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2008年7月

7月29日 U-23日本代表 vs U-23アルゼンチン代表

2008/07/29(火)

壮行試合を見て楽しみが増えたU-23となでしこ。近年になく充実したサイド攻撃

キリンチャレンジカップ2008
7月29日(東京・国立競技場)19:20
U-23日本代表 0(0-0 0-1)1 U-23アルゼンチン代表

【U-23日本代表メンバー】
GK :1西川周作
DF :4水本裕貴(Cap.)、6森重真人、13安田理大→5長友佑都(77分)7内田篤人
MF :16本田拓也、12谷口博之、10梶山陽平、8本田圭佑→11岡崎慎司(77分)14香川真司
FW :9豊田陽平→15森本貴幸(65分)
SUB:18山本海人、3吉田麻也、2細貝萌、17李忠成

【U-23アルゼンチン代表メンバー】
GK :1オスカル・ウスタリ
DF :4パブロ・サバレタ、3ルシアーノ・モンソン、6エセキエル・ガライ、2ニコラス・パレハ
MF :5フェルナンド・ガゴ、8フアン・ロマン・リケルメ (Cap.)14ハビエル・マスケラーノ
FW :16セルヒオ・アグエロ、9エセキエル・ラベッシ→18ラウタロ・アコスタ(79分)11アンヘル・ディマリア→7ホセ・ソサ(73分)
SUB:12セルヒオ・ロメロ、13フェデリコ・ファシオ、15エベル・バネガ、17ディエゴ・ブオナノッテ

◇7月24日、神戸での壮行試合でオーストラリアと対戦した日本女子代表なでしこは3-0、U-23(男子)は2-1で勝った。
 その5日後、今度はアルゼンチン代表を迎えての壮行試合第2戦がキリンチャレンジカップとして東京国立競技場で行なわれた。
 大会の直前にこうしたタイプの違うチームと2試合を、それも多くのファンの前で行なえたことは、選手たちにとっても、コーチ陣にとっても、とても有意義だっただろう。スタジアムで声援を送ったサポーターも、テレビ観戦のファンにも、このドレス・リハーサルはまことに楽しく、“なでしこ”とU-23の日本代表の実像をつかむのに大いに役立ったハズ。北京への期待がふくらんだ壮行試合だった。

◇29日の16時1分にはじまったなでしこ対アルゼンチン女子代表は、2-0で日本の勝利。澤穂希(さわ・ほまれ)を軸としたチームはチームとしてのまとまりがよく、パスワークも“あうん”の呼吸が生まれるようになり、ゴールも取れるようになってきている。あとはベストコンディションで本番を迎えてくれることを願うだけだ。

◇さてU-23は――。この年齢層で最も有名なリオネル・メッシ(バルセロナ、87年6月24日生)は来ていなかったが、オーバーエイジのフアン・ロマン・リケルメ(ボカ・ジュニアーズ、78年6月24日生)ハビエル・マスケラーノ(リバプール、84年6月8日生)ニコラス・パレハ(アンデルレヒト、84年1月19日生)が加わっていた。
 日本は結局オーバーエイジなしということになった。いろいろな意見もあるだろうが、いまの国内外の事情からみれば、これもひとつのゆき方だろう。

◇今回のチームというより、岡田監督のフル代表を含めてはっきりしているのは、右サイドに内田篤人(鹿島)左に安田理大(G大阪)あるいは長友佑都(FC東京)という、外側のポジションで仕掛けてゆける選手をもったこと。長友は右サイドもできる。日本サッカーのこれまでの攻撃では、サイドでのキープやサイドからの突破があまりにも少なかったのが、私には不満だった。2年前に鹿島の内田を見たときに“久しぶりに現れた”と希望を持ったが、彼がここにきてフル代表とU-23での経験によって自信をつけてきた。この日の対アルゼンチン戦でも、前半の早いうちにスピードに乗っての突破で相手がファウルで止めなければならぬようにして、気分的にも優位に立って、何回かの有効な攻めを見せた。


≪オーストラリア戦の同点ゴール≫

◇24日の対オーストラリア戦でも、彼は自分のキープからドリブルして中へ入り、中央の李忠成にパスをしたことから同点ゴールを生みだした。ご存知のように、李がこのボールを止めないで後方へ通し、その内田のパスのライン上にいた森本貴幸が相手DFを背にワンタッチで外へ方向を変えて、走り上がってきた香川真司が、ワントラップシュートしてゴール左下隅へ決めたものだった。
 この一連の流れはペナルティ・エリアの中で相手にマークされていてもシュートチャンスを生み出したビューティフルな連係プレーで、ジーコ時代のフル代表でもそう何度も見られなかった好プレーだが、そのスタートはボールを拾ってからの内田の余裕のあるボールの持ち方、相手にすぐは奪われないぞ――という自信ありげな態度とそれに続く正確なパスにあった。

◇この内田とMF本田圭佑との協力による右サイドのキープ、突破の連係プレーが見られたのも、この日の収穫のひとつ。本田はその左足のキック力は定評があるが、体がしっかりしていて相手との接触プレーにも強く、彼のプレーで生まれる自然の“間(ま)”が内田のスピードを生かす“溜め”ともなっていた。

◇左の安田理大も自分から仕掛けられるが、この左サイドでもMFの香川真司との協力が、今後の日本の攻撃全体にも大きく響くことになるだろう。長友も同様なのは言うまでもない。


