2016年6月7日 日本代表 対ボスニア・ヘルツェゴビナ代表(下)

2016/06/15(水)

――スコアが1-1となってからも双方のボールの奪い合いや、攻めの意欲の高さがみられて、とてもおもしろかった。日本は前半44分に宇佐美がエリア内でのキープからシュートのチャンスがあった。ボスニアにもバーに当たったエリアすぐ外からのFKをはじめ、スタンドをひやりとさせるチャンスもあった

賀川:この日の期待のひとつは、浅野拓磨をスタートから90分使ったこと。今が伸びる時期とハリルホジッチ監督は見たのだろう。後半にも彼にビッグチャンスがあった。

――こういう時に点を取れることが大事なのですかね

賀川:後半のスタートから柏木陽介を遠藤航に代えた。2分すぎに浅野のシュートチャンスがあった。右から中へ入り、右足で蹴ったが相手の足に当たって勢いが弱まった。相手のシュートチャンスにも粘り強く守るボスニアのうまさの例だが、こういう相手のうまさ、粘っこさは対戦して体で感じるものだからね。そのボスニアの守りのうまさに日本側はキープして攻め込んでもなかなかいいフィニッシュに持ってゆけなかった。

――東欧ユーゴのサッカーというところですね。

賀川:後半初めの20分間は、日本がキープして攻勢のように見えていたのに、決定的なチャンスはなく、21分にボスニアがゴールを奪った。

――20分にボスニアが選手を代えた。MFのドゥリェビッチをステバノビッチに代えましたね。代わってすぐに彼がチャンスを作った

賀川:彼が右サイドのポジションに入ったときに、ボスニアにハーフウェイライン付近(中央右寄り)でのFKがあった。FKは日本のペナルティエリア右角の少し外に向かって飛び、ステバノビッチが内へトラッピングしてDFをかわし、小さなドリブルから左足でパスをエリア内へ流し込んだ。

――いいパスが出た。このボールを長身のジュリッチがゴールエリア右角前3メートルで追いつき、右足でダイレクトシュートした

賀川:フォワードとしては当然のことながら、右斜め前へ走って、後方からのパスをシュートした。ジュリッチの動作は全くそつのない、見事なものだった。

――吉田麻也は少し離されていました

賀川:シュートされたボールは、吉田の足間を抜け、GK川島の右手をかすめて左ポスト近くへころがった。

――ロングパスと、ステバノビッチのうまいトラッピングと、それに続くパスと、ストライカー・ジュリッチのダイレクトシュートの組み合わせだったが、こんなに簡単にゴールが生まれるのだという見本のようだった

賀川:相手がボールを受けるときに日本側のマークの間合いが遠くて、まるで練習での得点コースの型を見ているようだった。FKのときに新しいメンバーが入ってくる。ただそれだけの異変で日本側に心の空白ができたのだろうが、その空白を利用したボスニアの選手の「いま!」をつかむ試合巧者ぶりに脱帽というところだろう。

――1-2とリードされて、日本は攻め続けようとする。ボスニアはじっくり守り、時折カウンターを見せ、日本は同点にできなかった

賀川:この後も、とてもおもしろかった。日本には選手の組合せのテストもあり、リードされてからも4人の交代が入ったが、点は取れなかった。

――この対ボスニア戦を見ると、差は大きくないとしても、戦えば必ず勝てるとは言えないことがわかります。ハリルホジッチ監督は、試合の後の記者会見で、日本サッカーにはずる賢さが乏しいと嘆いていたそうですね

賀川:東欧の旧ユーゴスラビアの各代表チームには、試合の流れをつかむうまさがよく見られるのです。この試合は勝てなかったのだが、私は日本代表は少しずつ進化していると感じています。宇佐美は昨年に伸びて、ちょっと足ふみしてまた上に向かっています。浅野はもっと試合を重ねることと、監督・コーチあるいは先輩たちからいいヒントをもらえば、今年大幅に伸びる気がします。もちろんそのためには本人の努力も必要でしょう。

――イングランドの優勝チーム、レスターのFW岡崎慎司はどうでした?

