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2003年7月

7月23日 U-22 日本 vs U-22

2003/07/23(水)

不満の中に美点の確認

キリンチャレンジカップ2003 
7月23日 (国立競技場) 19:00
U-22 日本 1(1-1 0-0)1 U-22 韓国

■ 韓国の先制ゴール
■ もうひとつのパスミス
■ FKからの揺さぶりで同点ゴール
■ 大久保のノーマーク・シュート
■ ライバルの互いの進化

 U-22。つまり22歳以下の日韓代表の試合は、まことに面白かった。

 メインスタンドの一部以外は屋根のない国立競技場で、サポーターの雨中の声援に励まされた日本代表が0-1から1-1に追い付き、いくつかのいいチャンスも作り出した。

 前半の中頃まで、用心し過ぎて、後方に引いてしまうことが多かったのと、試合全体を通じて韓国の選手の個人力、とくにボールを奪い合うときの強さが目立った。記録に表れたシュート数も日本が5本。韓国は12本だったから、翌日のメディアの論調も、日本代表に厳しいのも当然といえた。もちろん、私にも多くの不満はあった。しかし、90分を通じていくつかのいいプレーを見ることができてとてもうれしいことだった。


韓国の先制ゴール

 まず両チームの得点シーンをふり返る。

 韓国の22分の先制ゴールは、日本のDFの中軸、青木剛のパスミスから。

 相手のロングボールの攻撃

 

が、右へ開いた位置でボールを受けたチョ宰榛(チョ・ジェジン)がバランスを崩して倒れ、日本のGK川島永嗣がボールを取って青木に渡すところから、このゴールへのアプローチが始まる。
1)     青木はこれを前方の鈴木啓太に送る
2)     味方ゴールに向いたままボールを受けた鈴木は後退しつつ、右外後方の池田昇平へ
3)     池田はトラッピングして前進したが、しばらく受け手を探したのち、前方から戻ってきた松井大輔の足元へパス
4)     松井はこのボールをダイレクトで、青木へバックパス
5)     青木はこれを左前方の阿部勇樹に渡そうとダイレクトパス
6)     しかしボールは阿部を外れて中央のセンターサークル・ラインへ
7)     そこに崔兌旭(チェ・テウク)がいた
8)     ボールを取った崔は、中央の広いスペースをドリブル
9)     深い位置から三田光が近づくより早く、ペナルティエリア数メートル手前で、右足で強くボールを叩いた
10)     ゴール中央へ向かい、ややスライスした速いシュートをGK川島が防ぐのは難しかったようだ。伸ばした手をかすめ、ボールは勢いよくネット上部に飛び込んだ。

Diagram_030723_1_2

 この得点シーンを回顧するとき、専門家なら一番最後の部分から、つまりGK川島が防げなかったのかどうか、DF三田の寄り、その構えは? ー という風にひとつひとつをスロービデオで検証してゆくのだが、ここでは、一般的に、(1)から(4)までのパス交換で、前方でボールを受けた者が、前を向かないで、すぐにバックパスをしていること、そして、そのボールを動かしている位置が自陣内(ハーフラインよりも日本ゴール側)であること、さらに、そのボールの受渡しのときには、韓国側と接触プレー(いわゆるボディ・コンタクトのあるプレー)をしていないことに注目するだけにしておこう。そして、相手側にパスを渡してしまった青木については、右サイドキックの自分の角度について、自分がどこまで掴んでいるかが問題である。


もうひとつのパスミス

 青木は、15分頃だったか、ハーフラインを越えたいい位置でボールを拾い、前方へ送ったパスが石川に渡らず、そのまま相手GKへ流れたのがあった。中央に大久保、その右に石川といて、相手のマークもやや粗(そ)になっていたから、渡っておればチャンスだった。ボールの滑りの早さが原因かもしれないが、青木だけでなく、U-22世代は早くからボールに馴れ親しんでいて、馴れからくる上手さという点ではアトランタ世代やシドニー世代をしのぎ、若いうちからJでの試合経験があって戦術理解という点でも、先輩たちの同年齢の時より早いように見える。ただし、重要な場面での的確なプレーをするために必要な技の、反復練習が不足しているのではないか。

 失点シーンの青木を例に挙げたが、逆にいえば、こういうポイントが改善されれば ー ということなのである。

 韓国は、このゴールの5分前にチャンスを作った。右サイド自陣のスローインから、小さなロブのパスを二つつなぎ、そこから、金斗ヒョン(キム・ドヒョン) が持ちあがり、併走する崔兌旭の右前へ、これも小さな浮かしたパスを出し、崔が一呼吸キープして、右外へ走りあがってきたチョ宰榛に渡して、チョがシュート(右ポストをわずかに外れた)。

 自陣からのハーフラインへつなぐパスは、2本ともボールを浮かせて、日本側と競り合い、そこから、次につなげるところに彼らの自信がある。その自信が、日本側の腰を引かせていたともいえる。

