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2006年2月

2月18日 日本代表 vs フィンランド代表

2006/02/18(土)


小笠原の超ロングシュート

キリンチャレンジカップ2006
2月18日(静岡スタジアム エコパ)19:15
日本代表 2(0-0 2-0)0 フィンランド代表
日本代表 得点:久保(48分)、小笠原(57分)
フィンランド代表 得点:なし

【日本代表メンバー】
GK: 23 川口能活
DF: 5 宮本恒靖(cap)、20 坪井慶介、22 中澤佑二
MF: 8 小笠原満男、15 福西崇史、18 小野伸二、21 加地亮→31 駒野友一(76分)、25 村井慎二→14 三都主アレサンドロ(72分)
FW: 9 久保竜彦→19 本山雅志(85分)、36 巻誠一郎→37 佐藤寿人(72分)
SUB: 41 下田崇、42 都築龍太、2 田中誠、24 茂庭照幸、4 遠藤保仁、30 阿部勇樹、35 長谷部誠

【フィンランド代表メンバー】
GK: 12 カベン
DF: 14 クイバスト(cap)、5 パソヤ→21 サウソ(87分)、19 カリオ、2 ニマン
MF: 15 イロラ→20 ウーシマキ(70分)、6 ハーパラ→22 カンガスコルピ(80分)、25 ラゲルブロム
FW: 18 フースコ→17 タイパレ(87分)、11 ショルンド→8 クヤラ(75分)、7 アルキブオ→3 ランピ(80分)
SUB: 1 シランパー

■ ジーコが絶賛した超ロングシュート
■ 小笠原の成長
■ ボールを“落とす”技術
■ 16歳のミシェル・プラティニ


ジーコが絶賛した超ロングシュート

 超ロングシュートを見た。後半12分小笠原満男がハーフライン手前の中央やや左よりから蹴ったボールは高く上がり、GKミッコ・カベンをこえて、ゴール内に落下した。
 正面スタンドの、日本ゴール寄りの記者席から、その一部始終がよく見えた。まず小笠原は後方の中澤から短いパスを受けて、前を向いたとき、その30メートル前方を左斜め前へスタートする巻誠一郎が見えた。中央に久保がいて、向こう側の右サイドにも前へスタートを切ったプレーヤーがいた。

  GKカベンはゴールエリアいっぱい近くまで出ていて、そこからさらに前に出た。DFラインの裏へ通されるのを警戒したのだろう。ゴールエリア(ゴールラインから5.5メートル)よりも前に出ていたはずで(ビデオでは小笠原のキックの瞬間のカベンの位置は確認できなかったが・・)カベンには小笠原のロングシュートの予感はなく、またキックのインパクトの直後でも、まだゴールを狙ったボールが来るとは思わなかっただろう。ボールのコースを見ながら後退したが、もしそれが、もっと早くて、ゴールラインに達していれば、あるいは防げたかもしれない。しかし、カベンの6メートル余の後退のスピードよりも、その 10倍の距離を飛ぶゴールの方が早かった。ゴールライン手前でジャンプし手を伸ばした上を越えて、日本の国際試合で初のハーフライン手前からのロングシュートが決まった。

 このキリンチャレンジカップ2006の対フィンランド戦は、日本代表チームが6月のワールドカップまでの準備となる7試合のひとつで、順番は2番目。1週間前にサンフランシスコでUSA代表に完敗しただけに、チームワークの面でも、コンディションの面でも、特に注目される試合だった。

 アメリカとの試合はテレビ観戦だが、日本選手が体調不十分では、どことやってもそう簡単に勝てない。まして相手はアメリカ代表である。終盤に2点を返したのは立派だが、相手が3-0のリードで安心したのと、前半からの激しい動きの疲れで、動きの量が落ちたからだといえる。中村俊輔、中田英寿のいない日本代表のコンディションが悪ければ、こうなるという見本がアメリカ戦の前半だった。

 秋から翌年の春(初夏)にかけてがシーズンとなる北半球の国々のなかで、日本はJリーグのスタートが3月だから、この時期は体調を整えている過程で、調整不足は当然。小野伸二をはじめとする上手なプレーヤーが増えてきた現在でも、ハイレベルな国際試合では日本の売り物はランプレーであって、まず組織化された運動量がなければならないことを、2006年の第1戦でもう一度知ったことは、悪いことではない。

 話を小笠原---キリンチャレンジカップ---に戻すと、試合後のジーコの話によると、ヨーロッパのゴールキーパーはポジションを前に取るものが多いから、遠くからでも狙ってみては、というヒントを出していたという。ただし、遠くからといっても、まさかハーフウェイからとは思っていなかった。そんなふうなコーチの何気ないヒントを生かして、超ロングシュートを敢行して決める---まさに天才的だとジーコは激賞した。

 面白かったのは、記者会見でこのロングシュートが一番先に話題になるかと思ったけれど、プレスからの質問は戦術的なものが多かった。ワールドカップに備えての試合だからといえばそうだが、この日で一番面白かった場面を誰も尋ねないのかと見ていたら、日経の武智幸徳記者が質問し、それに対してジーコが我が意を得たりとトクトクと語ったものだ。

小笠原の成長

 小笠原はこの試合の1点目をパーフェクトにお膳立てした。右サイド深いところでのスローインから加地が投げ、相手守備ラインの裏へ走っていた小笠原がペナルティエリアぎりぎり、ゴールライン近くから速いクロスを送った。ボールは戻ってくるDFと、待機するGKの間へ迫ってきた。GKのすぐ前へ走り込んだ久保のニアサイドにDFが併走したが、小笠原からの速いグラウンダーを止めることはできず、久保が決めた。走っている足下へ来る難しいボールだったが、こういう形のときの久保は上手い。左足のタッチでGKを抜いてネットへ。

