2022年6月10日 日本代表 対 ガーナ代表
2022/6/10(金)日本/兵庫・ノエビアスタジアム神戸
日本代表4-1(2-1) ガーナ代表
――ガーナは今秋のカタールW杯出場を決めています。キリンカップ、ノックアウト形式の初戦、日本は立ち上がりから攻撃的にいきました
賀川:チーム全体が自分たちからシュートを打とうという気になっているのがよかったですね。6日のブラジル戦は善戦といえる内容でしたが、得点に関してはそこまでいけませんでしたから。とにかくどんどん打っていく。ゴールに近い位置にいる選手が、気負わずシュート動作に入っていました。チーム全体として、シュート意識のアップがうかがえます。前半最初、堂安が持ち込んでから放ったシュートにしても、思い切りがありました。シュートというのは打たないと入りません。頭で考えてじっとしていても入りません。ゴールに向かってどんどん蹴らないことには入りません。その気構えがよく出ていました。
――前線の選手がしっかりボールを追っているので、ガーナの選手は少し慌てながらボールを回していたようにみえました
賀川:日本の選手が激しくプレッシャーをかけるので、おのずと中盤でボールを奪い返す場面が増えました。だから、チャンスを多く作れました。遠藤のようにボールを奪い返すのが得意な選手だけでなく、久保なども必死で取り返そうとしていました。だから、試合のほとんどの時間帯で主導権を握れました。
――先制点は前半29分、右サイドでのパス回しから、右サイドバックの山根が決めました
賀川:この時間帯、両サイドで日本の選手が細かいパス交換で局面を打開するシーンが続きました。ダイレクトパスが入るとチャンスは広がります。右サイドの久保から堂安へのパスはややズレたようですが、堂安が伸ばした左足からのダイレクトパスがDFの裏に出て、そこに走りこんでいた山根につながった。このパスも山根が思っていたところとは違ったところに流れてきたようですが、体の向きを入れ替えて、左足でうまくゴール左スミに決めました。堂安と久保は東京五輪で一緒にプレーしていたので、あうんの呼吸のようなものがありますね。2002年の日韓W杯で監督を務めたフィリップ・トルシエはセレッソ大阪の森島寛晃、西澤明訓を評価していて、代表の試合でいい働きをしました。最終メンバーを考える上で2人1組セットという考え方もあります。
――その山根が前半43分、痛恨のミスパス。ロングパスを狙ったがミスキックになって、ゴール前にフリーだったガーナの選手へのパスになってしまった
賀川:シュートを決めた選手は右に打とうという構えを見せて、ゴール左へ突き刺しました。ブロックにきた吉田の動きを見ていたのでしょう。川島の読みも外されました。このあたりはさすがでした。ガーナもW杯に出るチームですから、見逃してくれません。
――前半終了間際に左サイドの三笘が切り込んで、クロスのようなボールを入れると、上田と堂安が走りこみました。合いませんでしたが、そのままゴールに吸い込まれました
賀川:右足のインフロントで鋭く回転をかけた見事なキックでした。ボールを受けた瞬間から余裕がありましたね。大きく右に持ち出してから、しっかりと足首を固定して鋭く蹴りました。誰かが触っても入るし、触らなくてもそのまま入る。GKが触れそうで触れないところを狙った、計算づくのプレーといえるでしょう。
――インサイドハーフを任された久保が後半28分、個人技で左サイドを突破した三笘のクロスに左足で合わせて、3点目。これが代表初ゴールでした
賀川:日本は久保にもっとボールを触らせる回数を増やした方がいいかもしれませんね。久保ばかりに触らせなくても、攻撃の形はあるというチームになっていますが、彼の能力を考えるとチームの大きな力になりますから。代表初ゴールが遅くなったことは、たまたまでしょう。本人は気にしていたかもしれませんが、これからいくらでも決めてくれると思います。彼がたくさんボールを触ったとき、チームの攻撃がどんな風にかわるか、まだ仲間があまりわかっていない、やってみないと分からないような感じなのかもしれません。この試合は相手のこともあるけれど、長友、南野ら大物はみんな休んでいる感じでした。日本は全体のレベルが上がっているから、そういうこともできるわけです。この6月シリーズ4連戦は、2戦目(6日)のブラジルと、最後(14日)のキリンカップ決勝に主力が出て、それ以外の2試合は2番手グループにチャンスが与えられた格好というところでしょうか。そういう意味では、久保はまだまだチャレンジする立場ということです。何度も相手に削られて、脚が痛そうにしていましたが、フル出場したということは、本人も今の立ち位置が分かっているでしょう。相手にぶつかられても倒れない選手が日本人の中でも増えてきているので、そのあたりが課題になります。シュートそのものは、三笘がゴールラインに近いところまで侵入してからクロスを上げているので、入れるだけでした。後ろに戻すということは、仲間のシュートのコースが広いわけだから、打ちやすい。久保の技術からすれば、難しいものではありませんでした。
――前田もゴールを決めて、4-1。アフリカのW杯出場チームを圧倒しました
賀川:いまの日本はボールを持てるのが当たり前という感じになっています。自分たちの代表チームの試合を見るのが楽しくなってきました。
――三笘はどうでした。切り札として期待されているようなところもありますが
賀川:フルに出していい選手でしょう。これだけ個人で打破できるのですから。長い時間プレーすれば、それだけ多くのチャンスを作り出すでしょう。彼がフルに出ないと勝てない相手がW杯ではなんぼでもくるわけですよ。サッカーっておもしろいもので、うまい選手がボールを持つと取られないわけですよね。だから、相手も行きたくない。行って抜かれて恥をかきたくないから、どうしてもそこに余裕ができるわけです。三笘がボールを持ったときもそう。飛び込んだらやられるのは間違いない。うかつに飛び込めない。だから三笘は相手の動きを見ながら仕掛けることができます。ライバルは南野ですか。彼も素晴らしい選手ですから。タイプの違う2人ですが、高いレベルで争ってほしいですね。森保監督もうれしい悩みでしょう。いまの日本代表は本当にうまいし、強くなりました。日本がボールを持って、攻めるのが当たり前にという感じにこのチームはなっている。最初から最後まで自分たちでゲームを支配していました。
――賀川さんの地元神戸での代表戦でした
賀川:3年前はノエビアスタジアム神戸で取材しましたが、まだコロナ禍も続いているので、テレビで観戦しました。ノエビアスタジアム神戸は神戸御崎球技場を建て直して、2002年の日韓W杯のときに誕生したスタジアムです。御崎球技場は日本にまだ芝生の専用球技場がなかった時代に神戸のサッカー関係者が力を合わせてつくったスタジアムでした。1970年、来日したベンフィカ・リスボンの一員として、エウゼビオがプレーしました。彼の機知にとんだプレー、シュートのうまさには感服したものです。日本サッカーの歴史の中で神戸の関係者が果たしてきた役割は決して小さなものではありません。日本代表の試合が継続的に神戸で行われることをうれしく思っています。