FKからの揺さぶりで同点ゴール

 JFAの川淵三郎会長でなくても「大人と子どもの差」と言いたくなるような両者の形勢が、ちょっとしたところから転向して、日本が同点ゴールを奪うのだから、サッカーは不思議なものだ。

 28分、相手ペナルティエリア右外、2メートル。ゴールラインから12メートルの好位置からのFKが日本に与えられた。そして
1)     根本が左足でキック
2)     中央で相手DFがヘディングしたのが再び根本の足元に落下
3)     根本は妨害にくる一人をかわし、左足でハイクロス
4)     韓国DFが二つヘディングを続けてクリアする
5)     そのボールをエリア左後方15メートルで三田が拾って前方の石川にパス
6)     ゴールラインから10メートル、エリア左側ぎりぎりのところから、石川は左足で強いボールを中央へ送る
7)     これが一番近くの韓国のキャプテン、チョ秉局(チョ・ビョングク)の足に当たって、角度が変わり、ニアポストぎりぎりに飛び込んでしまった。

Diagram_030723_2_2

 いささか幸運な、オウンゴールだった。

 ただし、このゴールは、その原因となるFKのチャンスをつかむ手順が、相手の意表をつくという点で見事だった。

 それは松井のヒールキックのパスから、
1)     右タッチラインぎわで、相手に囲まれなが ら自陣の方を向いたまま、彼は左足のヒール(かかと)でボールをタテに出した。
2)     内側からいいスタートを切った石川が、右のオープンスペースでこのボールを取り、内を向いてドリブル。
3)     それを韓国のチョ秉局が倒して(イエロー)FKとなった。

 この松井のヒールパスは、彼の得意芸のひとつ。相手側は、中寄りにいた石川が、外のスペースへ走るとは感じなかったのだろう。ヒールキックで、しかも相手が予期せぬオープンスペースを狙ったという、二つの意外性が重なって、石川はスピードを生かして妨害なくボールを取り、内側(ゴールの方)に向かって、ドリブル突破を敢行したのだった。

 日本のサイドからの攻撃を警戒していた韓国側にとっても、この攻めはちょっとした衝撃だったハズ。FKとそのあとの日本の波状攻撃に、それまでの自信満々の応対ぶりとはやや違っていた。


大久保のノーマーク・シュート

 松井は30分にも右スローインからチャンスを生み出した。エリア内への鈴木の動きに対して、低く強く投げ、ボールはよく滑って韓国DFの足先を通って鈴木にまで達した。

 鈴木はノーマークで、ゴールライン近くの深い位置でボールをキープ、ゴールエリアに近づいてから大久保へパスを送った。パスも狂いなく大久保に達したが、大久保の右足インサイドのシュートはGKの上を抜き、クロスバーに当たってしまった。このシュートがなぜ、決まらなかったのかー、当事者を含んで、パスのボールの小さなバウンドから、大久保のインパクトなどについて、その失敗の原因を突き止めなくてはなるまい。

 後半はじめの松井のドリブルシュート。タイムアップ直前の田中達也のヘディングと、惜しいチャンスが日本にもあった。韓国は185センチのチョ宰榛をはじめとする身長での優位を利して、左右からのクロスや、崔成国(チェ・ソングク)のドリブルやパスなどで、日本の倍以上のチャンスを作り出した。彼らのシュート失敗にも助けられたが、相手の強い接触プレーにも馴れた日本の守備陣も驚くほどの粘りをみせて追加点を奪われずに終わった。


ライバルの互いの進化

 今度の韓国のU-22代表は、韓国の歴史のなかでもいいプレーヤーがそろっているチームだと思う。ボールタッチが柔らかくなり、技術革新が進みはじめているようで、しかも、伝統の活動量(タフネス)を残している。

 FWのチョ宰榛はその長身でアジアではヘディングで相手の脅威となるだろう。1950年代の崔貞敏(チェ・ジョンミン)の速さや70年代の車範根(チャ・ボンクン)の力強さとは、また違った特色だが、反転プレーにはやはり先輩達の伝統が生きている。

 彼らに比べると、現在のU-22日本代表は全体に体格の点では劣る。しかし、いくつかの決定的なチャンスを生み出した時のように、いつ、どこで、互いの特色を組み合わせるかを、自分達で作り上げれば、アジアのトップとみられるこの相手にも通用するハズだ。ただし、ミャンマー戦以来の個人技術の進歩の遅いのが気になる。例えば石川の右足、左足のクロス(あるいはパス)の精度。このプレーヤーほどの能力があれば半年で一気に高められると思うのだが・・・。

 もし、日本のパスとシュートの精度があがり、少ないチャンスで日本が勝つようになれば、韓国は今の基礎の上にもっとシュートを磨くことになる。ライバルとはそういうものだ。

 若いうちから、いいライバルがいて互いにいい刺激になる ー キリンチャレンジカップはそのことを知ってよかったと思う。

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