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2012年4月

2012年4月5日  なでしこジャパン 対 ブラジル女子代表

2012/04/08(日)

キリンチャレンジカップ2012
2012年4月5日(木) 19:45キックオフ(兵庫/ホームズスタジアム神戸)
なでしこジャパン 4-1(前半1-1) ブラジル女子代表
 得点 日本:オウンゴール(16)、永里優季(58)、宮間あや(61)、菅澤優衣香(89)
    ブラジル女子代表:フランシエリ・マノエウ・アウベルト(45+1)

――FIFAランク1位のアメリカと2011のチャンピオン日本、それと北京オリンピック銀メダルのブラジルという3チームによるキリンチャレンジカップ2012は
日本 1−1 アメリカ 4月1日
アメリカ 3−0 ブラジル 4月3日
日本 4−1 ブラジル 4月5日
となって、なでしこジャパンが1勝1分得点5失点2、アメリカ1勝1分得点4失点1、ブラジルが2敗得点1失点7で日本が優勝しました。

賀川:日本代表、なでしこジャパンとそれを構成するメンバーの層が厚くなり、個々の選手の力が昨年の優勝以来、少しずつ充実していること、それを2試合で示したといえるでしょう。もちろん、ホームで戦ったのだから、優勝して当たり前という見方もできる。また実力ある相手との試合でも、そういう見方をする時期に来ているともいえるが´ーー。

ーーどこかで賀川さんはもう少し進化が早くてもいいということを言ってましたね。

賀川:まあ老人は気が短いからね。低年齢層からの育成、トップの強化など、いまほど日本サッカーは環境に恵まれている時期はないのだから――男子ともども日本全体に技術面、体力面、サッカーセンスの面、コーチ力の面で、もう少し進化が早くてもいいと、いつも言っています。その早い遅いは別としてもこんどのキリンチャレンジカップシリーズで何人かの選手の向上が見られたのは、とてもいいことです。

ーーさて、試合です。対ブラジル戦は北京オリンピック銀メダルのブラジルから4ゴールしました。

賀川:ブラジルは今世界で最も優秀な選手と言われているマルタがいるのだが、今回は来日しなかった。彼女がいればどうなっていたか――そのマルタ除きでも前半は互角、むしろブラジルに勢いがあった。

――テレビ解説でも、4月3日の対アメリカ戦と5日の対日本戦ではブラジルの意気込みが違うというように言っていました。

賀川:16分の日本の先制ゴールは、ゴールから30m、左サイドのFKを宮間あやが右足で蹴ったのがオウンゴールになってしまった。ゴール前中央でDFのアリニ・ペレグリノがヘディングでクリアしようとして失敗。頭をかすめて落ちてバウンドしたボールをキャプテンのダイアニ・メネゼスがヘディングで自分のゴールに入れてしまった。

ーー宮間のキックがよかったとも

賀川:速いボールだった。日本側はボールのコースに飛び込めなかったがアリニの前に宇津木瑠美がつめようとし、ダイアニの外から田中明日菜が追っていた。

ーー勢いがあっただけにブラジルにとってはこの失点は痛かったでしょうね。それでも45+1分にFKから同点にした。

賀川:なでしこのDFライン、つまり第3列とその前のMF陣のパスのやりとりを狙われ、奪われたボールを取り返そうとしたファウルでペナルティエリアの外、左角に近いところだった。

ーーフランシエリ・マノエウ・アウベルトという選手の右足のいいシュートでした。

賀川:強い回転ではないが、右ポストの内を狙う典型的なカーブシュートだった。スロービデオでボールのコースを見ながら、やっぱりブラジル人だなと思いましたよ。

ーー後半の日本の1点目も宮間の右CKからでした。

賀川:彼女が左足でニアポストへ蹴ったライナーを相手のDFの背後から前へ入り込んだ永里優季のヘディングだった。永里にとっても会心のプレーでしょう。キッカーとの呼吸の合った見事なゴールですよ。

ーー少し気落ちした相手に、その3分後にこんどはすばらしい展開で3点目を奪いました。

賀川:自陣右サイドの大野忍からDFの中央へ、さらに左に展開して左サイドで縦パスが出て、そこから今度は相手のペナルティエリアの根っこ(ゴールラインの交叉点)まで持ち込み、ゴール正面へクロスを送るという、多くのチームの監督さんたちが夢見るような展開の後のゴールだった。

