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2月4日 日本代表 vs フィンランド代表

2009/02/07(土)

仮想オーストラリアというには力不足の相手だが、収穫はいろいろ。
ゴールを楽しみ、若手の進歩を喜び、あわせて本番の不安も感じた90分。ごくろうさま、森と湖の国の選手たち



キリンチャレンジカップ2009~ALLFOR2010!~
2月4日(東京・国立競技場)19:20
日本代表 5(3-0 2-1)1 フィンランド代表
得点者:岡崎(日 15、32分)香川(日 44分)ポロカラ(フ 50分)中澤(日 57分)安田(日 86分)

【日本代表メンバー】
GK: 18都築龍太
DF: 22中澤佑二(Cap.)4田中マルクス闘莉王→24高木和道(55分)15長友佑都、6内田篤人→3駒野友一(72分)
MF: 27橋本英郎、7遠藤保仁→5今野泰幸(77分)14中村憲剛、29香川真司→21安田理大(81分)
FW: 11玉田圭司→12巻誠一郎(84分)33岡崎慎司
SUB:23川島永嗣、26菅野孝憲、2寺田周平、9田中達也

【フィンランド代表メンバー】
GK: 1トミ・マーノヤ
DF: 5マルクス・ハルスティ、14トニ・クイバスト、2ヨニ・アホ、15トゥオモ・トゥルネン→16ユッカ・ライタラ(55分)
MF: 17ティム・スパルフ、20ロニ・ポロカラ、21カリ・アルキブオ→11ペルパリム・ヘテマイ(85分)6ユッシ・クヤラ→8メフメト・ヘテマイ(45分)
FW: 10ヤリ・リトマネン(Cap.)→18テーム・プッキ(68分)9ニクラス・タルバヤルビ→19ヤルノ・パリッカ(77分)
SUB:12ヘンリ・シランパー、4ヨナス・ポルティン、3トゥオモ・ケネーネン、13サミ・レハメーネン、7ミカ・オヤラ

――5-1の大勝、いい気分ですね。もっとも、フィンランド代表が仮想オーストラリアというにはちょっと弱すぎて、2月11日に向けてあまり効果的でなかろうという声もあります。

賀川:とても良かったと思う。強敵との本番を1週間後に控えている岡田武史監督にすれば、“とても”とは言えず慎重な言い方だったが、選手たちにも収穫があり、ファン、サポーターにも見どころが多かった試合ですヨ。

――岡崎慎司が2ゴールしたことも、“よかった”の一つですね。前回のお話で、フィンランド戦での彼の得点を期待していました。

賀川:滝川二高出身、黒田和生先生の教え子だからネ。田中達也や玉田圭司のような際立った早さはともかく、よく走れて、その上に体に粘りがあって反転のときに崩れない。右も左も蹴れる。173センチと小型の方だが、ジャンプのタイミングもいいし、ヘディングもできる。点を取るためにどこへ走り込むかをいつも狙っているところがいいので、まわりの仲間と意思が通じるようになればゴールを奪うか、ゴールにからむようになると眺めていた。
 相手のディフェンダーが一流というわけではなかったから、などという言い方もできるけれど、やはり狙ったところへ動き、そこへボールが来て、それをシュートしてゴールする――という経験を代表で積んでゆけるのがいい。

――相手DFのウラへ簡単に入れましたね。

賀川:岡崎はこの2得点で自信を持っただろう。自信を持てば、シュートの練習にももっと力が入るだろう。ただし、岡崎のゴールを含めてこの日の日本の攻撃全体がアジアカップの2試合――対イエメン(2-1)対バーレーン(0-1)とまったく違っていたことが重要だと思う。

――メンバーとしては、ディフェンスの中央が中澤佑二と闘莉王がそろったこと。GKは故障の楢崎正剛や川口能活に代わって新しい3人が入ったこと。それにガンバの2人がボランチをしましたね。

