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2004年11月

11月19日 日本 vs カメルーン

2004/11/19(金)

エキサイティングなゲームで見えた、
展開力の向上と、フィニッシュの問題

キリンチャレンジカップ2003 
11月19日 (大分スポーツ公園総合競技場)19:20
日本 0(0-0 0-0)0カメルーン

■ 大分に根付いたサッカー
■ 前半のビッグチャンス
■ エキサイティングな攻防でみせた、日本の展開力
■ 日本の得点機
■ 点の取れるプレーヤーとは


大分に根付いたサッカー

 9月のセネガル戦の新潟もそうだったが、東九州・大分のビッグアイと称するスタジアムは38627人の観衆でいっぱいになった。大相撲に双葉山、プロ野球に稲尾選手という大スターを生んだこの地は長くサッカーに縁遠かったのが、大分のサッカー人の熱意と平松守という私と同世代の傑出した知事さんによって、大分トリニータが生まれ、ワールドカップが開催されて、西日本の拠点のひとつへと歩んでいるようにみえた。

 その屋根付きスタジアムの記者席でのハーフタイム。
隣席の田村修、木ノ原久美氏らとの会話 -
「カメルーンは何人かスターが抜けているというが、いいチームだネ。ひとりひとりの体の動きが、大型ぞろいのセネガルとはまた違っている。速いだけでなく、接触したときにこちらが重さ、あるいは強さを感じるような相手だ」
「日本の守備はヘディングの競り合いのジャンプにもセネガル戦の経験がいきている」
「ただし、今度のカメルーンはセネガルほど、決定的な身長差のある選手はいないから、こちらの条件はいい」
「日本の攻撃展開はすばらしい。欲をいえば、もう少しサイドを使って広い攻撃にして、隙間を広げたいネ」
「うーん、シュートが少ない。それは寄せと、ここというときの相手の足が出るのが速いのに関係しているかも知れない」
「藤田が入ったこと。彼のトロッティング・プレーはこのチームでも生きるし、前半でも充分それをみせている」
などと話し合った。  


前半のビッグチャンス

 前半の日本のシュートは1本だけだったが、高原のシュートのあとのリバウンドにも小野のシュートチャンスがあった。この前半12分の日本のビッグチャンスに、この日の試合の重要な要素がほとんど含まれていた。 攻撃は三都主から、左タッチ沿いの中田へのパスにはじまり、中田-高原-中田-柳沢-中田-柳沢-高原(シュート)と続いた。

  これをスロービデオから再現すると
1)     自陣、左30メートルからドリブルした中田は、中央左前の高原へパス
2)     相手側へ10メートルはいったところで受けた高原は右足いっぱいのところに送られたボールをコントロールできずに、カメルーン側に渡る。
3)     そのボールを中田英寿が奪い取ってドリブルで左タッチ内側を直進。彼の前を柳沢が左へ走る。 
4)     中田は相手陣25メートルあたりで左前の柳沢へパス
5)     柳沢は止まってキープし、2人を引き付けて後方の中田へ
6)     中田はこれを止めずに右足アウトサイドで軽く浮かして柳沢の前へ送った。
7)     ボールを追ってエリア内にはいった柳沢は、奪いにくるカメルーンDFを前にして左足でゴール正面へ走りこんでいた高原へパス。

8)    高原は、このボールを(もどり気味に)左足で止め、左足でシュートした。ボールはGKカメニの足に当たり、ゴール正面に転がった。
9)     驚くべきことに、そのリバウンドが高く上がって落下したところに小野がいた。周囲に白のユニフォームはいないとみて、小野はボールを止め、右足で蹴ろうとしたとき、疾風のように背後からやってきたカメルーン選手の左足がボールに触れ、ノーマークの絶好機は消えた。

