも1978年のジャパンカップからもう30年になりますね。

賀川:78年5月に日本代表と日本選抜、それにタイ代表、韓国代表とアジアの3ヶ国代表と日本選抜、それにイングランドのコベントリー・シティ、ブラジルのパルメイラス、西ドイツのボルシア・メンヒェングラッドバッハ1FCケルンと、欧州南米のクラブチームの合計8チームが出場した。

――すごい顔ぶれですね。

賀川:日本代表の強化だけでなく、アジアの各国代表の刺激のもなって欲しいという考えもあった。4チームずつの予選リーグの各組上位2チームが準決勝、決勝へと進んだ。
 グループ1からコベントリーとケルン。グループ2からボルシアMGとパルメイラスが勝ち上がり、決勝はボルシアMGとパルメイラスが1-1でともに1位となった。欧州南米のプロの前に、アマチュアだったアジアのナショナルチームは勝てなかった――というわけだ。


■車範根もアントニーニョもバティも西野監督も

――当時の日本代表は?

賀川:77年に釜本邦茂が代表チームから引退していた。いま、ガンバの監督の西野朗がMFにいた。FWには金田喜稔(テレビ解説者)が左サイドにいたが、この年は78年W杯の年で、私には初めての南米行きだったから、大会前にブラジルの様子を見ておこうと5月23日に日本を出たものだから、5月20日にスタートしたこの第1回はほとんど見ていない。次の第2回大会には、イングランドのトットナム、スコットランドのダンディー・ユナイテッド、イタリアのフィオレンティーナ、アルゼンチンのサンロレンソといったクラブがやってきた。日本代表と日本選抜、インドネシア代表、ビルマ(現・ミャンマー)代表のアジア勢が欧州南米のプロと戦った。
 サンロレンソはカルロス・ビラルドさん(86年W杯優勝監督)が監督だった。フィオレンティーナには有名なアントニーニョがいた。もったいないことに、彼は退場処分となって、次の試合も出場できなかった。
 トットナムが優勝した。71年にトットナムが来日したときは、アプレンティス上がりで初々しかったスティーブ・ぺリマンが今度はチームの中心になっていた。彼は後にJリーグの清水の監督にもなったネ。

――トットナムには、アルゼンチンのアルディレスがいましたね。

賀川:78年W杯の後に、ビジャとアルディレスが移ってきて、当時はアルゼンチンからイングランドへ――というので大きな話題になった。アルディレスはこの大会でも活躍したし、ゴールもした。彼は日本でも有名人。Jの監督もしたネ。

――キリンカップワールドサッカーと80年に名が変わり、88年にキリンカップ・サッカーとなり、1992年から今の形になりました。

賀川:アルゼンチン代表、ウェールズ代表と日本代表の3チーム。もう日本代表もプロフェッショナルだった。そう、このときのアルゼンチンにはバティストゥータがいて、結局、彼の得点でアルゼンチンが2勝して優勝した。

――10年ひと昔と日本ではいいますが、30年といえば歴史ですね。

賀川:いまの形となった92年からでも18年ですよ。日本サッカーがいまのようになるのにどれだけ多くの人たちの世話になったか、どれだけ多くの人がかかわったかを改めて思うね。
 私が韓国の大スター、車範根(チャ・ブンクン)を初めて見たのもキリンカップだったし、後につき合いの深まるカルロス・ビラルドさんともこの大会が初対面。そう、早大在籍中の岡田武史監督の日本代表の試合もこれで見たよ。

――そんな話も、これから聞かせてもらうことにして、まず、今回は大阪と東京での日本代表の好プレーを期待しましょう。


【了】


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【Preview2】5月27~31日 日本代表 vs チリ、ベルギー代表(2)

2009/05/26(火)

本番を控え、好敵手とのドレスリハーサル
勝ちへの意欲を高め、調子を整え上げてゆくチャンス(中)



■Jとは違った個々の強さを再体験

賀川:両チームがどういう選手でどんな考えでキリンカップにやってくるのかは詳しくは分からないが、チリの代表もベルギーの代表も、まず個々の力が相当しっかりしている。そして、といって、クリスチアーノ・ロナウドマンチェスター・ユナイテッドポルトガル)といった世界のトップクラスというわけじゃない。先に、“恰好”と言ったのは、ちょうど良い相手ということ。個々の強さはあるが、とても敵わないというクラスではないハズだから、日本代表にとって、1対1の競り合いにはじまり、基本コンセプトの攻から守への切り替えの早さ、組織的な囲い込み――といった代表レベルのプレーをこの2試合で確認してできるようにしたいだろう。もちろん、試合中に実行し、勝負に勝たなければならない。

――ドレスリハーサルといっても、練習ではありませんからね。

賀川:選手たちは負けるのが嫌いだから、勝つためにいいプレーが生まれるのだからね。観客やメディアも高いレベルのパフォーマンスを期待する。ただし、うまくゆかなくても、金切り声で悲鳴を上げる必要もないけれど……

――得点力不足の解消はどうでしょう

賀川:ゴールを奪う能力を選手たちがどれだけ伸ばしたかどうか。リーグで伸ばした者もいるが……代表のやり方で、自らのチームとはまた違ったヒントを掴んだりすることもあるのだがネ。
 中村俊輔遠藤保仁らの体調や、両サイド、2DF、そしてFW、いま一人ひとりの顔を浮かべ、そうしたメンバーがまず長居でいいコンディションの試合を見せてくれることを願いたいネ。もちろん、コンディションが悪ければ、本番までに回復すればいいのだから――。繰り返すようだが、今の日本代表のサポート力は、そういう点でも安心できるレベルにいるハズだから。

――2006年のドイツでは苦い経験をしましたからね。

賀川:そういう一つひとつの積み重ねが、日本サッカー全体の力になっている。このキリンカップやキリンチャレンジカップという催しも、代表が本番前に試合をすることでケガを心配する声もあるけれど、サッカーファンにとっても、選手たちにも、こういう形で各国代表と試合できるのは大事なことだと思う。


【つづく】


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【Preview2】5月27~31日 日本代表 vs チリ、ベルギー代表(1)

2009/05/25(月)

本番を控え、好敵手とのドレスリハーサル
勝ちへの意欲を高め、調子を整え上げてゆくチャンス(上)


 日本代表の季節がやってきた。
 5月の最終週に「
キリンカップサッカー2009 ALL FOR 2010!」で、日本にチリ代表、ベルギー代表を迎えて3チームのリーグを行ない、6月に入るといよいよワールドカップ(W杯)アジア最終予選第2組の3試合を戦う。

5月27日 日本代表対チリ代表(大阪・長居スタジアム)
  29日 チリ代表対ベルギー代表(千葉・フクダ電子アリーナ)
  31日 日本代表対ベルギー代表5月(東京・国立競技場)



■経験十分の選手たちが一体になる期間

――ことしはJリーグも賑やかでずいぶん盛り上がっていますが、そのJ1は中断期に入り、日本代表のシーズンですね。

賀川:キリンカップサッカー2009は、「ALL FOR 2010」というテーマがついているように、南アフリカでの2010年W杯を目指すもの。南米、欧州の強国の代表を招いた今度の対戦も、最終予選のためのドレスリハーサルになるだろう。

――予選の3試合のスケジュールは

 6月6日 対ウズベキスタン(アウェー)
   10日 対カタール(ホーム・横浜)
   17日 対オーストラリア(アウェー)

 12日間に3試合、それも遠距離の移動が伴うから、決して楽ではありません。

賀川:そういう点からも、キリンカップにはじまる25日から約20日間での代表チームの結束は大切だろう。

――ウズベキスタン戦でいい結果を得れば、一気に楽になりますからね。

賀川:コンディションのもってゆき方とか、選手の気合の充実といった点では、いまや監督・コーチ・選手たちは経験豊富だから、あまり心配はしていない。このチームはできることとできないことがはっきりしていて、チリやベルギーという恰好の相手との試合でそれがどれくらいの度合いかが知れる。


■南米予選好調のチリ、ベルギーは苦戦中

――チリは南米予選で3位ですね。

賀川:10ヶ国の総当たりリーグ(ホーム&アウェー)の各国12試合が終わったところで、首位パラグアイ(7勝3分け2敗)2位ブラジル(5勝6分け1敗)に次いで6勝2分け4敗の3位。アルゼンチン(5勝4分け3敗)より勝点1上にいる。4位までが自動的に南米の代表となり、5位のチームが北中米カリブ海地域の4位との大陸間プレーオフで南アフリカ行きを決める。
 残り6試合で、チリはキリンカップのあと6月にパラグアイ(6日、アウェー)ボリビア(10日、ホーム)の2試合が組まれている。

――ベルギーは欧州第5組で苦戦中です。

賀川:スペインボスニア・ヘルツェゴビナトルコエストニアアルメニアと同じグループで、合計6チームのホーム&アウェー。4月1日に各チーム6試合を終えたところで、ベルギーは2勝1分け3敗で4位だから先行きは少し苦しいネ。残り4試合は9月に入ってから再開されるのだが……。

――そんな背景をもったチリとベルギーの代表チームを相手に、日本代表は何を見せてくれるのでしょうか。


【つづく】


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【Member】5月27~31日 キリン杯、6月6~17日 W杯予選

2009/05/21(木)

キリン杯、W杯予選メンバーに山田、槙野を初招集


日本サッカー協会(JFA)は21日、チリ(27日)ベルギー(31日)と対戦する「キリンカップサッカー2009 ~ALL FOR 2010~」と、ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会アジア最終予選の3試合に臨む日本代表メンバー26名を発表した。

海外組では、中村俊(セルティック)松井(サンテチエンヌ)長谷部大久保(ボルフスブルク)に加え、オランダ・2部リーグのMVPに選出された本田(フェンロ)がメンバー入り。浦和で成長著しい18歳のMF山田、広島のDF槙野は初選出、ガンバのDF山口は岡田監督指揮下では初招集となった。

チームは25日から合宿をスタートするが、中村俊は26日、香川(C大阪)は29日に合流予定。松井は6月2日にウズベキスタンでチームに加わる。

W杯アジア最終予選・グループ1の日本は、5試合を終え3勝2分けの勝点11でオーストラリアに次ぐ2位。6月6日の対ウズベキスタン、10日の対カタール、17日の対オーストラリアと3戦を残しているが、アウェーでウズベキスタン戦を下せば2位以内が確定し、4大会連続の本大会出場が決まる。

メンバーは以下のとおり。

【GK】
楢崎正剛(名古屋)都築龍太(浦和)川島永嗣(川崎F)

【DF】
中澤佑二(横浜FM)山口智(G大阪)田中マルクス闘莉王(浦和)駒野友一(磐田)
今野泰幸、長友佑都(以上、東京)槙野智章(広島)内田篤人(鹿島)

【MF】
中村俊輔(セルティック)橋本英郎、遠藤保仁(以上、G大阪)中村憲剛(川崎F)
松井大輔(サンテチエンヌ)阿部勇樹、山田直輝(以上、浦和)
長谷部誠(ボルフスブルク)本田圭佑(フェンロ)香川真司(C大阪)

【FW】
玉田圭司(名古屋)大久保嘉人(ボルフスブルク)矢野貴章(新潟)
岡崎慎司(清水)興梠慎三(鹿島)


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【Preview1】5月27~31日 日本代表 vs チリ、ベルギー代表

2009/02/27(金)

キリンカップサッカー2009 ~ALLFOR2010!~
5月27日 日本代表対チリ代表(大阪・長居スタジアム)
5月29日 チリ代表対ベルギー代表(千葉・フクダ電子アリーナ)
5月31日 日本代表対ベルギー代表5月
(東京・国立競技場)


――キリンカップのスケジュールが発表されました。3試合ともナイターで、開始時間は調整中とか。

賀川:南米のチリ、ヨーロッパのベルギーのそれぞれ代表チームを招いての3ヶ国リーグで優勝を決める。賞金総額16万ドル(約1560万円)で、優勝チームは10万ドル、2位が5万ドル、3位が1万ドルと発表されている。

――テレビ放送は第1戦がTBS系、第3戦が日本テレビ系で全国生中継。外国チーム同士の第2戦はまだ決まっていないようです。

賀川:3ヶ国対抗だから勝つことが大事だが、ワールドカップ(W杯)のアジア予選の6月シリーズ3試合を控えているから、その準備としてもとても重要ですヨ。

――6月は、対ウズベキスタン(6日、アウェー)対カタール(10日、横浜)対オーストラリア(17日、アウェー)と、相手国へ乗り込んでのアウェー戦2試合と日本で1試合。アウェーの相手はウズベクと豪州の2国ともホームで引き分けているから、この2週間は日本サポーターのテンションが上がりますね。

賀川:そういうこと――。その前に、代表チームには3月28日(土)の対バーレーンが組まれている。ここには昨年9月6日のマナマでのアウェーで勝っている(3-2)。

――しかし、ことし1月のアジアカップ予選では負けました。

賀川:バーレーンとはW杯の第3次予選でも2回試合して、アウェー(0-1)で負け、埼玉(1-0)で勝って1勝1敗だから1年間に4試合して2勝2敗。すべて1点差の接戦だった。

