スポーツ

2012年7月11日 日本女子代表 vs オーストラリア女子代表

2012/07/14(土)

キリンチャレンジカップ2012
2012年7月11日(水) 17:10キックオフ(東京/国立競技場)
日本女子代表 3-0(前半2-0) オーストラリア女子代表
 得点 宮間 あや(25)、大儀見 優季(45+1)、澤 穂希(58)

澤に回復の証

――国立での2試合いかがでした?傘寿(さんじゅ)の体には6時間ぶっ続けの試合取材は大変じゃないかと心配する人もいましたね。

賀川:なでしことU-23代表、それもロンドン・オリンピックを2週間後に控えての壮行試合を見られるのですから、こんな楽しいことはありませんよ。テレビ放映もあるから、生で見たものをもう一度自宅でビデオを見て、反芻できるのもキリンチャレンジカップのうれしいところです。

――試合前に賀川さんは澤穂希の“キラリ”が戻ってきたと書いていましたね。この試合ではゴールも決めました。

賀川:東京のスポーツ紙の翌日の1面は澤穂希でしたね。当然でしょう。ゴールを奪ったし、相手のボール奪取にも鋭さがもどってきたからね。

――ワールドカップドイツ大会の決勝でのゴールから1年ぶりの得点でもある。

賀川:完調とはいえないまでも彼女らしさが試合の流れの中で再三あらわれていた。オリンピックということになると、日本サッカーの歴史では唯一銅メダルを取った1968年メキシコ大会の男子チームということになるが、この60年代からのサッカーファンには、銅メダルチームでいえば八重樫茂生キャプテンと、大会得点王の釜本邦茂選手の2人を合わせた働きを彼女は昨年ドイツで見せたのです。

――その彼女のコンディションが1年前に戻ってきたと

賀川:そこまでは言えないでしょうが、彼女でなければというタイミングの奪取もあり、チームの3点目となるゴールを左CKの時に決めている。

――宮間がライナーを蹴り、誰かにあたってゴール前に流れ、熊谷の体にあたったリバウンドを澤がシュートした。

賀川:後半13分のこのゴールの話の前に、まず開始早々1分の左CKに澤が飛び込んでヘディングしたのがあった。メインスタンドから見て、左手側のゴールで記者席の私の位置はあちらのゴールは遠くて見えにくい。今回は大型の双眼鏡で眺めたから宮間のクロスに彼女が飛び込むのを生で見ましたよ。

――オペラグラス的な小さいのではなく、東郷平八郎が日本海海戦の時に首からかけていたような大きなやつですね。

賀川:司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」によると、東郷司令長官のツァイス(ドイツ)製らしいが、私のは日本製です。8倍で小型とかわらないが、視野が広くてみやすい。特定の選手を見たいときには、重いのを承知で持って行くのです。

――昔はペレやマラドーナ、今回は澤さんですね。

賀川:おかげで宮間が澤にあわせ、澤が飛び込むのをみました。帰宅してビデオを見たら、ヘディングした後で、GKバービエリの手が出て来て、澤の顔に当たっている。その気配もあってか、飛び込んだ時に頭を下げ、ボールから目を離したからヘディングはゴールにはならなかった。長い間実戦から遠ざかっていて、徐々にリーグにも出て慣らしてきたといっても、ああいうゴール前のいわば修羅場へ自分から飛び込んでいくようになるのはなかなかのものですよ。このCKの彼女のプレーでゴールへの意欲が見ている者にも伝わった。

――だから後半の彼女のゴールは全員の喜びになった。

賀川:宮間がなんとか澤に合わせて点を取らせようとしている気持ちも伝わって来た。チームの3点目となったこのゴールは、それまでと違って低いライナーだったからね。高い球に強い長身のオーストラリア勢だが、体の動きは必ずしも敏捷ではない。それに対して鋭いライナーでうまくゆけば間を通って、澤に合うかもしれないし、相手に混乱が起きることでチャンスが生まれると狙ったのかも知れない。

――人の間を通って熊谷に当たり、澤の前に落ちたのも宮間の想定内?