 この後半3分の先制ゴールは、その直前の一連の攻撃の後のスローイン---停止球---から生まれたもの。その攻めは日本側が自陣(ハーフウェイ手前)から左サイドで小野~村井~小野~巻~村井とつないで、村井がノーマークで左足のクロスを送り、久保が飛び込み、こぼれ球を小笠原が拾い、反転した後、右の加地にパス。加地はノーマークでダイレクトシュートを打ち、これがDFに当たる。そのリバウンドを小笠原から加地へ、相手が奪ってクリアすると、坪井が取って今度は福西へ。相手が福西に激しくぶつかってボールが左タッチラインの外へ出た。

 短い時間だが、言葉にするとこれだけのボールの行き来となる。つまり相手にとっては、日本の左サイドの攻めを防いだ後、こんどは右から攻められ、それがタッチに出てスローインとなり、ホッと一息ついたところだった。

 その一息を小笠原が見逃さなかった。スローインにはオフサイドはないから、スルスルと走ってディフェンスラインの裏へ出て、そこへ加地が投げた。パスでいえば、文句のないスルーパスだが、ひと合戦の後の、相手のスキをついた、小笠原、加地、福西の右サイトにいた3人の「気」がひとつになり、その動きあわせ、中央の久保がニアポスト前へ入ってきた。攻めの構成と、それぞれのタイミングが申し分なかった。

 小笠原は昨シーズンの充実ぶりがすばらしく、鹿島でも代表でも成長を見せた。さりげないポジション取りから相手ボールを奪う巧みさや、密集地帯でのからみ方、その密集から離れてのサイドへの開き方などがどんどん上手になって、守から攻への転換に欠かせぬ人材となっている。ある程度の持ちこたえのキープも、ドリブル突破もできるから、相手がいる場合でも落ち着いてキック(パスもシュートも)できる。キックでいいのは、独特の "落とす"ボールがあること。日本選手のサイドからのクロスの多くが、ニアの相手DFのヘッドではね返されるが、彼のクロスは少し上がったあと、狙ったところへ落下する。中村俊輔はこの種のボール(もっと高く上がる)で代表でもグラスゴー・セルティックでも成功しているのはご存じの通りだ。小笠原にもこれがあるのが強み(というより、多くの日本のトッププレーヤーにこれが出来ないのが不思議---)であって、先の超ロングシュートは長い距離を飛ばすと同時に、自分のボールの落ちるところを把握していなければできない話である。

ボールを“落とす”技術

 フィンランドはワールドカップの予選、欧州第1組で敗退している。この組にはオランダ、チェコ、ルーマニアといった強国がいた。彼らは次の欧州選手権の予選を目指してチーム再編の途上にあるから、果たして日本側の狙いとしたオーストラリア対策に役立ったかどうか、疑問と見る人も多かったが、私はアメリカ戦と違って、ミッドフィールドでの激しいプレッシングがなかったおかげで、小野伸二が余裕を持ってプレーできたこと、そして彼のコンディショニングが徐々に上がっているのを見ただけでも幸いだった。

 オランダのフェイエノールトでも巧技ということで注目されていたはずの小野だが、肉厚の身体になり、パスのタイミングが早くなっているようだった。フィンランドが引いて、守りを厚くしたから、彼の早いタイミングの、しかも正確な長いパスが左後方から右前方の加地へピシャリと送られて、スタンドから歓声が沸いても、加地の前には相手が接近していて、加地は抜ききれず、クロスも次のDFにはじき返されることが多かった。こういう引いて守る、長身のDF陣を相手にしての崩しがこの程度の相手なら、中田英寿や中村俊輔なしでも、もう少しできてもいいはず。それができないのは、日本サッカーが長い間、ウイングプレーについて、関心が薄かったことにある。単にクロスの精度をあげろなどと、人ごとのように言わずに、チームのコーチたちはもう少し的確にキックそのもののアドバイスを出してほしい、と思う。

 村井慎二は三都主同様に、高速で走って左足クロスを蹴るプレーヤーだが、このボールをヘッダーにあわせるなら、ニアのとき、中央のとき、ファーのとき、それぞれに高さや早さを変えなければ、ならない。このフィンランド戦は中盤がよかっただけに、左右のオープンスペースでのプレーが注目され、それが結局ゴールになったのは、スローインという停止球からだったということが、日本代表、ひいては日本サッカーの現状を示している。

16歳のミシェル・プラティニ

 長くなったついでに、小笠原の超ロングシュートについて、もうひとつ。

 高校年齢のプレーヤーたちが、このシュートを見て、ハーフラインからゴールを狙って蹴る練習をしてくれるようになれば、このキリンチャレンジカップの大きな成果のひとつとなる。というのは、50メートル余りのハーフラインからゴールへボールが行くことは、50メートル蹴って左右の誤差を7メートル(ゴールの幅は7.32メートル)ということになる。

 ミシェル・プラティニ。フランス代表で将軍といわれ、セリエAのユベントスで活躍して、日本にもファンの多い彼は、FKの名手として知られているが、16歳のころにハーフラインからゴールめがけてシュートの練習を繰り返したと私に語ったことがある。50メートルのコントロールキックができれば、30メートルのキックはもっとコントロールできるのだ。

 長いボールを目標近くに蹴れるようになれば、それよりも少し短いのをボールの速さを含めて練習し、コントロールできるようにすれば、プラティニや小笠原に近づくことができる。

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