――3月のバーレーンの前にキリンカップをすればいいのに…。

賀川:3月7日からJリーグが開幕している。キリンカップを組み込むのは日程上ムリですヨ。
 代表選手たちはJリーグに入って体も仕上がっているだろうし、第3節からバーレーン戦までの1週間でまとめ上げられるだろう。埼玉の入場券は完売したというから、ファンの期待も大きい。

――3月の試合は別に話し合うとして、この5月のチリ、ベルギーを相手にするのは…

賀川:昨年のキリンカップはアフリカからコートジボワール、南米からパラグアイが来日した。その次の週からこのW杯アジア第3次予選の4試合があった。その4試合を3勝1分けにして、3次予選を突破して、いまの最終予選へ進出したのだから、昨年のキリンカップの2試合は予選の準備としても役立っていたといえるだろう。

――チリやベルギーのサッカーのスタイルや代表チームについては、次に聞かせてもらうことにして。ことしもいい結果を期待しましょう。


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2月4日 日本代表 vs フィンランド代表

2009/02/07(土)

仮想オーストラリアというには力不足の相手だが、収穫はいろいろ。
ゴールを楽しみ、若手の進歩を喜び、あわせて本番の不安も感じた90分。ごくろうさま、森と湖の国の選手たち



キリンチャレンジカップ2009~ALLFOR2010!~
2月4日(東京・国立競技場)19:20
日本代表 5(3-0 2-1)1 フィンランド代表
得点者:岡崎(日 15、32分)香川(日 44分)ポロカラ(フ 50分)中澤(日 57分)安田(日 86分)

【日本代表メンバー】
GK: 18都築龍太
DF: 22中澤佑二(Cap.)4田中マルクス闘莉王→24高木和道(55分)15長友佑都、6内田篤人→3駒野友一(72分)
MF: 27橋本英郎、7遠藤保仁→5今野泰幸(77分)14中村憲剛、29香川真司→21安田理大(81分)
FW: 11玉田圭司→12巻誠一郎(84分)33岡崎慎司
SUB:23川島永嗣、26菅野孝憲、2寺田周平、9田中達也

【フィンランド代表メンバー】
GK: 1トミ・マーノヤ
DF: 5マルクス・ハルスティ、14トニ・クイバスト、2ヨニ・アホ、15トゥオモ・トゥルネン→16ユッカ・ライタラ(55分)
MF: 17ティム・スパルフ、20ロニ・ポロカラ、21カリ・アルキブオ→11ペルパリム・ヘテマイ(85分)6ユッシ・クヤラ→8メフメト・ヘテマイ(45分)
FW: 10ヤリ・リトマネン(Cap.)→18テーム・プッキ(68分)9ニクラス・タルバヤルビ→19ヤルノ・パリッカ(77分)
SUB:12ヘンリ・シランパー、4ヨナス・ポルティン、3トゥオモ・ケネーネン、13サミ・レハメーネン、7ミカ・オヤラ

――5-1の大勝、いい気分ですね。もっとも、フィンランド代表が仮想オーストラリアというにはちょっと弱すぎて、2月11日に向けてあまり効果的でなかろうという声もあります。

賀川:とても良かったと思う。強敵との本番を1週間後に控えている岡田武史監督にすれば、“とても”とは言えず慎重な言い方だったが、選手たちにも収穫があり、ファン、サポーターにも見どころが多かった試合ですヨ。

――岡崎慎司が2ゴールしたことも、“よかった”の一つですね。前回のお話で、フィンランド戦での彼の得点を期待していました。

賀川:滝川二高出身、黒田和生先生の教え子だからネ。田中達也や玉田圭司のような際立った早さはともかく、よく走れて、その上に体に粘りがあって反転のときに崩れない。右も左も蹴れる。173センチと小型の方だが、ジャンプのタイミングもいいし、ヘディングもできる。点を取るためにどこへ走り込むかをいつも狙っているところがいいので、まわりの仲間と意思が通じるようになればゴールを奪うか、ゴールにからむようになると眺めていた。
 相手のディフェンダーが一流というわけではなかったから、などという言い方もできるけれど、やはり狙ったところへ動き、そこへボールが来て、それをシュートしてゴールする――という経験を代表で積んでゆけるのがいい。

――相手DFのウラへ簡単に入れましたね。

賀川:岡崎はこの2得点で自信を持っただろう。自信を持てば、シュートの練習にももっと力が入るだろう。ただし、岡崎のゴールを含めてこの日の日本の攻撃全体がアジアカップの2試合――対イエメン(2-1)対バーレーン(0-1)とまったく違っていたことが重要だと思う。

――メンバーとしては、ディフェンスの中央が中澤佑二と闘莉王がそろったこと。GKは故障の楢崎正剛や川口能活に代わって新しい3人が入ったこと。それにガンバの2人がボランチをしましたね。

賀川:闘莉王のコンディションは万全とはいえなかったにしても、ピッチの上で試すことができた。一番大きかったのは、遠藤保仁と橋本英郎の2人が入ったことで、1月のアジアカップ予選2試合の展開に比べて攻めに緩急の変化がついたこと。遠藤はその攻めのタイミングの変化のうまさでは歴史的に見ても日本では第一級だから、両サイドの内田篤人や長友佑都がイキイキとプレーをしたのはもちろん、対バーレーン戦の反省もあってのことだろうが、何といってもガンバ組のところでタメをつくってくれるのだから――。

――ちょっと難しい理屈のように聞こえますが。

賀川:日本のサッカーは昔から“早さ”が信条なんです。兵法でも「兵は巧遅より拙速を尊ぶ」などと言っている。家のなかでもお母さんはたいてい子どもたちを「早く早く」と急きたてて学校へ送り出し、電車の駅ではすぐに乗りなさいと急がされる。日常もそうだし、サッカーもそうだが、戦争だって相手の準備ができていなければ拙速(せっそく)――マズくても早い攻めの方がいい場合があるが、相手が準備して待ち構えているときには充分にこちらも準備しなければならない。

――アジアカップの予選2試合は、相手が引いて守っているところへ、拙速でいったということ?

賀川:サッカーは同じ人数で、ピッチの広さも決まっていて、グラウンドの外から攻めることはできないし、ゴールの後方から攻めることもできない。となると大切なのはタイミング、“いつ”ということになる。

――岡崎のゴールでも、それがありましたか?

賀川:15分の1点目はその少し前に右サイドで小さなパス交換があったが、そこから突破しないで後方へ、そして左へとボールを動かし、今度は闘莉王が左寄りから(1)右へ長いボールを送ってきた。(2)右タッチ際で内田が受けて、(3)遠藤に渡した。(4)遠藤はそれをダイレクトで、もう一度内田へ戻し、自分はスタスタと右前へ出た。(5)そのとき、相手ゴールエリア外、中央やや右寄りにいた岡崎が右前へスタートした。(6)内田はそれに合わせて高いボールを蹴り、(7)そのボールの落下点へ岡崎が走って、(8)ゴールエリア近くで左足ボレーでシュートしてニアポスト際へ決めた。

――遠藤がからんだところがミソ?

賀川:左から右へ、長いパスが来た。長いボールだから当然、相手はその行方を見ている。それを受けた内田が、自分がハーフラインから直接前線のFWへパスを出すのでなく、小さく遠藤に渡したのがまず第1点。その遠藤がさり気なくまた内田に戻して、自分はすぐ動いたのが第2。相手側のプレーヤーの視線はボールの動きと、遠藤の動きに集中する。岡崎をマークしていたCDFもそうだった。その瞬間(そのDFの目が内田と遠藤に向けられたときに)に岡崎は走り出した(いわゆる動き出し)。並んでいる彼に先に動かれ、一瞬遅れたDFのコースへ入るように岡崎が走って、左足でシュートを決めた――ということになる。
 遠藤との小さなパスのやり取りが小さなタメとなり、岡崎のスタートのチャンス――それも相手の視野の外で――をつくったことになるだろう。

――ふーむ。

賀川:相手の中盤のプレッシングが強いときに、こうした“無駄に見えるパスのやり取り”は潰されることもあり、それを嫌うコーチもいる。それはそれとして、攻め急ぎでイエメンやバーレーン相手に苦しい試合を経験したメンバーにとって、あらためてタメの必要なこと、遠藤、橋本のガンバコンビによるボールの動かしを理解できたと思う。

――その通りやっていいかは別として、でしょう。

賀川:プレーヤーにはそれぞれのやり方があっていい。しかし“押してダメなら引いてみよ”の歌にもあるとおり、一つだけではちょっと強い相手を攻略するのは難しいからね。日本代表の特色のランプレーを成功させるには、強さと、こうした間(ま)が必要なのだから……。

――海外組はそれができる?

賀川:まぁ、人によるだろう。中村俊輔はそれの達人だし、あの得意のクロスでも、ファーポスト側に合わせるのかニアで合わせるのかライナーにするのか上げて落とすボールにするのか、その時々に判断して実行している。

――内田はこの日、CKから中澤佑二のヘディングシュート成功のクロスを蹴りましたね。

賀川:後半、相手に1点を返され3-1になったのが50分。その7分後の得点で4-1にした。この右CKは遠藤がキッカーで、ショートコーナーにして後方やや内側の内田に渡したところが面白かった。

――というのは?

賀川:この日、遠藤は流れのなかで何回かロングパスを蹴っていた。小さなつなぎで一方のサイドに相手側をひきつけ、逆に振る、攻めの一つのやり方だが、その遠藤がキッカーだから、直接ファーポスト側へボールが来ることも相手は考える。ところが彼は中澤がいるのを見て、自分が直接そこへボールを送りこまずに内田に渡して、内田にクロスキックさせた。距離の問題と、ボールがサイドで動くことで相手DFの目がいったん動くボールに注がれる。その間に中澤が位置をずらしてもマーク相手は気付くのが一瞬遅れてしまうことになる。

――そういうことですか。

賀川:このやり方は、これまでに俊輔と遠藤のコンビで何度か成功していますヨ。

――若い内田がそういう仲間に入れるようになったと言うのは早すぎますかね。

賀川:こうして、若い選手が重要な場面にからんでゆくことで個人の進歩も、チーム全体も向上するわけです。CKの場面を取り上げたけれど、岡田監督になって新しく加わってきた19~22歳の若手――オリンピック世代ともいえる――が伸びてきている。27~30歳の多い代表チームに若い力が入ってくるのはとても良いことですよ。それがまた今野泰幸や駒野友一、巻誠一郎、田中達也といった中堅組の励みにもなるだろうしね。

――香川真司も点を取りました。

賀川:ここのところ、ちょっと伸び悩みかな。プレーヤーが伸びるのは階段状だから…。
 それにしても、相手のバックパスだったか、ボールを拾って小さなバウンドを利用して左足で浮かせて抜いて出て、そのあと左へかわして左足シュートをしたのだから、図々しいプレーができるネ。

――相手が下手だからできたと?

賀川:香川自身は相手を上から見ていた感じだね。しかしフィンランドだって前半の2つのチャンスで点を取っていたら、そんなに見下すことができる相手ではない。あの6分のユッシ・クヤラのシュートは、闘莉王が背後にいながらいったん間合をあけて、そのあと競りに行ってシュートされている。誰かがこぼれ球に行っていたら…というところだ。
 27分のティム・スパルフの左足のボレーがバーに当たって観衆はヒヤリとした。21歳の194センチ――。背が高いということは膝の位置が高いので、日本人には無理な高さのボールをボレーで叩いて、それをバーの高さに押さえるのだからネ。

――全体としては?

賀川:遠い北欧から試合に来てくれた彼らのおかげで、本番の一週間前にともかくリハーサルできたプレーヤーもあり、自らの上達を確認したものもありで、結果は良かっただろう。GK都築龍太が相手のノッポと競って叩いたボールが遠くへ飛ばなかったことも、分かったのだから良かったじゃない。
 そうそう、試合後の記者会見でフィンランドのスチュアート・バクスター監督(広島と神戸で監督をした)が、ヴィッセル神戸のサポーターがスタンドからバクスターに拍手をしてくれてとても嬉しかった、有難う――と言っていた。

――こういうサッカー人のつきあいは大事にしたいところです。

賀川:どんな試合をしても、そこで得たものをプラスにして次の試合に結びつけるかどうかは選手自身だからね。オーストラリアが相手といっても、自分たちがJや海外のリーグで培ったものを、チームにしてぶつけるだけ。俊輔をはじめ海外組が合流してからいいコンディションのチームに仕上げてほしい。

――オーストラリア戦は勝てますかね?

