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10月8日 日本代表 vs アルゼンチン代表(下)

2010/10/12(火)

キリンチャレンジカップ2010
10月8日19時54分キックオフ(埼玉・埼玉スタジアム2002)
日本代表 1(1-0、0-0)0 アルゼンチン代表
 得点 日本:岡崎慎司(19)



――アルゼンチンは、来日した22人のプレーヤーは一人がブラジルのチームで、あとはすべてヨーロッパのクラブにいます。したがって長い旅行の疲れに時差というハンディもある。キックオフ早々から素早いプレッシングをかけてきたのも、疲れの出る前に先制して調子に乗りたいという気持ちがあったでしょう。それが、この20分間の攻防戦で失点してしまった。

賀川:はじめの5分間、受け身になっていた日本の体勢挽回は先に言った香川真司のドリブルの仕掛けから。ここで互角の形に持ってゆき、しっかりした全員守備でのボール奪取からの攻撃で先制点を生んだ。これがこの日の試合の流れを大きく左右したネ。

――アルゼンチンはそのあといい攻撃をたくさん見せましたが、結局はゴールを奪えず、日本は世界屈指のサッカー王国との代表の対戦で初勝利をつかむことになる。
 いいゴールだったから、何度も繰り返します。日本は、
(1)相手のミスから
(2)早いサイドからの攻めで
(3)中央の本田圭佑に渡り
(4)本田はシュートできなかったけれど、そのこぼれ球を
(5)長谷部誠がペナルティエリア外から強いシュートをして
(6)GKロメロが弾いたのを
(7)岡崎慎司が決めた

 この攻撃の発端が、相手の左DFエインセの処理ミスを奪った岡崎。奪った勢いを殺さずに一気に右サイドを縦にドリブルしてサイド攻撃を仕掛けました。

賀川:守から攻へのときに、ボールを奪った者が前方のスペースへ一気にドリブルした。速攻の見本のようだったネ。

――ワールドカップでは松井大輔が右サイドだったのが、彼のケガでこの日は岡崎でした。香川の活躍を見て、彼も燃えていたハズでしょう。

賀川:森本貴幸をトップに、本田をトップ下、右に岡崎、左に香川を配置した攻撃陣は自分から仕掛ける気持ちも持っている。本田はいいシュートができなかったが、ボールが長谷部の前に転がったとき、長谷部のシュートを妨害できる相手がいなかった。本田は潰されはしたが、いわばうまい潰れ方でもあった。

――さて、そのゴールでリードした後も相手にゴールを与えませんでした。1-0の勝因にはディフェンス面も大きいですね。

賀川:サッカーは攻めと守りのバランス――と、今度の監督さんは強調している。当然のことだが、もともとイタリアのサッカーは守りについての配慮がしっかりしていて、攻撃のプレーヤーでも守備意識が高かった。だから「攻撃重視の監督」といわれるザックでも、守りへの配慮はしっかりしているハズですヨ。

――その守りでうまくいったのは

賀川:うまくいったというより、今度のアルゼンチン代表は日本にとっての“タイプ”だったといえる。まず、2010年大会でも活躍したゴンサロ・イグアイン(レアル・マドリード)が先発しなかったこと。代わりに出場したディエゴ・ミリト(インテル)も故障があったのだろう。

――イグアインは南アフリカ大会の1次リーグ、対韓国(4-1)でハットトリックをしています。

賀川:184センチの彼がいれば、高さだけでも日本には脅威だが……

――33分に交代で入ってきましたが

賀川:埼玉から自宅に戻ってビデオを見たら、前半初めの頃アルゼンチンの左からのクロスが日本ゴール前に上がったとき、解説の金田喜稔さんが「相手のFWには長身がいないから怖くない」と言っていたが、選手たちもそう思っていただろう。
 アルゼンチン代表はドリブルと鋭いパス交換で狭い地域での突破が伝統的な攻め手の一つ。日本のコーチなら、なぜ外に開かないのか、なぜサイドを使わないのか――と思う場面でも狭いところでの突破を図ることが多い。

