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9月4日 日本代表 vs パラグアイ代表(上)

2010/09/06(月)

キリンチャレンジカップ2010
9月4日19時20分キックオフ(神奈川・日産スタジアム)
日本代表 1(0-0、1-0)0 パラグアイ代表
 得点 日本:香川真司(64)


◆南ア大会代表の遺産のうえに、香川真司のドリブル力・シュート力の向上欲が生んだ新代表の勝利とゴール

――対パラグアイ戦、良かったですね。特に香川真司がゴールを決めたから、賀川さんも満足でしょう。

賀川:ボクはどの試合でも面白がって見る方だから、例えば2010ワールドカップ直前の強化試合、準備試合で成績の出ないときでも結構楽しんでいましたヨ。対韓国0-2の完敗でもそうだった。その代わり勝った試合でも、例えばカメルーン戦には不満もあったし、0-0からPK戦負けのパラグアイ戦は「よくやった」とはいいながら、別のところでは「○○と××が足りない」「○を△△が半年以上前に上達しておけば勝ったのに」とか――。試合後にまあ満足といえることはない。それだけ欲が深いのだよネ。

――日本代表にはそれだけ期待が高いというわけですね。しかし香川には良い点数をつけたでしょう?

賀川:これくらいはやれるハズだと思う反面、その期待に近いプレーをしてくれることはうれしいネ。彼はゴール場面だけでなく、いくつかいいプレーをした。しかしそれより前に、チーム全体の気持ちの持ち方が良かったよネ。

――何といってもパラグアイ――6月にサッカーの一番の舞台で一番悔しい負け方をした相手との対戦でサポーターの関心も高く、メディアも注視していました。選手たちの気構えも充実していたでしょう。

賀川:CDFの田中マルクス闘莉王、MF遠藤保仁、アンカー役だった阿部勇樹、ゲームキャプテンの長谷部誠、それに大久保嘉人といったレギュラーが5人、故障その他の理由で出場できなかった。どこでもこなせる控えの一番手、今野泰幸もケガで離れていた。

――闘莉王の代わりのCDFに栗原勇蔵、MF陣には細貝萌、中村憲剛、香川真司を入れ、本田圭佑をトップ下に置いて大久保の代わりに森本貴幸をワントップに持ってきました。

賀川:中村憲剛は南アフリカでは出場時間は多くはなかったが、代表経験は長いし、香川も森本も大会中ずっとチームと一緒に練習していたから、2014年を目指す新しい代表といっても南アフリカ大会の代表と同じ考え方ができたハズだ。

――同じスタイル?

賀川:選手の配置やその日のプレーのやり方については、相手によって変わって当たり前だが、日本代表の試合は、どのような相手でも、まず相手よりもよく動いての攻撃の連動プレーが第一となる。こういう労の多い試合だから、そのためには気合が充実していなければならない――というのがボクの考えで、今回はまずその点(環境的にも)が良かった。

――今回は、南アフリカのときの代表より攻撃的にゆこうとしたとか?

賀川:負けたらおしまい、という本番の大会じゃないのだから、こういう強化のための試合でより攻撃的に――というのは当然でしょう。

――そのなかで、香川の攻撃プレーが光ったというわけですね。

賀川:話を真司にもってゆきたいようだね。ボクはサッカーマガジンの2014年代表というアンケートに、香川を代表レギュラーに入れていますヨ。
 この選手はボクと同じカガワだから、JFA発行の日本代表選手のデータ集(『日本代表公式記録集2008』)のなかでボクの兄・太郎と同じページに並んで記載されている。これはこのデータ集が出版されたときにセレッソ大阪の広報・横井素子さんから教えられて気がついたのだが――。

――当時日本代表入りした最も若い香川と、最も古い記者の賀川。2人のカガワで対談もしましたよね。

賀川:あれは1年前だったか、彼はJ2でもズバ抜けていた。ボールを持つときの視野が広く、パスのコースを遠近ともに持っていた。運動量の多い点、ドリブルができ、ボールをしっかり蹴れて、パスでチーム全体を動かせるという点が若いころの兄・太郎によく似ていた。左回りに円弧を描くようにドリブルして相手をかわすのもそっくりだった。もちろん今のプレーヤーだから、70年前の太郎よりボールテクニックが上なのは当然だが――。
 対談した頃の香川はいいパスを出して「どんなものだ、ボクのパスを見てくれたか」という感じもあったが、やがて点を取るようになった。パスを出したあと、前へ飛び出して(ボールを)もらったり、ドリブル突破したりしてね。

――そうですね。昨季J2の得点王(27ゴール)でした。

賀川:得点とともに、パスの感覚も磨きがかかった。何といっても、自分で工夫し、努力する選手ですから。

――神戸で少年期をすごし、仙台で自分のやりたいサッカーができそうだと中学生のときに移り住んで頭角をあらわした彼をスカウトしたのが、賀川さんの後輩だそうですね。

賀川:神戸FCにいて、今はセレッソのコーチとなった小菊昭雄くん。真面目ないいコーチですヨ。
 香川はセレッソに入って前述のようにぐんぐん伸びた。乾貴士という同世代の選手もいたから励みにもなったでしょう。彼や乾のようなプレーヤーは、いいヒントをもらえばどんどん上手になる。もちろん、ヒントなしでも自分で工夫する力を持っているハズ。
 香川は右足のキックは得意で、左サイド寄りからチームの右サイドへのクロスの長いパスもしっかり出せるし、小さな振りでのパスも出せる。ドリブルは前述の円弧を描くやや大きいのと、急角度の切り返しもできる。スピードを緩めておいて飛び出す瞬間のダッシュが早いので、この緩急の落差に相手は手を焼くことになる。
 向上心ということの証(あかし)の一つは、彼がことしのシーズン前半、セレッソでの最終戦だったかでペナルティエリア左角からシュートしてゴール右ポストぎりぎりへ決めたフックシュートだろう。あれは彼のゴールでは初めてのコースだった。高いレベルのFWはこの位置へ来ると、ファーポスト内側ぎりぎりのフックシュートと、ニアポストへの叩きつけと2つの角度を持つようになるもの。マンチェスター・ユナイテッドのウェイン・ルーニーもオランダのデニス・ベルカンプもそうだったが、このとき、香川もしっかりそういう技を身につけようとしていた。

――そうした向上力が、ドイツでも発揮されている、と。

賀川:そうだろうね。ドイツの開幕直前の試合でゴールするのをテレビのニュースで見た。久しぶりに見た感じでは少したくましくなった感じかな。まあ実際はそうでなくても、接触プレーの強い相手の中でプレーすることで、もともとバランスがよく、緩急の変化などで対応できる彼が、その強い当たりにも自信を持ったのだろう。だから落ち着いて見え、こちらの目に頼もしく映るのだろうね。


【つづく】


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