賀川:ワールドカップの本番で上位を目指すには、いまの日本代表はまだ、必要なポジションプレーのできる人材が少し不足している。しかし、アジア予選を突破できる力はあるだろう。オーストラリアとは、互いに勝っても負けても不思議でないライバル。こういう相手と戦えることは選手たちにはとても幸福なことだろう。
 フィンランド戦で、ちょっぴりニガ味を味わいながらいい勝ち方で盛り上がったのだから、大いに期待したいね。勝とうという意地の強さを見たい。


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【Preview】2月4日 日本代表 vs フィンランド代表

2009/02/02(月)

0901301
(写真1)フィンランド対ハンガリー戦のプログラム。
フィンランド語で書かれた表紙のSUOMIはフィンランド、UNKARIはハンガリーのこと



対オーストラリア戦を前に、大型プレーヤー相手にみたい気迫とひたむきさ

キリンチャレンジカップ2009 ALL FOR 2010!
2月4日19時20分キックオフ(東京・国立競技場)
日本代表 対 フィンランド代表



――2月4日にキリンチャレンジカップの日本代表対フィンランド代表が国立競技場で行なわれます。1週間後のFIFAワールドカップ(W杯)2010アジア最終予選、第3戦の対オーストラリア(横浜)に備えてのもの。とても楽しみです。

賀川:日本代表は1月にアジアカップの予選を2試合しました。20日熊本での対イエメンは2-1で勝ち、28日(現地時間)マナマでの対バーレーンは0-1で負けました。

――この試合はアジアカップ・カタール大会(2011)に向けての最終予選で、19ヶ国が5組に分かれて展開中です。ホーム&アウェーで戦い、各組の上位2チームが本大会に進みます。日本はイエメン、バーレーン、香港とともにA組に入っていますね。
 W杯に向かう日本代表の骨組みはほぼ決まっていますが、岡田監督はこのアジアカップ予選の1月の2試合で新しい代表レギュラー候補の台頭を期待したのでしょう。

賀川:勝てば、出場したメンバーも自信をつけただろう。ホームでのイエメン戦はともかくも勝ったが、アウェーのバーレーン戦は無得点で負けた。

――先制され、引いて守られると崩せなかったというパターンだったらしいですね。

賀川:中村俊輔や遠藤保仁がいなくても引いて守る相手を崩せれば一つの成果だが、そうはゆかなかった。日本とバーレーンは昨年3試合して2勝1敗(3月26日 アウェーでのW杯3次予選 ●0-1、6月22日 ホームでのW杯3次予選 ○1-0、9月6日 アウェーでのW杯最終予選 ○3-2)の成績だが、勝った試合は中村と遠藤の2人がいた。日本のやり方をよく知っているバーレーンのような相手に対しては、経験ある彼らの臨機応変の判断と正確なキックが必要なのだろう。
 今年の対バーレーン、アウェーでの敗戦は、私はそう深刻には受け止めていない。むしろ、戦った選手たちが、自分たちだけで勝つには何が必要かを工夫するきっかけになると思っている。

――さて、対オーストラリア戦を控えての対フィンランドでは何を期待しますか?

賀川:オーストラリアの選手はヨーロッパ系が多く、アジア各国の中では体格の良いことで知られている。英国の植民地であった関係から、本国の上流社会への憧れもあって伝統的にラグビーやテニスが盛んだった。第2次大戦後に東欧からの移民の激増によってサッカーが浸透し、プロのリーグもあり、欧州へ選手を輸出するようになった。
 もともとスポーツ好き。陸上競技や水泳などでもトップクラスを輩出してきたところだから、サッカーが根をおろせばいいプレーヤーが出ても当然。したがって、かつての力強さだけでなく“上手”で強いプレーヤーも出てきている。
 2006年ドイツでのW杯第1戦で日本が終了間際に3点を奪われたのは当時の日本選手のコンディショニングの失敗もあったが、相手が体力だけでなく技術もしっかりしていたからだろう。

――プレミアリーグのエバートンで、ケーヒルという選手が活躍しています。

賀川:オーストラリアの選手については別の機会にしたいが、プレミアリーグのテレビ放送を見ても、彼のヘディングの能力は素晴らしい。オーストラリアの選手としては大きい方ではない(178cm)が、しなやかで足元もいいし、何よりマークを外して消えておいて出てくるといういいストライカーの特性を備えている。

――フィンランドは大柄なのですか?

賀川:この国の人たちはアジア系のフィン族だから、北欧のスウェーデン、ノルウェー、デンマークなどの北方ゲルマンとは人種的にちょっと違っているが、体格となると大男はたくさんいる。発表された来日メンバーを見ても、2人のGKが196cmと189cmは当然としても、DF8人のうち183㎝以上が4人、MFにも183㎝以上が4人(うち一人は194㎝)。FWにもオランダでプレーするニクラス・タルバヤルビの187㎝がいる。

――欧州のW杯予選でドイツと引き分けたとか。

賀川:欧州第4組で、ドイツと同じグループで3試合をして、9月にホームでドイツに3-3、10月にホームでアゼルバイジャンに1-0、その後のロシアとのアウェーは0-3で負けている(1勝1分け1敗)。3月にはウェールズとの対戦を予定している。

――フィンランドは2006年のキリンチャレンジカップでも来日していますね。

賀川:2月18日だったか、日本は当時すでにW杯ドイツ大会の予選を突破していた。フィンランドは欧州第1組の予選4位で敗退したあとだった。チームの勢いの差がそのまま出て日本が2-0で勝った。
 今度はチーム全体の士気も高いだろうし、監督のスチュアート・バクスターはサンフレッチェ広島やヴィッセル神戸で監督も務めた日本通でもある。スウェーデンリーグ(5人)ギリシャ(2)オランダ(1)スペイン(1)ノルウェー(2)と各国リーグで働いているプレーヤーが主力だ。
 私が注目したいのは、18歳の若いテーム・プッキ。スペインのセビリアにいるとのこと。172cmと小柄な方だが、北欧の大型選手の多い国から現れる小兵選手には目を見張る逸材が出ることがある。ひょっとしたら……と期待している。
 もう一人、大ベテランのヤリ・リトマネン(37歳)が加わっているのも注目。オランダのアヤックスとイングランドのリバプールで活躍した選手だから、日本のサッカー通にはよく知られているハズ。彼らにとっても、日本代表にとっても、いい試合になると期待している。

――日本代表の欧州組はこの試合に出場しないのですね。

賀川:スケジュールの都合でね。中村俊輔は少し早めに戻ってくるが、これには出ないだろう。したがって、俊輔のパスからのゴールといった場面はこの試合ではないだろうが、そうした点よりも、

(1)選手たちが久しぶりに、体が大きく強い欧州勢を相手に積極的なプレーをして、その感覚をつかむこと
(2)もちろん、彼らがこれまで培ってきた、速い動きでの組織的なボール奪取やボールの動かし方などのいいリハーサルでもある
(3)また守りでは長身者の多い相手のFKやCKなどのセットプレーも大切だ

 日本代表は長い歴史の上で岡田監督になって初めて、中澤佑二(187cm)闘莉王(185cm)という長身の2人のCDFを置けるようになった(この条件を備えていなかった2006年のドイツ大会では、オーストラリアにしてやられた)。今度は控えに高木和道(188cm)寺田周平(189cm)も加わっているが、世界の大型化はさらに進んでいる。フィンランド戦はこれも見どころだろう。
 さらに今回はGKの顔触れが変わった。GKとDFの連係もみたいところだ。

――攻撃面では?

賀川:田中達也や玉田圭司、岡崎慎司、巻誠一郎(彼の長身とヘディングは守りのセットプレーでも働くだろうが……)たちは徐々に良くなっている。新しい岡崎は、代表チームでゴール前に入ってくるのは良くなっている。あとは、ちょっとしたタイミングの修正だろう。香川真司も同様だ。
 中澤、闘莉王で中央の守りが安定すれば、欧州組がいなくてもとても面白いフィンランド戦になると思っている。


0902022
(写真2)中面の見開きページは両チームのイレブン。
配列(フォーメーション)は戦前からの習慣の2FB、3HB、5FWで記されている。
左がフィンランド、右がハンガリーチーム



――フィンランドについてはどうですか?

賀川:森と湖が美しいが、同時に北の厳しい自然の中で暮らすこの国の人たちは逞しい体と強い心を持ち、戦前のオリンピックでは陸上長距離のヒーローを生んだ。私が小学6年のときの1936年ベルリン・オリンピックの選手、1万メートルでの村社講平(むらこそ・こうへい)選手の活躍は今も語られるが、そのときの相手となったのもフィンランドの選手たちだった。

――フィンランドのサッカーについては?

賀川:何といっても忘れられないのはこの国の首都ヘルシンキで開催された1952年のオリンピック大会。1945年に太平洋戦争が終わり、48年のロンドン・オリンピックには日本とドイツは戦争を起こした国として招かれず、4年後のヘルシンキのときに参加を許された。ただし、日本サッカーはまだJOC内での力がなく参加できず、竹腰重丸(たけのこし・しげまる)さん(故人)が視察に派遣されただけだった。
 私は当時、産経新聞の記者で、大会には木村象雷(きむら・しょうらい=故人)という先輩が特派員で出かけたのだが、木村さんは帰国後に私にお土産品――大会直前に行なわれたフィンランド対ハンガリー戦の小さなプログラム(写真1)をくれた。
 ハンガリーはこの試合のあとヘルシンキ大会で優勝し、次の年、53年にはウェンブリーでイングランド代表を6-3で破って“マイティ・マジャール(偉大なハンガリー人)”といわれたのだが、そのハンガリーとフィンランドとの試合のプログラムだった。プログラムに書かれたフェレンツ・プスカシュやナーンドル・ヒデクチ、シャーンドル・コチシュなどのワールドクラスのプレーヤーについて、私はそのあと何度も記事に書くことになったのだが、初めてこのプログラムで全メンバーを見たときの感激は今も覚えている(写真2)。
 この試合は6-1でハンガリーが勝つのだが、「フィンランドが1ゴールを返したときの、満員のスタンドの観客の興奮はすごかった。私のすぐ近くの女性は涙を流していたからね」と私に語った木村特派員の言葉は長く心に残った。私がヨーロッパのサッカーに目を向けるようになったのは、この言葉とプログラムがきっかけのひとつだった。


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11月13日 日本代表 vs シリア代表

2008/11/18(火)

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シリア戦のマッチデープログラム
表紙のデザインは大会公式ポスターと同じ。
ポスターの方には選手ごとに切り取り線が入っていて、選手カードとしても活用できるようになっていた。



レギュラーがそろわなくても、一歩ずつの進歩。

輝いた左サイド長友のドリブルシュート


キリンチャレンジカップ2008 ~ ALL FOR 2010! ~
11月13日(兵庫・ホームズスタジアム神戸)19:22
日本代表 3(2-0 1-1)1 シリア代表
得点者:長友(日 3分)玉田(日 26分)大久保(日 62分)M.アルジノ(シ 78分)

【日本代表メンバー】
GK: 1川口能活(Cap.)
DF: 2寺田周平→5今野泰幸(46分)4田中マルクス闘莉王→21高木和道(56分)6阿部勇樹、15長友佑都、20内田篤人→3駒野友一(78分)
MF: 13中村憲剛
FW: 11玉田圭司→9佐藤寿人(46分)16大久保嘉人→12巻誠一郎(68分)19田中達也→8香川真司(46分)13岡崎慎司
SUB:18都築龍太、23川島永嗣

【シリア代表メンバー】
GK: 1ムサブ・バルフス→16モハメド・レドワン・アルアズハル(65分)
DF: 13アーテフ・ジェニアト→18アブドゥル・ファタハ・アルアガ(81分)17アブドルカデル・ダッカ、3アリ・ディアブ、5フェラス・イスマイル→8マハムード・アルアミナ(51分)
MF: 14 ワエル・アヤン、11アデル・アブドゥラ
FW: 10ジアド・シャポ→24モハマド・アルジノ(46分)12ラジャ・ラフェ、19ヤヒア・アルラシド→23ハムゼ・アルエイトゥニ(46分)9マヘル・アルサイド(Cap.)→2ブルハン・サヒユニ(63分)
SUB:6バセル・アルシャール、7アハマド・ディーブ

 久しぶりの神戸での試合なので、プレス席でなく兵庫協会の招待席で観戦することにした。試合のあとさきにレセプションルームで古い神戸のサッカー仲間に会えるだろうと考えたからである。代表の試合が久しぶりということもあって、ずいぶん多くの旧友と顔を合わせることができた。70歳をこえてまだボールを蹴っていますという人も少なくなかった。
 かつてウィークデーの国際試合でナイターとなれば、この国では国立競技場以外に照明設備のあるスタジアムは神戸御崎(この日の会場、ホームズスタジアムの前身)だけだったから、神戸のサッカー好きは代表を声援するとともに相手をしてくれたペレやベッケンバウアー、ヨハン・クライフ、エウゼビオといった、時代のスーパースターをナマで見ることができたのだが……。
 ジャパンブルーを着て声援し、試合のあと代表チームのバスを見送ろうと集まる若者たちを見ながら、あらためて日本サッカーの大変化と、その中でキリンチャレンジカップの地方での試合の果たす役割の大きさを思った。

 近ごろ、サッカーはすでに野球と並ぶ国民スポーツとなったと思っている人もいるようだが、野球という、手でボールを扱う遊びが盛んになってしまった国(あるいは地域)で、日本ほどサッカーが盛んになったところはないことを知れば、これまで続けてきた先人達の普及への努力を、今も手を抜いてはならないとの思いを強くする。
 その意味で、若年層への働きかけはますます大事になる。この日の試合前のセレモニーで「なでしこ」のメンバーであるTASAKIペルーレFCの池田浩美、大谷未央、下小鶴綾の3選手と小学生26人が君が代を歌ったのはまことに素晴らしかった。

