U-23日本代表

2016年6月29日 U-23.日本代表 対 U-23南アフリカ代表

2016/07/08(金)

キリンチャレンジカップ2016
2016年6月29日 長野/松本平広域公園総合球技場
U-23.日本代表 4(3-1、1-0)1 U-23南アフリカ代表

――相手がオリンピック予選を突破して本番に出場するチームということで、注目されましたが、日本が4-1で勝ちました。

賀川:会場に集まった人も、テレビで観戦した人も、日本のゴールのたびに声を上げたことでしょう。スピーディーな試合展開でしたね。前半にPKで1点を失ったが、3ゴールを奪って前半のうちに逆転しました。後半には1ゴールを加え、南アフリカの攻撃を防いで、結局4-1という大差になりました。相手は遠征でアウェイのハンデのあることは頭にいれておくべきでしょうが…。

――PKは日本のハンドの反則ということでした

賀川:前半28分に相手のDFからのロングボールをDFの亀川が胸でトラップした時に、ボールが右腕に触れて落下した。

――ちょっと亀川には気の毒な感じもありました

賀川:レフェリーがハンドを認めてPKになってしまった。こういうことも、本番前に経験したのはわるくない。

――GKの櫛引がどうするか見ていたら、シューターが蹴る前に動きましたね。シュートそのものは守備範囲、というより動かないでいたら正面にきたはずでした

賀川:ゴールキーパーにとって、試合中のPKを経験したのも、私はプラスになったと思います。

――37分に日本が同点にしました

賀川:35分に攻め込んで防がれた後、ハーフウェイラインからの攻めだった。

――今度も右からでした

賀川:足下へのパスを戻りながら受けた浅野が相手のDFとつぶれる形になり、そのボールが中央へ流れたのを矢島がとって、すぐ右を走り上がった大島にパスした。

――大島は一気に相手DFラインの裏へ出てボールをとり、10メートルほどドリブルしてペナルティエリア内に入り、出てきたGKを前にして、左へパスをした。このパスを受けた中島が、誰もいないゴールへ流し込みました。

賀川:この1点で勢いづいた日本が、この後、前半のうちに2点を決める。

――南アフリカも、点を取ろうと攻めに出るので、互いに攻め合う形になり、それだけにチャンスも増えたのだが、うまい攻撃からのゴールだった。

賀川:2点目は左サイドでのパス交換から長いパスを右へ送り、そこから矢島が右外を駆け上がる室屋にパス。室屋がタテにドリブルして内へパスを送ったのを矢島がダイレクトシュートで決めた。

――3点目はゴールキーパーの櫛引のキックから、相手DFが処理した後のパスを浅野が奪って、ペナルティエリア内でキープし、エリア内右寄りから中央へクロスを送り、中島がヘディングで決めた。

賀川:相手のCDFのヘディングが左DFにわたり、中央へリターンされたのを浅野が奪ってからの攻撃でした。

――前からのプレッシングの効果のひとつでしたね。3-1になりました。

賀川:この試合を見ながら私は、ロンドン五輪の代表を思い出しました。永井という足の速いFWを先頭に、前からのプレスで相手を圧迫した第一戦の対スペイン戦の勝利で、一気にチームの調子が上がったのでした。

――後半早々に、4点目が生まれました。

賀川:自陣からの植田の長いパスを相手DFが止め損ねたのを浅野が奪って、ドリブルして決めました。相手のミスという幸運もあったが、こういう「運」をつかむこともチームとしての実力ですからね。

――ゴールを奪えるチームになったとみてよいでしょうか

賀川:後半はこの1点だけだったが、多くの惜しいチャンスもありました。浅野は後半の14分に豊川と交代したが、この日の動きで、自分自身にも、チームの仲間にもこの代表の中心はストライカーになりえることを見せてくれたと言えます。

――南アフリカはゴールを奪い返そうと、後半もよく攻めました。日本にはラッキーな面もあったが、3点の点差で士気は高く、追加点を許さなかった。

賀川:手倉森監督がつくったU-23代表は、これで国内の試合を終えて、代表メンバーでの最後の合宿に入り、リオに向かいます。すでにオーバーエイジ枠のメンバーも決まっていて、次は本番用のチームを組むことになります。

