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2012年8月15日 日本代表 vs ベネズエラ代表

2012/08/20(月)

キリンチャレンジカップ2012
2012年8月15日(水) 19:33キックオフ(北海道/札幌ドーム)
日本代表 1-1(前半1-0) ベネズエラ代表
 得点 遠藤 保仁(14)、失点(62)


◆代表の技術の結集と言える先制ゴール

――ロンドンオリンピックでのなでしこジャパンとU-23代表の活躍の後、今度はフル代表です。ワールドカップ2014ブラジル大会のアジア最終予選のイラク戦を控えての準備試合です。いかがでしたか。

賀川:イラク戦には今野泰幸、栗原勇蔵、内田篤人の3人が出場停止になっています。右サイドのDFとCDFの2人ですね。その代役は誰かをこの試合で見てみたいと監督さんは考えているでしょう。もちろん海外組の調子を見ること、久しぶりに集まった代表としての試合勘、チームワークはどうかも大きなポイントですが…

――ヨーロッパではこれからシーズンインのところが多いです。

賀川:本田圭佑のロシアはすでにシーズンが始まり、GK川島永嗣のベルギーもスタートしています。ドイツやイングランド、イタリアなどはこれからです。

このキリンチャレンジカップはとてもよかったと思います。予選本番前のテストという意味だけではなくて、久しぶりのフル代表の試合に、U-23の元気いっぱいのオリンピックもいいが、やはりフル代表の試合は面白いと思った人も多かったと思います。試合目的のひとつ、センターDFは監督さんは心にほぼ決めていて、次のキリンチャレンジカップ(9月6日)ではっきりしたいのじゃないか、右サイドはほぼ決まりでしょう。

――久しぶりに集まった海外組は?

賀川:私にはほぼ予想通りでした。

――マンチェスター・ユナイテッドで新しいシーズンを迎える香川真司に得点がなかったのが残念。スタジアムのサポーターもテレビ観戦の皆さんも期待していたのに…

賀川:まあ彼が得点していれば申し分ないが、そうなるとメディアの目は香川に集中してしまって、代表の各選手のせっかくの好プレーも忘れられてしまうでしょう。

――つまり、キリンチャレンジカップは目的を果たしたと?

賀川:私にはすごい成果があったと思いますよ。

――試合を振り返りながらそれを見ていきましょう

賀川:14分の日本の先制ゴールは、まさに今の代表の技術の結集と言えるものでした。

――駒野がペナルティエリアの「右の根っこ」から斜め後方へのクロスパスを送り、遠藤が走り込んで11メートルからダイレクトシュートを決めました。絵に描いたようなパスとシュートでした。

賀川:この攻撃は中盤での長谷部と遠藤の短いパス交換からはじまった。
(1)遠藤からのリターンパスが後方に流れるのを長谷部が戻って取りにゆく
(2)その長谷部に相手がプレスに来る
(3)長谷部は相手に迫られながら振り向きざまにダイレクトでパスを前方へ送った
(4)すぐ右横(タッチ際)にいる駒野ではなく、前方の本田へ出したところが、このパス経路のポイントのひとつ
(5)本田は自分の左足に正確に届けられたボールを左足で止める
(6)彼の気配で右方向へ行くと判断した相手DFの裏をかいて本田は左足アウトサイドでタッチ際を前進する駒野にやわらかいパスを渡す
(7)ノーマークでパスを受けた駒野はドリブルし、相手DFをすり抜けてペナルティエリア右根っこへ持ち込み
(8)斜め後方へパスを送った
(9)このボールがペナルティキックマーク近くに届いたとき
(10)遠藤が走り込んできて右足インサイドで蹴り込み1-0とした。

――そういえば、テレビ解説も長谷部が横パスでなく縦パスを出したのがいいと言っていましたよ

賀川:U-23の試合での清武から永井へのパスのところで、スルーパスを出すタイミングとして、自分が相手ゴールを背にしているとき、あるいは横向きの形の時がいい、と言いましたが(※)、今回も同じ理屈です。このパスの経路にもう一つ本田の目立たない妙技があります。
(※)参照:ロンドンオリンピック モロッコ代表戦「清武のパスのタイミング」

――それは?

