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2012年4月1日  なでしこジャパン 対 アメリカ女子代表

2012/04/03(火)

キリンチャレンジカップ2012
2012年4月1日 19:30キックオフ(宮城/ユアテックスタジアム仙台)
なでしこジャパン 1-1(前半1-0) アメリカ女子代表
 得点 日本:近賀 ゆかり(32)
     アメリカ女子代表:アレックス・モーガン(72)


――強敵アメリカとの1-1いかがでした?

賀川:試合そのものも面白かったけれど、私は開幕セレモニーのアメリカ国歌を聞きながら、ジーンときましたよ。

――何か思い入れがありましたか?

賀川:アメリカ軍の音楽隊の男女が盛装して歌ったでしょう。その歌声とワンバックたち選手が口を動かしているシーンをテレビで見ながら、こういう形で日本とアメリカのスポーツ交流が行われるようになったことに感激したね。

両国のスポーツといえば、これまではまず野球(ベースボール)だった。それがサッカーで、しかもワールドカップ優勝の日本と、FIFAランキング1位のアメリカが大震災の被災地仙台で---ですよ。あの震災のときのアメリカ軍のすばやい対応は、私たちには忘れることはできない。

――賀川さんのような戦中派で、アメリカと戦争をした世代は特にそうでしょうね。

賀川:必ずしもこの国のすることは全てがいいとは言えないけれど、あの大正12年(1923年)の関東大震災のときも、一番先に日本にかけつけたのは、救援物資を積んだアメリカの駆逐艦だったという記録もある。当時はアメリカでは日本の移民排除運動のあったころですよ。

――そういうことも改めて思い出させてくれたということですね。

賀川:キリンカップ、キリンチャレンジカップはこれまでも外国チームとの対戦でいろいろなサッカーの楽しさを味合わせてくれたが、今回は震災と女子のナンバーワン同士という点でもとても意味のある催しとなったと思いますよ。

――日本の女子サッカーにとっても意義は大きい。

賀川:テレビで女子サッカーを見せてもらえるのはJFA(日本サッカー協会)にとっても、女子の関係者にとっても、とてもありがたいことでしょう。男子のコーチや指導者、選手、あるいは親御さんにとっても女子のトップ級のプレーを見ることはとても参考になるはずです。

女子を見ることで、男子のコーチも勉強になると。

賀川:多くの指導者にはとてもプラスになったはずです。

――さて、このアメリカ戦は昨年のワールドカップ決勝(2-2でPK戦で日本)、今年3月のアルガルベカップ(1-0で勝ち)に続いて3連勝できるかというところでした。

賀川:スコアは1-1、前半は日本がよく、後半はアメリカに勢いがあった。シュート数はどちらも8本ずつ。ワールドカップの優勝で、日本の中心選手がアメリカに対して自信をもつようになった感じもあるが、相手のプレッシングが激しくなると、なかなかボールをきちんとキープできず、パスミスも増えたところが今後の課題だろう。

――先制ゴールは近賀でした。

賀川:彼女は右サイドの高い位置へ進出して、前半はそこからチャンスを生んだ。得点の時の攻めは
(1)熊谷からのパスをノーマークで受けた近賀が
(2)右タッチ際からいったん中の川澄に渡し、
(3)川澄がドリブルで相手の守備網の前へ進み
(4)DFラインの裏へ、ふわりと小さく浮き玉のパスを送った
(5)このとき大野がDFラインの裏へ入っていて、オフサイドの位置だったが、彼女は状況を見てプレーの動作を起こさず、
86)外から裏へ走り込んだ近賀がボールを取り、ゴールライン右ポスト近くから中へパス
(7)ファーサイドにいた永里がダイレクトシュートした
(8)ボールはDFに当たり、GKにも当たって近賀の前へ
(9)近賀が左足で蹴り込んだ。

――川澄のうまいパスでしたね。

賀川:川澄はワールドカップの後、上手になった。元々ドリブルもシュートもしっかりしていたのが、自信を持つようになったのだろうね。自分のスピードをよく知っていて、緩急をつけ、また体でボールをカバーしたりできる。

――相手をかわすだけでなく、持って出てシュートまでゆけますからね

賀川:ボールを持った時に自信があるから周囲も見えるようになっている。

――この試合では、惜しいシュートもあった

賀川:ノーマークシュートを横殴りで蹴って、逆ポストの外へ出したのもあったね。もともと点の取れる選手で、まだまだ伸びるでしょう。

――チームのパス攻撃は進化したように見えましたが、守備はどうでしょう。

賀川:守りと言うのは基本は1対1の守りの強さが基礎となるので、いくら組織力で守っても、日本の個人力では男子も女子も、どこと試合しても1点は失なうものと考えた方がよい。だから勝つためには、どこを相手にしても2点を奪える力をつけることですよ。なでしこも攻撃の組み立てはずいぶん上手になってきたから、シュート力とどこでシュートするか、つまりフィニッシュの位置やスペースの選び方とそこへ入ってシュートすること――その力と方法を身につけることです。ちょっとした各個人の工夫と選手たちの「あうん」の呼吸で、もっと点が取れるようになるでしょう。

――アメリカはどうでした?

賀川:ベテランのワンバックがあまりよくなかった。モーガンはあいかわらず危険なFWだが……これだけのタレントがいて、そこそこの技術もあるのに、もう少し理詰めの展開をすればより強いチームになりますよ。

そう、ポルトガルの大会で日本に勝ったドイツはFWにひとり、これまでのドイツ選手とは違ったタイプがいたでしょう。単純なタテへの攻めで日本が失点したのは、ドイツ人と違った身のこなし、ドイツ人と違った速さ(たとえば足を出す速さ)のプレーヤーがいたからだと思います。

――ブラジルは一番のストライカー、マルタが来日していないそうです。

賀川:せっかくのチャンスで惜しい気がするが、マルタ以外にもいいタレントがいるかもしれない。そういう相手と戦えるのも、このキリンチャレンジカップのいいところですよ。

――3日にアメリカ対ブラジル(フクダ電子アリーナ)があるので、そうした外国チーム同士のレベルの高い試合を見ることができる。

賀川:日本の女子サッカーは、いまパスワークで世界で高く評価されるようになったのはいいけれど、個人力を高めることも大事なこと。アメリカの選手たち、ブラジルのプレーヤーの技術や体力、走力をこの試合でみるのもとても勉強になるはずです。

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