≪成功した五輪とサイド攻撃≫

 日本のようにパスをつないで攻めるのを重んじるところであっても、1対1で相手を抜ける自信がなくてはパスワークは単調になり、生きてこない。これまでの例を見ても、1936年のベルリン・オリンピックの対スウェーデン逆転劇は左サイドの加茂正五、加茂健という兄弟のペアの攻撃でチャンスを作った。
 どん底時代の日本が韓国を押さえて1956年メルボルン・オリンピックの出場を果たしたときも、最後の古典的ウイングといわれた鴇田正憲(ときた・まさのり)の右サイドのキープと突破とパスでチャンスを生んだ。
 1968年のメキシコ五輪の銅メダル獲得でのCF(センターフォワード)釜本邦茂の働きはあまりにも有名だが、その釜本のシュートチャンスを作ったのは左サイドの杉山隆一だった。
 彼の突破のスピードとクロスの正確さがあってはじめて、メキシコ五輪の得点王が生まれた。

◇今度のオリンピックチームには、片側のサイドだけでなく右も左も適材を得た。それをサポートできるプレーヤーも出てきたといえる。

◇反町康治監督やコーチたちは、守りの固さには自信を持っているようだ。29日の対アルゼンチン戦は防ぐ気持ちになったときに、どこまで守れるか――のひとつのテストだった。
 前半はピンチはあったが、ともかく無失点で済んだ。後半はアルゼンチン側がスピードアップ、一つひとつの競り合いやダッシュの早さ、強さが変わりはじめた。それでも65分まで0点でゆけたが、68分にゴールを奪われた。
 フィニッシャーはアンヘル・ディマリア。彼がセルヒオ・アグエロからパスを受け、一度左へゆくと見せて右へ外してシュートした。DFをかわして、間髪入れずの右足シュート。サイドキックで球そのものにスピードはなかったが、蹴ったタイミングはGK西川の予測より早かったのだろう。セービングで西川は手を伸ばして触れたが防げなかった。
 このアグエロ―ディマリアの巧みなプレーに至る経路(失点までのゲームの流れ)を見ると、こちらの攻撃の後にピンチが生まれているのが見えてくる。

◇後半66分に日本は相手のペナルティ・エリアのすぐ外、ゴールラインから5メートル地点でFKのチャンスを得た。梶山陽平からのパスを受けた内田が相手のファウルで倒されたためだった。それまでのFKよりも近い位置だから当然チャンスではあったが、本田圭佑の左足で蹴ったボールはニアサイドのDFのヘディングでクリアされてしまう。それでも、このボールを香川が右タッチライン近くで拾いドリブルし、梶山に渡して自分はDFラインのウラへ。それに合わせた梶山のパスは大きすぎて香川よりも先にGKオスカル・ウスタリの手に渡る。ウスタリはこれを前方へ大きくパントキック、そこからアルゼンチンの攻撃がはじまり、ヘディングでのバックパスを経て、また前方へ。ここでアグエロがボールを受け巧妙なフェイクで日本DFを惑わしてキープし、右に走り上がるディマリオに渡し、ここでディマリオがフェイクと大きな切り返しで日本DFをかわしてシュートしたのだった。
 日本が攻撃に出て、深い位置でFKという大チャンスをつかんだが、そのFKをクリアされ、その後の再攻撃を直接に相手GKにパスを取られてしまったのが、カウンター攻撃を食うきっかけだった。

◇サイドからのFKやCK、あるいはクロスをニアで相手のDFにはじき返されれば、横パスをカットされたのと同じことになる。そしてまたパスを直接相手ゴールキーパーに献上すれば、キーパーのキックは攻撃の第一歩となりこちらには危険なこと――。
 アルゼンチンのような強いチームとの試合では、こうした攻撃に出た後の落とし穴がいつも待っていることになる。

◇そのためにも、クロスやFKをニアでカットされないよう、評論家たちが常に指摘するクロスの精度アップを図らなくてはなるまい。それは、私の期待する若い内田、安田、長友といったサイド攻撃の担い手も同じこと。彼らはいい素材ではあるがまだ完成品ではなく、クロスの高さ、強さ、ボール落下点の調節についてはまだ物足らないことが多い。

◇サイドに素材が定着しはじめた攻撃を締めくくるフィニッシャーは、李にしても森本にしても大会での成長を待つことになる。大事なことは、サイドのプレーヤーのようにゴールへの意欲を持つこと。これはFWだけでなく第2列や第3列も同様。その点、ゴールへ飛び込んでゆく谷口博之や左足の自信家・本田圭佑、ダッシュ力と運動範囲に優れた香川のいるこのチームは、1試合ごとに得点力を伸ばしてゆくかもしれない。豊田陽平という体のしっかりしたFWは、もう少し上手になれば、一挙に開花できそうな素材に見える。

◇相手のアメリカ合衆国もナイジェリアもオランダもなかなかの強敵だ。29日のアルゼンチン代表を見ても、個人力でもチーム力でも相手の方が上であることが分かる。しかしサッカーでは、年間を通じてのリーグなら実力あるチームがいい成績をあげるのは当然だが、ワールドカップやオリンピックのように短い期間の大会では必ずしもそうではない。予想では強いといわれた相手に勝った例は日本サッカーの歴史にもいくつかある。北京で成果をあげることは、選手一人ひとりの人生にとっても大きなプラスになる。彼らの先輩たちが「全力を尽くして栄光をつかんだ」ように一丸となっていい試合をすることを願っている。

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