サイド攻撃の向上
ゆさぶり効果も身につける
キリンチャレンジカップ2005
2月2日(埼玉スタジアム2002)19:30
日本代表 3(1-0 2-0)0 シリア代表
日本代表 得点:鈴木(44分)、宮本(69分)、小笠原(90分)
シリア代表 得点:なし
【日本代表メンバー】
GK: 23 川口能活
DF: 2 田中誠→19 本山雅志(81分)、5 宮本恒靖(Cap.)、22 中澤佑二
MF: 21 加地亮、4 遠藤保仁→4 中田浩二(71分)、15福西崇史、14 三都主アレサンドロ、8小笠原満男
FW: 11 鈴木隆行、28 玉田圭司
SUB: 1 楢崎正剛、12 土肥洋一、3 松田直樹、16 藤田俊哉、17 三浦淳宏、24 西紀寛、25 茶野隆行、26 坪井慶介、30 阿部勇樹、31 大黒将志
GK: 16 カルカル
DF: 2 モハマド、21 エレシュラ、7 アル・ホジャ、4 ディアブ、23 エスマイール
MF: 11 ジュベイリ、20 アラヤ、8 アル・アメナ→17 アル・カドル(89分)
FW: 9 サイド(Cap)→13 アバス(67分)、19 ラフェ→10 アル・ゼノ(73分)
SUB: 18 バルース、3 マトゥク、12 イスタブリ、5 アル・ラダウィ、6 イウサイン
東上する新幹線の車窓から見る湖東平野は雪景色。新幹線のぞみも徐行運転で、新大阪から東京まで50分遅れとなる。そこからまた地下鉄と埼玉高速鉄道で、約1時間かけて浦和美園(うらわみその)駅にたどりついた。
この日の相手、シリア代表は、ひとりひとりの体の動きがカザフスタン代表よりもしっかりしていて、ときどき見せるドリブル攻撃も鋭かった。1週間後にアジア最終予選B組第1戦の対北朝鮮を控えている日本には、いい準備試合になったといえる。
特によかったのは、相手が守りを厚くして、日本の攻めを防ぎ切ろうとした前半の終わりに、1ゴールをもぎとったこと。右・左の連続クロスによって多数守備を破れることを、選手たちが実際に体で感じたのがよかった。
この攻撃の始まりは、左タッチラインぎわ、ゴールラインから20メートルのFK。
1)小笠原がニアへ蹴ったボールは、シリアDFがヘッドでクリア。
2)これを三都主が拾って、左タッチライン近く、25メートルから左足で長いボールをゴール前へ。
3)GKカルカルが飛び出して手で叩く。
4)中澤(FKだからゴール近くにつめていた)が取って、右の加地に渡す。
5)加地はいったんキープし、相手DFをタテに外して右足でクロスを送る。
6)ファーポスト側でシリア選手がヘディングで防ぐ。
7)三都主が再び拾って左足でクロスを蹴り、鈴木に合わせた。
三都主のこのときの位置は、左タッチライン内側7~8メートル、ゴールラインから16メートル。彼が狙ったカーブキックの弾道は、曲線を描いて鈴木の待つ頭上へ落ちた。
鈴木は(2)の三都主のクロスのときにGKカルカルの前でジャンプした後、右の加地のボールが通り過ぎると、再び三都主のクロスパスに備えてポジションをとっていた。三都主のキックの瞬間には、鈴木の近くに3人のシリアDFがいたが、いずれもボールに目を向けたために、背後の鈴木は視野から外れていたハズ。いわば鈴木は彼らから消えた位置にいて、カーブしたボールに合わせてジャンプヘッドを決めたのだった。
多数防御で守る地域へクロスを送るのに、ピンポイントで正確なキックを味方のヘディング・スペシャリストに送ることもいいが、ファーへ送ってクリアボールを拾って、繰り返しクロスを送ることで、守備側のマークがずれ、空白地域が生まれることが多い。この日は加地も三都主も、クロスを蹴るときにファーを狙うことが多かったのは、“ゆさぶり”を意識していたに違いない。
1984年の欧州選手権のとき、ポルトガルがカウンター攻撃でのクロスに、最初にピンポイント・クロスを送るのでなく、ファーへ蹴ってこぼれ球を拾うやり方を使って、フランス(優勝チーム)を苦しめたことがあった。そのとき私はピンポイントのクロスもいいが、“大まかな”ゆさぶり攻撃がトップクラスの試合でも効果があることを知った。
話が20年前に飛んだが、日本の先制点を導く4本のクロスに対する、日本の各選手のポジションをそれぞれについて眺めてみると、とても面白い。一度、スロービデオで中澤や福西の位置取りの様子をご覧になることをおすすめしたい。
後半は相手も1点の挽回をはかってカウンターの回数が増え、それだけ日本のチャンスも増え始めた。三都主の浅い位置からのクロスに福西のダイビングヘッド、というチャンス(GKに防がれた)もあった。61分にジュベイリが2枚目のイエローで退場――10人となったのは、準備試合としてはもったいない気もしたが、選手たちは一人少ない相手にも手を抜くことなく、2点を加えて3-0とした。
2点目は69分。左からの三都主のFKを相手DFがクリア。遠藤が右サイドで拾ってゴール前へ送り、鈴木の背後から宮本がヘディングで決めたもの。これも左からのクロス(FK)のあとの右からのクロスだった。
3点目はタイムアップ直前。三都主が斜め後方からペナルティエリア内へ小さく浮かせて送ったパス――私のいう三都主の“最も得意な角度”のパス――に合わせて走った鈴木が、ワンバウンドのボールをまたぎ、内側にいた小笠原が右で止めて左足で決めた。
玉田はこの日、得点はなかったが、積極的に後方からのボールを受け、相手DFを背にしたプレーにも進境のあることを示していた。
2005年の2つの準備試合を終わって、合宿でのフィジカル・フィットネスと国内組のチームワークがよく、特に攻撃の際の選手間の理解が進んだこと、左右からのクロスにも工夫の跡が見られたこと、個人的にも小笠原がプレイメークに冴えを見せたことなど、チームのよい特徴が見られた。
第1戦の相手となる北朝鮮も、久しぶりに入念な準備をしてやってくる。
朝鮮半島のサッカーは、日本とは似ていても、個人的な強さと運動量と、やや粘っこい体という点で少し違っている。アジアチャンピオンの日本にとっても、いい試合のできる相手である。いい戦いでいい勝利を期待したい。
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