賀川:レスターでの優勝は自身にはなるけれど、それで彼のプレーの幅が大きく増えたというわけではない。前残りのFWで、ボールの競り合いに特殊な才を持つ岡崎が代表でどう生きるかは代表全体の問題として話し合い、大きなプラスにしないともったいない話です。

――相手が守りに入ったときには結局得点できなかった

賀川:いつもの話になるが、ラストパスの精度とシュート力アップでしょう。クロスの高さ、強さ、落としどころなどのレベルアップです。これらのプレーは練習量(回数)に比例すると昔から言われています。日本代表でもそれを繰り返し上達したときに大会で成績を上げています。ワールドカップアジア最終予選を前にしたキリンカップは終わりましたが、選手たちにとっても、応援するサポーターにとっても、これからが大切な時期になります。9月に集結するときの選手たちのプレーがとても楽しみです。

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2016年6月7日 日本代表 対ボスニア・ヘルツェゴビナ代表(上)

2016/06/13(月)

キリンカップ2016
2016年6月7日 大阪/市立吹田サッカースタジアム
日本代表 1(1-1、0-1)2 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表

――6月7日、大阪の市立吹田スタジアムでキリンカップ2016の3位決定戦と、決勝が行われ、3位決定戦でデンマークが4-0でブルガリアを破ったあと、決勝は大接戦の末、ボスニア・ヘルツェゴビナが2-1で日本を倒しました。1978年に日本で初めての本格的国際サッカー大会「ジャパンカップ」として創設されたこの大会は、5年ぶりに復活し、4か国の代表チームによるノックアウト方式によって優勝を争う新しい大会(トーナメント)となりました

賀川:4か国トーナメントのノックアウト方式だから、1回戦がいきなり準決勝になる。6月3日愛知の豊田スタジアムでまずボスニア・ヘルツェゴビナ(以下ボスニア)がデンマークにPK戦で勝利し、第2試合で日本代表が7-2でブルガリアに大勝した。日本代表の大量ゴールに、サムライブルーへの期待が大きく膨らんだのは言うまでもない。

――吹田での6月7日の試合は雨のなかだったが、35589人の観客がつめかけた。関西で神戸に次いで生まれた濡れないで観戦できるスタジアムですからね

賀川:ガンバのホームグラウンドが、ナショナルチームのホームにもなった歴史に残る日でもあった。

――3位決定戦ではデンマークが勝ちました

賀川:ブルガリアもがんばったが、力の差はあった。

――デンマークのGKシュマイケルはいかがでしたか

賀川:カスパー・シュマイケルの父親が1992年のEURO(欧州選手権)でデンマークが優勝したときのGKピーター・シュマイケルです。親子2代のデンマーク代表ゴールキーパーをナマの試合で見ることができてとてもうれしかった。父親とよく似た体つきで、大きくて、ガッシリして、ゴールキーパーというポジションでヨーロッパ勢は恵まれているという感じだった。92年のピーター・シュマイケルはデンマークの選手たちがうちには世界一のGKがいると自慢していたほど、オランダやドイツを相手に堅い守りを見せて、優勝に貢献したのを覚えています。

――まあ親子2代の活躍をナマで見せてもらえたのも、キリンカップのおかげですね

賀川:92年EUROでスウェーデンまで出かけたのは、1936年のベルリン五輪で日本がスウェーデンに勝った、その時のスウェーデンでの反響を確かめたかったこともあった。

――そのことが、「ベルリンの奇跡」(竹之内響介著)というドキュメントの監修をすることにつながりましたね。キリンカップにはたくさんの思い出がありますが、古い話はこれくらいで、試合にゆきましょう

賀川:残念な決勝でした。第1戦は本田圭佑を欠いても大勝した。第2戦は香川真司(第1戦で負傷)も欠いての試合で、本田と香川のいないこの代表には少し荷が重かったという感じだった。

――ボスニアはかつてのユーゴスラビアの一部で、ユーゴの選手は東欧のブラジルと言われたほどボールテクニックが巧みでした。今度のボスニアもそうでしたね

賀川:テレビをご覧になった多くのサッカーファンはご存知でしょう。まずどの選手もボールを持った時の形(姿勢)がいい。相当な長身でも、いい姿勢でボールを扱えるのにまず関心しました。