 もちろん、この試合の目的は普及面だけでなくワールドカップ・アジア最終予選の対カタール(19日、カタール)への準備という目的があった。そちらの方はどうだったか――。

 率直にいって、ドレス・リハーサルという意味で満足のゆくものであったかどうか――中村俊輔をはじめとする欧州組(カタールで合流)と、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)の決勝で勝ったばかりのガンバ大阪勢は不在。GK楢崎正剛、DF中澤佑二は故障で欠場した。レギュラーからこれだけ抜ければ、本番用の演習は難しいだろう。ただし、玉田圭司、大久保嘉人、田中達也、岡崎慎司のスターティング・ラインアップをFWと書き込んで演じた4人の攻め込みは、ときにいいパス交換による突破もあり、選手たちの間に少しずつ共通のアイデアが出来上がっている感じが見えた。
 中村憲剛はこの日の中盤での主役として左右にボールを散らし、ときおりのDFラインの裏への走り込みなどに彼らしいプレーを見せた。
 CDF中澤の穴は、前半は寺田周平(33歳、189cm)が務めた。後半に闘莉王に代わった高木和道(27歳、188cm)ともども、日本のセンターDFは長身者を揃えられることを示した。ただし、守備動作については日本DF陣の共通の問題もあるようで、経験ある中澤が不在だったときにどこまで補えるかは、この日だけでは見えていない。

 岡田武史監督となってから、右と左のサイドDFに起用されている内田篤人と長友佑都は、この日もスタートから起用された。左サイドの長友が、この日最も輝いた。
 前半3分に相手のCDFから右サイドへのパスをインターセプトして、ハーフラインからドリブルで持ち上がり、中へ切れ込んで右足シュートをゴール左下に決めた。ドリブル開始のハーフライン、シュートの位置はペナルティエリア中央すぐ外だった。
 インターセプトして左へ流れそこから右斜めへ持ち上がって、奪いにきたヤヒア・アルラシドをかわし、そのあとのスペースを右斜めにドリブルしてエリア中央すぐ外から右足で叩いた――そのコースの取り方、右足アウトサイドでのボールタッチのうまさは、惚れ惚れするほどだった。

 86年生まれの長友と、88年生まれの内田の2人の若いサイドDFの起用は、代表の新しい魅力。2人のクロスの精度をはじめとして不満な点はまだまだ多いが、サイド攻撃の担い手としてはここしばらくの日本代表のなかで最もいい素材であることは多くが認めるところだろう。
 まず第一に、長友も内田もドリブルができる。ドリブルで相手をかわせる自信があるから、ボールを受けたとき相手が前にいても落ち着いていられる――そして、相当なスピードがある――という、このポジションの基本的条件を備えている。

 古くはサイド攻撃を担うプレーヤーをウイングと呼んだ。そのウイングの攻めでの大きな仕事は(1)サイドからゴール前へのいいパス(クロスパス)を送ること(2)自らシュート地点へ入ってシュートを決める(3)サイドでキープして相手の動きを分散させ、また、味方に攻めで(守りでも)ひと呼吸の間をもたせる――というところだが、これまで残念ながら、自らゴールしようという姿勢を見せる者は(駒野友一は別としても)少なかった。

 ブラジルのロベルト・カルロス。あの小柄な左利きのサイドDFも、シュートの強さで知られていた。98年フランス代表の左サイドのビセンテ・リザラズも2006年ドイツ代表のフィリップ・ラームも小柄な左サイドで、左からのクロスだけでなく持ち込んでのシュートでも相手の脅威となった。
 日本では、68年メキシコ五輪銅メダルチームの左FW杉山隆一は、メキシコではパサーに徹したが、左サイドから中へ持ち込んでの右足シュートは日本代表と三菱重工の武器だった。日本代表で国際試合で最初にハットトリックを演じたのは1930年の対フィリピン戦での若林竹雄さん(東大)だが、私より17歳上のこの先輩は左ウイングのポジションから内へ入って右足のシュートを度々決めて“天才”といわれていた。
 いいチームにはいいサイド攻撃の選手、それも自ら点を取れるプレーヤーがいることは古今東西、明らかなこと――それがようやく、今の日本代表にも現れてきたといえる。

 この日の日本のゴールはこの長友の先制にはじまり、26分、中村憲剛が右斜め後方からのDFラインの裏へ送ったクロスに玉田がノーマークで合わせたもの。中村にボールが回る前に岡崎慎司と田中達也が絡み、中央からいったん右サイドへ出たボールを内田が後方の中村へ戻したもの。いわば4人のFWと右サイドの内田との連動で生まれたチャンスだった。

 3点目は後半17分(62分)に左の長友から大久保嘉人へ、そこから佐藤寿人(後半に玉田と交代)を経由してもう一度左の長友へ。長友が内の大久保にパスして、大久保が右足シュートを決めたもの。相手DFの寄せを見て、トウ(つま先)で蹴ったシュートのタイミングがよく、それが相手側に当たってコースが変わり、GKムサブ・バルフスには取れないボールとなった。

 後半の4人のFWは、田中達也に代わって香川真司も出場した。巻誠一郎も68分に大久保と交代し、また、駒野が内田と(78分)、今野が玉田と代わる(ハーフタイムから)など、国内メンバーの総出演となった。
 ドレス・リハーサルとゆかなくとも、この機会に選手たちの状況を見られたのは結構なことだった。田中達也のすごいスピードでの相手ボールへの寄せと奪取をはじめ、奪われれば奪い返すというこのチームの共通姿勢が生きていること、4人FWにつなぎの工夫の跡のあったことは、長友のドリブルシュートとともに、代表全体の底上げと見てよさそうだ。ただし後半には相手が前がかりになったのに対し、香川がDFラインの裏へ飛び出し、そこへスルーパスを送るプレーが再三あった。こういう形のチャンスがなぜゴールにならないのかを、つくり方そのものから考えることが大切だろう。

 シリアが予想していたより手応えがなかったという声もあるが、こういう時期にそこそこの試合経験を積み、それが個にもチーム全体にも少しでもプラスになっていると考えることが重要だろう。長友が進歩の跡を披露したといっても、何十年も前にあったプレーが再現されたといって喜ぶ――その程度のところに私たちはいることを思えば、少しずつの進歩を大切にしたい。

 さて本番、気候・風土の違うアウェーでの戦いである。選手たちの頑張りを祈りつつ、テレビ前で応援しよう。


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10月9日 日本代表 vs UAE代表

2008/10/09(木)

快速突破、反転、切り返し…新代表の個性に瞠目

 シュート、キックの精度は日本全体の問題


キリンチャレンジカップ2008 ~ ALL FOR 2010! ~
10月9日(新潟・東北電力ビッグスワンスタジアム)19:24
日本代表 1(0-0 1-1)1 UAE代表
得点者:香川(日 72分)アルハマディ(U 77分)

【日本代表メンバー】
GK: 18楢崎正剛
DF: 2 寺田周平→15高木和道(46分)22中澤佑二(Cap.)27長友佑都、25内田篤人
MF: 10中村俊輔→26香川真司(70分)8稲本潤一→14中村憲剛(65分)17長谷部誠
FW: 11 玉田圭司→13興梠慎三(57分)16大久保嘉人→9佐藤寿人(82分)24岡崎慎司→12巻誠一郎(82分)
SUB:1川口能活、23川島永嗣、3駒野友一、28森重真人、21青木剛、5今野泰幸、20森島康仁

【UAE代表メンバー】
GK: 1ナセル
DF: 8ハイダル・アリ、14サイード、5ジュマ、18マララー→21オスマン(46分)3メスマーリ
MF: 16イブライム(Cap.)→9ナワフ・ムバラク(64分)6ジャベル、20アメール・ムバラク
FW: 10マタル、7アルシェヒ→15アルハマディ(74分)
SUB:22ラビー、12アルタウィラ、19ハサン、17アッバス、4ファエズ、13アハメド・ムバラク(ダダ)2モアダド、11モハメド

――たくさんチャンスはあったけれど、結局は1-1。今度のキリンチャレンジカップの収穫は?

賀川:興梠慎三(こうろき・しんぞう)だろうね。それに岡崎慎司も良かった。

――香川真司も19歳で点を取った。戦後では史上3番目の若さだそうだが…

賀川:香川は、まあ、あのシュートの位置へ出ていったことを誉めるべきだろう。この右足シュートでの得点のあと、胸でのトラッピングからの右のボレーシュートはバー越え、また、ヘディングも右外へはずしている。本人もまだまだと思っているだろう。代表初ゴールは記録や記念にはなるが…。

――興梠のスピードと反転を前から買っていた?

賀川:この試合で、日本代表にもペナルティエリア内で反転するプレーヤーが出てきたなと思わずニンマリした。
反転といえば1970年ワールドカップ得点王のゲルト・ミュラー(西ドイツ)が有名で、74年大会の西ドイツ対オランダの歴史に残る決勝ゴールも一種の反転シュートだった。

――すごい!! ゲルト・ミュラーと比べるのか?

賀川:身長は同じ175cmで、ミュラーはドイツ人としては背は低い方だがガッシリとして、腰が安定していた。それが、高速ダッシュのあとの反転の基盤だった。
興梠は175cm、ガッシリしたところはよく似ている。スタートダッシュの早さがいまの日本選手のなかでも際立っている。

――反転の効果は?

賀川:シュートチャンス、あるいは突破のチャンスに、「いまはダメ」ということになることもある。そのときにターンして、そこからシュートあるいは突破、またはパスなど選択ができる。ペナルティエリア内でこういう反転プレーが入ると(シュートチャンスを逸することもあるが)、相手はファウルが怖いし、仲間にとってはいいポジションを取るための間(ま)が生まれることになって、パスを受けやすくなり、シュートのリバウンドにも対応できる。

――そういえば香川のゴールも中央の興梠のファーサイド(左側)に香川が入っていってシュートした。

賀川:後半27分のこのゴールは、右サイドで大久保、内田のパスのやり取りから大久保が左足でクロスを送り、相手DFの2人の間のスペースに入った興梠がヘディングした。ボールはバーに当たってはね返った。それを内田が拾ってゴールライン近くまで持ち込み、中へグラウンダーのクロスパスを送り込む。ニアサイドの興梠の後方を通り中央へボールが出てきたところに香川がいた。いわば2段攻撃となって香川はノーマークだった。

――彼には、何かの対談のときに点を取れと言ったとか?

賀川:もともといいパスを出して攻撃を組み立てて、ゴールが決まったときに「どうだ、僕のパスを見てくれたか――」というような気持ちを持つ方だったそうだが、いいパスを出し、そのあとシュートポジションへ走り込むことをもっとやって欲しいと話した。それが効いたのかどうかは別にして、自分が決めることでまたプレー・メークも上達するハズだ。

――岡崎は?

賀川:岡田武史監督が岡崎をスタートから出したのは、彼の実践的なところを確かめたかったのだろう。キックオフ早々に相手のMFのドリブルに絡んでボールを奪い、そのパスを受けた玉田が倒されてFKを取ることができた。俊輔のこのFKはグラウンダーを左ポスト側へ蹴って、GKナセルが防いだ(俊輔はもう1本後半のFKを右上へ蹴って、やはりGKが防いだ)。
この相手ボール奪取にも見られるように、岡崎は絡んでも絡まれても粘り強いのと、ランが途切れない。前半にエリア内右寄りでタテに走って俊輔からのパスを受けて反転して、左足シュートをした。失敗はしたが、走った勢いで右足ダイレクトシュートかと思ったのに切り返して左足に持っていった。成功はしなかったが、これがやれるというのは興梠のスピード、そのあとのターンとはまた別の形のランと反転ができるということ。いわばそういう粘っこさがあるということだ。

――玉田圭司や大久保嘉人とはまた別の……

賀川:玉田は173cm、大久保は170cm、岡崎173cm、興梠175cm――と、佐藤寿人(170cm)を含めていわゆる大型FWではないが、玉田も大久保もスピードが一つの持ち味で、新しい2人はそれに反転と粘っこさが加わっている。反転は別の形でいえば“切り返し”でもあるけれど、この切り返しはときおり話しているように一種の“引きワザ”でなければ取られやすい。それを興梠はまずスピードで脅しておいての切り返しだから成功することが多い。

――じゃ、若い3人は新戦力として役立つ

賀川:戦力になりうるだろう。ただし、それはシュートがうまくできるかどうかにかかってくる。たとえば、岡崎はいいシュートポジションを見つけて走り込み、そこでプレーをする、あるいはそこへのパスが潰されたあとも、すぐ次のポジションへ移る。いわば立て直しの移動のランがうまいし、労を惜しまない。かつての日本代表、森島寛晃と同じだろう。シュートは上手なハズだが、まだ代表では見せていない。その点がこれからだろう。
今度の試合の得点シーンのように、攻撃が一つの波だけでなく一波、二波と繰り返してその揺さぶりでノーマークの場面を増やしたのが、対UAEの収穫だと思う。
対ウズベクで使うかどうかはともかく、この選手が入ればこういう攻めができるという実験をしただけでも監督さんにはプラスだろう。

