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2007年8月

8月22日 日本代表 vs カメルーン代表

2007/08/22(水)

2人のDFとカメルーンの攻めを楽しんだ

キリンチャレンジカップ2007
8月22日( 大分・九州石油ドーム)18:30
日本代表 2(1-0 1-0)0 カメルーン代表

【日本代表メンバー】
GK:1川口能活(cap)
DF: 中澤 佑二、加地 亮、田中 マルクス闘莉王、駒野 友一→今野泰幸(HT)
MF: 遠藤 保仁→中村 憲剛(63分)、鈴木 啓太→橋本 英郎(73分)、阿部勇樹、大久保 嘉人→山瀬 功治(50分)
FW: 前田 遼一→高松 大樹(59分)、田中 達也→佐藤 寿人(59分)
SUB: 楢崎正剛

【カメルーン代表メンバー】
GK: ハミドゥ・スレイマヌ
DF: リゴベール・ソング・バハナグ(Cap.)、ティモテー・アトゥバ・エサマ、エリック・マトゥク、アンドレ・ステファヌ・ビキー・アムグ→ギ・アルマン・フォトゥシーヌ(53分)
MF: モデスト・ムバミ→(HT)モハマドゥ・イドリス、ジャン II・マクン→ランドリー・ヌゲモ・チャファク()、ステファン・ムビア・エトゥンディ
FW: ジョゼフデジレ・ジョブ→ジュンユグ・ビライ・アテバ(74分)、ルドルフ・ドゥアラ・ムベラ→ダニエル・アルマン・ヌゴム・コメ(59分)、サミュエル・エトー・フィルス
SUB: ハミドゥ・スレイマヌ、ピエール・アシル・ウェボ・クアモ

2人の大型CDF

◇このキリンチャレンジカップは、日本サッカーの歴史上で記念すべき日となる---ピッチ上で中澤佑二(187cm)と田中マルクス闘莉王(185cm) の2人がポジションに着くのを眺めながらそう思った。1917年(大正6年)東京芝浦で開催された、第3回極東大会に、日本サッカーが出場し国際舞台で初めてプレーして以来、代表チームのDFに185cm以上の選手が2人揃ったのは初めてのこと。

90年前のこのとき以来、日本サッカーは体格の劣勢と、技術のハンデを克服しようと努力を重ねてきた。そして体格は劣っても、機敏に動くカラーを強調するために、技術を高め、走るスピードと量を上げることに努めてきた。それが代表チームのレベルアップにつながり、ここしばらくの国際舞台での好成績につながってきた。

しかし世界的な大型化の傾向は、日本代表のレベルアップの速度よりも一歩前に進み、昨年の2006年ワールドカップ・ドイツ大会で、日本は体格のハンデに苦しんだ。ヨーロッパでは北欧勢に比べて平均的に背が低いとされていたイタリア代表に190cm級が3人も加わり、それが優勝の原因の一つとなったことを考えれば、上背の必要なポジションでの大型化は日本にとっても重要な課題となっていた。

◇そのセントラルDFに、上背もあり、骨格もしっかりして、技術も高く、気性も強い2人がそろったのだから---。

中澤佑二についてはすでに代表実績は充分。そしてまた闘莉王も早くから守りの能力と、攻撃のセンスの高さで注目されていた。

二人の適役を得たことで、今後は日本代表はもちろん、Jをはじめとする各チームでも上背のあるCDFをそろえるという極めて常識的な選択をとると考えたい。

そのためにも、各クラブや学校の指導者たちが、大型のCDFの育成を心がけ、またこうした素材が自らの努力でトップクラスのCDFを目指すことを期待したい。

◇ この試合でその闘莉王がゴールをあげた。前半23分に遠藤のFKにあわせてニアでヘディング、微妙なタッチでボールのスピードと高さを変え、先制点をもぎとった。彼はジャンプ力があり、ヘディングのタイミングも上手で、浦和レッズでも、自らのゴール前での空中戦に強いだけでなく、攻めあがったときもその力を発揮している。守るだけでなく、攻めにも積極的な彼の気性と、相手のアトゥバ・エサマ(187cm)にマークされながらペナルティエリアぎりぎりの位置からスタートして、巧みなコース取りと、遠藤のライナー性のキックの高さを読む目の適格さで、アトゥバ・エサマの前に入ってジャンプ・ヘディングを成功させた。

ヘディングに興味のある方は、テレビの録画で、(1)彼がスタート地点から(2)キッカー寄りにカーブを描くようにして走り(3)ここというポイントで高くジャンプしたところ(4)空中でしばらく止まっているときの美しくバランスのとれた姿勢などをご覧になれると思う。

カメルーンという強チーム、なかにサミュエル・エトー(バルセロナFC)のような大スターのいるところを相手に、この先制ゴールはチームを勇気付け、観衆を喜ばせたのは言うまでもないが、欧州各クラブで働くカメルーン選手たちに、長い旅の疲れと、暑さのハンデを忘れされ、彼ら特有の動きの速さや強さを取り戻させることにもなった。