――日本代表は前半はその相手にジリジリと圧迫されたが、26分に先制ゴールを決めました

賀川:宇佐美が左から斜め内側へドリブルし、ペナルティエリア内に入って内側にパス。そこにいた清武が左足でダイレクトシュートを決めた。宇佐美をマークしたDFは間合いを取って並走するだけでつぶしにくることはなかった。ドリブルの途中で宇佐美が「一呼吸」遅らせた時には、「うまくなったな」と思いましたね。パスのタイミングもギリギリで、宇佐美のよさが一杯つまったゴールでしょう。

――1-0になって、チームもスタンドも喜んだが、すぐそのあとには同点にされました。それも、相手のキックオフで試合が再開してすぐのことだった。ボールを後方へまわし、最終ラインの右サイドからボスニアはロングボールを蹴ってきた。ボールは高く上がって、日本のペナルティエリアの10メートル手前に落下し、吉田麻也がホジッチと競り合いながらヘディングした。そのボールを長身のジュリッチが拾って、エリア外12メートルから丁寧にバックパス、このボールを受けたブランチッチが左足で右前方へ高いクロスを送った。ボールエリア中央右寄り手前に落ちてくるボールをホジッチがヘッドし、ボールがGK西川周作にあたってリバウンドしたのを後方からやってきたジュリッチが右足で右下に蹴り込んだ。

最初のロングボールのヘディングを拾われ、次の高いクロスのときに、最初に吉田と競ったホジッチが右ポストよりに動いたのに誰もマークにゆけなかった。

――シンプルな斜め後方からのクロスに相手の動きが先手をとっていた。

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2016年6月3日 日本代表 対ブルガリア代表(下)

2016/06/06(月)

――2点目は香川のヘディングで決まりました

賀川:1-0になってから、しばらくしてブルガリアもボールをキープし攻めるようになった。彼らのヘディングが日本のゴールに向かって飛び、左右からの攻めでシュートチャンスも生まれた。

――右サイド後方から柏木がロングパスを左サイドへ送り、それを取った長友がゴール前の香川の位置へ高いクロスを送った。それを香川が決めました。見事なジャンプヘディングでした。

賀川:短いパスをつなぐのが日本だと思っていた人には、この2本のロングパスとヘディングの締めくくりで、今の日本代表の別の面を見たでしょう。この日は全体に仕掛けを早くしようとしていたと思いますが、中距離パスの精度のよさも生きましたね。前半のブルガリア側は反応が遅く、いささか不思議でもあったが、、、ボール保持を互角近くに上げてきたときに2点目を取られたから、ブルガリアにはつらいゴールだったでしょう。

――32分の3点目は、相手が攻め込んできた後の、日本のカウンターからだった。右角の深いところへ出たボールを、岡崎が走って拾い、バックパスした。そこから中へグラウンダーのパスが入って最後は香川でした

賀川:右からのグラウンダーのクロスが来たとき、香川のニアサイドにいた清武が、このボールにタッチしないで、ボールは香川にわたり、相手DFがつぶしに来るのを反転してかわし、左足シュートでGKミトレフの右を抜いた。サイドキックでのコントロールシュートだった。この時のキックの形を見て、香川は左足のサイドキックも上達しているのだなと感じた。

――朝日新聞の紙面に、この場面の香川の左足サイドキックが掲載されています。ボールをしっかり注視しているところがよく写っています。

賀川:同じページに岡崎の1点目のヘディングの写真もあった。これもヘディングした後、岡崎の目がボールを追っているところがよくわかります。報道の写真でサッカーのプレーの基本を確認できるのは、とてもありがたいことですよ。

――サッカー好きの少年たちや、指導の先生方にも参考になりますね

賀川:その5分後、38分に4点目が生まれた。コーナーキックのあと、相手がクリアしたボールを長谷部が右後方からゴール左ポストへ長いクロスを送り、ポスト近くにいた森重がヘッドで折り返し、それを中央にいた吉田がヘッドであわせてゴールへ叩き込みました。