――シュートはまだ課題

賀川:チームのコンセプトは監督やコーチの指導やヒントで作ることはできるし、攻撃の組み立てもある程度はできるだろう。点を取れるかどうかはプレーヤーの仕事になる。練習をしないプレーは試合で成功しないものだヨ。

――最終予選の第2戦を前にして、これで良いのかナ

賀川:岡田監督のおかげで、日本代表の候補にはいろいろなタイプのプレーヤーがいることを見せてもらって、本当に面白かった。ただし、せっかくいい選手が集まっても、何人かは別にして、精密なキックということになるとまだまだだし、シュートという点では皆さんも見てのとおり。
相手の得点はイスマイル・アルハマディが1人でドリブルし、左タッチ沿いで奪われかけたのを持ち直し、中央へ持ち込んでシュートして決めている。世界中、たいていの代表チームにこの程度のFWは2人くらいはいるものだから、どこと試合をしても失点1は計算しておいた方が良い。こちらが2点以上取ればいいのだから。

――シュート力不足は未解決のまま。

賀川:これは大型CF(センターフォワード)の問題とともに、世界のトップクラスを目指すためには日本全体の底上げだろうね。それでも、今のチームのなかで1人でも2人でもゴールを奪うコツをつかみ、自分の能力に目覚めてくれればガラリと変わるだろう。チームの後方と中盤の骨組みはできていて(おっと、クロスの精度はまだだが…)優秀なパサーがいる。大久保だって、9日の超不出来を取り返す気になっているだろうしね。
今度のキリンチャレンジカップは目前のウズベキスタン戦のための調整ともう少し遠くを見てのチーム全体のレベルアップを考えての選考だったハズ。ピックアップされて、ウズベク戦の候補から外された人も励みになったハズだから、自分のチームでさらに努力して力を備えてほしい。


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【Preview 2】10月9日 日本代表 vs UAE代表

2008/10/08(水)

背水のUAEを迎えて、対ウズベク戦のリハーサル


キリンチャレンジカップ2008 ALL FOR 2010!
10月9日19:20キックオフ(新潟・東北電力ビッグスワンスタジアム)
日本代表 対 アラブ首長国連邦(UAE)代表


A:今日は対談の形でゆきましょう。
この試合は、10月15日(水)の対ウズベキスタン戦(埼玉)に備えての、日本代表の最終テストとも言えますネ。

B:そう、ことしのキリンチャレンジカップは“ALL FOR 2010!”のタイトルがついているように、すべて2010年FIFAワールドカップを目指すもの。このUAE戦は1週間後のアジア最終予選第2戦を控えた代表選手にとって大事な試合となる。彼らは今日10月7日に集結して9日にUAE戦、中5日をおいて15日の試合に臨む。

A:この2試合のために招集される選手はGK3、DF9(※当初は8、寺田の追加招集で9に)、MF8、FW7人の合計27人。海外組の中村俊輔、稲本潤一、長谷部誠も入っている。
DFに大分の森重真人、FWに清水の岡崎慎司、鹿島の興梠慎三(こうろき・しんぞう)森島康仁(もりしま・やすひと)が入りました。

B:最終予選の第1戦、対バーレーン戦(9月6日、マナマ)は3-2で勝った。3-0から87分と88分に失点して、終わりごろはよくなかったが、まずアウェーで勝点3を取った。

A:玉田圭司、田中達也といったトップの守備、ことに奪われた直後に奪い返す素早い守りが成功して日本のペースとなりました。

B:バーレーン戦の直前のキリンチャレンジカップでウルグアイと戦い、無残な戦いぶりになった(8月20日、1-3)が、それが薬になって日本チームの特色を出せた。
岡田武史監督は、第3次予選突破の間にあるていど選手たちの間に自分の考えが浸透したと思ったのが、代表チームを解散して、しばらくぶりに集まったら攻から守へ、守から攻への切り替えの早さとか連動性といったものが消えていた。そして、そういう組織で守り、攻めること、そのための動きの量や早さが乏しければ1対1に強いウルグアイを相手に惨めなことになることを、選手たちは改めて思い知らされた。

A:その反省がいい方に出たと――

B:もちろん、岡田監督も選手たちにそう強調しただろうが、選手たちもしっかりと考えただろう。

A:バーレーン戦はスタートから違っていたと。

B:日本の早い集散、失ったボールを高い位置で奪いにゆく、それも複数が協力してね。
その早い動きにバーレーンの選手たちはおそらく驚いただろう。日本と対戦した経験はあっても、しばらく忘れていたハズ。ああいう素早い動きで攻め、守るチームは世界にそうないし、自分たちのリーグでは経験することは少ない。

A:いわば異質のサッカー――

B:そう、別の見方をすれば、サッカーというのはあくまで1対1の戦いが基調なんだが、日本代表の場合は日本の特色を生かすために早い動きとその運動量で相手をしのぐやり方だ。これは、いまに始まったことではなく、1936年のベルリン・オリンピックでもそうだった。

A:そんないい戦いをしながら、終盤に2点取られた。

B:相手が10人になって、しかも3-0。誰だって気が緩むだろう。疲れも出てきて動きが鈍くなる。すると相手は1対1の場面でボールを取り攻めに出れば、こちらの人数が多いという条件は消えてしまう。2点取られたのはよくないが、私はいい反省材料になったと思う。

A:動きの量を落としてはいけないと?

B:もちろんそうだが、90分間フル回転できるかどうか、そこに、今度は1対1の能力、体の強さや走る早さなど、もちろんシュートの正確さ、パスの確かさなどを、代表の一人ひとりが自分で伸ばすことを考えなければならない。


ベテランMFと若手FWの組合せ

A:監督をはじめスタッフはより高い能力を求めることになる?

B:今度のオリンピック世代の若い選手が必ずしもいまの時点で常連選手より上かどうかは別にして、少しでも可能性のあるプレーヤーを試したいのは監督さんとして当然だろうね。

A:点取り屋のFWが少ないという声が多いから、3人の若手FWに期待がかかる?

B:チームの練習で見てみたいのか、実際にキリンチャレンジカップの舞台で試してみるのか――だが、岡崎はともかく動きの止まらないプレーヤーで、ひとつの穴を見つけて走り込んだあとすぐ次にいいところがあれば移動する。競り合って点を取るコツが身についているように見える。それがJだけでなく代表レベルでどうか。見てみたいプレーヤーだね。
興梠(こうろき)というのは私たちには珍しい名前だが、九州・宮崎県高千穂町には割合多い姓らしい。本人も宮崎出身。鹿島で得点を重ねているが、ドリブルがうまくスピードがあり、ウラへ入るのが早い。ただし私が見たACL(アジアチャンピオンズリーグ)のテレビでは2回走り込んで2回とも右に持ちかえて潰されていた。得意の形にこだわるところがいいのか、左足でスパッと蹴れないのかはともかく、点を取りにゆこうという意欲はありそう。

A:森島はよく知っているでしょう?

B:セレッソ大阪にいたから、ナマで何度も見ている。滝川第二出身だし……。
体が大きくてしっかりしている。身長は巻誠一郎(184cm)より2cm高く、代表ではDF寺田周平(189cm)DF高木和道(188cm)GK楢﨑正剛(187cm)中澤佑二(187cm)に次いで5番目の高さだ。
現代のゴール前での多数防御を破るひとつのテはヘディングで、そのために長身でヘディングの強いFWは大切なポイントでもある。ヨーロッパでは大男の少ないハズのイタリアが2006年に196cmのFWルカ・トーニを持ってきたのはご承知のとおり。セレッソで小柄な森島寛晃(モリシ)と対照的にデカモリシと呼ばれていたが、私が期待していたほどには伸びていない。だが、体が大きく、しかも強くて、そこそこの技術があるということに加えて、ゴールへの意欲も強いし、体を張ることもいとわないから、大切な素材であることは間違いないところ。

A:大分へ行ってから注目されています。

B:シャムスカ監督の使い方のうまさもあるだろうが、ウェズレイというベテラン・ストライカーがいることがプラスになっていて、いま自分のいいところを出せばいいという立場にある。それが活躍のもとだが…。

A:彼自身の成長のきっかけになればいいですね。

B:もちろん、そう願うヨ。しかし別の見方をすれば、いまのデカモリシをも招集するということは、岡田監督の、日本全国の指導者へのメッセージとみてもいいのじゃないか。大久保嘉人や佐藤寿人、玉田圭司といった小柄で早いストライカーもいいが、巻以外にも、大型で体の強いCF(センターフォワード)がほしいのだと――。

A:UAEは最終予選で日本と別のグループで戦って2敗しています。何とか立て直しを図るためにも、このキリンチャレンジカップは大事な試合と考えているでしょう。互いに調子を高めるため、真剣で面白い試合になるでしょう。

B:その中で、中村俊輔たちのベテランと組む若い力も見てみたい。

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【Preview】10月9日 日本代表 vs UAE代表

2008/09/30(火)

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注目! デカモリシ招集。対UAE戦で登場か


 日本サッカー協会(JFA)は9月29日、JFAハウスで、11月13日にキリンチャレンジカップ2008 ALL FOR 2010!日本代表対シリア代表を神戸ホームズスタジアムで行なうことと、FIFAワールドカップ(W杯)2010南アフリカ、アジア最終予選の第2戦(対カザフスタン、10月15日、埼玉)、その6日前に新潟で行なわれるキリンチャレンジカップ2008 ALL FOR 2010! 対UAE代表戦に臨む日本代表メンバーを発表した。

 シリア戦は、11月19日に予定されているW杯アジア最終予選の第3戦(対カタール=アウェー)に備えてのもの。JFA犬飼基昭会長、キリンビバレッジの斎藤信二社長、日本代表・岡田武史監督が出席して、この試合の意義を語った。
 最終予選第2戦と、キリンチャレンジ 対UAE戦のメンバーは、北京オリンピック世代4人を含む26人の顔ぶれが紹介され、岡田武史監督が記者たちの質問に答えた。

 ホームでのカザフスタン戦を前に監督がチームの中で見てみたい選手として、大分のDF森重真人(もりしげ・まさと)FW森島康仁(もりしま・やすひと)清水のFW岡崎慎司(おかざき・しんじ)鹿島のFW興梠慎三(こうろき・しんぞう)の4人を新しく加えた。大分の2人は1987年生まれ、岡崎と興梠は86年生まれ。

 岡田監督の森重評は、「ディフェンダーの中では球出しがよく、しかもボール際も強い」つまり、味方へのパスもうまく、ボールの取り合いでも頑張れる選手ということ。今の大分の特徴の守りを支える選手。FWの3人のうち岡崎は173cm、興梠は175cmと大きくはないが、岡崎は“頑張り”、興梠はスピードに、それぞれ特色がある。興梠はACL(アジアチャンピオンズリーグ)で相手のDFのウラへ入る速さに非凡なところを見せた。

 森島康仁は、岡崎の後輩。滝川第二高校からセレッソ大阪に入り、ベテラン森島寛晃(もりしま・ひろあき)と比べて大柄であるところから、“デカモリシ”と呼ばれていた。
 昨シーズンはそこそこの働きをしたが、今季は出番が少なく、7月に大分へ期限付きで移ると、ウェズレイと2トップを組んで大分躍進の力となった。
 体がしっかりしていて、186cmの長身で、ツボへ来たときのジャンプ・ヘディングには目を見張る。日本代表の常連・巻誠一郎(184cm)のひたむきさとはまた違った爆発的な魅力がある。
 岡田監督は「パワーがあり、大きな体で、スピードがある。背が高くて悪いということはないのだから…」と、大きさとパワーに目をつけていたようだ。

 ドイツで実績をあげた高原直泰が帰国後に調子が上がらず、平山相太もまた期待ほどに伸びず、Jリーグでも長身でヘディングが強く、シュートもうまいというタイプのFWは多くない。したがって、代表では巻誠一郎一人となっている。もちろん、大柄でない優れたストライカーもいるし、外国にも例はあるが、やはり、長身の優れたストライカーはチームをつくる上で重要なポイントである。
 今度のデカモリシの招集は、本人にとってもいいチャンスだが、私はむしろ、大学やJリーグのコーチたちが、これを刺激として代表チームのために大型FWの育成に力を尽くす意欲を燃やして欲しいと思っている。


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8月20日 日本代表 vs ウルグアイ代表

2008/08/20(水)

日本選手にもファンにもいい経験――。ウルグアイのタテに出るサッカーとシュートする面白さ

キリンチャレンジカップ2008 ~ ALL FOR 2010! ~
8月20日(北海道・札幌ドーム)19:13
日本代表 1(0-0 1-3)3 ウルグアイ代表
得点者:OG(日 48分)S.エグレン(ウ 55分)I.ゴンサレス(ウ 83分)S.アブレウ(ウ 93+分)

【日本代表メンバー】
GK: 18楢崎正剛
DF: 22中澤佑二(Cap.)2高木和道、3駒野友一、6阿部勇樹
MF: 8小野伸二、14中村憲剛→9佐藤寿人(75分)7青木剛→15長友佑都(46分)17長谷部誠
FW: 11玉田圭司→12大黒将志(68分)19田中達也→8山瀬功治(78分)
SUB:1川口能活、4田中マルクス闘莉王、13鈴木啓太、5今野泰幸、16大久保嘉人