賀川:闘莉王のコンディションは万全とはいえなかったにしても、ピッチの上で試すことができた。一番大きかったのは、遠藤保仁と橋本英郎の2人が入ったことで、1月のアジアカップ予選2試合の展開に比べて攻めに緩急の変化がついたこと。遠藤はその攻めのタイミングの変化のうまさでは歴史的に見ても日本では第一級だから、両サイドの内田篤人や長友佑都がイキイキとプレーをしたのはもちろん、対バーレーン戦の反省もあってのことだろうが、何といってもガンバ組のところでタメをつくってくれるのだから――。

――ちょっと難しい理屈のように聞こえますが。

賀川:日本のサッカーは昔から“早さ”が信条なんです。兵法でも「兵は巧遅より拙速を尊ぶ」などと言っている。家のなかでもお母さんはたいてい子どもたちを「早く早く」と急きたてて学校へ送り出し、電車の駅ではすぐに乗りなさいと急がされる。日常もそうだし、サッカーもそうだが、戦争だって相手の準備ができていなければ拙速(せっそく)――マズくても早い攻めの方がいい場合があるが、相手が準備して待ち構えているときには充分にこちらも準備しなければならない。

――アジアカップの予選2試合は、相手が引いて守っているところへ、拙速でいったということ?

賀川:サッカーは同じ人数で、ピッチの広さも決まっていて、グラウンドの外から攻めることはできないし、ゴールの後方から攻めることもできない。となると大切なのはタイミング、“いつ”ということになる。

――岡崎のゴールでも、それがありましたか?

賀川:15分の1点目はその少し前に右サイドで小さなパス交換があったが、そこから突破しないで後方へ、そして左へとボールを動かし、今度は闘莉王が左寄りから(1)右へ長いボールを送ってきた。(2)右タッチ際で内田が受けて、(3)遠藤に渡した。(4)遠藤はそれをダイレクトで、もう一度内田へ戻し、自分はスタスタと右前へ出た。(5)そのとき、相手ゴールエリア外、中央やや右寄りにいた岡崎が右前へスタートした。(6)内田はそれに合わせて高いボールを蹴り、(7)そのボールの落下点へ岡崎が走って、(8)ゴールエリア近くで左足ボレーでシュートしてニアポスト際へ決めた。

――遠藤がからんだところがミソ?

賀川:左から右へ、長いパスが来た。長いボールだから当然、相手はその行方を見ている。それを受けた内田が、自分がハーフラインから直接前線のFWへパスを出すのでなく、小さく遠藤に渡したのがまず第1点。その遠藤がさり気なくまた内田に戻して、自分はすぐ動いたのが第2。相手側のプレーヤーの視線はボールの動きと、遠藤の動きに集中する。岡崎をマークしていたCDFもそうだった。その瞬間(そのDFの目が内田と遠藤に向けられたときに)に岡崎は走り出した(いわゆる動き出し)。並んでいる彼に先に動かれ、一瞬遅れたDFのコースへ入るように岡崎が走って、左足でシュートを決めた――ということになる。
 遠藤との小さなパスのやり取りが小さなタメとなり、岡崎のスタートのチャンス――それも相手の視野の外で――をつくったことになるだろう。

――ふーむ。

賀川:相手の中盤のプレッシングが強いときに、こうした“無駄に見えるパスのやり取り”は潰されることもあり、それを嫌うコーチもいる。それはそれとして、攻め急ぎでイエメンやバーレーン相手に苦しい試合を経験したメンバーにとって、あらためてタメの必要なこと、遠藤、橋本のガンバコンビによるボールの動かしを理解できたと思う。

――その通りやっていいかは別として、でしょう。

賀川:プレーヤーにはそれぞれのやり方があっていい。しかし“押してダメなら引いてみよ”の歌にもあるとおり、一つだけではちょっと強い相手を攻略するのは難しいからね。日本代表の特色のランプレーを成功させるには、強さと、こうした間(ま)が必要なのだから……。

――海外組はそれができる?

賀川:まぁ、人によるだろう。中村俊輔はそれの達人だし、あの得意のクロスでも、ファーポスト側に合わせるのかニアで合わせるのかライナーにするのか上げて落とすボールにするのか、その時々に判断して実行している。

――内田はこの日、CKから中澤佑二のヘディングシュート成功のクロスを蹴りましたね。

賀川:後半、相手に1点を返され3-1になったのが50分。その7分後の得点で4-1にした。この右CKは遠藤がキッカーで、ショートコーナーにして後方やや内側の内田に渡したところが面白かった。

――というのは?

