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2012年7月

2012年7月11日 U-23日本代表 vs U-23ニュージーランド代表

2012/07/16(月)

キリンチャレンジカップ2012
2012年7月11日(水) 19:55キックオフ(東京/国立競技場)
U-23日本代表 1-1(前半0-0) U-23ニュージーランド代表
 得点 杉本 健勇(71)、失点(90+4)

補強DFの守備力アップ

――さんざん攻めて1点だけ、最後にDFがボールを奪われ、1失点で1-1という結果になりました。

賀川:いま好調の俊足、永井謙佑が何度も突破をみせ、大津祐樹がどんどんチャンスにシュートし、清武弘嗣が期待通り見事なスルーパスを通してみせて、誠に面白い攻撃を展開した。ニュージーランドのU-23がしっかり守って、ときおりカウンターで日本側をヒヤリとさせたから両チームにとってはとても勉強になった。

――日本はDFが自陣でボールを奪われて点を取られるという本番ではやってはいけない面をのぞかせたから、勉強といえば勉強だが、いまごろこれではというファンもいた

賀川:このチームはもともと左の守備が心細かった。オーバーエイジで徳永悠平が入って、そこはまずしっかりした。

――しっかりしただけでなく、彼のミドルシュートから貴重な1点が生まれた。あれだけチャンスをつくって、この1点だけだった理由は何でしょう?

賀川:チャンスといいながら、ラストパスの精度が悪くて、いいシュートチャンスは少なかった。またシュートそのものもよくなかった。

――シュートに関しては一家言あるハズですね。

賀川:永井のシュート3本と、大津の4本のすべてはサイドキックか横なぐりです。サイドキックでシュートするのはコントロールという意味と小さな振りということが考えられるが、インステップで蹴ったのがオーバーヘッドだけだから。

――ふーむ

賀川:これについては、この時期にうんぬんする問題ではないが、いつも言っているように、体格が劣る(小さい)日本人は一般的に言えば、マルコ・ファンバステン(190cm)に比べると足が小さい。だからピッチ上のボールをインステップで蹴りやすい。それが日本人の特徴でもある。小柄のジーコがシュートやフリーキックの名手だった理由もそこにあるという人もいる。その特徴を使わないのはとてもおかしなことだが…

――バルサ、スペインのサッカーもそこにあると言われるのでしょうが、その話はいまちょっと横に置きましょう。

賀川:U-23代表の攻撃で点を取れないのは一本調子だから。攻撃が単調だからという声があった。まことにその通りです。そのため、試合中にタメや間(ま)をつくれるプレーヤーを置く、あるいはパスの展開のやり方で自然に間をつくる、といったこともできるのだが、この試合ではそうはならなかった。

――U-23代表からはずれた大迫勇也はそういうことができるタイプですね。

賀川:彼はアジア勢との試合でも当たられてバランスを崩して、いわば体の強さという点から欧州、アフリカ勢相手では損だとみられたのだろうね。

――フル代表に本田圭佑という体幹のしっかりしたプレーヤーがあらわれ、その強さがどれほど有益かを皆が知った。5月のトゥーロンの国際大会でトルコ、オランダ、モロッコと試合して、U-23はやはり体の差を感じたという。だから体のよいのが集まった?

賀川:ニュージーランド戦では、選手たちの意欲がよく出ていたと思う。それが単調になってしまい、得点できなかったというのだが…

――必ずしもそうではないと

賀川:技術論争、パス論争をここではじめる気はないが、一本調子で速いだけであってもラストパスがもっと正確なら得点につながっただろう。しかし高速でのプレーの正確さはこれもむずかしいもの。そこで自ら緩急が語られることになる。パスといえばラストパスの前に相手の動きを止める、あるいは反応を遅らせる仕掛けをすることも必要になる。

――清武のパスなどは実にうまいと思いましたが

賀川:彼の“目”の確かさはすばらしい。しかし折角の見事なスルーパスで大津が走り込んでもシュートチャンスに相手の体がくっついてきていて防がれている。

――テレビの画面を思い出せば、なるほどと思いますが…

賀川:バルサのようだと今の日本のなでしこもU-23も代表も言われている氏、言ってほしいようにも見えるが、シャビやイニエスタのスルーパスは時に相手DFを止まらせておいて、こちらの選手だけが走っている(一瞬だが)そういうタイミングでパスが出ていることをよく見ておいてほしい。(足のインステップやアウトサイド・インサイドなどの使い方も)