――ここまでオリンピック代表の試合を見てきて、どういう評価になるのでしょうか

賀川:日本代表の伝統的な強さは、豊富な運動量と組織力ですが、サッカーの基礎である一人一人の戦いでもレベルは上がっていると見ました。サッカーはチームスポーツで、どのポジションの選手も大切ですが、オリンピックのような大会で勝ち上がってゆくためには、ゴールを奪う力がなくてはなりません。そのために浅野というストライカーが台頭してきたことはとてもよいことだと思っています。

――日本サッカーの男子のオリンピック唯一のメダルは1968年メキシコでの銅メダルでしたが、その時には大会の得点王になった釜本邦茂さんがいました

賀川:浅野という速さを基調とするストライカーの成長は、日本にとっての大きな力になるでしょう。体格や技術の上で、浅野を68年の釜本といえるかどうかは別として、持ち前のスピードと、ここ1年間の伸びを見ると、大きな期待をかけたくなります。

――チーム全体としてのレベルは

賀川:技術はしっかりしていますから、残り1か月でチームワークが高まれば、と期待しています。日本のサッカーは、選手のレベルの高さだけでなく、JFA全体の技術指導などの面でも、アジア諸国のなかで評価されています。そうした、日本サッカー全体の力を今度のブラジルでのオリンピックで見せてほしいと願っています。

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2012年7月11日 U-23日本代表 vs U-23ニュージーランド代表

2012/07/16(月)

キリンチャレンジカップ2012
2012年7月11日(水) 19:55キックオフ(東京/国立競技場)
U-23日本代表 1-1(前半0-0) U-23ニュージーランド代表
 得点 杉本 健勇(71)、失点(90+4)

補強DFの守備力アップ

――さんざん攻めて1点だけ、最後にDFがボールを奪われ、1失点で1-1という結果になりました。

賀川:いま好調の俊足、永井謙佑が何度も突破をみせ、大津祐樹がどんどんチャンスにシュートし、清武弘嗣が期待通り見事なスルーパスを通してみせて、誠に面白い攻撃を展開した。ニュージーランドのU-23がしっかり守って、ときおりカウンターで日本側をヒヤリとさせたから両チームにとってはとても勉強になった。

――日本はDFが自陣でボールを奪われて点を取られるという本番ではやってはいけない面をのぞかせたから、勉強といえば勉強だが、いまごろこれではというファンもいた

賀川:このチームはもともと左の守備が心細かった。オーバーエイジで徳永悠平が入って、そこはまずしっかりした。

――しっかりしただけでなく、彼のミドルシュートから貴重な1点が生まれた。あれだけチャンスをつくって、この1点だけだった理由は何でしょう?

賀川:チャンスといいながら、ラストパスの精度が悪くて、いいシュートチャンスは少なかった。またシュートそのものもよくなかった。

――シュートに関しては一家言あるハズですね。

賀川:永井のシュート3本と、大津の4本のすべてはサイドキックか横なぐりです。サイドキックでシュートするのはコントロールという意味と小さな振りということが考えられるが、インステップで蹴ったのがオーバーヘッドだけだから。

――ふーむ

賀川:これについては、この時期にうんぬんする問題ではないが、いつも言っているように、体格が劣る(小さい)日本人は一般的に言えば、マルコ・ファンバステン(190cm)に比べると足が小さい。だからピッチ上のボールをインステップで蹴りやすい。それが日本人の特徴でもある。小柄のジーコがシュートやフリーキックの名手だった理由もそこにあるという人もいる。その特徴を使わないのはとてもおかしなことだが…

――バルサ、スペインのサッカーもそこにあると言われるのでしょうが、その話はいまちょっと横に置きましょう。

賀川:U-23代表の攻撃で点を取れないのは一本調子だから。攻撃が単調だからという声があった。まことにその通りです。そのため、試合中にタメや間(ま)をつくれるプレーヤーを置く、あるいはパスの展開のやり方で自然に間をつくる、といったこともできるのだが、この試合ではそうはならなかった。

――U-23代表からはずれた大迫勇也はそういうことができるタイプですね。

賀川:彼はアジア勢との試合でも当たられてバランスを崩して、いわば体の強さという点から欧州、アフリカ勢相手では損だとみられたのだろうね。

――フル代表に本田圭佑という体幹のしっかりしたプレーヤーがあらわれ、その強さがどれほど有益かを皆が知った。5月のトゥーロンの国際大会でトルコ、オランダ、モロッコと試合して、U-23はやはり体の差を感じたという。だから体のよいのが集まった?