賀川:そこまで言わなくても、そういう結果ありと読んだでしょう。澤は目の前に来たボールをすばやくボレーでとらえてゴールへ送り込んだ。

――ああいうプレーは落ち着いているというか

賀川:体の動きが少しずつ戻ってきたのでしょう。むずかしい高さではなかったから、スムースに右足が出ていた。

――CK、FKの停止球だけでなく、流れのなかでの彼女の飛び出しは威力がありますからね。

賀川:タイミングをつかむうまさ、ボールを競り合ったときの強さ、速さも粘りもふくめて、いまの日本代表の中でも上のクラスだからね。この試合の直前のINACの試合で、それを見ることができた。壮行試合では、その回数が増えた。最盛期とは言えないまでも、彼女がこうした回復のステップを上がっているのを見たのが、この試合でのまず一番うれしかった点といえる。

優勝メンバーに見るひたむき

――前に代表全体は足踏みとか…

賀川:なでしこリーグを見ても、代表の主力がいるINACは勝ってはいるが、チームとしては伸びてはいない。個人力でもそうだ。他のチームはINACを目標にして、力をつけているのだろうが、トップのINACに進化がないということは、代表も進歩していないということになるでしょう。

――何か問題でも?

賀川:INACの監督さんも選手たちも努力を怠らないはずだが、なにしろ昨年に大仕事をした後、そう簡単に次のレベルに進むのは難しいもの。1974年のワールドカップで西ドイツがクライフのオランダに勝って優勝した後、ベッケンバウアーやゲルト・ミュラーたち主力6人のいたバイエルン・ミュンヘンはチームがガタガタになてしまったことは、前にもお話したはず。INACはしかもベッケンバウアーとも言うべき澤が調子を崩したのだから、もっと大変だったと思う。

――個人技の上達があれば、というところ

賀川:こういうときに個人力を伸ばすためのいろいろな考えややり方はある。それでも環境激変という別の条件のあるなかで、上手にならなくても、ある程度のコンディション維持ができただけでも私はINACの功績と思っていますよ。

――選手たちも人間ですから、いつも進化を続けるわけではない

賀川:止まることもあれば、進むこともある。ボールを止め、蹴るという基本技のアップと走り、体を練ることを続ければ、ある時期に一段も二段も上がることができる。ひょっとすると、ロンドン・オリンピックがそのチャンスからも知れないのですよ。

――68年のメキシコでの釜本さんのように、蹴れば入るという感じになった選手もいる。大舞台もまた上達のチャンスだと?

賀川:いまのなでしこは、U-23の男子代表と違って、自分たちの出来ることが戻り始めているという自信を持つことが大切だと思いますよ。

――たとえば

賀川:右のDFで攻撃のうまい近賀ゆかりにしても、この試合で何回か大儀見優季へパスを送り、大儀見のゴールを生み出した。大儀見というより私たちには永里という方がまだ親しいが、この有能なストライカーの能力については、本人も周囲も理解している。したがって、ここ2週間のうちに、もう一度、どのタイミング、どのコースがうまく合うかをこの例のようにそれぞれに作り上げることなんです。守りについても同じで、攻守の組織プレーを築くことでしょう。

――その基礎となる技術はある

賀川:川澄にしても、目に見える進歩、たとえばいっそう足が速くなったとか、強い球を正確に蹴れるようになったとかいうことはなくても、1年間積んできたものを、もう一度代表の仲間のプレーとつきあわせてみれば、昨年の自信の上にさらに新しいプレーが生まれる可能性もある。それが強い相手との対戦で甦ることもあるはずですよ。

――オーストラリアよりも上のクラスの相手とこれから戦うのですからね。

賀川:何度も言うように、この1年に目に見える進歩はなかったとしても、昨年の経験の上に努力を積み重ねてきたという無形のものが加わる。澤が回復して、彼女がいるだけでチームは昨年と違った形でもう一度一枚になると思う。

――アメリカは挽回を図ってくるでしょう

賀川:自分たちを目標に世界が努力していると思うのはとても愉快なことでしょう。そういう相手に受けて立たずに、こちらからガツンといくことでしょう。

――壮行試合の開始早々からの澤さんの意気込みのようにですね。

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2012年5月23日 日本代表 vs アゼルバイジャン代表(下)