充実・永井、覚醒・清武たち攻撃力の進化に期待

――清武にもっと積極的にという声も

賀川:サッカーは昔から一番上手な選手が一番たくさん働く、と言われている。パスを出した後、次にもらって自分でシュートする気構えが清武にあってもいいでしょう。

――スターティングメンバーは大津と永井のツートップ、清武と東の第2列、山口螢と扇原貴宏のボランチ、DFラインが右から酒井宏樹、鈴木大輔、山村和也、徳永悠平、GKが権田修一でした。

賀川:もう一人のオーバーエイジ吉田麻也がケガのため出場しなかったが、彼を加えて、これがベストメンバーでしょう。齋藤学というドリブラーで走り回れるFWと19歳の杉本健勇というCFタイプがいる。

――MFでは、この日は不参加の宇佐美貴史への期待も高い。

賀川:名前をあげなかった選手もなかなかの素材だが、この日の試合からゆけば、永井の突破力を再三見せつけたのはいい材料ですよ。

――秘密兵器だったはずでは?

賀川:もう各国には知られていますよ。いま好調の彼が存分に走ることで、自分もチームも自信を持つことになったでしょう。ここ1年ばかりでスピードだけでなく、体そのものが強くなってプレーも安定しましたからね。

――あとは崩すだけでなく、決定的なフィニッシュも、ということ

賀川:まあそうですね。その彼の突破力をどれだけ活かし、フォローするかが攻撃のひとつのポイントですよ。

――大津をどう見ましたか

賀川:彼は試合の後、しばらく倒れていたでしょう。ドイツのかつての名門ボルシア・メンヘングラッドバッハにいて、試合にはあまり出場していない。ドイツでどのような練習をしているかも不勉強でよく知らないが、実戦に出ていないのは損ですね。だから彼はこの試合で点を取りたかったし、勝ちたかった。自分と誰かとの技術や動きをどう組み合わせるかということよりも、ともかく何かやれることを見せたいという感じだった。

――それはそれとして

賀川:U-23代表、若者らしくていいのだが、相手がエリア内で厚く守っているのだから、どうしてそれを崩すかを仲間との連係でみせてほしいところだった。日本国内ででも試合に出ていれば自然にそうなるはずだが…

――第2列の走り上がり、あるいは飛び出しが少なかったとの声も

賀川:東があまり前へ出なかった。一度後半に前へ出てポストになり、大津にシュートさせたいいプレーもあったのだが…

――ゴールを生んだのは徳永のミドルシュートをゴールキーパーがはじいてそれを杉本が決めた。いい位置にいた。

賀川:それまで第2列はシュートしなかったし、また、あってもポカーンと蹴りあげてしまうシュートだった。徳永は抑えの効いたいいシュートを打った。ただし、このシュートの場面を作ったのは相手のクリアミスですよ。ただその伏線は左のペナルティエリア外へ走り込んだ扇原がゴールラインギリギリでクロスを返したことにあった。扇原のトラップが大きくて、ゴールラインを割りそうだったのを彼ががんばって追いつき、長い左足のリーチを活かしてクロスを送った。そのボールは相手DFに向かったが、処理しにくいボールとなってDFに当たり、そのボールをクリアしたのが小さくて、徳永にとっていいところに転がった。

――意識的でなくても扇原のちょっと大きなトラップとその後のクロスが相手をまごつかせた?

賀川:サッカーというのは面白いもので、時には思い通りでないことがチャンスになることもある。バルサのような名人上手ばかりのチームにもそういうチャンスもあるのですよ。だから諦めることはないというわけ。

――ニュージーランドのようにロンドンでも低い評価のチームとの1-1で試合後にブーイングもあったそうで…

賀川:ニュージーランドの選手たちのがんばりを讃えるのがオリンピック精神でしょうね。それはともかく、16チーム参加のロンドンのU-23で、まず1次リーグ突破が大変なこと。ただし勉強にゆくのではなく、勝ちにゆくことになる。
 まず、清武をはじめ18人が、その気にならなければ1次敗退であっても驚くことはない。相手にはプロの大物もいるでしょうが、U-23が主だからこの年齢層では気持ちの面が大きく響くことが多い。いい選手が多いはずのスペインでも同じ傾向のはずです。