賀川:ニュージーランド戦では、選手たちの意欲がよく出ていたと思う。それが単調になってしまい、得点できなかったというのだが…

――必ずしもそうではないと

賀川:技術論争、パス論争をここではじめる気はないが、一本調子で速いだけであってもラストパスがもっと正確なら得点につながっただろう。しかし高速でのプレーの正確さはこれもむずかしいもの。そこで自ら緩急が語られることになる。パスといえばラストパスの前に相手の動きを止める、あるいは反応を遅らせる仕掛けをすることも必要になる。

――清武のパスなどは実にうまいと思いましたが

賀川:彼の“目”の確かさはすばらしい。しかし折角の見事なスルーパスで大津が走り込んでもシュートチャンスに相手の体がくっついてきていて防がれている。

――テレビの画面を思い出せば、なるほどと思いますが…

賀川:バルサのようだと今の日本のなでしこもU-23も代表も言われている氏、言ってほしいようにも見えるが、シャビやイニエスタのスルーパスは時に相手DFを止まらせておいて、こちらの選手だけが走っている(一瞬だが)そういうタイミングでパスが出ていることをよく見ておいてほしい。(足のインステップやアウトサイド・インサイドなどの使い方も)

充実・永井、覚醒・清武たち攻撃力の進化に期待

――清武にもっと積極的にという声も

賀川:サッカーは昔から一番上手な選手が一番たくさん働く、と言われている。パスを出した後、次にもらって自分でシュートする気構えが清武にあってもいいでしょう。

――スターティングメンバーは大津と永井のツートップ、清武と東の第2列、山口螢と扇原貴宏のボランチ、DFラインが右から酒井宏樹、鈴木大輔、山村和也、徳永悠平、GKが権田修一でした。

賀川:もう一人のオーバーエイジ吉田麻也がケガのため出場しなかったが、彼を加えて、これがベストメンバーでしょう。齋藤学というドリブラーで走り回れるFWと19歳の杉本健勇というCFタイプがいる。

――MFでは、この日は不参加の宇佐美貴史への期待も高い。

賀川:名前をあげなかった選手もなかなかの素材だが、この日の試合からゆけば、永井の突破力を再三見せつけたのはいい材料ですよ。

――秘密兵器だったはずでは?

賀川:もう各国には知られていますよ。いま好調の彼が存分に走ることで、自分もチームも自信を持つことになったでしょう。ここ1年ばかりでスピードだけでなく、体そのものが強くなってプレーも安定しましたからね。

――あとは崩すだけでなく、決定的なフィニッシュも、ということ

賀川:まあそうですね。その彼の突破力をどれだけ活かし、フォローするかが攻撃のひとつのポイントですよ。

――大津をどう見ましたか

賀川:彼は試合の後、しばらく倒れていたでしょう。ドイツのかつての名門ボルシア・メンヘングラッドバッハにいて、試合にはあまり出場していない。ドイツでどのような練習をしているかも不勉強でよく知らないが、実戦に出ていないのは損ですね。だから彼はこの試合で点を取りたかったし、勝ちたかった。自分と誰かとの技術や動きをどう組み合わせるかということよりも、ともかく何かやれることを見せたいという感じだった。

――それはそれとして

賀川:U-23代表、若者らしくていいのだが、相手がエリア内で厚く守っているのだから、どうしてそれを崩すかを仲間との連係でみせてほしいところだった。日本国内ででも試合に出ていれば自然にそうなるはずだが…

――第2列の走り上がり、あるいは飛び出しが少なかったとの声も

賀川:東があまり前へ出なかった。一度後半に前へ出てポストになり、大津にシュートさせたいいプレーもあったのだが…

――ゴールを生んだのは徳永のミドルシュートをゴールキーパーがはじいてそれを杉本が決めた。いい位置にいた。

賀川:それまで第2列はシュートしなかったし、また、あってもポカーンと蹴りあげてしまうシュートだった。徳永は抑えの効いたいいシュートを打った。ただし、このシュートの場面を作ったのは相手のクリアミスですよ。ただその伏線は左のペナルティエリア外へ走り込んだ扇原がゴールラインギリギリでクロスを返したことにあった。扇原のトラップが大きくて、ゴールラインを割りそうだったのを彼ががんばって追いつき、長い左足のリーチを活かしてクロスを送った。そのボールは相手DFに向かったが、処理しにくいボールとなってDFに当たり、そのボールをクリアしたのが小さくて、徳永にとっていいところに転がった。

――意識的でなくても扇原のちょっと大きなトラップとその後のクロスが相手をまごつかせた?