ーー左の前へ飛び出した菅澤優衣香が左から中へ持ち込み、DFの足の間を抜くゴロのクロスを送ったのが、ゴール正面へ走り込んだ永里に来た。

賀川:それを永里が止まって左足をのばしてトラップし、もどって反転して右足でシュート、GKアンドレイア・スンタケが防いだリバウドを走り込んで来た宮間が決めた。

ーー宮間は後半からMFの中央にいましたね。

賀川:この日の宮間はここまでのボール全てにからんでいるが、感心したのはその宮間の外に、大野もきちんとつめていた。

ーー最初のパスを出した大野が、右でボールがまわっていたのにゴール前へ出ていたわけですね。

賀川:スロービデオを見ると、反転シュートするときに永里がいったん顔をあげたようだった。ひょっとするとその時、右サイドへ大野が上がっているのを見たかもしれない。こういうときの反転シュートはだいたいゴールキーパーの正面へ行きやすいものだが、永里のシュートはゴールキーパーの体の芯から外れていたーーだからキャッチでなく叩くセービングで叩くことになったというわけ。

賀川:永里はこの日は調子が良かったが、このシリーズで、ドイツでプレーを積んでいる効果がいろいろな形で出ていたようにみえた。

ーー川澄にゴールはなかったが。

賀川:彼女はこの日もシュートのチャンスにしっかり蹴っていた。相手DFを右へかわして右で打ったシュートはなかなかのものだが、少し浮いたね。あの形で押さえの効いたシュートができれば、もうひとつ上になる。

ーー4点目で近賀ゆかりのプレーをほめましたね。

賀川:近賀はこのシリーズでやはり攻撃への冴えをみせた。この4点目、一番疲れているタイムアップ直前に持ち上がり、菅沢の走り込むのを予想してニアへスピードを殺したパスを送って菅沢のダイレクトシュートを引き出した見事なプレーだった。

ーー相手は遠征チーム、疲れて動きが鈍ったこともあったが、選手は後半は余裕があって、いいプレーが重なりましたね。

賀川:それはとても大事なことですよ。もちろん相手が元気でガンガン来ているときにもいいプレーを演じてゴールを奪えるようにならなければいけないのだが、ともかく自分たちの攻めの経路をつくりあげ、それでゴールを重ねるーーことを積み上げるのが大切ですよ。

ーーこれでなでしこ人気がさらに高まってくれれば。

賀川:ごく最近、サッカーについて全く知らなかった年輩の婦人が、なでしこの活躍ですっかりとりこになってテレビを見ているーーと言っていた。こういう新しいファンのためにも、なでしこはいいプレーを見せてほしいものですよ。

ーー新しいファンと言えば、68年のメキシコ五輪の銅メダルで急激にファンが増えたころ、賀川さんは「お父さんのためのサッカー教室」という連載をどこかの雑誌で書いていたでしょう。ひとつ番外編でおかあさんのためのサッカーの見方でも書いてみたらーー

賀川:そうだね。なでしこのサッカーはバルサに似ているが、バルサほど動きが早くないのでテレビでもわかりやすいはず。そういうプレーを説明し、理解してもらうことも大事でしょうね。

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2012年4月1日  なでしこジャパン 対 アメリカ女子代表

2012/04/03(火)

キリンチャレンジカップ2012
2012年4月1日 19:30キックオフ(宮城/ユアテックスタジアム仙台)
なでしこジャパン 1-1(前半1-0) アメリカ女子代表
 得点 日本:近賀 ゆかり(32)
     アメリカ女子代表:アレックス・モーガン(72)


――強敵アメリカとの1-1いかがでした?

賀川:試合そのものも面白かったけれど、私は開幕セレモニーのアメリカ国歌を聞きながら、ジーンときましたよ。

――何か思い入れがありましたか?

賀川:アメリカ軍の音楽隊の男女が盛装して歌ったでしょう。その歌声とワンバックたち選手が口を動かしているシーンをテレビで見ながら、こういう形で日本とアメリカのスポーツ交流が行われるようになったことに感激したね。

両国のスポーツといえば、これまではまず野球(ベースボール)だった。それがサッカーで、しかもワールドカップ優勝の日本と、FIFAランキング1位のアメリカが大震災の被災地仙台で---ですよ。あの震災のときのアメリカ軍のすばやい対応は、私たちには忘れることはできない。

――賀川さんのような戦中派で、アメリカと戦争をした世代は特にそうでしょうね。

賀川:必ずしもこの国のすることは全てがいいとは言えないけれど、あの大正12年(1923年)の関東大震災のときも、一番先に日本にかけつけたのは、救援物資を積んだアメリカの駆逐艦だったという記録もある。当時はアメリカでは日本の移民排除運動のあったころですよ。

――そういうことも改めて思い出させてくれたということですね。

賀川:キリンカップ、キリンチャレンジカップはこれまでも外国チームとの対戦でいろいろなサッカーの楽しさを味合わせてくれたが、今回は震災と女子のナンバーワン同士という点でもとても意味のある催しとなったと思いますよ。