2012/05/26(土)

伸びる内田、長友、新しい酒井も戦力
森本の故障は?宮市はこれから

――森本貴幸がキックオフからワントップの形で出ていて、36分に相手DFとの競り合いで腰を痛めて前田遼一と交代しました。

賀川:せっかくのチャンスに惜しいことをしたね、これまでよりは体調もよさそうだったから期待したのだが、、

――ポジションプレーという点でもうひとつでしたね

賀川:前田は経験もあり、ポストプレーはとても上手だからこの日のメンバーなら攻撃展開はそつなくするでしょう。それはわかっているから、あえて森本がどれくらいやれるかを監督さんは見ようとしたのだろうがね・・・

――内田、長友の両サイドの攻めは?

賀川:この2人は持ち味は違うが攻撃での素質は充分、あとはラストのプレー(シュートやクロス)の精度、タイミング、コース、強さなどを含めての話でしょう。特に内田がもっとシュートしてほしいね。

――守備陣は?

賀川:危ない場面もあった。まずは無失点でいったが、本番ではどうだろう。私はどこと戦っても1点取られてもあわてないことが第一と思いますよ。そのためには守りとともに守から攻への切り替えでミスパスしないこと。またパスを奪われれば、強い気持ちで奪い返すことでしょう。細貝のがんばりはそのよい例ですが・・・

――このところ、日本代表にもファウルが増えています。

賀川:Jリーグもそうだが、手や腕を使うファウルが多くなった。相手の背後に体をつける時にも手を前へ出してプッシングを取られたりする。相手のFKの有効距離でのファウルは身長差のある外国チームとの試合ではマイナスになる。トルシエがホールディングを指導してから「するのが当たり前」の感じになったが、少し慎んだ方がいいでしょう。

――2点目もすばらしかった。香川の左からのクロスからのゴールです。

賀川:ドリブルでDFをタテに抜いて、ペナルティエリアのゴールライン近くからクロスをあげ、本田がヘディングした。このボールの落下点に岡崎慎司が走り込んでいてシュートした、というより空振りだったが、落下してバウンドしたボールをGKもDFも止め切れずにゴールに入った。岡崎がつめていたからの得点だが、香川のドリブルとクロス、それをヘッドした本田と呼吸のあった攻撃だった。

――本田はヘディングも強いから

賀川:香川はこのゴールの直前にも左サイドをドリブルしてゴールラインからグラウンダーのパスを入れている。得点にならなかったが、前のそのクロスとは違って、このときは高いボールのクロスを選択した。本田のヘディングはいまの代表のひとつの武器でもある。体が強くてジャンプの時に相手にあたられてもバランスが崩さないのがすごい。

――酒井宏樹もいいクロスをあげて、その技と力を披露した。若い宮市もそこそこにやりました。

賀川:宮市は長身で足が速く、これまでの日本には珍しいタイプの一人だが、ボールを蹴る技術のつけ方でしょうね。ヨーロッパにいい基礎技術のコーチがおればいいのだが・・・

――全体的に収穫の多かったキリンチャレンジ。あとはいよいよ本番でいい試合をしてほしいですね。

賀川:サッカーは何が起こるか分からない、と言うが、いい何かが起きてほしいですね。

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2012年5月23日 日本代表 vs アゼルバイジャン代表(上)

2012/05/25(金)

キリンチャレンジカップ2012
2012年5月23日(水) 19:15キックオフ(静岡/エコパスタジアム)
日本代表 2-0(前半1-0) アゼルバイジャン代表
 得点 
香川 真司(43)、岡崎 慎司(58)


本田の復活で代表チームに光ふたたび

――本田圭佑の久しぶりの復帰はいかがでした?