――その対策を日本はしっかりやった。

賀川:イタリア・サッカーで育ったザックさんは、こういう防御については得意でしょう。日本代表の南アフリカ大会で得た遺産――勝つためには守りをしっかりする――そのためにはFWの選手の守りも見せかけだけでなく本来の守備をする――が生きていた。

――メッシのドリブルへの囲みも良かった。

賀川:うーむ。それでもときどきやられたが……。彼の仕事を大幅に制限はできた。アルゼンチン代表のスターティング・ラインナップをみると、29~32歳が7人もいる。年齢が高い割に、かつてのアルゼンチン代表らしい“嫌らしさ”という感じが少ないのが不思議だった。それはともかく、南アフリカへゆけなかった私は久しぶりにメッシをナマで見ることができてとても嬉しかった。

――近江達先生枚方フットボールクラブ創立者)が、子どものサッカーがそのまま大きくなった、と言っていたそうですね。

賀川:10月10日に近江ドクターや枚方FCの関係者たちと食事をした。そのときに少年の指導の大権威であるドクターが、メッシを見ていると小さなステップを踏んで相手をかわす子どものサッカーがそのままどんどん上達し、レベルアップしていっているようだ――というふうに言っておられた。
 ディエゴ・マラドーナもそうだったが、私は細かいステップと小さな振りでのキック、そしてボールタッチなどを感嘆しながら見ていた。その彼を生かすためのチームプレーがアルゼンチン代表には乏しかった――というのが、2010年のテレビ観戦の感想だが、今度も同じように見えた。

――86年のマラドーナのときとは違う

賀川:もちろん時代背景も異なっているけれど、当時のカルロス・ビラルド監督はマラドーナの巧みな技を生かすために、もう少し大きい展開も準備し、練習していた。

――だから、今回は日本代表にもやりやすかった?

賀川:それでも何回かは危ない場面があった。しかし全体としては、ゴール近くになってからの密着と多数防御が効いた。それにはまず全員の「勝ちたい」という意識の強さがあったと思う。

――本田が守備で目立ちました。

賀川:FKやCKのとき、ニアサイドのヘディングで頑張ったね。彼を見ていると、ちょっと立場は違うがメキシコ代表の68年の代表チームの選手を思い出すネ。

――と、いうと?

賀川:あの頃の選手の多くは、今ほど上手ではないが負けず嫌いだった。釜本邦茂は例えば外国のプロとの対戦前に話を聞くと、どんな名選手だろうが、相手が自分より年長だったら「年寄りに負けるか」と思ったという。だから、61年にブラジルのパルメイラスと試合をするときでも、絶対に食ってやろうと思っていたらしい。

――だから天下のプロ、パルメイラスから1勝したのですね。

賀川:いまの日本代表にもそういう気持ちが強くなっているように見えるのが嬉しいネ。



◆FIFAランキングは低くても韓国は韓国
 当方の弱点をよく知っている韓国を相手に、新日本代表の試金石

――12日には韓国と対戦します。

賀川:アルゼンチンのように、上手だが相性のいいチームの次は伝統のライバルだから、とても楽しいヨ。南アフリカでアルゼンチンに1-4で負けた韓国代表が、そのアルゼンチンに勝った日本をホームで迎え撃つ形になった。韓国代表にとっても、久しぶりに一つやってやろう――という気になっているだろう。

――ここのところ韓国は対日本で明らかに精神的優位にあります。日本代表が負けず嫌いをどこまで貫けるか。このエキサイティングな対戦に、彼らがどういうふうに臨むかも楽しみです。

賀川:2010年で折角つくった中澤・闘莉王の大型の2CDFの後継者がどうなるかという課題もあって、見逃せない試合ですヨ。


【了】


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