――日本の女子サッカーにとっても意義は大きい。

賀川:テレビで女子サッカーを見せてもらえるのはJFA(日本サッカー協会)にとっても、女子の関係者にとっても、とてもありがたいことでしょう。男子のコーチや指導者、選手、あるいは親御さんにとっても女子のトップ級のプレーを見ることはとても参考になるはずです。

女子を見ることで、男子のコーチも勉強になると。

賀川:多くの指導者にはとてもプラスになったはずです。

――さて、このアメリカ戦は昨年のワールドカップ決勝(2-2でPK戦で日本)、今年3月のアルガルベカップ(1-0で勝ち)に続いて3連勝できるかというところでした。

賀川:スコアは1-1、前半は日本がよく、後半はアメリカに勢いがあった。シュート数はどちらも8本ずつ。ワールドカップの優勝で、日本の中心選手がアメリカに対して自信をもつようになった感じもあるが、相手のプレッシングが激しくなると、なかなかボールをきちんとキープできず、パスミスも増えたところが今後の課題だろう。

――先制ゴールは近賀でした。

賀川:彼女は右サイドの高い位置へ進出して、前半はそこからチャンスを生んだ。得点の時の攻めは
(1)熊谷からのパスをノーマークで受けた近賀が
(2)右タッチ際からいったん中の川澄に渡し、
(3)川澄がドリブルで相手の守備網の前へ進み
(4)DFラインの裏へ、ふわりと小さく浮き玉のパスを送った
(5)このとき大野がDFラインの裏へ入っていて、オフサイドの位置だったが、彼女は状況を見てプレーの動作を起こさず、
86)外から裏へ走り込んだ近賀がボールを取り、ゴールライン右ポスト近くから中へパス
(7)ファーサイドにいた永里がダイレクトシュートした
(8)ボールはDFに当たり、GKにも当たって近賀の前へ
(9)近賀が左足で蹴り込んだ。

――川澄のうまいパスでしたね。

賀川:川澄はワールドカップの後、上手になった。元々ドリブルもシュートもしっかりしていたのが、自信を持つようになったのだろうね。自分のスピードをよく知っていて、緩急をつけ、また体でボールをカバーしたりできる。

――相手をかわすだけでなく、持って出てシュートまでゆけますからね

賀川:ボールを持った時に自信があるから周囲も見えるようになっている。

――この試合では、惜しいシュートもあった

賀川:ノーマークシュートを横殴りで蹴って、逆ポストの外へ出したのもあったね。もともと点の取れる選手で、まだまだ伸びるでしょう。

――チームのパス攻撃は進化したように見えましたが、守備はどうでしょう。

賀川:守りと言うのは基本は1対1の守りの強さが基礎となるので、いくら組織力で守っても、日本の個人力では男子も女子も、どこと試合しても1点は失なうものと考えた方がよい。だから勝つためには、どこを相手にしても2点を奪える力をつけることですよ。なでしこも攻撃の組み立てはずいぶん上手になってきたから、シュート力とどこでシュートするか、つまりフィニッシュの位置やスペースの選び方とそこへ入ってシュートすること――その力と方法を身につけることです。ちょっとした各個人の工夫と選手たちの「あうん」の呼吸で、もっと点が取れるようになるでしょう。

――アメリカはどうでした?

賀川:ベテランのワンバックがあまりよくなかった。モーガンはあいかわらず危険なFWだが……これだけのタレントがいて、そこそこの技術もあるのに、もう少し理詰めの展開をすればより強いチームになりますよ。

そう、ポルトガルの大会で日本に勝ったドイツはFWにひとり、これまでのドイツ選手とは違ったタイプがいたでしょう。単純なタテへの攻めで日本が失点したのは、ドイツ人と違った身のこなし、ドイツ人と違った速さ(たとえば足を出す速さ)のプレーヤーがいたからだと思います。

――ブラジルは一番のストライカー、マルタが来日していないそうです。

賀川:せっかくのチャンスで惜しい気がするが、マルタ以外にもいいタレントがいるかもしれない。そういう相手と戦えるのも、このキリンチャレンジカップのいいところですよ。

――3日にアメリカ対ブラジル(フクダ電子アリーナ)があるので、そうした外国チーム同士のレベルの高い試合を見ることができる。

賀川:日本の女子サッカーは、いまパスワークで世界で高く評価されるようになったのはいいけれど、個人力を高めることも大事なこと。アメリカの選手たち、ブラジルのプレーヤーの技術や体力、走力をこの試合でみるのもとても勉強になるはずです。

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