――日本側はごく基本的な攻撃展開をしていたのに、相手は反応できていなかった

賀川:ドリブルなどには粘ってついてくるのに、左右にボールを散らされると、うまく防げていなかったようです。前半4-0.観客にとっても、テレビ観戦者にとっても、楽しい45分があっという間に終わりました。

――前半の終わりごろに、香川が宇佐美と交代した。相手との競り合いというより、体をぶつけたとき、腰を痛めたらしい

賀川:すごく調子がよくて、動きにもスピードがあったのに、、、ちょっと心配ですね。後半初めのラインナップは、トップが岡崎に代わった金崎、第2列は小林、清武、宇佐美、その後方は長谷部と柏木で変わらず、4DFもそのままでした。

――新しい顔ぶれにも期待がかかりました

賀川:ブルガリアは、前半より動きがよくなったこともあって、互角の攻め合いとなった。

――後半45分で日本はPKを含めて3得点、ブルガリアは2得点で、PKを失敗しています

賀川:日本は前半に4-0と大きくリードしたが、後半も攻めに出たから試合は最後まで面白かった。選手たちもひたむきでとてもよかった。

――ただし、前半の手馴れたメンバーと違うせいか、パスミスもあり、それも失点の原因のひとつとなった

賀川:日本が後半に先に2ゴールして、一時は6-0まで開いた。

――5点目はやはりコーナーキックのすぐ後に生まれた。

賀川:右CKを相手DFがクリアし、日本側はしばらくDFの間でパスを交換した後、攻めに入り、金崎が後方からボールを受け、右側を駆け上がる清武の前へパスを送った。清武はゴールラインから数メートルまで進んで、中央へパス。そこには吉田がいて、右足で無人のゴールに蹴り込んだ。CKのときからゴール前に残っていたのだろう。

――これで吉田が2得点となった。CKをクリアされた後、攻撃の機会を求めつつ、チャンスにタテに走るという動きが自然に出ているようにみえた

賀川:清武がラストパスをゴール前へ送り込むときに、右サイドキックで丁寧なキックをしていた。ひとつひとつのプレーに選手たちの思いが入っていた。

8分の、この5点目の4分後に6点目が決まった。今後も右サイドからの攻めだった。酒井宏高いクロスを中央で金崎がジャンプしたが届かず、ボールは左へ流れ、宇佐美がとって一つ止めてシュートした。右インサイドで右下隅を狙って決めた。

――スコアは開いたが、ブルガリアはあきらめなかった。後半14分に左スローインから日本側のヘディングが弱くて奪われ、ここからアレクサンドロフにゴールを奪われ、37分にもチョチェフのシュートで2点目を取られた

賀川::6-2となったあと、浅野がドリブルでペナルティエリアへ持ち込み、相手のファウルがあってPKをもらい、浅野が決めて7-2となった。

――7-2の後に今度はブルガリアにPKのチャンスがあった

賀川:43分に日本のエリア内でガリン・イバノフが原口に倒されたのを主審はPKとした。右ポスト際へのコースをGK川島が的確に読み、防いだ。川島にとっての勲章がまたひとつ増えたことになる。

――7-2というスコアだったが、最後まで緊張感があって、いい試合でしたね

賀川:ワールドカップアジア最終予選の準備として、これまでのレギュラークラスのチームワークと、そのチームにどれだけの選手を加えるかを監督さんは見ているでしょう。キリンカップ第2戦で何を見られるか楽しみですよ。

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2016年6月3日 日本代表 対ブルガリア代表(上)

2016/06/04(土)

キリンカップ2016
2016年6月3日 愛知/豊田スタジアム
日本代表 7(4-0、3-2)2 ブルガリア

岡崎の先制ゴールにレスターでの進歩を見る

――久しぶりのキリンカップは、まず日本の1勝、それも東欧のブルガリアを相手に7-2という驚くべき大勝となった

賀川:CDFに吉田と森重。右サイドが酒井宏樹、左サイドが長友という4人のDFの前に長谷部と柏木をボランチ、小林悠を右サイド、中央に香川、左に清武の第2列。トップは岡崎だった。レギュラーの常連、本田圭佑が負傷で欠場したが、ほぼベストメンバーに近い先発。チームは巧みなサイド攻撃で前半のうちに4-0とした。