――ヨーロッパでの練習試合と本番での若い代表の気迫を見たいものですね。

賀川:もちろんシュート練習もコンディション調整も大切です。この大会は日本のオリンピック代表にとって初めてのロンドン大会です。目の肥えたイングランド、ヨーロッパのファンを驚かせてほしいですね。44年前にメキシコで銅メダル、その32年前つまり今から76年前にヨーロッパのオリンピック(ベルリン)で日本代表はスウェーデンに逆転勝ちして世界を驚かせました。ほとんどが22~23歳の大学生主体のチームでした。
 そうした先輩の憧れたサッカーの母国のブリテン島で、いいプレーをしてほしいと願っていますよ。決勝はなにしろ、ウェンブリーですからね。

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2012年7月11日 日本女子代表 vs オーストラリア女子代表

2012/07/14(土)

キリンチャレンジカップ2012
2012年7月11日(水) 17:10キックオフ(東京/国立競技場)
日本女子代表 3-0(前半2-0) オーストラリア女子代表
 得点 宮間 あや(25)、大儀見 優季(45+1)、澤 穂希(58)

澤に回復の証

――国立での2試合いかがでした?傘寿(さんじゅ)の体には6時間ぶっ続けの試合取材は大変じゃないかと心配する人もいましたね。

賀川:なでしことU-23代表、それもロンドン・オリンピックを2週間後に控えての壮行試合を見られるのですから、こんな楽しいことはありませんよ。テレビ放映もあるから、生で見たものをもう一度自宅でビデオを見て、反芻できるのもキリンチャレンジカップのうれしいところです。

――試合前に賀川さんは澤穂希の“キラリ”が戻ってきたと書いていましたね。この試合ではゴールも決めました。

賀川:東京のスポーツ紙の翌日の1面は澤穂希でしたね。当然でしょう。ゴールを奪ったし、相手のボール奪取にも鋭さがもどってきたからね。

――ワールドカップドイツ大会の決勝でのゴールから1年ぶりの得点でもある。

賀川:完調とはいえないまでも彼女らしさが試合の流れの中で再三あらわれていた。オリンピックということになると、日本サッカーの歴史では唯一銅メダルを取った1968年メキシコ大会の男子チームということになるが、この60年代からのサッカーファンには、銅メダルチームでいえば八重樫茂生キャプテンと、大会得点王の釜本邦茂選手の2人を合わせた働きを彼女は昨年ドイツで見せたのです。

――その彼女のコンディションが1年前に戻ってきたと

賀川:そこまでは言えないでしょうが、彼女でなければというタイミングの奪取もあり、チームの3点目となるゴールを左CKの時に決めている。

――宮間がライナーを蹴り、誰かにあたってゴール前に流れ、熊谷の体にあたったリバウンドを澤がシュートした。

賀川:後半13分のこのゴールの話の前に、まず開始早々1分の左CKに澤が飛び込んでヘディングしたのがあった。メインスタンドから見て、左手側のゴールで記者席の私の位置はあちらのゴールは遠くて見えにくい。今回は大型の双眼鏡で眺めたから宮間のクロスに彼女が飛び込むのを生で見ましたよ。

――オペラグラス的な小さいのではなく、東郷平八郎が日本海海戦の時に首からかけていたような大きなやつですね。

賀川:司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」によると、東郷司令長官のツァイス(ドイツ)製らしいが、私のは日本製です。8倍で小型とかわらないが、視野が広くてみやすい。特定の選手を見たいときには、重いのを承知で持って行くのです。

――昔はペレやマラドーナ、今回は澤さんですね。

賀川:おかげで宮間が澤にあわせ、澤が飛び込むのをみました。帰宅してビデオを見たら、ヘディングした後で、GKバービエリの手が出て来て、澤の顔に当たっている。その気配もあってか、飛び込んだ時に頭を下げ、ボールから目を離したからヘディングはゴールにはならなかった。長い間実戦から遠ざかっていて、徐々にリーグにも出て慣らしてきたといっても、ああいうゴール前のいわば修羅場へ自分から飛び込んでいくようになるのはなかなかのものですよ。このCKの彼女のプレーでゴールへの意欲が見ている者にも伝わった。

――だから後半の彼女のゴールは全員の喜びになった。

賀川:宮間がなんとか澤に合わせて点を取らせようとしている気持ちも伝わって来た。チームの3点目となったこのゴールは、それまでと違って低いライナーだったからね。高い球に強い長身のオーストラリア勢だが、体の動きは必ずしも敏捷ではない。それに対して鋭いライナーでうまくゆけば間を通って、澤に合うかもしれないし、相手に混乱が起きることでチャンスが生まれると狙ったのかも知れない。

――人の間を通って熊谷に当たり、澤の前に落ちたのも宮間の想定内?

