2014年11月18日 日本代表 対オーストラリア代表(続)
――ここのところ、レッズ対ガンバのJリーグトップ争いをはじめ、好試合が多く、海外からもテレビでいい試合が届けられて、サッカー人は楽しみが多いですね。
賀川:テニスの錦織選手、日米野球もあり、まさにスポーツの秋です。Jリーグをふくめ、そちらの話も楽しいけれど、キリンチャレンジカップの日本対オーストラリア戦の続きを語り合いましょう。
――アギーレ監督はシンガポールでのブラジル戦を含めた6試合での最終戦の対オーストラリアで代表チームの姿をファンの前に見せました。2−1の勝利だから、まずは成功ですね。
賀川:いまの日本サッカーの勢力からゆけば、普通に考えれば代表はブラジルワールドカップ組に何人の新顔が入るか…と考えるはずですが、アギーレさんは全く新しい選手を登用することから始めました。最終的にはブラジル組にプラスαが加わる形になった。
――ヨーロッパで働くもの、あるいはガンバの遠藤、今野たちを含めてのブラジル組は6月の不本意な成績の後、捲土重来の意気込みがあったはずだが、6試合の終盤になってはじめて彼らの顔を揃えたところが、監督らしいということ?
賀川:多分新しい顔ぶれ、それも自分が選んだプレーヤーをテストしておきたかったことと、ブラジル組を起用する時期をいつにするかを考えていたのでしょう。
――1月のアジアカップという、当面まず成果を出さなければならない試合を控えてのことですからね
賀川:ザッケローニ前監督はチーム全体に攻撃志向という大命題を用意して、その高い目標に選手を導いてゆこうとして、ある程度成功した。しかし2013年のコンフェデ杯に出場した時の初戦のブラジル戦を見て、こういう強敵と戦うための選手のモチベーションの上げ方に不満が残った。
――そういう心の中のことは、言葉の問題もある?
賀川:今度のアギーレさんは選手にとっての反復練習の重要さを説きつつ、体のコンディションとともに選手の心理を読み、試合に出場するにあたって強い気構えになるように仕向けているように感じたね。
――記者会見での受け答えもしっかりしているとか
賀川:まあ、サッカーのプロ監督だから当然ではありますが、サッカーをよく知っていて、同時にメディアの対応もなかなかのものですよ。
――特に感じたことは
賀川:岡崎慎二をFWの中央で使ったことですね。ザックさんは攻撃展開についてチーム全体の質的向上を図ったが、最後にまたCFポジションの選手選考に迷ったように見えた。新メンバーで、岡崎は確か4試合続けてこのポジションだった。
――岡崎に合っていた?
賀川:ゴールを常に狙う選手が、ゴールに最も近い位置にいるのは当たり前のことだが、日本では本田というストライカーがいても彼をCFの位置に置くよりは右サイドの方が効果的なことはすでに知られている。岡崎は背も高くないし、CDFを背にしたプレーがとても上手というわけではないが、体を張って、ボールを受けてくれる選手で、同時にいつもゴールを狙ってチャンスをうかがっている。アギーレさんはおそらく岡崎のストライカーとしての最も大切な「気性」の素質を買ったのだと思います。
――後方からのボールを受けるのも上手になった。何よりヘディングが強く、高いバウンドのボールなどの競り合いに強い。ある時期は彼が右サイドに入ることが守備面―相手の左からの攻撃を抑えるメリットも語られていた
賀川:岡崎を中央に置いて、彼の特性を生かすこと。ボールを受けるにせよ、左右に走って展開のきっかけをつくるにせよ、彼の特徴を周囲が知れば、自然に連係プレーが出来てくる。
――本田と香川は
賀川:この2人はブラジルでの不振について強く責任を感じているはずですよ。イタリアでもドイツでも自らの新しい面を切り開こうとしているようです。
――本田は自らゴールを奪う意欲をさらに強めているようです。香川はロングパスの精度が上がりましたね。
賀川:ドイツサッカーの広い動きのなかで、プレーしていますからね。視野の広さは、時には感心しますよ。ゴール前へ入り込む動きも大したものですが、ぼつぼつ得点するためには、時に大雑把の方がよいことを覚えるべきでしょう。
――というと
賀川:前半の終わり頃に素晴らしいスルーパスがあって、香川がペナルティエリア内に進入したでしょう。
――右ポスト近くに持ち込んで、岡崎にパスをしようとしたが、DFの足に当たってCKになった
賀川:あの狭いスペースで、なお岡崎へのパスコースをさがし、そこへボールを送ろうとするところは、いかにも真司らしいのですが、あの場面はパスでなく中にいたDFと岡崎の合計6本の足のどれかに当たればよいと、強いシュート性のボールを送り込んだ方がよいでしょう。もちろん、あの位置からフワリとGKライアンの上を越えるボールを送ることも選択肢のひとつです。
――ふーむ
賀川:私は本田の意表をつくスルーパスと香川のそのパスを受けての見事なプレーをこうして話題にできるようになっただけでもうれしいのですが、折角ここまで来たのだから、その見事なパスワークの後、ゴール!と叫びたいものです。
――それには?
賀川:彼自身の心の持ち方もあるでしょうが、いつも言うように、香川があのポジションでの経験、ゴールすぐ近くでのプレーを重ねることです。試合ではそれほどできないですが、シュート練習などでも、ゴール近くへ走り込んでシュートすれば、ゴールやゴールキーパーの見方を体で覚えるでしょう。
――アギーレ流で、ともかく6試合を重ね、成果をあげて、アジアカップに乗り込みます。ここまでのところは、多くのメディアも納得した?
賀川:試合はアギーレさんがするのではなく、選手がするのですよ。DFのサイドは左右複数の選手がいます。CDFは数が少ないのが心配ですが、まだまだいい素材も出てくるでしょう。ベテランのボランチに新しい選手が加わり、攻撃陣も手薄だが各パートは揃いました。
――岡崎と豊田のCFでしょうか
賀川:南半球のオーストラリアでの夏の大会となるアジアカップは決してやさしい大会ではありませんが、選手たちがまず2015年の初頭の高いを勝ち抜き、ステップアップしてほしいと思います。
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