――1点目は相手DFラインの裏へ走った岡崎が決め、2点目は27分に長友の左からのクロスを香川がジャンプヘッドで決め、3点目は右サイドからのグラウンダーのパスを香川、その3分後に右CKの後、長谷部の後方からの長いクロスを左ポストぎわで森重が折り返し、中央にいた吉田がヘディングでゴールした。

賀川:チーム全体にボールを早めに動かそうという意図が感じられた。中距離のパスが多く、また反対側のサイドに振る長いパスもあった。

――日本の早いパス攻撃にブルガリア側はとまどったようでした

賀川:なにしろ1点目のゴールが4分30秒だったからね。早い先制ゴールで日本は気分的にも楽になっただろう。

――形としては相手守備ラインの裏へ岡崎が飛び出した。オフサイドかというぐらい早いタイミングの動きで、柏木からのクロスをヘディングしたときはノーマークだった

賀川:この攻撃の始まりは、3分24秒に長谷部が右コーナーへロングボールを送り、それを追ってボールを取り、そこからバックパスが出て、ボールがエリア右外角近くへ戻ってきた。

――そのバックパスを受けた柏木にブルガリアのランゲロフが奪いに来た。柏木は戻り気味にターンしつつ、ゴール前を狙う岡崎の気配を感じていた

賀川:岡崎がエリア中央部を左から斜めに出ようとするのに合わせて、柏木はパスを送った。ゴールはゴール正面へ。CDFテルジエフの背後から現れた岡崎をブルガリア側はマークできず、ゴールキーパーとの競り合いもなくヘディングを決めた。

――ボールに近いところに小林も来ていました

賀川:柏木と岡崎のパスのやり取りだが、そういう小林の動きも相手へのけん制になっていたでしょう。

――サイド攻撃でも、右サイドでのバックパスの後のクロスですから、ちょっと意表をつきましたね。そういう全体の流れを見て、相手DFラインの裏へ走りこんだところが岡崎ですね。

賀川:試合後の談話で「飛び出すのが早すぎてオフサイドかなと思ったが、そうでなかった」と言っています。かつての日本の大ストライカー釜本さんとの話でも「裏を取る時はオフサイドとは紙一重ですよ」ということだった。

――今年の岡崎はプレミアリーグ優勝チームのストライカーとして注目されていますが、その一端を見せましたね。

賀川:そう。彼は滝川第二高校以来、「ゴールを狙う」のを生きがいに進歩してきたプレーヤーです。彼の守備での貢献なども高く評価されていますが、このゴールを見れば、やはり一瞬をとらえるストライカーの本領が見えましたね。

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2015年6月11日 日本代表 対イラク代表(続)

2015/06/14(日)

――GK川島、DFが右から酒井宏、吉田、槙野、長友、MFが柴崎、長谷部、本田、香川、宇佐美、FWが岡崎という先発メンバーで、後半20分まで来て21分に武藤、原口、永井がそれぞれ宇佐美、賀川、本田に代わりました。28分に岡崎に代えて大迫が、31分に長谷部の交代に谷口、40分には山口が柴崎の交代で入りました。MF6人はすべて代えたわけですね。

賀川:ディフェンスはすでに前の試合で出場しているメンバーもいて、今回は吉田、槙野の2センター、それにケガで長く休んでいた長友と、酒井宏も90分プレーしました。監督さんは候補選手のプレーを自分の目で確かめたのでしょう。メンバー変更の手順もなるほどという感じですね。

――原口が攻め込んでのこぼれ球をシュートして得点しました

賀川:前半のメンバー以外にも交代できるメンバーがいること、つまり代表チームにレギュラークラスにも競争相手がいるのだということをチーム全体に改めて知らせた。

――競争させるわけは?

