2022/6/14(火)日本/大阪・パナソニックスタジアム吹田
日本代表0-3(0-0) チュニジア代表
――チリに勝ってキリン杯の決勝に進んできたチュニジアは、今秋のカタールW杯出場を決めています。20年前の6月14日、日本が2002年の日韓W杯、ファーストラウンド最終戦でチュニジアと対戦し、2-0で勝利。不思議な巡りあわせの対戦でした
賀川:あれから20年ですか。あの日、当時の自宅があった芦屋から電車に乗り、長居スタジアムに向かいました。家から電車でW杯を観に行ける日がくるとは…と思ったことを覚えています。後半から出場した森島寛晃がすぐにゴールを決めて、盛り上がりました。途中出場でしたが、所属していたセレッソ大阪のホームスタジアムだったので、違和感なくプレーできたのでしょう。スタジアムの形状が頭に入っているので、自分の位置、ゴールの位置が頭に入っていました。得意の角度からシュートを打つまで迷いがなく、思い切って右足を振りぬいたのをよく覚えていますよ。中田英寿がダイビングヘッドを決めて、追加点。試合が終わった後のスタジアムでサポーターから万歳三唱が起こり、まるで甲子園のような雰囲気でした。フィリップ・トルシエ監督に率いられたあのチームもうまい選手が多かったですが、いまの代表チームは技術的にさらにうまくなっていますね。ちなみにその28年前の1974年の6月14日、西ドイツW杯の西ドイツ―チリをベルリン・オリンピック・スタジアムで取材しました。当時はサンケイスポーツの局次長でしたが、上司の理解があって、初めてW杯を取材することができました。ベッケンバウアーのエレガントなふるまいや、ミュラーの迫力、ブライトナーのシュートに驚嘆した1日でした。6月14日という日は、私にとっても思い出深い日であります。
――前半は0-0。右サイドの伊東から何度もいいクロスが入りました。絶好機だった鎌田はミスショットになりました。あれが決まっていれば…というシーンでした
賀川:雨が降っていたので思っていたより球足が速かったのか、空振りになりました。強く蹴らなくてもいい、ボールに合わせればいいシュートでした。右サイドからチャンスを作っていましたが、中で待ち受ける人数が少ない気がしました。サイド攻撃から人数をかけてゴール前になだれ込んでいくような形をつくることができれば、得点の可能性が高まります。
――ところが、後半3失点。吉田がPKを献上してしまいました
賀川:相手のカウンターに対応した吉田が引っ掛けてしまいました。VTRを見ると吉田が抜かれても、裏を板倉がカバーしていたので、対応できていたかもしれません。焦りがあったのか、声の連携がどこまでできていたのか。課題が残りました。
――2失点目は敵陣深くから相手GKが蹴りこんだロングボールを吉田、板倉、シュミット・ダニエルがお見合いした感じになりました
賀川:吉田と板倉からすれば、GKが出てきて処理すると思ったのかもしれませんね。スキを見逃さなかったチュニジアはさすがでした。ボールを奪い返されたところで、シュミット・ダニエルが前に出てきましたが、ゴール前にはもう味方が来ていて、パスをつながれて、がら空きのゴールに決められました。これも声の連携がどこまでできていたのかというシーンですね。
――3失点目はカウンターから。豪快にけりこまれました
賀川:得点を奪いに行った日本は人数をかけていたので、ボールを失った瞬間、守りの人数が足りませんでした。こういうときはまず誰かが行って、止められなくても、相手の攻撃を遅らせるような手立てをするのですが、それができず、左右に振られて、豪快に決められました。
――ホームで3失点です
賀川:守備が崩壊したというか、声や連携といった割と理由がはっきりしているミスからの失点でした。改善の余地はあるでしょう。ブラジルに0-1とがんばって、チュニジアに0-3。6月4連戦ということで疲労がたまっていたのかもしれません。W杯本番でいえば、4戦目はセカンドラウンドの1試合目になるわけで、ここで疲れて、いいプレーができないようでは、8強には進めないわけです。選手の体力を強化するのか、代わりに出てもチームのレベルが大きく落ちない選手を多く作るのか。上位まで勝ち進むチームは連戦への備えができています。
――チュニジアは強かったですね
賀川:体格もいいし、守備もしっかりしていました。なにより日本を研究していました。中盤は遠藤のところがカギになっていると思っていたのか、あまり自由にプレーさせませんでした。三笘が後半出てきましたが、人数をかけて対応していました。これまでの3試合、日本は中盤でボールを奪い返すところから、きちんとボールをつなぐことができていました。ところが、そこを相手に激しく来られて、守りから攻めへの切り替えがスムーズにできませんでした。敗戦は残念でしたが、W杯に向けての課題が明確になったでしょう。スペイン、ドイツがいるグループを突破しようとしているわけですから、まだまだやるべきことは多いわけです。