【ウルグアイ代表メンバー】
GK: 1フアン・カスティージョ
DF: 4ホルへ・フシレ、2ディエゴ・ルガノ (Cap.)18ブルノ・シルバ→17ヘラルド・アルコバ(88分)3カルロス・バルデス
MF: 8セバスティアン・エグレン、16マキシミリアノ・ペレイラ→6アルバロ・ゴンサレス(60分)15ディエゴ・ペレス→10イグナシオ・ゴンサレス(69分)7クリスティアン・ロドリゲス→14ビセンテ・サンチェス(60分)
FW: 20カルロス・ブエノ→13セバスティアン・アブレウ(69分)9ルイス・スアレス→5ホルヘ・ロドリゲス(84分)
SUB:12ファビアン・カリニ、19ディエゴ・アリスメンディ

◇さすがは北海道――気温23度。北京オリンピックでは口グセのようになっていた“暑さ”もなく、ピッチ不良の不満もない。
 スターティング・ラインナップのうち9人がヨーロッパのクラブの所属で、ウルグアイとブラジル(つまり南半球)から一人ずつというウルグアイ代表には長旅と時差のハンディはあっても、日本特有の蒸し暑さから解放されることになる。いいプレーを見せてくれるだろうとの予感のとおりの展開となった。

◇前半22分までに、日本のシュートは田中達也の1本だけ。ウルグアイは7本。日本側がヒヤリとしたのは8分の右CKだったろう。
 クリスティアン・ロドリゲスが左足のカーブキックをゴール正面、ややニア寄りに送り込み、FWのカルロス・ブエノがヘッド。ボールがファーポスト側に落ちたところへ、DFのカルロス・バルデスが走り込んで左足ボレーでタッチ。ボールは楢崎正剛の横を通り、カバーに入っていた中村憲剛が右足キックでクリアした。

 このCKは、その前にウルグアイが右タッチライン際の深い位置でのスローインのとき、後方から
(1)セバスティアン・エグレン(だった?)がゴールライン近くへ飛び出し(スローインだからオフサイドはない)
(2)ボールを受けてバックパス。これを
(3)ルイス・スアレスがタテにドリブルしてゴールライン際からクロスを蹴り、日本側に当たってCKとなったもの。
 彼らのダッシュの速さに日本側が振り切られるのを見ながら、日本ならバックパスを受けた者が、たいていは味方へのパス経路を探すのに、スアレスがためらうことなくタテに突進したのに(当然のことながら)やっぱりなぁ……と思った。

◇そして、ロドリゲスの右CKでFWのブエノがヘディングしたときには、日本側は誰も体を寄せていなかった。スロービデオでのリピートを見ると、相手側の長身187cmのディエゴ・ルガノ(主将)には中澤佑二、もう一人の184cm、カルロス・バルデスは高木和道がマークしていた。
 中央のエグレンとブエノ、スアレスには阿部勇樹、青木剛、長谷部誠がついていたが、キックの前の3人のフェイクの動きをとらえきれず、ブエノのヘッドを許した。
 また、高木はボールの落下点へダッシュするバルデスに振り切られていた。バルデスのボールタッチが左足に当てただけだったので、ゴールにはならなかったといえる。

◇日本のチャンスは前半32分のFK。小野がゴール前へ送らずに、右のオープンスペースへ走った中村憲剛にパスを出し、中村が中央へクロスを上げて中澤佑二がヘディングした。
 ライナーのヘディングシュートがゴールバーの50cm上を越える惜しい場面だったが、相手DFのルガノが体をくっつけてジャンプしていたから、中澤もパーフェクトに叩けなかったのかもしれない。この場面だけでなく、ウルグアイ側のCKのときにも、長身ルガノが日本のゴール前で中澤をマークする場面が見られたが、中澤のヘディングの強さがすでにウルグアイ側にも十分伝わっていて、彼のヘディングを押さえることが、攻撃でも守りでも重要課題とみていたのだろう。

◇後半3分に日本のゴールが生まれた。
 左サイドに長友佑都(青木剛と交代)を入れ、阿部を第2列に上げた日本は、後半初めから攻めに出た。そして右CKを小野がニアに蹴り、リバウンドを拾って再び右タッチ際の小野へまわる。小野は、タテに走った中村にパスを送り、ノーマークの中村がゴールラインぎりぎりから速いクロスをゴール前に送ると、相手DFの足に当たってゴールイン(オウンゴール)した。一つのプレーがあった後に、
(1)後方から前へ飛び出すという中村の得意のランがあり
(2)それに小野がいいパスを出したこと
(3)さらに中村が相手DFとGKの間へ、鋭いヒザの高さのボールを送り込んだことがオウンゴールにつながった。
 もちろんCKだから中澤、高木の日本側長身2人もゴールを狙っていた。それが高いボールでなく低いボールのCK、ニアへ(中澤がいた)出し、そのリバウンドを取って再び深いところから低い速いボールと、あえて空中戦にしなかったのが、頭の使いどころというべきだろう。

◇勢いづいた日本は、なお攻めに意欲を燃やす。ウルグアイはそれを食い止め早いカウンターで――と、互いに攻め合ってスピーディな展開となる。
 その攻め合う形から54分に日本の右サイドのクロスを防がれ、そのカウンターをハーフラインの手前で阿部がつぶして、相手側の左サイドスローインとなったところから、同点ゴールが生まれる。

 ウルグアイは左サイドからパスを2本つないで右サイドへ展開し、マキシミリアノ・ペレイラがボールを受けて長友をひきつけ、内側ノーマークのスアレスに渡す。彼がまったくフリーなのを見て、日本の2人のCDFのうち高木が応対に出てゆく。もう一人の中澤は2トップの一人、ブエノを警戒する形――。余裕を持って高木の接近を見ながら、スアレスはボールを浮かせて、ブエノへ送る。ブエノは落下点(ペナルティエリアぎりぎり内側、ゴール正面)でボールタッチ、再び浮いたボールが右へ上がって、落ちたところへセバスティアン・エグレンが走り込んで来て、ノーマークでダイレクトシュートした。強烈なシュートではなかったが、ゴール右ポストぎりぎりへ転がるボールは楢崎のリーチの外だった。
 日本の攻めには多くのプレーヤーを送り込むため、奪われてからの帰陣が遅くなっていた(もちろん、相手側のドリブルの上手さやボールを浮かせる着想の良さもあるのだが…)。

◇その直後、日本はFKから中澤が飛び込んでノーマークとなるチャンスがあったが、ワンバウンドしたボールは胸に当たってゴールを外れた。
 その後にも66分に小野伸二のヘッド(GKキャッチ)長谷部誠の中距離シュート(GKキャッチ)があったし、玉田圭司にも(シュートしなかったが)惜しい場面もあった。

◇68分に、その玉田に代わって大黒将志が起用される。ウルグアイはそ8分前にすでにペレイラとC.ロドリゲスを、アルバロ・ゴンサレスとビセンテ・サンチェスに代えていて、さらに69分にはディエゴ・ペレス(MF)に代わってイグナシオ・ゴンサレスが入る。

◇83分にそのイグナシオ・ゴンサレスのゴールでウルグアイがリードする。
 発端は、駒野が相手側センターサークルの右外あたりでボールを奪われたことからだが……。このボール奪取後のウルグアイの攻めは驚くほど速く、効果的だった。
 ルーズボールを拾ってドリブルし、ハーフラインを越えて右オープンスペースを走るスアレスにボールが渡る。スアレスはペナルティエリアぎりぎりの右内側へ入って左へクロスを送り、走り込んできたゴンサレスがゴール正面やや左寄り8mあたりで、ノーマークのスタンディング・ヘッドでゴール左下隅へ叩き込んだ。

 攻撃に多くのプレーヤーが加わって手数をかける日本の攻めは、そのボールのやり取りでミスが起きて奪われると致命傷になり得る――このことは、誰もが知っていることで、それをなくそうとしているのだが……。もちろん、駒野がボールを失う前のパスのやり取りでも、パスをつないでいるうちに追い込まれる形になっていったことも遠因――。

◇2-1となってもウルグアイは攻めの手を休めない。
 ロスタイム(4分)に入って、92分に日本は山瀬功治(76分に田中達也と交代)のシュートがあったが防がれ、93分にウルグアイはビセンテ・サンチェス―ホルヘ・ロドリゲス(84分にスアレスと交代)とつないで、セバスティアン・アブレウ(ブエノと69分に交代)が右ポストぎりぎりにシュートを決めて3-1とした。

◇この相手と、こういう試合展開をすれば、今日のメンバーならこの結果になっても致し方ない(良いとは言わない)が、選手たち一人一人にはいい経験――同時にテレビ観戦の日本中のファンにとっても、北京オリンピックと同じように、サッカーでは走ること、パスは大切だが、それとともにドリブルもまた有効な武器であり、何よりもシュートをすること、シュートを決めることが勝敗を決する要素というきわめて当たり前のことを見せてもらった試合だった。

◇日本代表はこの日の有益なテストを足場に、最終予選に向けて、岡田武史監督と選手たちが勝ち抜くチームをつくりあげてゆくことになる。


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5月27日 日本代表 vs パラグアイ代表

2008/05/27(火)

俊輔加入のテストは済んだ。あとはチームワークと個人の頑張り

キリンカップサッカー2008
5月27日(埼玉・埼玉スタジアム2002)19:20
日本代表 0(0-0 0-0)0 パラグアイ代表

【日本代表メンバー】
GK: 18楢崎正剛
DF: 2寺田周平、4田中マルクス闘莉王、6阿部勇樹→3駒野友一(69分)27長友佑都
MF: 10中村俊輔、7遠藤保仁→9松井大輔(HT)14中村憲剛→5今野泰幸(85分)13鈴木啓太(Cap.)→17長谷部誠(63分)8山瀬功治→16大久保嘉人(77分)
FW: 12巻誠一郎→19高原直泰(63分)
SUB: 1川口能活、23川島永嗣、22中澤佑二、24井川祐輔、26香川真司、11玉田圭司、20矢野貴章

【パラグアイ代表メンバー】

GK: 1デルリス・ゴメス
DF: 3ペドロ・ベニテス、14ホルヘ・ヌニェス→5エドガル・バルブエナ(82分)4デニス・カニサ(Cap.)2ダリオ・ベロン
MF: 6ホルヘ・ブリテス→10ルイス・カセレス(79分)8セルヒオ・アキノ→19フリオ・アギラル(88分)16エドガル・ゴンサレス→15ビクトル・カセレス(79分)17マルセロ・エスティガリビア、18オスバルド・マルティネス→9ファビオ・エスコバル(79分)
FW: 11クリスティアン・ボガド→7ダンテ・ロペス(66分)
SUB: 12オラシオ・ゴンサレス、13カルロス・パレデス

◇キリンカップの第1戦で、コートジボワールとの果敢な攻め合いを見た。ほとんどがヨーロッパのリーグでプレーしている選手相手だったから、後半に当方の動きの量やスピードが落ちると攻め込まれ、ハラハラする場面も何度かあった。
 個人力が揃っていて(もちろん、とてもかなわぬというレベルではない)組織攻撃をする相手と、たとえボール保持率が少なくなっても、こちらの調子の出ているときに点を取ってしまえば、サッカーでは勝ちに通ずるもの――そのことを自分たちにも納得させる試合でもあった。

◇さて――。パラグアイはこのキリンカップの開幕戦、対コートジボワール戦で1-1。ボール支配は55対45 程度で観客にはアフリカ勢のパスワーク優勢と見えたが、パラグアイは1点を失った4分後にロングボールからクリスティアン・ボガドの左足シュートで同点とした。厚く守って、巧みなカウンターで勝とうとする伝統的な強さは、アルゼンチンやブラジルという大国にも厄介なチームで、日本には伝統的に勝つことの難しい相手――。新しい日本代表が彼らをどう崩すかに期待がかかっていた。

◇得点は生まれなかった。しかしスタンドに集まった人たちがナマの中村俊輔をご覧になったのが何よりだった。足の故障は全快していないようだが、左足から繰り出すパスの巧さはまさに天下一品といえた。
  彼の長短のパスを見ていると、ある時期に使われた“ゲームメーカー”という言葉を思い出す。
  70年代の西ドイツにベッケンバウアーとともに名を挙げた中盤のパスの名手、ネッツァーとはややタイプは違うが、長いパスの強さ、高さ、そして落下点の選択と、世界のトップにあったネッツァーに匹敵する。
  それに、ボールそのもの、球筋(タマすじ)の美しいこと。まことに惚れ惚れするほどだった。

◇ 前半に左サイドで、自らも加わって小さなパス交換をしたあと、ノーマークでボールを受けた俊輔がタッチ際からゴール前へ送った長いクロスボールに田中マルクス闘莉王が飛び込んでヘディングしたチャンス。これはGKゴメスの手に当たって得点とはならなかったが、俊輔のパス能力と仲間を使っての短パスの連続で自らのスペースと時間の余裕をつくり出す巧さ――それと闘莉王の攻撃センスの組み合ったものだった。