賀川:サッカーというのは面白いもので、時には思い通りでないことがチャンスになることもある。バルサのような名人上手ばかりのチームにもそういうチャンスもあるのですよ。だから諦めることはないというわけ。

――ニュージーランドのようにロンドンでも低い評価のチームとの1-1で試合後にブーイングもあったそうで…

賀川:ニュージーランドの選手たちのがんばりを讃えるのがオリンピック精神でしょうね。それはともかく、16チーム参加のロンドンのU-23で、まず1次リーグ突破が大変なこと。ただし勉強にゆくのではなく、勝ちにゆくことになる。
 まず、清武をはじめ18人が、その気にならなければ1次敗退であっても驚くことはない。相手にはプロの大物もいるでしょうが、U-23が主だからこの年齢層では気持ちの面が大きく響くことが多い。いい選手が多いはずのスペインでも同じ傾向のはずです。

――ヨーロッパでの練習試合と本番での若い代表の気迫を見たいものですね。

賀川:もちろんシュート練習もコンディション調整も大切です。この大会は日本のオリンピック代表にとって初めてのロンドン大会です。目の肥えたイングランド、ヨーロッパのファンを驚かせてほしいですね。44年前にメキシコで銅メダル、その32年前つまり今から76年前にヨーロッパのオリンピック(ベルリン)で日本代表はスウェーデンに逆転勝ちして世界を驚かせました。ほとんどが22~23歳の大学生主体のチームでした。
 そうした先輩の憧れたサッカーの母国のブリテン島で、いいプレーをしてほしいと願っていますよ。決勝はなにしろ、ウェンブリーですからね。

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7月29日 U-23日本代表 vs U-23アルゼンチン代表

2008/07/29(火)

壮行試合を見て楽しみが増えたU-23となでしこ。近年になく充実したサイド攻撃

キリンチャレンジカップ2008
7月29日(東京・国立競技場)19:20
U-23日本代表 0(0-0 0-1)1 U-23アルゼンチン代表

【U-23日本代表メンバー】
GK :1西川周作
DF :4水本裕貴(Cap.)、6森重真人、13安田理大→5長友佑都(77分)7内田篤人
MF :16本田拓也、12谷口博之、10梶山陽平、8本田圭佑→11岡崎慎司(77分)14香川真司
FW :9豊田陽平→15森本貴幸(65分)
SUB:18山本海人、3吉田麻也、2細貝萌、17李忠成

【U-23アルゼンチン代表メンバー】
GK :1オスカル・ウスタリ
DF :4パブロ・サバレタ、3ルシアーノ・モンソン、6エセキエル・ガライ、2ニコラス・パレハ
MF :5フェルナンド・ガゴ、8フアン・ロマン・リケルメ (Cap.)14ハビエル・マスケラーノ
FW :16セルヒオ・アグエロ、9エセキエル・ラベッシ→18ラウタロ・アコスタ(79分)11アンヘル・ディマリア→7ホセ・ソサ(73分)
SUB:12セルヒオ・ロメロ、13フェデリコ・ファシオ、15エベル・バネガ、17ディエゴ・ブオナノッテ

◇7月24日、神戸での壮行試合でオーストラリアと対戦した日本女子代表なでしこは3-0、U-23(男子)は2-1で勝った。
 その5日後、今度はアルゼンチン代表を迎えての壮行試合第2戦がキリンチャレンジカップとして東京国立競技場で行なわれた。
 大会の直前にこうしたタイプの違うチームと2試合を、それも多くのファンの前で行なえたことは、選手たちにとっても、コーチ陣にとっても、とても有意義だっただろう。スタジアムで声援を送ったサポーターも、テレビ観戦のファンにも、このドレス・リハーサルはまことに楽しく、“なでしこ”とU-23の日本代表の実像をつかむのに大いに役立ったハズ。北京への期待がふくらんだ壮行試合だった。