賀川:これまでの代表だった者への刺激だけでなく、新しいメンバーもレベルアップすれは代表に入れる気持ちを強く持ってほしいと考えているのでしょうね、監督さんは。

――前半のFKでもいつもの本田が蹴ると決まっていなかった。吉田麻也のFKという珍しいものも見ました

賀川:FKのチャンスがあると思えば、プレースキックの練習にも力が入るでしょう。キックは気持ちのこもった練習の回数や量が多ければさらに上達します。

――そういう考えもありますかね

賀川:いまの日本代表はもともと幼年期、少年期からボールタッチが上手な、いわば技術レベルの高いプレーヤーが多く集まっています。それが、その技術を生かすために体を強くし、耐久力をつけ、走るスピードを上げ、そしてチームに役に立つプレーヤーになってもらいたいと監督は願い、そのチームの方針を常に選手に語りかけ、実際の練習でも行っているのでしょう。練習の日数から言って、それほど戦術的な人の動きやボールの動きに時間をかけていないはずですが、前半の選手たちは互いの意思は通じていると思う場面が再三ありました。

――アジア予選第2ラウンドという本番を迎える前としてはチームはいい状態になってきたと?

賀川:ハリルホジッチ監督もそう思っているでしょう。ただし監督は予選の各試合を通じて、あるいは大会までの3年間を通じての代表チームの強化を考えているはずです。そのひとつひとつのステップを確かめながら私たちは日本代表が上のレベルのチームへと変わってゆくのを見つめていきたいと思います。宇佐美貴史という新しいプレーヤーが働く攻撃陣も見ました。柴崎というバルサのシャビばりのパサーの成長も知りました。もちろんアジア予選は気候の変化も大きく、生易しいものではありません。この点ではヨーロッパ人の経験ある監督にとっても課題となるはずです。いろいろな困難を克服して行くためにチームは何より監督、選手の団結が大切ですが、それもこのキリンチャレンジで見えた感じもありました。これからの長い予選の期間、一喜一憂しながらであっても希望を持って入って行けることが、いまの私たちにはとてもうれしいことだと言えます。

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2015年6月11日 日本代表 対イラク代表

2015/06/12(金)

キリンチャレンジカップ2015
6月11日 横浜
日本代表 4(3-0、1-0)0 イラク

――4-0快勝でした

賀川:横浜スタジアムの6万余人もテレビの前のファンも楽しい試合だったでしょう。私にもとてもうれしい90分間でした。

――宇佐美貴史がいいプレーをした。柴崎も決定的なスルーパスを何本も出しました

賀川:かつての遠藤と同じ背番号7をつけていて、遠藤のようなスルーパスを出していた。ボランチのポジションで長谷部と組んだが、パスを出す位置や、タイミングが素晴らしかった。

――2018年ワールドカップ、アジア最終予選の第2ラウンドをひかえた日本の強化試合のキリンチャレンジカップとしては、とても良かったと言えるでしょう

賀川:ハリルホジッチ監督の就任後の3試合目で、チームが変わっていく過程を見事にファンに見せてくれた。前半の選手起用も、後半の新しい顔ぶれの投入も、とても良かった。

――本田の先制ゴールが5分、CKからの2点目(槙野)が9分と初めの10分間で2点を取りました。あれ、イラクはもう少し強いのじゃないかと思いましたが

賀川:国内が日本と比べると大変な事情で、代表チームの編成も、私たちよりは苦労があるでしょう。しかしワールドカップアジア予選の第2ラウンドではイラクはFグループに入っていて、インドネシア、台湾、タイ、ベトナムと戦います。そのための準備としてイラク側にもこの試合は大切なのでしょうが、日本がこれまでとは違うスタイルになっていたので驚いたのかもしれません。

――1点目も速攻、スルーパス1本を本田が決めました

賀川:日本の攻めが続いたあと、日本のスローインからチャンスは始まった。柴崎がスローインを長友に返し、長友が前方へ送る、①イラクがヘディングで返してきたのを長友が相手DFと競り合い②ボールが柴崎の前へ落下した。③ワンバウンド目が高く上がったのを、柴崎は2バウンド目まで待って、体の向きを前にし、2バウンド目のボールが落下してくるところを右足のサイドキックのボレーで前方へ送った。④そのボールが中央前方にいた本田の前へ出た。