賀川:今度のキリンチャレンジカップは6月3日からのワールドカップアジア最終予選の6月シリーズ3試合の直前リハーサルでしょう。それも本田圭佑という代表チームの攻撃の核が足の故障で長くチームから離れていたのが、ようやく復帰してきた。すでに所属しているロシアのCSKAモスクワでは試合に出ているから大丈夫だろうとは思っていても、やはり実際に自分の目で確かめたいもの。

――ザッケローニ監督もJFAの幹部もこの日、静岡のエコパ・スタジアムに集まった人たちもそのはずです。

賀川:テレビ観戦の多くのファンも、その多くの感染者が本田のプレーを見て、ホッとしたというところだろう。

――ゴールは決められなかったが、チャンスにからみ、決定的な場面でシュートやヘディングもした。得意のFKも見せてくれた。

賀川:この日の日本代表の試合にザッケローニさんはじめ日本中が、まず満足したはず。その大部分は本田のコンディションが回復していることを知ったことが大きい。

――ごひいきの香川真司はよかったですね。

賀川:彼は23歳の伸び盛りにあって、急速に伸びているというより、しっかり基盤を作って充実し続けているという感じだね。この試合では本田が入ったことで攻撃展開がいない時より格段にやりやすいことが香川自身も改めて確認したはずですよ。

――アゼルバイジャン代表は?

賀川:ロシアの南、トルコとイランの北側、黒海とカスピ海にはさまれた地域があって、古くはコーカサス、今はカフカスと呼んでいる、そのカフカス山脈の南側、カスピ海に面しているのがアゼルバイジャン共和国。ソ連邦の時代にはアゼルバイジャンソビエト社会主義共和国という名でソ連邦の一員だった。日本サッカーが64年の東京オリンピックに向かって強化に懸命のころ、日ソスポーツ交流で日本代表もソ連邦各地を転戦したが、その時この国の首都バクーでバクー・ネフチャニクというクラブと試合をしている。長沼健監督、岡野俊一郎コーチのころですよ。

――半世紀前の話ですね。

賀川:トルコ系の住民が多く、体格がよく、プレーは粘り強い。サッカーのこのバクー・ネフチャニクや隣国のディナモ・トビリシといった強いクラブがあった。アゼルバイジャンとして独立したいまはUEFAに加盟していて、今年6月に開催される欧州選手権(EURO2012)の予選にも参加している。

――本大会にはムリ?

賀川:予選Aグループでドイツ、トルコ、ベルギー、オーストリア、カザフスタンと戦った。ドイツやトルコが相手ではここから本大会へはおいそれとはゆけない。2勝1分7敗で5位だった。

――カザフスタンよりは上だった。

賀川:トルコに1勝、ベルギーとの引分けもあった。監督は有名な元西ドイツ代表のベルティ・フォクツで、2008年から2年契約だったが、2010年9月からのEURO予選の好成績で2012年まで契約延長した。ブラジルワールドカップ予選に向けての若い選手を加えてのチームを連れて来ていたようだ。

――FIFAランキングは100位より下ですが、ドイツやベルギーなどと戦って結構揉まれているわけですね。そういえばスライディングタックルが多かったのはフォクツの直伝かな

賀川:かもね・・・だがフォクツのはもっと近い間合いからの鋭いスライディングだったから、目下勉強中というところだろう。2002年のW杯で日本と対戦したトルコや、あるいはアジアでいつも顔を合わせるイランのように見た目よりも日本にはやりにくい相手というところでしょう。

――それが前半はほとんどワンサイドのようだった。

賀川:日本代表と初めて当たると相手は日本代表の早いテンポに戸惑って、ついていくのが精いっぱいになる。しかしそれでもしっかり守っていて、時折カウンターをしてきたでしょう。

1点目のパスのつなぎに本田のアイデアと長谷部の早い動きと判断、香川のシュート力

――日本代表は香川と長友の左サイドからチャンスを作った。本田のほれぼれする長友へのスルーパスもあった。

賀川:2010年のワールドカップを経験したあと、2011年の夏までの日本代表の試合で、パスの能力、攻撃の組み立てる力も素晴らしいことを実戦で何度も示していた。対アゼルバイジャンでも、そのキープ力や突破する力とともに仲間へのパスの巧さで観客を喜ばせた。日本のゴールは相手が中盤のFKから右へまわして、右から中へクロスを送りこんでくるという攻撃を防いだ後のカウンターからはじまったのだが、この時も本田の巧みなヒールパスが大きなアクセントとなった。