 文字に移しかえればこうなるが、この間は15秒程度。今はやりのサッカー理論のなかに、攻撃の成功率が高いのは、その発端からフィニッシュまで15秒以内というのがある。中田がボールを奪いかえしてから13~14秒のハズだから、ボール奮取から15秒以内という理論(私はあまり何秒にこだわらないが)に合致しているが、私はその何秒かの間に、まず小野が右へ開いて駆けあがり、中田のパスを受けそこねた高原が、その小野よりも後にスタートして、左サイドのパス交換の間に、ゴール正面へ走りこんだことに、このチームの連携プレーのよさをみた。藤田俊哉がはいりこんでいてもいいスペースだが、彼は攻めにはいる前の相手の攻撃の際に、自陣ペナルティエリア付近に後退していた。その前方にいた小野の方が攻撃に加わったのだった。


エキサイティングな攻防でみせた、日本の展開力

このビッグチャンスがゴールに結びつかなかったのだから・・・

まず高原のシュートがなぜGKにとめられたのか-
1)     柳沢からのパスを左足で止め、左足で蹴った。ボールはキーパーのリーチ(手や足の届く範囲)の内でのグラウンダーとなってその右足に当たってリバウンドした。
2)     柔らかいピッチで、しかも足元でボールが止まったから、高原は身体を後ろに引いて蹴る形となったこともある。彼は左のシュートは強く叩きつけるのが多いが、ここではボールの下(底)を蹴って少し浮かせる着意が必要ではなかったか-。

 小野が折角のノーマークを活かせなかったのは、余裕があるために、ボールを止めて、しっかり狙って蹴るつもりだったろう。別の見方をすればカメルーン、DFの戻る速さが予想外だったともいえる。小野という天才的なボールプレーヤーにも点を決めるということへの執着心と練習と工夫が必要だろう。

 このピンチのあと、カメルーン側の中盤でのプレッシングが強くなり、ゲームは緊迫感を増した。 その中で、柳沢の中央突破や高原の左サイドからの持ち込みなどがあり、藤田が彼らしいボール奪取から見せ場を作った。
1)     それは26分、カメルーン陣内でボールをキープしたジェレミを日本の2人が囲み、そのジェレミが左の味方に短く渡そうとしたボールを藤田がかすめ取ったところからはじまる。
2)     タテにドリブルした藤田はペナルティエリアの5メートル手前で追走するひとりを内にかわし、エリア外、中央左近く、20メートルでシュートの構えにはいったが、その右足がボールに触れる前に、すごいダッシュで戻ってきたジェンバの左足がボールに触れ、藤田の右足は空を切った。

 ジェンバのプレーをファウルと見る人もあるが、ビデオを見ても微妙なところ、(審判の個人的意見もファウルでないとの声が多い。)相手のタックルの速さに比べると、藤田の右足のスイングがゆっくり見えたのが不思議だった。

 互いに最後まで得点しようと攻め合ったから、ゴールはなくても試合はエキサイティングだった。そのなかで日本は合計6度のシュートをはじめ、イキの合ったボールの受け渡しと、それぞれのみごとなランによる展開をみせたし、カメルーンは日本のDFをはずしてシュートへ持ってゆく強さを見せた。前回のセネガル戦は、早いうちに点を取り相手が守備的となって、日本はキープにしても、攻めにくい流れになったが、今回は相手も攻めるので、こちらも有効な攻撃ができた。

 その展開のうまさは、試合中に日本もこのレベルまでになったか - と思うほどだった。


日本の得点機

後半の日本のシュート5本を見ると

▼ 1本目 53分に中田がFKを狙った。好位置だったがバーを越えた。

▼ 2本目 57分、柳沢敦が左へ流れて、右サイドへ出た藤田からのパスを、エリア中央右より、ゴールから16メートルでノーマークで受けたが、トラッピングが大きく、DFに寄せられシュートは左ポストの外へ。

▼ 3本目 66分、中田英寿がゴール正面20メートルからシュート。GKの正面へ。(小野―高原―バックパスー中田とつないでのフリーシュート)ボールを受けとるときのトラッピングでボールが小さく浮き、落下後の2つ目のショート・バウンドを蹴った。中田らしく落ち着いた動作だったが、ボールにはそれほどの力はなく、またコースも平凡。-中田の場合だけでなく、この日のグラウンド・コンディションがが各シューターに微妙な影響を与えていたかもしれない。