――本田と岡崎がこの時は2トップのように前方にいました。岡崎はオフサイドのように見えました

賀川:本田をマークしていたイラクのDFは本田をもオフサイドトラップにかけようとしたように見えた。本田はその時に前にスタートしたから、相手は遅れてのスタートとなった。

――ふーむ、細かく見ましたね

賀川:あとで、もう一度スロービデオで確かめたのですが、スルーパスはまずタイミングが問題。この場面では2バウンドまで待って正確に出したことと、柴崎が前を向いてボレーで蹴ったのがミソでしょう。

――ボレーキックのパスやシュートは相手は見にくいといつも言っていますね

賀川:柴崎はそういうところも心得ているプレーヤーでしょう。

――本田にもパーフェクトなタイミングでボールが出てきた

賀川:そうは言ってもDFの裏へ走り込んでスルーパスをシュートして決めるのは、そう簡単なことではありません。

――本田は足が速い方ではないから

賀川:永井のように速くなくても、彼は体の「シン」が強く、バランスが良いという長所があります。DFの追走を受けながら、真っ直ぐの突進からボールを少し左へずらせて自分の左足キックの得意な角度へ移しながら、右手のハンドオフで相手が体をぶつけてくるのを防いでおいて左足でシュートしました。

――本田の個人的な強さと、柴崎のパスがピタリと合った

賀川:岡崎のオフサイドを含めてこれもひとつのチームワークですが最後には本田の強さが生きたゴールです。彼が得点への意欲を高めるのは代表にとって重要なことですからね。

――2点目は左CK、遠藤が参加しなくなってから、ここは香川が蹴っています。そのキックをニアで酒井宏樹と吉田麻也がジャンプし、どちらがふれたかどうか、ボールはファーサイドへ落下し、そこに槙野がいて足にあてて、ゴールへ送り込みました

賀川:その槙野のさらに外に本田がいました。香川のボールに合わせて4人が同一ラインに入ってきたことになります。プレースキック(FKやCK)は、練習し、いくつかの型を持てば大きな得点源ですからね。

――テレビでも、監督が3分の1の得点はFK、CKと言っていると説明していました

賀川:1930年代から、僕たちの中学生のころから、そういうことになっていました。今の代表選手のように技術の確かな選手が多ければ、守備が進歩した現代サッカーでもCK、FKはチャンスでしょう。

――ごひいきの宇佐美選手は左サイドでキープし、縦の攻めと仕掛け、ドリブルシュートをするなどガンバの時と同様に落ち着いているように見えました。3点目は彼のドリブルからのパスが決定的な役割を果たしました

賀川:右サイドのやや中よりで、本田、香川たちがパス交換をしたあと、柴崎が左から中へ入り込んできた宇佐美へパスを送りました。宇佐美が巧みなトラッピングからドリブルで相手をかわし、さらに前へ出て相手DFの目を集め、左へ (中央へ)開いた岡崎へ横パスを出した。まぁドリブルからパスを出す動作の滑らかさは見ていて惚れ惚れします。こういうパスをもらってフリーシュートとなると外すこともあり得るのですが、さすがに岡崎は左へ流れながら左足でシュートして決めました。

――GKは左手を伸ばして、手には当てたが防げなかった

賀川:シュートもしっかり蹴れていましたからね。ハリルホジッチ監督は、それまで右サイドにいた岡崎を彼が監督になってから中央のいわゆるCF(センターフォワード)の位置に持ってきたのは卓見ですね。

――香川真司が目立たなかった

賀川:ゴールしなかった、決定機を作らなかったというふうに見えるが、ともかく意欲満々で良く動いていた。前へ出る動きと本田とのペアプレーなどが生きて柴崎が良い位置でパスを出せる形になったと思います。

――両サイドの攻めもあったが

賀川:サイドから侵入してのクロスの成功は、クロスパスの精度と中央でパスを受けるプレーヤーの「動き」が合うこと、さらには相手DFに当たったボールへの予知などがからんできます。まぁこれは今後の課題でしょう。もちろんサイドからの攻めもあったことが柴崎たちのスルーパスが通りやすくなっていたということにもつながるのかもしれません。

――後半の新しい代表のプレー、その他についてはのちほどに

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2015年5月28日 日本女子代表 対イタリア女子代表(続)

2015/06/04(木)

――第1戦の対ニュージーランド、第2戦のキリンチャレンジカップ対イタリア、ともに1-0の勝ちでした。澤穂希の復帰があり、大儀見優季がストライカーとしての本領を見せたプレーもありました。カナダでのFIFA女子ワールドカップへの見通しは少しよくなってきましたね?