◇29日の16時1分にはじまったなでしこ対アルゼンチン女子代表は、2-0で日本の勝利。澤穂希(さわ・ほまれ)を軸としたチームはチームとしてのまとまりがよく、パスワークも“あうん”の呼吸が生まれるようになり、ゴールも取れるようになってきている。あとはベストコンディションで本番を迎えてくれることを願うだけだ。

◇さてU-23は――。この年齢層で最も有名なリオネル・メッシ(バルセロナ、87年6月24日生)は来ていなかったが、オーバーエイジのフアン・ロマン・リケルメ(ボカ・ジュニアーズ、78年6月24日生)ハビエル・マスケラーノ(リバプール、84年6月8日生)ニコラス・パレハ(アンデルレヒト、84年1月19日生)が加わっていた。
 日本は結局オーバーエイジなしということになった。いろいろな意見もあるだろうが、いまの国内外の事情からみれば、これもひとつのゆき方だろう。

◇今回のチームというより、岡田監督のフル代表を含めてはっきりしているのは、右サイドに内田篤人(鹿島)左に安田理大(G大阪)あるいは長友佑都(FC東京)という、外側のポジションで仕掛けてゆける選手をもったこと。長友は右サイドもできる。日本サッカーのこれまでの攻撃では、サイドでのキープやサイドからの突破があまりにも少なかったのが、私には不満だった。2年前に鹿島の内田を見たときに“久しぶりに現れた”と希望を持ったが、彼がここにきてフル代表とU-23での経験によって自信をつけてきた。この日の対アルゼンチン戦でも、前半の早いうちにスピードに乗っての突破で相手がファウルで止めなければならぬようにして、気分的にも優位に立って、何回かの有効な攻めを見せた。


≪オーストラリア戦の同点ゴール≫

◇24日の対オーストラリア戦でも、彼は自分のキープからドリブルして中へ入り、中央の李忠成にパスをしたことから同点ゴールを生みだした。ご存知のように、李がこのボールを止めないで後方へ通し、その内田のパスのライン上にいた森本貴幸が相手DFを背にワンタッチで外へ方向を変えて、走り上がってきた香川真司が、ワントラップシュートしてゴール左下隅へ決めたものだった。
 この一連の流れはペナルティ・エリアの中で相手にマークされていてもシュートチャンスを生み出したビューティフルな連係プレーで、ジーコ時代のフル代表でもそう何度も見られなかった好プレーだが、そのスタートはボールを拾ってからの内田の余裕のあるボールの持ち方、相手にすぐは奪われないぞ――という自信ありげな態度とそれに続く正確なパスにあった。

◇この内田とMF本田圭佑との協力による右サイドのキープ、突破の連係プレーが見られたのも、この日の収穫のひとつ。本田はその左足のキック力は定評があるが、体がしっかりしていて相手との接触プレーにも強く、彼のプレーで生まれる自然の“間(ま)”が内田のスピードを生かす“溜め”ともなっていた。

◇左の安田理大も自分から仕掛けられるが、この左サイドでもMFの香川真司との協力が、今後の日本の攻撃全体にも大きく響くことになるだろう。長友も同様なのは言うまでもない。


≪成功した五輪とサイド攻撃≫

 日本のようにパスをつないで攻めるのを重んじるところであっても、1対1で相手を抜ける自信がなくてはパスワークは単調になり、生きてこない。これまでの例を見ても、1936年のベルリン・オリンピックの対スウェーデン逆転劇は左サイドの加茂正五、加茂健という兄弟のペアの攻撃でチャンスを作った。
 どん底時代の日本が韓国を押さえて1956年メルボルン・オリンピックの出場を果たしたときも、最後の古典的ウイングといわれた鴇田正憲(ときた・まさのり)の右サイドのキープと突破とパスでチャンスを生んだ。
 1968年のメキシコ五輪の銅メダル獲得でのCF(センターフォワード)釜本邦茂の働きはあまりにも有名だが、その釜本のシュートチャンスを作ったのは左サイドの杉山隆一だった。
 彼の突破のスピードとクロスの正確さがあってはじめて、メキシコ五輪の得点王が生まれた。