賀川:そこまで言わなくても、そういう結果ありと読んだでしょう。澤は目の前に来たボールをすばやくボレーでとらえてゴールへ送り込んだ。

――ああいうプレーは落ち着いているというか

賀川:体の動きが少しずつ戻ってきたのでしょう。むずかしい高さではなかったから、スムースに右足が出ていた。

――CK、FKの停止球だけでなく、流れのなかでの彼女の飛び出しは威力がありますからね。

賀川:タイミングをつかむうまさ、ボールを競り合ったときの強さ、速さも粘りもふくめて、いまの日本代表の中でも上のクラスだからね。この試合の直前のINACの試合で、それを見ることができた。壮行試合では、その回数が増えた。最盛期とは言えないまでも、彼女がこうした回復のステップを上がっているのを見たのが、この試合でのまず一番うれしかった点といえる。

優勝メンバーに見るひたむき

――前に代表全体は足踏みとか…

賀川:なでしこリーグを見ても、代表の主力がいるINACは勝ってはいるが、チームとしては伸びてはいない。個人力でもそうだ。他のチームはINACを目標にして、力をつけているのだろうが、トップのINACに進化がないということは、代表も進歩していないということになるでしょう。

――何か問題でも?

賀川:INACの監督さんも選手たちも努力を怠らないはずだが、なにしろ昨年に大仕事をした後、そう簡単に次のレベルに進むのは難しいもの。1974年のワールドカップで西ドイツがクライフのオランダに勝って優勝した後、ベッケンバウアーやゲルト・ミュラーたち主力6人のいたバイエルン・ミュンヘンはチームがガタガタになてしまったことは、前にもお話したはず。INACはしかもベッケンバウアーとも言うべき澤が調子を崩したのだから、もっと大変だったと思う。

――個人技の上達があれば、というところ

賀川:こういうときに個人力を伸ばすためのいろいろな考えややり方はある。それでも環境激変という別の条件のあるなかで、上手にならなくても、ある程度のコンディション維持ができただけでも私はINACの功績と思っていますよ。

――選手たちも人間ですから、いつも進化を続けるわけではない

賀川:止まることもあれば、進むこともある。ボールを止め、蹴るという基本技のアップと走り、体を練ることを続ければ、ある時期に一段も二段も上がることができる。ひょっとすると、ロンドン・オリンピックがそのチャンスからも知れないのですよ。

――68年のメキシコでの釜本さんのように、蹴れば入るという感じになった選手もいる。大舞台もまた上達のチャンスだと?

賀川:いまのなでしこは、U-23の男子代表と違って、自分たちの出来ることが戻り始めているという自信を持つことが大切だと思いますよ。

――たとえば

賀川:右のDFで攻撃のうまい近賀ゆかりにしても、この試合で何回か大儀見優季へパスを送り、大儀見のゴールを生み出した。大儀見というより私たちには永里という方がまだ親しいが、この有能なストライカーの能力については、本人も周囲も理解している。したがって、ここ2週間のうちに、もう一度、どのタイミング、どのコースがうまく合うかをこの例のようにそれぞれに作り上げることなんです。守りについても同じで、攻守の組織プレーを築くことでしょう。

――その基礎となる技術はある

賀川:川澄にしても、目に見える進歩、たとえばいっそう足が速くなったとか、強い球を正確に蹴れるようになったとかいうことはなくても、1年間積んできたものを、もう一度代表の仲間のプレーとつきあわせてみれば、昨年の自信の上にさらに新しいプレーが生まれる可能性もある。それが強い相手との対戦で甦ることもあるはずですよ。

――オーストラリアよりも上のクラスの相手とこれから戦うのですからね。

賀川:何度も言うように、この1年に目に見える進歩はなかったとしても、昨年の経験の上に努力を積み重ねてきたという無形のものが加わる。澤が回復して、彼女がいるだけでチームは昨年と違った形でもう一度一枚になると思う。

――アメリカは挽回を図ってくるでしょう

賀川:自分たちを目標に世界が努力していると思うのはとても愉快なことでしょう。そういう相手に受けて立たずに、こちらからガツンといくことでしょう。

――壮行試合の開始早々からの澤さんの意気込みのようにですね。

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