賀川:本田が得意の左足で止めて、パスを出すという極めて基本的なプレーですが、相手は外へパスをする本田の意図を読めなくて、駒野は無抵抗でパスを受けたこと、この余裕が相手の最終ラインの守りの一番外の部分を突破することにつながるのです。

――いろいろ味付けがあって、決定的なチャンスが生まれ、余裕をもってそのチャンスを得点にしたわけですね

賀川:もちろん遠藤の走り込み、最初のパスにかかわって自らが決めたこと、またそのスペースを広くするための前田遼一たちの動きなどもあります。

◆コパアメリカ4位の上昇中のベネズエラ

――試合開始すぐにベネズエラは強いチームだと言っていましたね

賀川:選手ひとりひとりもしっかりしているし、チームとしての訓練がよく出来ている感じでした。

――ベネズエラは南米では珍しくサッカーより野球の方が盛んな国と聞いていましたが

賀川:大リーガーにベネズエラ出身者の多いのはよく知られています。手でボールとバットを扱うベースボールという異質のスポーツが先に盛んになるとフットボールが国民に浸透するのは難しいものです。

――かつての日本のようですね

賀川:ベネズエラのサッカー関係者の苦労はよくわかります。その努力の成果が昨年のコパアメリカ、つまり南米選手権で準決勝進出、4位となった。1次リーグBグループでブラジルと0-0、エクアドルに1-0で勝ち、パラグアイと3-3、1勝2分けで準々決勝に進み、チリを2-1で破り、準決勝でパラグアイと0-0、PK戦負け(3-5)、3位決定戦で伝統国ペルーに1-4で敗れた。優勝ウルグアイ、2位がパラグアイだから、ベネズエラの順位はブラジルやアルゼンチンより上だった。

――この勢いを続けて、これから後半に入る南米予選を突破してブラジルでのワールドカップ本番に出場しよう、日本とのキリンチャレンジカップで勝って勢いをつけようと考えていたようです。

賀川:来日した18人のうち15人が海外でプレーしている個人力もあり、南米の大敵に対してチームワークを高めて成績を上げた自信も持っていたはずですよ。

――いい相手が来たと?

賀川:U-23となでしこのロンドンでの活躍の陰には、大会直前のキリンチャレンジカップとヨーロッパに渡ってからの準備試合がうまくいったのが大きいと思います。今度の相手は久しぶりに集結した代表にはなかなかの強敵ですが、この時期だからちょうどいいでしょう。

――その強敵相手に代表は見事なパスワークで先制しました。前半にもう少しゴールシーンがあればよかったのに。

賀川:18分に遠藤のクロスを中央の岡崎が胸で本田にパス、本田がダイレクトシュートという場面があったでしょう。シュートはGKエルナンデスに防がれたが、先制ゴールとは違ったシンプルで力強い攻めでした。

――そういえば、早いうちに香川がエリアのなかでシュートしました。左へ外れたが…

賀川:前田へパスが入って、彼が右前からエリア内へボールを流し、香川が受けてシュートした。前と後ろ、2人のDFに囲まれて2度シュートのフェイントの後、右足で蹴って左ポストの外へ外れた。しっかりボールを注視して蹴っていたのに、外れ方が大きかったのでオヤッと思った。これだけでなく、相手の危険地域に入ってくる位置取りのうまさに驚いたが…

――岡崎の相変わらずの体を張ってのプレーや左サイドの長友の攻撃、前田のポストプレーなどは前半に見ることが出来た。攻撃の柱としての本田のすばらしさも堪能した。後半の期待は香川のゴールになりました。

