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2012年7月11日 日本女子代表 vs オーストラリア女子代表

2012/07/14(土)

キリンチャレンジカップ2012
2012年7月11日(水) 17:10キックオフ(東京/国立競技場)
日本女子代表 3-0(前半2-0) オーストラリア女子代表
 得点 宮間 あや(25)、大儀見 優季(45+1)、澤 穂希(58)

澤に回復の証

――国立での2試合いかがでした?傘寿(さんじゅ)の体には6時間ぶっ続けの試合取材は大変じゃないかと心配する人もいましたね。

賀川:なでしことU-23代表、それもロンドン・オリンピックを2週間後に控えての壮行試合を見られるのですから、こんな楽しいことはありませんよ。テレビ放映もあるから、生で見たものをもう一度自宅でビデオを見て、反芻できるのもキリンチャレンジカップのうれしいところです。

――試合前に賀川さんは澤穂希の“キラリ”が戻ってきたと書いていましたね。この試合ではゴールも決めました。

賀川:東京のスポーツ紙の翌日の1面は澤穂希でしたね。当然でしょう。ゴールを奪ったし、相手のボール奪取にも鋭さがもどってきたからね。

――ワールドカップドイツ大会の決勝でのゴールから1年ぶりの得点でもある。

賀川:完調とはいえないまでも彼女らしさが試合の流れの中で再三あらわれていた。オリンピックということになると、日本サッカーの歴史では唯一銅メダルを取った1968年メキシコ大会の男子チームということになるが、この60年代からのサッカーファンには、銅メダルチームでいえば八重樫茂生キャプテンと、大会得点王の釜本邦茂選手の2人を合わせた働きを彼女は昨年ドイツで見せたのです。

――その彼女のコンディションが1年前に戻ってきたと

賀川:そこまでは言えないでしょうが、彼女でなければというタイミングの奪取もあり、チームの3点目となるゴールを左CKの時に決めている。

――宮間がライナーを蹴り、誰かにあたってゴール前に流れ、熊谷の体にあたったリバウンドを澤がシュートした。

賀川:後半13分のこのゴールの話の前に、まず開始早々1分の左CKに澤が飛び込んでヘディングしたのがあった。メインスタンドから見て、左手側のゴールで記者席の私の位置はあちらのゴールは遠くて見えにくい。今回は大型の双眼鏡で眺めたから宮間のクロスに彼女が飛び込むのを生で見ましたよ。

――オペラグラス的な小さいのではなく、東郷平八郎が日本海海戦の時に首からかけていたような大きなやつですね。

賀川:司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」によると、東郷司令長官のツァイス(ドイツ)製らしいが、私のは日本製です。8倍で小型とかわらないが、視野が広くてみやすい。特定の選手を見たいときには、重いのを承知で持って行くのです。

――昔はペレやマラドーナ、今回は澤さんですね。

賀川:おかげで宮間が澤にあわせ、澤が飛び込むのをみました。帰宅してビデオを見たら、ヘディングした後で、GKバービエリの手が出て来て、澤の顔に当たっている。その気配もあってか、飛び込んだ時に頭を下げ、ボールから目を離したからヘディングはゴールにはならなかった。長い間実戦から遠ざかっていて、徐々にリーグにも出て慣らしてきたといっても、ああいうゴール前のいわば修羅場へ自分から飛び込んでいくようになるのはなかなかのものですよ。このCKの彼女のプレーでゴールへの意欲が見ている者にも伝わった。

――だから後半の彼女のゴールは全員の喜びになった。

賀川:宮間がなんとか澤に合わせて点を取らせようとしている気持ちも伝わって来た。チームの3点目となったこのゴールは、それまでと違って低いライナーだったからね。高い球に強い長身のオーストラリア勢だが、体の動きは必ずしも敏捷ではない。それに対して鋭いライナーでうまくゆけば間を通って、澤に合うかもしれないし、相手に混乱が起きることでチャンスが生まれると狙ったのかも知れない。

――人の間を通って熊谷に当たり、澤の前に落ちたのも宮間の想定内?