――前半42分のゴールですね。相手のクロスを防いで、長友が前方へ送ったボールがインターセプトされて、またこちらの守備ラインにボールが戻ってきた。それを長谷部が取ったところから攻撃が始まった。

賀川:(1)深い位置から、長谷部はすぐにハーフウェイライン近くの本田へパスした。その長谷部の足元へ相手の一人がスライディングしてきた。それをかわしながらのパスだった。
(2)そのパスが本田の届こうとするとき、また相手の一人がスライディングタックルで妨害しようとした。
(3)これに対して本田は少し位置をずらせて後方を向いたまま左足のヒールパスで駆け上がってくる長谷部に渡した
(4)長谷部-本田-長谷部という三角パスを受けて長谷部はドリブルし左に展開している香川へ。DFラインの裏へ通すスルーパスを送った。
(5)ペナルティエリア内でパスを受けた香川は遅れて飛びこんで(スライディング)くるDFを左足の切り返しで内へかわし
(6)余裕をもってゴールの右ポスト内側へシュートを送りこんだ
(7)2人のアゼルバイジャン選手がゴールカバーに入ろうとしたが、ボールはファーポスト内側へ吸い込まれた。

――香川はイメージ通りのゴールだったと言っています。

賀川:ペナルティエリアの左角の位置からのシュートは右利き選手なら右足での右ポスト内側すれすれに入るフック(カーブ)キックと、もうひとつ左ポスト(ニアサイド)ぎりぎりに叩きこむ2つのコースをまずマスターするのだが、真司はドルトムントへ出発する前のセレッソの試合(長居)でエリア左角からこのファーポストへのシュートを決めている。私がリーグで見た彼の新しいシュートコースだった。エコパではエリアの内、ゴールエリアの左外角とペナルティエリアの左角を結ぶ線上からだったから、この型の短めのシュートになった。

――こういう時に、しっかりと決めるのが真司!

賀川:もう自分の型ができている。彼の今度の移籍先と噂されるマンチェスター・ユナイテッドのルーニーも同じ型のもっと強い球を蹴るけれど、正確さでは真司かな・・・
それにしても本田のアイデアはすごいね。長谷部からのパスをヒールのリターンで攻撃正面を左に替えたのだからね。もちろん彼はこの型のプレーをこれまでにも演じているから、これも彼の持ち芸、あるいは持ち技のひとつですよ。長谷部のパスも持ちあがりのスピードということがなかったから、まさに絵に描いたようなゴールシーンだった。

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2012年4月5日  なでしこジャパン 対 ブラジル女子代表

2012/04/08(日)

キリンチャレンジカップ2012
2012年4月5日(木) 19:45キックオフ(兵庫/ホームズスタジアム神戸)
なでしこジャパン 4-1(前半1-1) ブラジル女子代表
 得点 日本:オウンゴール(16)、永里優季(58)、宮間あや(61)、菅澤優衣香(89)
    ブラジル女子代表:フランシエリ・マノエウ・アウベルト(45+1)

――FIFAランク1位のアメリカと2011のチャンピオン日本、それと北京オリンピック銀メダルのブラジルという3チームによるキリンチャレンジカップ2012は
日本 1−1 アメリカ 4月1日
アメリカ 3−0 ブラジル 4月3日
日本 4−1 ブラジル 4月5日
となって、なでしこジャパンが1勝1分得点5失点2、アメリカ1勝1分得点4失点1、ブラジルが2敗得点1失点7で日本が優勝しました。

賀川:日本代表、なでしこジャパンとそれを構成するメンバーの層が厚くなり、個々の選手の力が昨年の優勝以来、少しずつ充実していること、それを2試合で示したといえるでしょう。もちろん、ホームで戦ったのだから、優勝して当たり前という見方もできる。また実力ある相手との試合でも、そういう見方をする時期に来ているともいえるが´ーー。