▼ 4本目 71分、高原直泰のエリア内での反転シュート。GKが防ぐ。三都主の左からのスローインを受け、ゴールエリア左角の2メートル手前で反転し右足でシュート。DFの足の間を抜けたボールがゴールに向かったが、GKカメニが横に倒れながらキャッチ。すぐ後方にいた藤田に渡さずシュートを選択した。2人のディフェンダーの裏から現れた(スローインだからオフサイドにはならない)位置どりは素晴らしかったが-。

▼ 5本目 87分、遠藤保仁。藤田と80分に交代した遠藤のエリア外からのシュート。(GK正面)この攻撃は相手の攻めを防いで
1)     GK楢崎が投げたボールを
2)     中田がドリブルして前方の高原へ
3)     高原は後退しつつ斜め後方の遠藤へ 
4)     遠藤は小野へ横パス ―とハーフラインを挟んでのパス交換ののち
5)     ハーフライン中央やや左から小野がロブのボールをエリアぎりぎりへ送り
6)     それを大久保が受けて相手DFを背にキープしたのち
7)     バックパスを遠藤に送り、遠藤が止めないでシュートした。

見事なパスワークだが、シュートチャンスに相手DFが少し遅れながらも体を寄せにきていた。

 サッカーには攻めと守りがある。この日カメルーンを相手にいくつかピンチはあったけれど、無失点だったのは、守りの面でのチームと個人の向上といえる。その守りについてはまた別にふれるとして、とりあえず、得点力という点からそのフィニッシュの場面を抜き出してみた。得点できなかったのは、フィニッシュのシュートそのものがどうなのか、シュートのひとつ手前のプレーに原因があるのか、あるいは、シューターにボールが渡る前に、もうひと工夫がいるのだろうかー。

カメルーンの監督、シェーファーは、日本が点を取れないのは、点を取る選手がいないからだとあっさり言ってのけたのだが・・・。


点の取れるプレーヤーとは

 柳沢敦に代わって69分に大久保嘉人が入った。彼は先述の遠藤へのパスは左サイドでのキープや、あるいは右サイドからのクロスといったいくつかのプレーにかかわったが、一番の見せ場は82分の左ポスト付近のプレーだった。

 この攻撃は、相手の攻め込みから左サイドの長いスローインをキャッチした楢崎が、戻ってきた高原へ投げたのに始まり
1)     高原がスクリーニングでキープし
2)     3人に囲まれながら遠藤に小さく浮かしたパスを渡し
3)     遠藤は数メートルドリブルして、ハーフラインの中央から右へパス 
4)     それを受けた中田がドリブルののち、左へロングパス
5)     高くあがったボールが落下した地点は、ゴールエリア左角の近くで
6)     大久保は胸でボールを止め、右足アウトサイドで切り返した。
7)     奪いにきた相手のエバレが左足にあて、ボールは空中に浮いて、大久保の後方に落ちた。大久保がこのボールをエバレを背にしてキープ、反転して前を向き、もう一人、向かってくるメトモをかわそうとしたが、その右足にあたってCKとなった。

 カメルーン監督のいう「点の取れるプレーヤー」とは、こういうところでシュートしゴールを奪う選手だろう。そのゴールを生むためには

A)空中のボールの処理力(例えば胸のトラッピング)とそれにつづくシュートへの移行。
B)また、今回のように胸のトラッピングがやや前に落ち、バウンドするのを追ったとき、奪いにきた相手との対応(右足アウトで切り返す他に方法はあったかー)といったことが問題になるだろう。

 私たちは2003年のキリンチャレンジカップ・アフリカシリーズで、攻撃がよくなってゆくのと、そのフィニッシュの問題を見ることができた。ただし、この攻撃展開の向上は中田英寿を軸としての話である。 12月の東アジア選手権の3試合は中田英寿抜きとなり、また別の楽しみを期待することになる。   

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