賀川:この日、遠藤は流れのなかで何回かロングパスを蹴っていた。小さなつなぎで一方のサイドに相手側をひきつけ、逆に振る、攻めの一つのやり方だが、その遠藤がキッカーだから、直接ファーポスト側へボールが来ることも相手は考える。ところが彼は中澤がいるのを見て、自分が直接そこへボールを送りこまずに内田に渡して、内田にクロスキックさせた。距離の問題と、ボールがサイドで動くことで相手DFの目がいったん動くボールに注がれる。その間に中澤が位置をずらしてもマーク相手は気付くのが一瞬遅れてしまうことになる。

――そういうことですか。

賀川:このやり方は、これまでに俊輔と遠藤のコンビで何度か成功していますヨ。

――若い内田がそういう仲間に入れるようになったと言うのは早すぎますかね。

賀川:こうして、若い選手が重要な場面にからんでゆくことで個人の進歩も、チーム全体も向上するわけです。CKの場面を取り上げたけれど、岡田監督になって新しく加わってきた19~22歳の若手――オリンピック世代ともいえる――が伸びてきている。27~30歳の多い代表チームに若い力が入ってくるのはとても良いことですよ。それがまた今野泰幸や駒野友一、巻誠一郎、田中達也といった中堅組の励みにもなるだろうしね。

――香川真司も点を取りました。

賀川:ここのところ、ちょっと伸び悩みかな。プレーヤーが伸びるのは階段状だから…。
 それにしても、相手のバックパスだったか、ボールを拾って小さなバウンドを利用して左足で浮かせて抜いて出て、そのあと左へかわして左足シュートをしたのだから、図々しいプレーができるネ。

――相手が下手だからできたと?

賀川:香川自身は相手を上から見ていた感じだね。しかしフィンランドだって前半の2つのチャンスで点を取っていたら、そんなに見下すことができる相手ではない。あの6分のユッシ・クヤラのシュートは、闘莉王が背後にいながらいったん間合をあけて、そのあと競りに行ってシュートされている。誰かがこぼれ球に行っていたら…というところだ。
 27分のティム・スパルフの左足のボレーがバーに当たって観衆はヒヤリとした。21歳の194センチ――。背が高いということは膝の位置が高いので、日本人には無理な高さのボールをボレーで叩いて、それをバーの高さに押さえるのだからネ。

――全体としては?

賀川:遠い北欧から試合に来てくれた彼らのおかげで、本番の一週間前にともかくリハーサルできたプレーヤーもあり、自らの上達を確認したものもありで、結果は良かっただろう。GK都築龍太が相手のノッポと競って叩いたボールが遠くへ飛ばなかったことも、分かったのだから良かったじゃない。
 そうそう、試合後の記者会見でフィンランドのスチュアート・バクスター監督(広島と神戸で監督をした)が、ヴィッセル神戸のサポーターがスタンドからバクスターに拍手をしてくれてとても嬉しかった、有難う――と言っていた。

――こういうサッカー人のつきあいは大事にしたいところです。

賀川:どんな試合をしても、そこで得たものをプラスにして次の試合に結びつけるかどうかは選手自身だからね。オーストラリアが相手といっても、自分たちがJや海外のリーグで培ったものを、チームにしてぶつけるだけ。俊輔をはじめ海外組が合流してからいいコンディションのチームに仕上げてほしい。

――オーストラリア戦は勝てますかね?

賀川:ワールドカップの本番で上位を目指すには、いまの日本代表はまだ、必要なポジションプレーのできる人材が少し不足している。しかし、アジア予選を突破できる力はあるだろう。オーストラリアとは、互いに勝っても負けても不思議でないライバル。こういう相手と戦えることは選手たちにはとても幸福なことだろう。
 フィンランド戦で、ちょっぴりニガ味を味わいながらいい勝ち方で盛り上がったのだから、大いに期待したいね。勝とうという意地の強さを見たい。


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