ーーどこかで賀川さんはもう少し進化が早くてもいいということを言ってましたね。

賀川:まあ老人は気が短いからね。低年齢層からの育成、トップの強化など、いまほど日本サッカーは環境に恵まれている時期はないのだから――男子ともども日本全体に技術面、体力面、サッカーセンスの面、コーチ力の面で、もう少し進化が早くてもいいと、いつも言っています。その早い遅いは別としてもこんどのキリンチャレンジカップシリーズで何人かの選手の向上が見られたのは、とてもいいことです。

ーーさて、試合です。対ブラジル戦は北京オリンピック銀メダルのブラジルから4ゴールしました。

賀川:ブラジルは今世界で最も優秀な選手と言われているマルタがいるのだが、今回は来日しなかった。彼女がいればどうなっていたか――そのマルタ除きでも前半は互角、むしろブラジルに勢いがあった。

――テレビ解説でも、4月3日の対アメリカ戦と5日の対日本戦ではブラジルの意気込みが違うというように言っていました。

賀川:16分の日本の先制ゴールは、ゴールから30m、左サイドのFKを宮間あやが右足で蹴ったのがオウンゴールになってしまった。ゴール前中央でDFのアリニ・ペレグリノがヘディングでクリアしようとして失敗。頭をかすめて落ちてバウンドしたボールをキャプテンのダイアニ・メネゼスがヘディングで自分のゴールに入れてしまった。

ーー宮間のキックがよかったとも

賀川:速いボールだった。日本側はボールのコースに飛び込めなかったがアリニの前に宇津木瑠美がつめようとし、ダイアニの外から田中明日菜が追っていた。

ーー勢いがあっただけにブラジルにとってはこの失点は痛かったでしょうね。それでも45+1分にFKから同点にした。

賀川:なでしこのDFライン、つまり第3列とその前のMF陣のパスのやりとりを狙われ、奪われたボールを取り返そうとしたファウルでペナルティエリアの外、左角に近いところだった。

ーーフランシエリ・マノエウ・アウベルトという選手の右足のいいシュートでした。

賀川:強い回転ではないが、右ポストの内を狙う典型的なカーブシュートだった。スロービデオでボールのコースを見ながら、やっぱりブラジル人だなと思いましたよ。

ーー後半の日本の1点目も宮間の右CKからでした。

賀川:彼女が左足でニアポストへ蹴ったライナーを相手のDFの背後から前へ入り込んだ永里優季のヘディングだった。永里にとっても会心のプレーでしょう。キッカーとの呼吸の合った見事なゴールですよ。

ーー少し気落ちした相手に、その3分後にこんどはすばらしい展開で3点目を奪いました。

賀川:自陣右サイドの大野忍からDFの中央へ、さらに左に展開して左サイドで縦パスが出て、そこから今度は相手のペナルティエリアの根っこ(ゴールラインの交叉点)まで持ち込み、ゴール正面へクロスを送るという、多くのチームの監督さんたちが夢見るような展開の後のゴールだった。

ーー左の前へ飛び出した菅澤優衣香が左から中へ持ち込み、DFの足の間を抜くゴロのクロスを送ったのが、ゴール正面へ走り込んだ永里に来た。

賀川:それを永里が止まって左足をのばしてトラップし、もどって反転して右足でシュート、GKアンドレイア・スンタケが防いだリバウドを走り込んで来た宮間が決めた。

ーー宮間は後半からMFの中央にいましたね。

賀川:この日の宮間はここまでのボール全てにからんでいるが、感心したのはその宮間の外に、大野もきちんとつめていた。

ーー最初のパスを出した大野が、右でボールがまわっていたのにゴール前へ出ていたわけですね。

賀川:スロービデオを見ると、反転シュートするときに永里がいったん顔をあげたようだった。ひょっとするとその時、右サイドへ大野が上がっているのを見たかもしれない。こういうときの反転シュートはだいたいゴールキーパーの正面へ行きやすいものだが、永里のシュートはゴールキーパーの体の芯から外れていたーーだからキャッチでなく叩くセービングで叩くことになったというわけ。

賀川:永里はこの日は調子が良かったが、このシリーズで、ドイツでプレーを積んでいる効果がいろいろな形で出ていたようにみえた。

ーー川澄にゴールはなかったが。

賀川:彼女はこの日もシュートのチャンスにしっかり蹴っていた。相手DFを右へかわして右で打ったシュートはなかなかのものだが、少し浮いたね。あの形で押さえの効いたシュートができれば、もうひとつ上になる。

