2021年7月11日 U-24日本代表 対 U-24ホンジュラス代表
2021/7/11(月)日本/大阪市・ヨドコウ桜スタジアム
U-24日本代表 3-1(2-0) U-24ホンジュラス代表
――東京五輪初戦の南アフリカ戦の10日前。B組で出場するホンジュラスとの対戦でした。第1ラウンドA組の第2戦で対戦するメキシコを想定したゲームだったようですが、結果も内容もいい試合でしたね
賀川:これだけの技量を持ったチーム同士が戦うと、見ていて面白い試合になりますね。キックオフから6分間ぐらいは、両チームをあわせて、3つぐらいしかミスらしいものはありませんでした。その間、何十回とボールを触っているのに。それぐらいレベルが高かった。日本は無理して攻撃を仕掛けるわけでなく、全体でボールを回して、散らして、つないで、最後に誰かがノーマークになって、点を取っていました。強引にならなくても、ボールを回しているうちにスペースをつくって、危険なエリアに侵入していました。パス交換だけでなく、時には個人の技術と判断で、瞬時に相手のマークを外して、守備陣を破って一気に優位な場面を作るシーンが何度もありました。常に相手ゴールに向かっていく姿勢がありました。だから、見ていて面白かった。こういうトライを続けながら、得点も取れるようになると、期待が持てます。日本のサッカーファンは目が肥えているのですが、そういったみなさんも満足できる内容だったのではないでしょうか。森保監督としても、チームとしてもいい調整ができているようです。ホンジュラスも技術の高い選手が揃っていました。本番が楽しみですね。
――先制点はセットプレーから。田中がフェイクをした後、久保が左足でやや緩め、大きく弧を描いて落ちるボールをDFラインとGKの間にうまく入れ、吉田が合わせました
賀川:セットプレーということはキッカーがフリーになるので、思ったところに蹴ることができます。それに対して、チームメートも想定したところに入っていけます。田中が蹴るフリをしたのでホンジュラスの守備陣がいったん前に出たところ、後ろから走り込んだ吉田に久保がピタリと合わせました。吉田は右足のアウトサイドで流し込むだけでしたね。CKではショートコーナーを多用していました。あらかじめ決めていたのではなく、相手の守備陣形が整わないと判断して、やっていたように感じました。五輪では大柄な相手選手と対戦するので、いろんなバリエーションを準備しているのでしょう。
――2点目は前半40分、堂安が利き足とは逆の右足で追加点
賀川:日本の攻撃が弾き返されて、相手ボールになりそうになったのですが、冨安が激しくプレッシャーを掛けて、すぐに奪い返しました。相手が前がかりになっている局面で攻守が入れ替わると、攻撃側にとっては大きなチャンスになります。冨安は久保に預けたあと、さらに左サイドを駆け上がっていきました。オーバーラップする選手に対するマーカーはいないので、なかなか捕まえられません。久保から再びボールを受けた冨安が左サイドで右足に持ちかえて低いクロスを入れ、三好がスルー、中央でゴールを背にして受けた林が、前を向いて準備万端、文句無しでノーマークだった堂安の前に落としました。丁寧なラストパスを堂安は落ち着いて、GKの逆を狙ってゴール左へ。ダイレクトプレーの連続にGKは対応できませんでしたね。遠藤も田中も中盤で思い切りよく激しくチャージして、相手ボールを奪い返していたので、そこからチャンスをつくるシーンがありました。森保監督が目指すスタイルのひとつなのでしょう。
――堂安は背番号10を背負っています。同じ左利きの久保も注目されています。やはり意識しているのでしょうか
賀川:どうなんでしょうね。久保は同じ左利きですが、堂安の方が年上ですし。後半40分の3点目もうまく、左からのクロスに飛び出し、GKの前で少しだけ触ってコースを変えて、ゴールに流し込みました。チームとしては、つないで、つないで、走って、走って、そして最後に一番いい場面を持っていくのが堂安なのかもしれません。2点目も落ち着いて、サイドキックで狙ったところに蹴っていました。そういう選手はチームに必要です。この日のスタメンには堂安、久保、三好、中山と左利きの選手が多かった。得点を取るには、サイド攻撃が重要になりますし、左利きで正確なキックを蹴ることができる選手が複数いるというのは、日本にとって大きな強みになりますね。
――仕上がり具合はどうですか
賀川:守備陣はオーバーエイジ組が入って安定していますし、コンディションもよさそう。もう少し緊張感があった方がいいかとも思いますが、今の選手は大舞台慣れしていますから、心配していません。ましてや東京五輪はホームですから、移動も時差もありません。17日のスペイン戦も楽しみです。
――男子の五輪代表は大阪で合宿を行い、最終調整しています
賀川:ヨドコウ桜スタジアムは、長居スタジアムのとなりにあり、改修前は人工芝でアメリカンフットボールやホッケーが行われていた球技場でした。トラックがないので、スタンドが近く、臨場感があります。長居スタジアムは2002年日韓W杯など、数々の国際試合を行ってきた立派な器なのですが、陸上競技場なのでピッチとスタンドの間に距離があります。ヨドコウ桜スタジアムを新しくホームスタジアムにしたセレッソ大阪はいいところに目をつけましたね。1964年の東京五輪では、FIFA(国際サッカー連盟)と日本サッカー協会(JFA)が協力し、準々決勝で敗退したチームを大阪、京都に招く、5〜8位決定戦が開催されました。五輪の熱気を東京以外の都市にも広げ、競技の普及につなげるために関西サッカー連盟の関係者が尽力して実現した大会で、「大阪トーナメント」と呼ばれました。その会場のひとつが、長居陸上競技場でした。ユーゴ代表にはのちに日本代表の監督になるイビチャ・オシムがいて、FWで出場した日本戦で2得点しました。そういった経緯を考えると、長い年月を経ても、前回から今回の東京五輪へ、受け継がれているものがあるように感じます。