◇闘莉王は攻めの意欲とともに、そのパスのセンスや攻め上がるときのポジションどりの巧さに、見る度にヒザをうつ思いがするが、このときも、その少し前の攻め込みでペナルティエリア左へ進出し、左サイドで前述の短パス交換がはじまると右へ――つまりファーサイドへ移動して俊輔のパスを引き出し、ジャンプヘディングしたのだった。

◇前半25分までは手も足も出なかった、とはパラグアイのヘラルド・マルティノ監督の言葉だが、この時間の攻撃で点を取っておけば、対コートジボワールと同じように勝てたかも知れない。

◇ ただしこの日は、久しぶりに、それも試合間際に合流した中村俊輔の調子を見るのが第一。さらには巻誠一郎や鈴木啓太、阿部勇樹、中村憲剛、山瀬功治といったこれまでの常連で多少の故障や疲れのあった選手たちの回復度を見ることも大切なポイントだったから、組み合わせとしてはベストというわけではなく、全体に「あ・うん」の呼吸で手を叩く場面が少なかった。ボールキープ率は高くても決定的なゴールチャンスは多くなかったが、私はむしろ、こういう組み合わせでも負けないチームになってしまう選手の能力を嬉しく思ったものだ。

◇DFに30歳をこえて初登場の寺田周平が加わって、センターDFは中澤佑二とともに185センチ以上が揃うことになった。当然のことながら、自らも代表チームで守りに苦労したハズの岡田武史監督は、全員が動く現代サッカーの中でも各ポジションの特性をわきまえ、それに合うプレーヤーを選んでいるようだ。
  サイドは若い右の内田篤人はすでに経験済み、タフで経験ある駒野友一のグループに左の長友佑都が加わってきた。

◇ただし、長年、日本サッカーが「点を取る」ことを第一義としなかったツケは、ここ何年かのストライカー不足となって表れていた。
  成長途中に少し道草を食った感のある玉田圭司と大久保嘉人の2人にそれぞれキレが戻り経験も重ねてきたが、大型ナンバーワンの平山相太が足踏みのままという。ドイツで実績を残した高原直泰は調子を落としている。
  ボールを狙ったところへ落とせる俊輔がいるのに、平山が間に合わないのは淋しいが、巻と矢野貴章たちが3次予選シリーズで“サムシング”をつかんでくれることを期待することになる。

◇ 今度のキリンカップで、中村憲剛を含む豊富な中盤勢の上に松井大輔、長谷部誠、さらには大御所・中村俊輔も加わった。当然、俊輔にはシーズン最後まで優勝を争ったリーグでの疲れもあるだろう。キリンカップで有益なテストとチェックを済ませたいま。これから6月2日の対オマーン第1戦にはじまる1ヶ月の戦いを、いいコンディションで乗り切ってくれることを祈りたい。


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5月24日 日本代表 vs コートジボワール代表

2008/05/24(土)

コートジボワールに勝つ ~瞠目――松井、長谷部、イレブンの粘り~

キリンカップ2008
5月24日(愛知・豊田スタジアム)19:20
日本代表 1(1-0 0-0)0 コートジボワール代表
得点者:玉田圭司(21分)

【日本代表メンバー】
GK: 18楢崎正剛
DF: 22中澤佑二(Cap.)4田中マルクス闘莉王、3駒野友一、27長友佑都
MF: 7遠藤保仁、9松井大輔→26香川真司(75分)5今野泰幸、17長谷部誠
FW: 11玉田圭司→20矢野貴章(75分)16大久保嘉人
SUB: 1川口能活、23川島永嗣、2寺田周平、6阿部勇樹、24井川祐輔、14中村憲剛、13鈴木啓太、8山瀬功治、19高原直泰、12巻誠一郎

【コートジボワール代表メンバー】
GK: 16アリスティド・ブノワ・ゾクボ
DF: 21エマニュエル・エブエ、3エティエンヌ・アルトゥール・ボカ、22マルク・アンドレ・ゾロ、12メイテ・アブドゥラエ、8ギー・ロラン・ドメル→6イゴール・アレクサンドル・ロロ(67分)
MF: 17シアカ・ティエヌ、5ディディエ・ゾコラ(Cap.)7エメルス・ファエ→10セイドゥ・ドゥンビア(83分)2カンガ・アカレ→9カイン・カンディア・エミル・トラオレ(75分)
FW: 20ブバカル・サノゴ
SUB: 23バンサン・ドポール・アンバン、1ブバカル・バリ、4コロ・アビブ・トゥーレ

◇いい試合だった。日本が開始直後から積極的で、相手ボールへのプレッシング、奪えばそこから攻めに入り、それを取られればすぐ取り返そうと奪いにゆく――現代のトップクラスのサッカーはまことに労は多いが、それを続けなければ互角あるいは互角以上の相手には勝てない。
 そういうやり方を日本代表は実行し、また息の合った組織プレーがあって前半21分には右サイドの見事な攻めから玉田圭司のゴールが生まれてリードした。後半は勢いを盛り返した相手に攻められピンチも再三あったが、無失点で切り抜け1-0で勝った。
  GK楢崎正剛の落ち着いた守り、ファインセーブもあり、選手たちが諦めずに追い、タックルに行った粘り強さが大きかった。
  エレファント(コートジボワール代表の愛称)の現在のレギュラーから7人が抜けているチームであっても、ひとりひとりの体も技術も戦術能力も高いこの日のチームを相手に勝利をもぎ取ったことは、日本代表にとって大きなプラスになるだろう。

◇6月にワールドカップアジア第3次予選の4試合を控えている代表にとって、欧州で活躍中の松井大輔と長谷部誠の2人を加えたのもよかった。2人はその特色と強さを見せ、また、チーム内での選手の組み合わせもよかった。もちろん、岡目八目でゆけばまだ不満は残るにしても、選手たちの気持ちが伝わってくる楽しい試合――まずは皆さんおめでとう。

◇楽しいということになれば、やはり前半21分のゴールを振り返ることから――。
  攻撃に絡む各選手のイメージがうまく一致した、今の日本代表にとっては会心のゴールの一つと言えるだろう。

◇順序を追って記すと
1)相手の高いボールのパスを駒野友一がヘディングして長谷部誠の足もとへボールを送ったところから始まった。
2)長谷部はハーフラインより自陣に戻ってこのボールを受け、後方からつぶしに来る相手をトラッピングの際に右へターンしつつかわし、
3)ボールを右タッチライン際の松井大輔に渡した。
  この1)2)3)でチームは守から攻へ切り変ることになる。
4)パスを出した長谷部は走るのを止めずに右前へ上がる。松井は妨害に来る相手DFボカを前にボールを少し左へずらせる。
5)前方へ出ていた今野泰幸が戻ってくる。松井はボカを引きつけ、ボールを今野へ。
6)今野は受け取るとすぐ、右前方へ出ていた長谷部の前のスペースへパスを送る。
7)松井と今野にマーク、そして玉田圭司、大久保嘉人の日本の2トップを警戒していたコートジボワール側には長谷部へのマークはなく、長谷部はドリブルでペナルティエリア外へ進みゴールラインから5メートルのペナルティエリア右外から中央へクロスを送る。
8)長谷部にボールが渡ったとき、玉田は右(つまりボールのニヤーサイド)大久保は左(ファーサイド)にいたが、
9)大久保はニヤーサイドを狙って走り込んでくる。それを見た玉田はファーへ向かってスタート。
10)長谷部の右サイドキックで送った早いクロスはエリアの中、一番ボールに近いDFの頭上を越える。
11)ニヤーに走り込んだ大久保を押さえようと2人のDFがともにニヤーへ。
12)その3人を越えたボールがゴール正面やや左寄り、ゴールエリアライン近くに落ちたところへ、玉田が走り込んできた。
13)落下点で玉田は得意の左足ボレーで合わせ、ボールはGKゾクボの左足のすぐそばを走り抜けてゴールへ飛び込んだ。

◇ゴールを決めた玉田は、ご存じ2006年のドイツ・ワールドカップ日本代表。足が早くドリブルもうまい、173センチと小柄。ドイツ大会でのブラジル戦での左足シュートは今も語り草だが、波が大きく、柏から名古屋グランパスに移ってからも調子が出なかった。
  ストイコビッチが名古屋の監督になり試合に出るようになってから、調子が良くなってきた。しっかりした技巧とスピードを持ちながら足踏み期間の長かったこのストライカーにとっては、この日のゴールは何よりの励みだろう。

◇玉田のフィニッシュに到るまでの各プレーヤーの人と人の仕事は、まさに攻撃を組み立てるためのチームプレーだった。長谷部のドリブルでファーを狙ったクロスも、その長谷部の走る勢いを殺すことなく取れるボールを送った今野のパスもさすがと言えた。
 フランスで活躍中の松井はもともとドリブルが上手で、素早い動きでは日本では最上級だった。フランスでプレーすることで強い当たりや粘っこい絡みに耐える強さを身につけ、そうした相手と戦うためのポジショニングがうまく、サイドの使い方に長じている。キックの長さも強さも増し、視野も広くなっているようだ。はじめからイタリアやスペインでなくフランスを選んだことも、彼の成長にプラスになったのだろう。自ら欧州での努力で切り開いた今の彼のプレーは、日本サッカーにとっての大事な財産と言えるかも知れない。

◇ 中澤佑二と田中マルクス闘莉王がそろって、今野泰幸というディフェンシブハーフのために生まれてきた男を本来のポジションに置けるようになったのはとてもいいことだ。ただし彼自身、ホームチームの都合や代表チームの都合でDFを務めることがしばらくあって、本来ならもっと中盤のプレーヤーとしての攻守のキメの細かさが伸びる時期に足踏みしているのが惜しい。1点目のチャンスのときのスルーパスは素晴らしかったが、試合ではいくつかのミスも出た。

◇ 新しい左サイドの長友佑都は、初陣プレーとしてはなかなかのもの。この日の相手チームの3番、166センチのボカをはじめ小柄で早くてドリブルとシュートに長じた選手がサイドFBで成功した例は多い。右も左も蹴れるのは頼もしいが、ますます磨きをかけることがチームプレー上達とともに大切だろう。

◇21 歳の長友より2歳若い香川真司が終盤に出場した。セレッソ大阪でよく見ている選手だが、これも小柄でドリブルが巧みでパスの視野が広く、タイミングのつかみ方がうまい。この試合ではほとんどいいプレーはなかった――というより、ボールを渡してもらえなかった――が、タイムアップ前にゴール前に送ったクロスは片鱗を見せた。大久保が気配を察知して飛び込んだが、GKの方が一瞬早く飛び出してキャッチしたため結果は出なかったが…。

◇最後にコートジボワール側からの見方を――。
  バヒド・ハリルホジッチという監督さんはこう言った。
“試合の終盤に疲れて動きが落ちてはいけないので、前半はセーブすることにした”とある選手は言っていた。1点を奪われて、いわば、そこから目を覚ましたということになる。したがって前半の中ごろまでは日本の動きがよかった。
  そのあとはこちらの方が試合をコントロールすることになった。チャンスに点を取れなかったのが惜しかった。もちろん不満ではあるが、選手たちは立派に試合したと思う。
 日本はいいチームだが、こちらがプレスをかけ、特にボランチに対してそれを強めてからはほとんどチャンスがなくなった。余裕がなくなり、ボールを奪ってもつなげなくなる。そういうときはロングボールになることが多いが、この日の日本の2人のFWは上背がないので、高いボールは私たちの脅威にはならなかった ――。

◇監督となって日の浅いこの人は、7人のレギュラーの不参加については処罰もあり得ると自国のテレビに向かって語っていたが、試合の流れ全体の解説は整然としていた。

◇日本にとってこの日の勝ちは喜ぶべきものであっても、これからも努力と蓄積、そしてその基盤となる選手個々の力の向上と互いの連係プレーへの熱意が必要なのは言うまでもない。


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1月30日 日本代表 vs ボスニア・ヘルツェゴビナ代表

2008/01/30(水)

岡田監督にも日本代表チームにも10年の歴史がプラス

キリンチャレンジカップ2008
1月30日(東京・国立競技場)19:20
日本代表 3(0-0 3-0)0 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表
得点者:中澤佑二(68分)山瀬功治(83分、88分)

【日本代表メンバー】
GK: 18楢崎正剛
DF: 22中澤佑二、3駒野友一、25内田篤人
MF: 7遠藤保仁、14中村憲剛→2今野泰幸(78分)13鈴木啓太(Cap.)6阿部勇樹
FW: 19高原直泰→11播戸竜二(82分)、12巻誠一郎→10山瀬功治(33分)16大久保嘉人→8羽生直剛(88分)
SUB: 1川口能活、23川島永嗣、5坪井慶介、21加地亮、4岩政大樹、15水本裕貴、24橋本英郎、9山岸智、17前田遼一、20矢野貴章