おかげで、激しさとドリブルの巧妙さと、崩れかけた姿勢で、きちんとパスを出す粘り強さ、足を出す早さ---などが充分に見られた。

オシム監督が試合後に「スコアだけ見れば日本の方が強いと思う人がいるかもしれない」と言ったのは
彼流の反語で、彼らにも充分勝つチャンスがあったこと、それも時差と暑さと旅のハンデを背負いながらであることを言いたかったはず。もちろん日本の多くの選手も、これで日本がカメルーンより上だとは思っていないだろうが、この程度に個人の力が違っても、その時のチーム全体の力で勝つこともあり得るところは面白さがあり、上のクラス相手にも勝とうとする意欲を持つことの重要さがあることを知っているはずだ。

前田、田中、大久保

◇この日の日本でのもう1つの注目は新しい攻撃プレーヤーの組み合わせだった。FWに田中達也と前田遼一をおき、第2列に大久保嘉人と投入した。

大久保はクラブでも第2列に入ってからゴール数も増えているようだが、もともと彼のような小柄(170cm)な攻撃的プレーヤーは、まず大きく動くことが、その俊敏性をより効果的にする。前残りのCFタイプ(かつての釜本邦茂のような)と違う彼は、この役割がいい。

前半に左サイドをドリブルしてゴールラインまで深く食い込んで、中に返した(ボールが前田の足元に入り、GKともつれてゴールならず)のがあった。果敢に仕掛けたことで、田中とともにメディアには評判がよかったが、“仕掛ける姿勢”も大事だが“仕掛けて成功する”ことが、トッププロでは要求される。ボールに対してとても器用な大久保だから、その気になれば、食い込んでからのパスのコースや高さを反復練習すれば、すぐ型を作れるはずだ。

田中達也はがんばり屋だけにケガが多く、今度も久しぶりの代表だった。最も重要なところまで突き進んで行ってからのプレーに磨きがかかることを全てのサポーターが望んでいるはずだ。

前田遼一を代表のFWで---とは多くの人が考えていた。彼のよさは、体もよい(183cm)、ヘディングもシュートもうまい、流れも読める---と全てバランスのよいところだが、それだけに目立ちにくいところがある。この日もカメルーンのDFを背にしてのポストプレーなども悪くはなかったが、エリア内でノーマークでボールに寄った時に、まずシュートという強引さがほしい。いいプレーをしながら、前田にも田中にも大久保にもシュートが1本もなかったところ(プレーした時間は60分までだった)が、惜しい気がする。

サミュエル・エトーの攻め

◇ 後半は負傷の駒野に代えて今野泰幸が左サイドに入った。負けるわけにはゆかぬ---とカメルーン側の動きが積極的になって、前半とは逆にボールポゼション(ボール支配率)はカメルーン側が多くなる。日本はボール支配といっても、後方でパスをつないでいることが多いが、カメルーンはつなぐだけでなく、攻撃に出てくるから迫力がある。

プレッシングも強くなって、日本側は、例えば左サイドの今野がハーフラインを越えてボールを持っても、そこから縦には出られず、横につないで、時には取られる場面も出てきた。

かつてFWの技術であった相手を背にしたときのスクリーニングというプレーがあるが、今や世界のトップでは中盤の選手もこれをするのが普通。イタリアなどではDFもうまい。(日本では中村憲剛がこれがいいので後方からもボールを預けやすい)。そのスクリーニングがしっかりできれば、横パスで逃げて追い詰められることもないのに---とも思う。

カメルーンはエトーが自分で点を取るというより配球係に回ったが、さすがに上手だ。前半の終わり近くにも彼のドリブルの後のパスで、崩された。39分のピンチは、ジョゼフデジレ・ジョブのシュートは川口の正面だったが、後半 18分にもエトーからのパスを受けたジョブがつぶれ、フォトゥシーヌがダイレクトシュート(オーバー)、すぐその後にエトーのダイレクトパスからモハマド・イドリスがノーマークとなって左足シュート(オーバー)といったチャンス、日本にとってのピンチが次々やってきた。

◇ 速いドリブルでの侵入、あるいはワンタッチパスでの攻め込みといったカメルーンの展開の中で、エトーに渡ったところで変化が起きるのが面白かった。アフリカの選手はまずその身体能力を語るけれど、彼のような緩急を心得たプレーがあらわれてくるところに、世界のサッカーの中でのアフリカ勢の位置の高さを理解できる。

山瀬功治の思い切りのよさ

◇いい崩しをしながら点にならなければ、遠征側の疲れは倍加する。そうなれば、入るべきクロスも外へ出てしまう。そんな相手の動きが鈍り始めたときに、日本側の2点目が生まれた。

闘莉王のロングボールが右サイドで日本のスローインになり、佐藤寿人(59分に田中と交代)が粘って右CKにした。中村憲剛が強いボールを蹴りDFがクリアしたのが山瀬功治(50分に大久保と交代)の前に転がった。山瀬の右足で叩かれたボールが右ポストいっぱいに決まった。後半の唯一のシュートが終了前の2点目となった。

FKにも失敗したサミュエル・エトーにとっては信じ難い敗戦だっただろうが、山瀬功治の、このゴールは日本代表の900点目になるとか。アジアカップで、いささか慎重になりすぎて4位に止まった日本代表は新しく加わった闘莉王や山瀬といった選手たちの思い切りのよさで2-0という望外のスコアでの勝利を掴んだ。

90年前の先輩たちも天国でやっぱりサッカーは面白い---とみているだろうか。

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