賀川:皆の期待通りにはゆかず、悪いことに香川がボールを奪われたのがきっかけで1点を失い1-1になってしまった。

――後半17分でした。その前にも彼のバックパスがミスキックになってベネズエラに渡り、シュートまで持ってこられた。

賀川:それにしても、奪ってからのゴンザレスの長いドリブルと、それを引き継いだマルチネスのゴール目指しての突進の速さと、マルチネスのゴール正面へのパスを左から走り込んだフェドールが決めた右足アウトサイドのシュートなどは、まさに南米そのものだった。フェドールのシュートは外からのクロスに対して吉田を背にして右足で止め、体をひねって右足のアウトサイドでゴール左隅へ流し込んだもの。走り込んだ勢いで体のバランスを崩しながら、相手DFを自分の体で押さえつつ、とっさに右足をのばしてアウトサイドで蹴ったところが少年期からボールを奪い合う遊びを重ねてきた南米人らしい動作だった。

――相手のドリブルで一気にエリア内まで持ち込まれたことはU-23代表の日韓戦での1点目を思い出します。

賀川:ボールの取られ方が悪い、失い方が問題だという話になるが、そういうピンチにどう対応するか。香川が奪われた時に、ボールよりも自陣にいたのが4人。相手側は奪ったゴンザレスを含めて3人だった。右前のマルチネスにボールが渡った時、日本側は2人、相手はフェドールとマルチネスだけだった。

――GK川島を加えると日本側は3人ですね。その他、帰陣を急ぐものが2人はいた。

賀川:こういう態勢で防ぐためにはどうするか、ということは当然ディフェンダー同士で、あるいはチーム全体でも話し合うのだろう。そういう実際的な勉強材料が出来ただけでも、このキリンチャレンジカップは値打ちがありますよ。と同時に、いつもの話だが守りは無失点であれば申し分ないが、いくらゴールキーパーやDFががんばっても、何かで1点失うこともあり得るのだから、攻めて2点を取ることを考えた方が上策のように思う。

――この試合でもシュートは22本、相手のシュートは10本です。

賀川:シュートを決めるのは監督ではなく選手だが、日本は指導者ともども勉強の必要ありでしょう。シュートそのもの、シュート位置、そこへの道程と相手ゴールキーパーとの関連などなど。

――そのためにも香川の能力が発揮されることを多くの人が望んでいます。

賀川:この日、彼が3本のシュート(ヘディングを含む)を外したほか、守備では前述の奪われ方やバックパスのミスもあって、必ずしも皆の期待に応えられなかった。本人の話として攻撃のスイッチが入らなかったという表現が伝わっている。今の彼は、ここ1週間は特別でしょう。これまでの多くの日本代表と違って、香川は高校選手権などと縁がなく、ひとりで上のレベルを目指し、ようやく世界のマンチェスター・ユナイテッドのレギュラーに手が届くところに来ている。その大事な開幕戦の直前に、やはり大切なこの試合に望んだ本人は100%の気持ちでプレーしたとしても、よい結果にならなくても不思議ではないだろう。それでも私は彼のプレーに新しい発見もあった。ユナイテッドのトップ下、あるいは第2列の攻撃を担う選手としての相手の危険地域への入り方に従来よりも工夫の跡があり、また上背に乏しく、それほど得意でもなかったジャンプヘディングへの位置取りもよくなっていた。

――香川の出来はよくなかったとしても、それはこの日だけだろうと?思いやりすぎかな?

賀川:こういう大事な試合の時にも必ずしもうまく乗れないこともあるということ。しかしそれでも、いくつかの新しいプラスを見せたということです。

――代表全体としてはよかったと?

賀川:ガンバの調子が悪い中で、遠藤がよいプレーを続けて披露した。本田をはじめ出場した海外組は本番になればさらに上のプレーができそうに見えた。DFはベテランを起用すれば一時的にしのげるだろうが、2年後を考えてこの時期に控えの質量を試しておきたいところでしょう。それには次のキリンチャレンジカップが大切な場となる。

――攻撃陣が2点を取るための問題については、またもう一度聞くことにしましょう。まずは本田はよかった、香川は不満はあっても進歩も見られた。予想以上に強い相手ではあったが、日本代表らしい試合だった。3週間後、選手たちが自分のチームでの試合のなかで、ベネズエラ戦の教訓をどうものにするかですね。

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