2012年5月23日 日本代表 vs アゼルバイジャン代表(上)
キリンチャレンジカップ2012
2012年5月23日(水) 19:15キックオフ(静岡/エコパスタジアム)
日本代表 2-0(前半1-0) アゼルバイジャン代表
得点 香川 真司(43)、岡崎 慎司(58)
本田の復活で代表チームに光ふたたび
――本田圭佑の久しぶりの復帰はいかがでした?
賀川:今度のキリンチャレンジカップは6月3日からのワールドカップアジア最終予選の6月シリーズ3試合の直前リハーサルでしょう。それも本田圭佑という代表チームの攻撃の核が足の故障で長くチームから離れていたのが、ようやく復帰してきた。すでに所属しているロシアのCSKAモスクワでは試合に出ているから大丈夫だろうとは思っていても、やはり実際に自分の目で確かめたいもの。
――ザッケローニ監督もJFAの幹部もこの日、静岡のエコパ・スタジアムに集まった人たちもそのはずです。
賀川:テレビ観戦の多くのファンも、その多くの感染者が本田のプレーを見て、ホッとしたというところだろう。
――ゴールは決められなかったが、チャンスにからみ、決定的な場面でシュートやヘディングもした。得意のFKも見せてくれた。
賀川:この日の日本代表の試合にザッケローニさんはじめ日本中が、まず満足したはず。その大部分は本田のコンディションが回復していることを知ったことが大きい。
――ごひいきの香川真司はよかったですね。
賀川:彼は23歳の伸び盛りにあって、急速に伸びているというより、しっかり基盤を作って充実し続けているという感じだね。この試合では本田が入ったことで攻撃展開がいない時より格段にやりやすいことが香川自身も改めて確認したはずですよ。
――アゼルバイジャン代表は?
賀川:ロシアの南、トルコとイランの北側、黒海とカスピ海にはさまれた地域があって、古くはコーカサス、今はカフカスと呼んでいる、そのカフカス山脈の南側、カスピ海に面しているのがアゼルバイジャン共和国。ソ連邦の時代にはアゼルバイジャンソビエト社会主義共和国という名でソ連邦の一員だった。日本サッカーが64年の東京オリンピックに向かって強化に懸命のころ、日ソスポーツ交流で日本代表もソ連邦各地を転戦したが、その時この国の首都バクーでバクー・ネフチャニクというクラブと試合をしている。長沼健監督、岡野俊一郎コーチのころですよ。
――半世紀前の話ですね。
賀川:トルコ系の住民が多く、体格がよく、プレーは粘り強い。サッカーのこのバクー・ネフチャニクや隣国のディナモ・トビリシといった強いクラブがあった。アゼルバイジャンとして独立したいまはUEFAに加盟していて、今年6月に開催される欧州選手権(EURO2012)の予選にも参加している。
――本大会にはムリ?
賀川:予選Aグループでドイツ、トルコ、ベルギー、オーストリア、カザフスタンと戦った。ドイツやトルコが相手ではここから本大会へはおいそれとはゆけない。2勝1分7敗で5位だった。
――カザフスタンよりは上だった。
賀川:トルコに1勝、ベルギーとの引分けもあった。監督は有名な元西ドイツ代表のベルティ・フォクツで、2008年から2年契約だったが、2010年9月からのEURO予選の好成績で2012年まで契約延長した。ブラジルワールドカップ予選に向けての若い選手を加えてのチームを連れて来ていたようだ。
――FIFAランキングは100位より下ですが、ドイツやベルギーなどと戦って結構揉まれているわけですね。そういえばスライディングタックルが多かったのはフォクツの直伝かな
賀川:かもね・・・だがフォクツのはもっと近い間合いからの鋭いスライディングだったから、目下勉強中というところだろう。2002年のW杯で日本と対戦したトルコや、あるいはアジアでいつも顔を合わせるイランのように見た目よりも日本にはやりにくい相手というところでしょう。
――それが前半はほとんどワンサイドのようだった。
賀川:日本代表と初めて当たると相手は日本代表の早いテンポに戸惑って、ついていくのが精いっぱいになる。しかしそれでもしっかり守っていて、時折カウンターをしてきたでしょう。
1点目のパスのつなぎに本田のアイデアと長谷部の早い動きと判断、香川のシュート力
――日本代表は香川と長友の左サイドからチャンスを作った。本田のほれぼれする長友へのスルーパスもあった。
賀川:2010年のワールドカップを経験したあと、2011年の夏までの日本代表の試合で、パスの能力、攻撃の組み立てる力も素晴らしいことを実戦で何度も示していた。対アゼルバイジャンでも、そのキープ力や突破する力とともに仲間へのパスの巧さで観客を喜ばせた。日本のゴールは相手が中盤のFKから右へまわして、右から中へクロスを送りこんでくるという攻撃を防いだ後のカウンターからはじまったのだが、この時も本田の巧みなヒールパスが大きなアクセントとなった。
――前半42分のゴールですね。相手のクロスを防いで、長友が前方へ送ったボールがインターセプトされて、またこちらの守備ラインにボールが戻ってきた。それを長谷部が取ったところから攻撃が始まった。
賀川:(1)深い位置から、長谷部はすぐにハーフウェイライン近くの本田へパスした。その長谷部の足元へ相手の一人がスライディングしてきた。それをかわしながらのパスだった。
(2)そのパスが本田の届こうとするとき、また相手の一人がスライディングタックルで妨害しようとした。
(3)これに対して本田は少し位置をずらせて後方を向いたまま左足のヒールパスで駆け上がってくる長谷部に渡した
(4)長谷部-本田-長谷部という三角パスを受けて長谷部はドリブルし左に展開している香川へ。DFラインの裏へ通すスルーパスを送った。
(5)ペナルティエリア内でパスを受けた香川は遅れて飛びこんで(スライディング)くるDFを左足の切り返しで内へかわし
(6)余裕をもってゴールの右ポスト内側へシュートを送りこんだ
(7)2人のアゼルバイジャン選手がゴールカバーに入ろうとしたが、ボールはファーポスト内側へ吸い込まれた。
――香川はイメージ通りのゴールだったと言っています。
賀川:ペナルティエリアの左角の位置からのシュートは右利き選手なら右足での右ポスト内側すれすれに入るフック(カーブ)キックと、もうひとつ左ポスト(ニアサイド)ぎりぎりに叩きこむ2つのコースをまずマスターするのだが、真司はドルトムントへ出発する前のセレッソの試合(長居)でエリア左角からこのファーポストへのシュートを決めている。私がリーグで見た彼の新しいシュートコースだった。エコパではエリアの内、ゴールエリアの左外角とペナルティエリアの左角を結ぶ線上からだったから、この型の短めのシュートになった。
――こういう時に、しっかりと決めるのが真司!
賀川:もう自分の型ができている。彼の今度の移籍先と噂されるマンチェスター・ユナイテッドのルーニーも同じ型のもっと強い球を蹴るけれど、正確さでは真司かな・・・
それにしても本田のアイデアはすごいね。長谷部からのパスをヒールのリターンで攻撃正面を左に替えたのだからね。もちろん彼はこの型のプレーをこれまでにも演じているから、これも彼の持ち芸、あるいは持ち技のひとつですよ。長谷部のパスも持ちあがりのスピードということがなかったから、まさに絵に描いたようなゴールシーンだった。
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