賀川:そこまで言わなくても、そういう結果ありと読んだでしょう。澤は目の前に来たボールをすばやくボレーでとらえてゴールへ送り込んだ。

――ああいうプレーは落ち着いているというか

賀川:体の動きが少しずつ戻ってきたのでしょう。むずかしい高さではなかったから、スムースに右足が出ていた。

――CK、FKの停止球だけでなく、流れのなかでの彼女の飛び出しは威力がありますからね。

賀川:タイミングをつかむうまさ、ボールを競り合ったときの強さ、速さも粘りもふくめて、いまの日本代表の中でも上のクラスだからね。この試合の直前のINACの試合で、それを見ることができた。壮行試合では、その回数が増えた。最盛期とは言えないまでも、彼女がこうした回復のステップを上がっているのを見たのが、この試合でのまず一番うれしかった点といえる。

優勝メンバーに見るひたむき

――前に代表全体は足踏みとか…

賀川:なでしこリーグを見ても、代表の主力がいるINACは勝ってはいるが、チームとしては伸びてはいない。個人力でもそうだ。他のチームはINACを目標にして、力をつけているのだろうが、トップのINACに進化がないということは、代表も進歩していないということになるでしょう。

――何か問題でも?

賀川:INACの監督さんも選手たちも努力を怠らないはずだが、なにしろ昨年に大仕事をした後、そう簡単に次のレベルに進むのは難しいもの。1974年のワールドカップで西ドイツがクライフのオランダに勝って優勝した後、ベッケンバウアーやゲルト・ミュラーたち主力6人のいたバイエルン・ミュンヘンはチームがガタガタになてしまったことは、前にもお話したはず。INACはしかもベッケンバウアーとも言うべき澤が調子を崩したのだから、もっと大変だったと思う。

――個人技の上達があれば、というところ

賀川:こういうときに個人力を伸ばすためのいろいろな考えややり方はある。それでも環境激変という別の条件のあるなかで、上手にならなくても、ある程度のコンディション維持ができただけでも私はINACの功績と思っていますよ。

――選手たちも人間ですから、いつも進化を続けるわけではない

賀川:止まることもあれば、進むこともある。ボールを止め、蹴るという基本技のアップと走り、体を練ることを続ければ、ある時期に一段も二段も上がることができる。ひょっとすると、ロンドン・オリンピックがそのチャンスからも知れないのですよ。

――68年のメキシコでの釜本さんのように、蹴れば入るという感じになった選手もいる。大舞台もまた上達のチャンスだと?

賀川:いまのなでしこは、U-23の男子代表と違って、自分たちの出来ることが戻り始めているという自信を持つことが大切だと思いますよ。

――たとえば

賀川:右のDFで攻撃のうまい近賀ゆかりにしても、この試合で何回か大儀見優季へパスを送り、大儀見のゴールを生み出した。大儀見というより私たちには永里という方がまだ親しいが、この有能なストライカーの能力については、本人も周囲も理解している。したがって、ここ2週間のうちに、もう一度、どのタイミング、どのコースがうまく合うかをこの例のようにそれぞれに作り上げることなんです。守りについても同じで、攻守の組織プレーを築くことでしょう。

――その基礎となる技術はある

賀川:川澄にしても、目に見える進歩、たとえばいっそう足が速くなったとか、強い球を正確に蹴れるようになったとかいうことはなくても、1年間積んできたものを、もう一度代表の仲間のプレーとつきあわせてみれば、昨年の自信の上にさらに新しいプレーが生まれる可能性もある。それが強い相手との対戦で甦ることもあるはずですよ。

――オーストラリアよりも上のクラスの相手とこれから戦うのですからね。

賀川:何度も言うように、この1年に目に見える進歩はなかったとしても、昨年の経験の上に努力を積み重ねてきたという無形のものが加わる。澤が回復して、彼女がいるだけでチームは昨年と違った形でもう一度一枚になると思う。

――アメリカは挽回を図ってくるでしょう

賀川:自分たちを目標に世界が努力していると思うのはとても愉快なことでしょう。そういう相手に受けて立たずに、こちらからガツンといくことでしょう。

――壮行試合の開始早々からの澤さんの意気込みのようにですね。

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