【ボスニア・ヘルツェゴビナ代表メンバー】
GK: 1ケナン・ハサギッチ
DF: 5エミル・スパヒッチ(Cap.)2スタニシャ・ニコリッチ→4ボヤン・レゴイエ(53分)6ブラスティミル・ヨバノビッチ→17アメル・ユーゴ(HT)8ダリオ・ダムヤノビッチ、13ベリミル・ビディッチ
MF: 3サミル・メルジッチ、11ミルコ・フルゴビッチ→15フェナン・サルチノビッチ(83分)7アドミル・ブラダビッチ→18アレン・シュコロ(61分)10ムラデン・ジジョビッチ→16セミル・スティリッチ(83分)
FW: 9アドミル・ラシュチッチ→14ステボ・ニコリッチ(HT)
SUB: 12ヤスミン・ブリッチ

◇ イビチャ・オシムの母国ボスニア・ヘルツェゴビナは旧ユーゴスラビア社会主義連邦国家体制の分裂後に独立した。サッカーの旧ユーゴ代表にも優秀プレーヤーを送り出してきたところ(オシムもその一人)で、平均して体が大きく、やわらかいボールタッチという旧ユーゴの流れを引き継いでいて、チリとは違うタイプのチーム。2戦目の日本代表がどれだけ調子を上向きにしてきたか、また守備が固いはずの相手をどう崩すかを誰もが期待した。

◇日本のスターティング・メンバーは、DF4人は中央に中澤佑二、阿部勇樹、右に内田篤人、左に駒野友一と変わらず、MFは鈴木啓太、中村憲剛、遠藤保仁に大久保嘉人、FWは巻誠一郎と高原直泰。フィールドプレーヤーでは山岸に代わって大久保が入っていた。ゴールキーパーも川口能活から楢崎正剛に代わっていた。超ファインプレーでボールを止めることもあるが、ポカの出ることもある川口とは別に、安定度で信頼されている楢崎にも出番を持ってきたところに、予選開幕を間近にしているこの試合の意味がある。
 大久保をトップ下に置いたのは、この位置での彼のプレーを仲間に馴染ませることも考えたのだろう。もともと大久保はキープ力もありドリブル突破もできるしパスもうまい。彼のような小柄なプレーヤーは前に残ってゴールを背にしてプレーするよりも、広く走り回ることで彼の決定力も生きる――かねがね私は思っていた。体を張って積極的に前線から守備をし、長身で空中戦で相手の脅威となる巻誠一郎と、ストライカーとしてのポジションプレーの習熟度を増した高原直泰と、大久保との組合せには多くの人が期待したハズ。

◇相手の中盤でのプレッシングが第1戦に比べて少なかったから、日本のボールキープと展開はスムーズだった。前半のボール保持率は日本65.3%。5分に高原がペナルティ・エリア左角の外から右足でシュートした。しっかり踏み込み、押さえのきいたシュートだった。GKハサギッチが防いだが、どうやら調子が戻り始めていると見た。
  第1戦の終盤に左からのクロスにヘディングを合わせることのできなかった巻だが、相変わらず意欲あふれるプレーを見せた。GKハサギッチとの衝突もあり、前半33分に退くことになった。交代は山瀬功治。大久保、高原の2トップの下に入る形。

◇前回にいささか“指針”にこだわったイレブンに対して、岡田監督はその時々の選手の自主判断を求めたという。パスのテンポ、長短などについて(相手の動きもあるから)当然のことだが、遠藤や中村たちも短いパスで相手を一方に引きつけておいて逆サイドへふる――変化ある展開を見せるようになった。

◇もっとも、中盤での抵抗が薄くても、それだけゴール前での守りはしっかりしている相手に対して日本側はボールを上手に回すが決定的なシュートチャンスにはならない。
 ゴールが生まれるのは後半23分(68分)になってからだった。この頃になると、ボスニア側の動きが落ちる。競り合ったときの足の出る早さが鈍くなる。手を変え品を変え――といった、日本の攻撃を防ぎ、ボールを奪えばカウンターに出てゴールを奪いにくるといったハードな動きを繰り返してきたボスニア側の守りにほころびが出はじめる。
  65分から立て続けに右CKが3本あった。キッカーの遠藤はその前の2本とはコースを変え、ペナルティ・エリア右角内側へ送って山瀬のシュートを期待した。山瀬の右足のシュートは誰かに当たってコースが変わり、ゴール前にいた中澤の足元へ。中澤はこれを左サイドキックで決めた。コースの変わったボールが中澤に達するのに、ボスニア側の反応はほとんどなかった。

◇CK、FKの停止球からの、いわゆるセットプレーは日本の攻撃の重要なテのひとつだが、岡田監督の下での初ゴールもやはり停止球からだった。
  1点の回復を狙ってボスニア側が攻撃に出ようとする意志を高めることで、日本にはカウンターのチャンスが生まれる。

◇2点目は左サイドで、こちらのミスでいったん奪われたボールを今野泰幸(78分に中村と交代)が追走して奪い、そこからボールが大久保に渡ったところから始まった。
 相手のDFの裏へすでに播戸竜二(82分に高原と交代)が飛び出していた。オフサイドだった。大久保はゆっくりキープし、戻ろうとする播戸と自分の右側を駆け上がる山瀬を見て、山瀬の前へボールを送った。相手DFの間を通し、取られないように浮かせたボールが、バウンドし山瀬の前に転がった。山瀬が追いついたときにはDFは誰もおらず、目の前へ出てきたGKハサギッチの右下を抜くシュートを送り込めばよかった。

◇トップの播戸が飛び出し、第2列から山瀬が走り上がるという形は3点目も生む。
  88分のこのゴールはハーフライン近くの左タッチラインでのスローインから今野が前方へロングボールを送り、播戸が相手DF2人の間でヘディングを取って中央へ落とす。誰もいないところへ出てきたボールに山瀬が長いダッシュで追いつき、ノーマークシュートを決めた。

◇チリに比べると中盤の抵抗が少なかった点では、日本にはやりやすい相手だったかもしれないが、3ゴールを奪った得点への意欲は素晴らしい。
  10年前、1998年のフランス・ワールドカップの日本代表監督を務めてから10年後に再び代表監督を務めることになった岡田武史は52歳の働き盛りであり、また、10年の経験を積んでいる。同時にまた日本代表チームそのものも(選手は入れ代わっても)ワールドカップ初出場から10年を積み重ねている。監督もフィリップ・トルシエというフランス人からブラジルの名選手ジーコ、そしてオシムが関わってくれた。
 今度のチームと岡田監督をサイドから見ていると、この2試合を見た限りでは、選手も監督も前へ進んでいることが読み取れる。
 もちろん個々のプレーには不満もあるが、チーム全体が監督が代わっても進化の足を止めていないことで、今後を期待することにしたい。


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1月26日 日本代表 vs チリ代表

2008/01/26(土)

監督は代わっても日本流サッカーの進化は続く

キリンチャレンジカップ2008
1月26日(東京・国立競技場)19:10
日本代表 0(0-0 0-0)0 チリ代表

【日本代表メンバー】
GK: 1川口能活(cap)
DF: 22中澤佑二、3駒野友一、25内田篤人→21加地亮(71分)
MF: 7遠藤保仁、14中村憲剛→10山瀬功治(80分)13鈴木啓太、6阿部勇樹、9山岸智→8羽生直剛(57分)
FW: 19高原直泰→16大久保嘉人(62分)12巻誠一郎→20矢野貴章(80分)
SUB: 18楢崎正剛、23川島永嗣、5坪井慶介、4岩政大樹、15水本裕貴、24橋本英郎、2今野泰幸、11播戸竜二、17前田遼一

【チリ代表メンバー】
GK: 1ミゲル・ピント
DF: 18ゴンサロ・ハラ、5ハンス・マルチネス、4ロベルト・セレセダ
MF: 11ゴンサロ・フィエロ、2マルコ・エストラーダ、17ガリー・メデル、16マヌエル・イトゥーラ(Cap.)10ペドロ・モラレス
FW: 13ジャン・ボセジュール、7エドゥアルド・ルビオ
SUB: 12クリストファー・トセリ、3オスバルド・ゴンサレス、15ラファエル・カロカ、8フェルナンド・メネセス、14ホアン・ムニョス、9マティアス・ビダンゴシー、6ポリス・サグレド

ダゴさんのチリ国歌

◇46年前の開催国大会の3位の栄光のあと、チリはワールドカップに4度出場したが、ベスト8に届くことはなかった。
  2010年の南米予選はすでに始まり、10チームのホーム&アウェー総当りリーグで昨年の11月7日までの各チーム4試合終了時でチリは1勝1分け2敗、得点4失点7で7位とやや不振。4位までが本大会へ、5位は北中米カリブ海地域のチームとのプレーオフに勝つことが出場の条件となっている。
  こういう形勢のなかで、今年6月に再開される予選を控えて、代表強化はアルゼンチン人監督のマルセロ・ビエルサ監督にとっての急務、キリンチャレンジカップでの東アジア遠征(このあとの韓国戦を含めて)は新しいメンバーを選ぶチャンスとなっている。
 来日メンバー18人は24歳(4人)を年長に23歳(4)22歳(3)21歳(2)20歳(1)19歳(1)18歳(3)と若手ばかりで、1月初めから合同練習を始め20日からJヴィレッジで合宿練習したのも、この遠征にかける熱意の表れだろう。南米予選のレギュラーは3~4人で準代表といえるメンバーだが、モチベーションが高く、準備も充分だった。

◇先発メンバーの平均年齢は日本が26.5歳、チリは22.7歳。経験ではこちらのほうが上で、しかもホームグラウンドでありながら、日本側が苦戦したのは、相手の方が選手個々の調子がそろっていたからだろう。
 もともとチリの選手は体格は大きくなくても、1対1のボールの取り合い、奪い合いの粘り強さには定評がある。私は87年の南米選手権であのディエゴ・マラドーナ(86年W杯優勝・アルゼンチン主将)がチリの選手にからまれて、ほとんどいいプレーができなかったのを見たことがある。その伝統は、今度の若手にも生きていた。手をからめ、足をからめ反則を交えつつ、相手の動きを封じるところ。また“ここでボールを奪われてはピンチになる”と見たときには反則覚悟で(それもさり気なく)つぶしにくる狡猾さも備えていた。

◇こういう相手がプレッシングをかけ続けてくれば、日本側の試合展開は難しくなる。試合全体では4分6分、前半は相手優勢との印象となった。
 それでも前半9分に巻誠一郎、38分に高原直泰のシュートチャンスがあった。1本は中央左寄りで3本のパス交換のあと遠藤―巻とラストパスがつながったもの。巻のトラッピングが少し内に入ったのが惜しかった。高原のシュートは巻が相手ボールを奪ってパスをしたもので、高原はペナルティ・エリアすぐ外、中央右寄りでノーマークとなったが、トラッピングが外へ流れ、踏み込みが遠くなってボールは右上へそれた。

大久保のシュート

◇ スタンドの観客もテレビ観戦者も、この日は岡田イズム云々よりも後半に高原と交代した大久保嘉人の4本のシュートに驚いたハズ。1本目は62分に交代してすぐ、相手バックラインの裏へ走り、GKミゲル・ピントのミスに乗じてボールを奪いシュート(オーバー)。65分に左サイドへ飛び出し、ボールを受けて中へ入ってシュート(オーバー)。3本目は遠藤の右CKをヘディング(GKに防がれた)。86分の4本目は矢野貴章へのロングボールのコボレ(相手DFが矢野をプッシングで倒した)を大久保がDFに競り勝ってのダイレクトシュート(オーバー)だった。この試合90分間の10本のシュートのうち、大久保だけで4回もシュートし、しかもそれが全て成功しなかったのだから……。

◇日本代表にも良い点はいくつかあった。まず、右サイドに内田篤人を起用したこと。このポジションには滝川二高出身でセレッソ大阪にもいたことがあり私自身も注目し続けている加地亮がプレーしているが、彼との比較は別にして、ボールを持つときにキープやドリブルに自信があり、足が早く、フォームの良い内田が若いうちから代表で働くことは彼にも代表にもいいことだと思う。ボールを奪われない自信があるから、相手を前にして落ち着きがあり、姿勢が良いので視野が広く、パスコースの選択もできる。守備面もまずまずだった。

◇遠来のチリ側が後半になっても選手交代をしないのに、日本側が交代を5人送り込んだが、それぞれの特徴が生きたこと、特に大久保の瞬間的なダッシュの早さとDFラインの裏へ出る動き、相手にとってそれまでの高原や巻とは違うタイプだったから効果があったハズだ。
 ただし、得意の右足シュートを3本とも決められなかったこと、それも(1本目はゴールカバーのDFの頭上を抜こうとしたのだろうが)3本ともバーを越えたのは残念なことだった。こういうチャンスを作りながらなぜシュートを失敗したのか、彼自身もコーチもその原因を突き止め、修正しなければなるまい。

◇ 岡田武史監督は「接近、展開、連続」という指針を打ち出した。それをどうピッチ上で表現するかも反復練習するだろうが、試合中の状況に応じて、その時々の判断は選手がするべきもの――という考えを持っているハズ。指針は示しても教条主義でないところが試合中のチームに表れていたのも(当然ながら)良かったと思う。

 第1戦の0-0、決して満足とはいえないが、全体としてはいい流れで進んでいるように見えた。

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