◇今度のオリンピックチームには、片側のサイドだけでなく右も左も適材を得た。それをサポートできるプレーヤーも出てきたといえる。

◇反町康治監督やコーチたちは、守りの固さには自信を持っているようだ。29日の対アルゼンチン戦は防ぐ気持ちになったときに、どこまで守れるか――のひとつのテストだった。
 前半はピンチはあったが、ともかく無失点で済んだ。後半はアルゼンチン側がスピードアップ、一つひとつの競り合いやダッシュの早さ、強さが変わりはじめた。それでも65分まで0点でゆけたが、68分にゴールを奪われた。
 フィニッシャーはアンヘル・ディマリア。彼がセルヒオ・アグエロからパスを受け、一度左へゆくと見せて右へ外してシュートした。DFをかわして、間髪入れずの右足シュート。サイドキックで球そのものにスピードはなかったが、蹴ったタイミングはGK西川の予測より早かったのだろう。セービングで西川は手を伸ばして触れたが防げなかった。
 このアグエロ―ディマリアの巧みなプレーに至る経路(失点までのゲームの流れ)を見ると、こちらの攻撃の後にピンチが生まれているのが見えてくる。

◇後半66分に日本は相手のペナルティ・エリアのすぐ外、ゴールラインから5メートル地点でFKのチャンスを得た。梶山陽平からのパスを受けた内田が相手のファウルで倒されたためだった。それまでのFKよりも近い位置だから当然チャンスではあったが、本田圭佑の左足で蹴ったボールはニアサイドのDFのヘディングでクリアされてしまう。それでも、このボールを香川が右タッチライン近くで拾いドリブルし、梶山に渡して自分はDFラインのウラへ。それに合わせた梶山のパスは大きすぎて香川よりも先にGKオスカル・ウスタリの手に渡る。ウスタリはこれを前方へ大きくパントキック、そこからアルゼンチンの攻撃がはじまり、ヘディングでのバックパスを経て、また前方へ。ここでアグエロがボールを受け巧妙なフェイクで日本DFを惑わしてキープし、右に走り上がるディマリオに渡し、ここでディマリオがフェイクと大きな切り返しで日本DFをかわしてシュートしたのだった。
 日本が攻撃に出て、深い位置でFKという大チャンスをつかんだが、そのFKをクリアされ、その後の再攻撃を直接に相手GKにパスを取られてしまったのが、カウンター攻撃を食うきっかけだった。

◇サイドからのFKやCK、あるいはクロスをニアで相手のDFにはじき返されれば、横パスをカットされたのと同じことになる。そしてまたパスを直接相手ゴールキーパーに献上すれば、キーパーのキックは攻撃の第一歩となりこちらには危険なこと――。
 アルゼンチンのような強いチームとの試合では、こうした攻撃に出た後の落とし穴がいつも待っていることになる。

◇そのためにも、クロスやFKをニアでカットされないよう、評論家たちが常に指摘するクロスの精度アップを図らなくてはなるまい。それは、私の期待する若い内田、安田、長友といったサイド攻撃の担い手も同じこと。彼らはいい素材ではあるがまだ完成品ではなく、クロスの高さ、強さ、ボール落下点の調節についてはまだ物足らないことが多い。

◇サイドに素材が定着しはじめた攻撃を締めくくるフィニッシャーは、李にしても森本にしても大会での成長を待つことになる。大事なことは、サイドのプレーヤーのようにゴールへの意欲を持つこと。これはFWだけでなく第2列や第3列も同様。その点、ゴールへ飛び込んでゆく谷口博之や左足の自信家・本田圭佑、ダッシュ力と運動範囲に優れた香川のいるこのチームは、1試合ごとに得点力を伸ばしてゆくかもしれない。豊田陽平という体のしっかりしたFWは、もう少し上手になれば、一挙に開花できそうな素材に見える。

◇相手のアメリカ合衆国もナイジェリアもオランダもなかなかの強敵だ。29日のアルゼンチン代表を見ても、個人力でもチーム力でも相手の方が上であることが分かる。しかしサッカーでは、年間を通じてのリーグなら実力あるチームがいい成績をあげるのは当然だが、ワールドカップやオリンピックのように短い期間の大会では必ずしもそうではない。予想では強いといわれた相手に勝った例は日本サッカーの歴史にもいくつかある。北京で成果をあげることは、選手一人ひとりの人生にとっても大きなプラスになる。彼らの先輩たちが「全力を尽くして栄光をつかんだ」ように一丸となっていい試合をすることを願っている。

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