ーー4点目で近賀ゆかりのプレーをほめましたね。

賀川:近賀はこのシリーズでやはり攻撃への冴えをみせた。この4点目、一番疲れているタイムアップ直前に持ち上がり、菅沢の走り込むのを予想してニアへスピードを殺したパスを送って菅沢のダイレクトシュートを引き出した見事なプレーだった。

ーー相手は遠征チーム、疲れて動きが鈍ったこともあったが、選手は後半は余裕があって、いいプレーが重なりましたね。

賀川:それはとても大事なことですよ。もちろん相手が元気でガンガン来ているときにもいいプレーを演じてゴールを奪えるようにならなければいけないのだが、ともかく自分たちの攻めの経路をつくりあげ、それでゴールを重ねるーーことを積み上げるのが大切ですよ。

ーーこれでなでしこ人気がさらに高まってくれれば。

賀川:ごく最近、サッカーについて全く知らなかった年輩の婦人が、なでしこの活躍ですっかりとりこになってテレビを見ているーーと言っていた。こういう新しいファンのためにも、なでしこはいいプレーを見せてほしいものですよ。

ーー新しいファンと言えば、68年のメキシコ五輪の銅メダルで急激にファンが増えたころ、賀川さんは「お父さんのためのサッカー教室」という連載をどこかの雑誌で書いていたでしょう。ひとつ番外編でおかあさんのためのサッカーの見方でも書いてみたらーー

賀川:そうだね。なでしこのサッカーはバルサに似ているが、バルサほど動きが早くないのでテレビでもわかりやすいはず。そういうプレーを説明し、理解してもらうことも大事でしょうね。

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2012年4月1日  なでしこジャパン 対 アメリカ女子代表

2012/04/03(火)

キリンチャレンジカップ2012
2012年4月1日 19:30キックオフ(宮城/ユアテックスタジアム仙台)
なでしこジャパン 1-1(前半1-0) アメリカ女子代表
 得点 日本:近賀 ゆかり(32)
     アメリカ女子代表:アレックス・モーガン(72)


――強敵アメリカとの1-1いかがでした?

賀川:試合そのものも面白かったけれど、私は開幕セレモニーのアメリカ国歌を聞きながら、ジーンときましたよ。

――何か思い入れがありましたか?

賀川:アメリカ軍の音楽隊の男女が盛装して歌ったでしょう。その歌声とワンバックたち選手が口を動かしているシーンをテレビで見ながら、こういう形で日本とアメリカのスポーツ交流が行われるようになったことに感激したね。

両国のスポーツといえば、これまではまず野球(ベースボール)だった。それがサッカーで、しかもワールドカップ優勝の日本と、FIFAランキング1位のアメリカが大震災の被災地仙台で---ですよ。あの震災のときのアメリカ軍のすばやい対応は、私たちには忘れることはできない。

――賀川さんのような戦中派で、アメリカと戦争をした世代は特にそうでしょうね。

賀川:必ずしもこの国のすることは全てがいいとは言えないけれど、あの大正12年(1923年)の関東大震災のときも、一番先に日本にかけつけたのは、救援物資を積んだアメリカの駆逐艦だったという記録もある。当時はアメリカでは日本の移民排除運動のあったころですよ。

――そういうことも改めて思い出させてくれたということですね。

賀川:キリンカップ、キリンチャレンジカップはこれまでも外国チームとの対戦でいろいろなサッカーの楽しさを味合わせてくれたが、今回は震災と女子のナンバーワン同士という点でもとても意味のある催しとなったと思いますよ。

――日本の女子サッカーにとっても意義は大きい。

賀川:テレビで女子サッカーを見せてもらえるのはJFA(日本サッカー協会)にとっても、女子の関係者にとっても、とてもありがたいことでしょう。男子のコーチや指導者、選手、あるいは親御さんにとっても女子のトップ級のプレーを見ることはとても参考になるはずです。

