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2016年6月7日 日本代表 対ボスニア・ヘルツェゴビナ代表(下)

2016/06/15(水)

――スコアが1-1となってからも双方のボールの奪い合いや、攻めの意欲の高さがみられて、とてもおもしろかった。日本は前半44分に宇佐美がエリア内でのキープからシュートのチャンスがあった。ボスニアにもバーに当たったエリアすぐ外からのFKをはじめ、スタンドをひやりとさせるチャンスもあった

賀川:この日の期待のひとつは、浅野拓磨をスタートから90分使ったこと。今が伸びる時期とハリルホジッチ監督は見たのだろう。後半にも彼にビッグチャンスがあった。

――こういう時に点を取れることが大事なのですかね

賀川:後半のスタートから柏木陽介を遠藤航に代えた。2分すぎに浅野のシュートチャンスがあった。右から中へ入り、右足で蹴ったが相手の足に当たって勢いが弱まった。相手のシュートチャンスにも粘り強く守るボスニアのうまさの例だが、こういう相手のうまさ、粘っこさは対戦して体で感じるものだからね。そのボスニアの守りのうまさに日本側はキープして攻め込んでもなかなかいいフィニッシュに持ってゆけなかった。

――東欧ユーゴのサッカーというところですね。

賀川:後半初めの20分間は、日本がキープして攻勢のように見えていたのに、決定的なチャンスはなく、21分にボスニアがゴールを奪った。

――20分にボスニアが選手を代えた。MFのドゥリェビッチをステバノビッチに代えましたね。代わってすぐに彼がチャンスを作った

賀川:彼が右サイドのポジションに入ったときに、ボスニアにハーフウェイライン付近(中央右寄り)でのFKがあった。FKは日本のペナルティエリア右角の少し外に向かって飛び、ステバノビッチが内へトラッピングしてDFをかわし、小さなドリブルから左足でパスをエリア内へ流し込んだ。

――いいパスが出た。このボールを長身のジュリッチがゴールエリア右角前3メートルで追いつき、右足でダイレクトシュートした

賀川:フォワードとしては当然のことながら、右斜め前へ走って、後方からのパスをシュートした。ジュリッチの動作は全くそつのない、見事なものだった。

――吉田麻也は少し離されていました

賀川:シュートされたボールは、吉田の足間を抜け、GK川島の右手をかすめて左ポスト近くへころがった。

――ロングパスと、ステバノビッチのうまいトラッピングと、それに続くパスと、ストライカー・ジュリッチのダイレクトシュートの組み合わせだったが、こんなに簡単にゴールが生まれるのだという見本のようだった

賀川:相手がボールを受けるときに日本側のマークの間合いが遠くて、まるで練習での得点コースの型を見ているようだった。FKのときに新しいメンバーが入ってくる。ただそれだけの異変で日本側に心の空白ができたのだろうが、その空白を利用したボスニアの選手の「いま!」をつかむ試合巧者ぶりに脱帽というところだろう。

――1-2とリードされて、日本は攻め続けようとする。ボスニアはじっくり守り、時折カウンターを見せ、日本は同点にできなかった

賀川:この後も、とてもおもしろかった。日本には選手の組合せのテストもあり、リードされてからも4人の交代が入ったが、点は取れなかった。

――この対ボスニア戦を見ると、差は大きくないとしても、戦えば必ず勝てるとは言えないことがわかります。ハリルホジッチ監督は、試合の後の記者会見で、日本サッカーにはずる賢さが乏しいと嘆いていたそうですね

賀川:東欧の旧ユーゴスラビアの各代表チームには、試合の流れをつかむうまさがよく見られるのです。この試合は勝てなかったのだが、私は日本代表は少しずつ進化していると感じています。宇佐美は昨年に伸びて、ちょっと足ふみしてまた上に向かっています。浅野はもっと試合を重ねることと、監督・コーチあるいは先輩たちからいいヒントをもらえば、今年大幅に伸びる気がします。もちろんそのためには本人の努力も必要でしょう。

――イングランドの優勝チーム、レスターのFW岡崎慎司はどうでした?

賀川:レスターでの優勝は自身にはなるけれど、それで彼のプレーの幅が大きく増えたというわけではない。前残りのFWで、ボールの競り合いに特殊な才を持つ岡崎が代表でどう生きるかは代表全体の問題として話し合い、大きなプラスにしないともったいない話です。

――相手が守りに入ったときには結局得点できなかった

賀川:いつもの話になるが、ラストパスの精度とシュート力アップでしょう。クロスの高さ、強さ、落としどころなどのレベルアップです。これらのプレーは練習量(回数)に比例すると昔から言われています。日本代表でもそれを繰り返し上達したときに大会で成績を上げています。ワールドカップアジア最終予選を前にしたキリンカップは終わりましたが、選手たちにとっても、応援するサポーターにとっても、これからが大切な時期になります。9月に集結するときの選手たちのプレーがとても楽しみです。

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