女子を見ることで、男子のコーチも勉強になると。

賀川:多くの指導者にはとてもプラスになったはずです。

――さて、このアメリカ戦は昨年のワールドカップ決勝(2-2でPK戦で日本)、今年3月のアルガルベカップ(1-0で勝ち)に続いて3連勝できるかというところでした。

賀川:スコアは1-1、前半は日本がよく、後半はアメリカに勢いがあった。シュート数はどちらも8本ずつ。ワールドカップの優勝で、日本の中心選手がアメリカに対して自信をもつようになった感じもあるが、相手のプレッシングが激しくなると、なかなかボールをきちんとキープできず、パスミスも増えたところが今後の課題だろう。

――先制ゴールは近賀でした。

賀川:彼女は右サイドの高い位置へ進出して、前半はそこからチャンスを生んだ。得点の時の攻めは
(1)熊谷からのパスをノーマークで受けた近賀が
(2)右タッチ際からいったん中の川澄に渡し、
(3)川澄がドリブルで相手の守備網の前へ進み
(4)DFラインの裏へ、ふわりと小さく浮き玉のパスを送った
(5)このとき大野がDFラインの裏へ入っていて、オフサイドの位置だったが、彼女は状況を見てプレーの動作を起こさず、
86)外から裏へ走り込んだ近賀がボールを取り、ゴールライン右ポスト近くから中へパス
(7)ファーサイドにいた永里がダイレクトシュートした
(8)ボールはDFに当たり、GKにも当たって近賀の前へ
(9)近賀が左足で蹴り込んだ。

――川澄のうまいパスでしたね。

賀川:川澄はワールドカップの後、上手になった。元々ドリブルもシュートもしっかりしていたのが、自信を持つようになったのだろうね。自分のスピードをよく知っていて、緩急をつけ、また体でボールをカバーしたりできる。

――相手をかわすだけでなく、持って出てシュートまでゆけますからね

賀川:ボールを持った時に自信があるから周囲も見えるようになっている。

――この試合では、惜しいシュートもあった

賀川:ノーマークシュートを横殴りで蹴って、逆ポストの外へ出したのもあったね。もともと点の取れる選手で、まだまだ伸びるでしょう。

――チームのパス攻撃は進化したように見えましたが、守備はどうでしょう。

賀川:守りと言うのは基本は1対1の守りの強さが基礎となるので、いくら組織力で守っても、日本の個人力では男子も女子も、どこと試合しても1点は失なうものと考えた方がよい。だから勝つためには、どこを相手にしても2点を奪える力をつけることですよ。なでしこも攻撃の組み立てはずいぶん上手になってきたから、シュート力とどこでシュートするか、つまりフィニッシュの位置やスペースの選び方とそこへ入ってシュートすること――その力と方法を身につけることです。ちょっとした各個人の工夫と選手たちの「あうん」の呼吸で、もっと点が取れるようになるでしょう。

――アメリカはどうでした?

賀川:ベテランのワンバックがあまりよくなかった。モーガンはあいかわらず危険なFWだが……これだけのタレントがいて、そこそこの技術もあるのに、もう少し理詰めの展開をすればより強いチームになりますよ。

そう、ポルトガルの大会で日本に勝ったドイツはFWにひとり、これまでのドイツ選手とは違ったタイプがいたでしょう。単純なタテへの攻めで日本が失点したのは、ドイツ人と違った身のこなし、ドイツ人と違った速さ(たとえば足を出す速さ)のプレーヤーがいたからだと思います。

――ブラジルは一番のストライカー、マルタが来日していないそうです。

賀川:せっかくのチャンスで惜しい気がするが、マルタ以外にもいいタレントがいるかもしれない。そういう相手と戦えるのも、このキリンチャレンジカップのいいところですよ。

――3日にアメリカ対ブラジル(フクダ電子アリーナ)があるので、そうした外国チーム同士のレベルの高い試合を見ることができる。

賀川:日本の女子サッカーは、いまパスワークで世界で高く評価されるようになったのはいいけれど、個人力を高めることも大事なこと。アメリカの選手たち、ブラジルのプレーヤーの技術や体力、走力をこの試合でみるのもとても勉強になるはずです。

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