賀川:宮間あや主将のパスが必ずしも上々とは言えなかったが、FKやCKの精度は相変わらず高いものでした。少し長めのパスが多く、それが仲間とタイミングが合っていない点もあったが、彼女自身は自分で試したいようでもありました。

――ワールドカップでの優勝以来、その主力だったINAC神戸のプレーヤーに進化を見つけにくい、とよく言っていましたが…

賀川:今年に入ってINACの選手たち全体に動きの量が戻ってきました。それだけでもほっとしたのですが、折角神戸のいい練習環境にいながら、もう少しレベルアップが見られれば…

――それでも、その主力が少し上向きになってきたと…?

賀川: INACの7人だけでなく、阪口夢穂や岩清水梓、熊谷紗希といった選手たちの調子はよさそうだし、新しく加わった長身のゴールキーパーの山根恵里奈も、その背が高いという特性を自分で生かせるようになっています。

――宇津木留美といった左のキックのしっかりした大柄フィールドプレーヤーも加わりました

賀川:佐々木則夫監督はポルトガルでのアルガルベカップの9位という成績からチーム編成を考えてきて代表メンバーを選んだのでしょう。

――主力が4年前の優勝メンバー、それだけ年齢も高くなっていますが

賀川:経験ある彼女たちと佐々木監督は、本番の1次リーグの3試合で徐々にチームをまとめノックアウトシステムへ進む、と考えているのでしょうね。

――そううまくいきますかね?

賀川:ワールドカップは今回は24チームが参加となり、6月6日の開幕試合から6組のグループリーグで、各組上位2チームと3位の4チームが6月20日からのノックアウトステージに入ります。その1回戦(ラウンド16)が20~23日、準々決勝が26、27日、準決勝が30日と7月1日、3位決定戦が7月4日、決勝が7月5日に行われます。

――女子サッカーが世界に浸透したと主催のFIFA(国際サッカー連盟)が判断しての拡大政策でした

賀川:FIFAは4年前のドイツ大会を大きなステップと見ていた。その大会で、日本という新興国が優勝して、世界に大きな刺激を与えました。

――ロンドンオリンピックでも、日本とアメリカの決勝は8万の大観衆が集まりました

賀川:サッカーの母国イングランドの聖地ウェンブリーでの8万ですからね。

――ヨーロッパでは37カ国で51試合全部がテレビ放送されるそうです。北米大陸はもちろんです。日本でも全試合がテレビで放送されますね

賀川:女子のワールドカップは回を重ねるごとに世界へのアピール度を高めてきました。日本はそこに割り込んで行くのですが、気がかりもあります。

――人口芝のピッチですね

賀川;大会はバンクーバー、エドモントン、ウィニペグ、オタワ、モントリオール、モンクトンの6都市が会場となりますが、全部が人工芝です。北の気候を考えての人工芝の選択のようです。

――人工芝のピッチは初期のころから見るととても進歩していますが、それでもやはり天然芝と比べるとピッチが固く、選手に疲れなどの影響も出るという懸念もあるそうです。

賀川:アメリカのワンバック選手などは反対意見を述べていました。ボールのバウンドや転がる速さなど、日本選手も馴れなければなりませんが…。

――女子サッカーは日本でも急速に普及しています。ここで、やはりベスト4に進み、メダルを取ってほしいですね。

賀川:4年前は澤さんが120%働き、選手たちはすべての試合で100%の力を出したように見えました。それをもう一度するのは大変ですが、彼女たちの人生にとっても、参加する新しいプレーヤーにとっても、世界の舞台でのチャレンジはとても重要でしょう。もう一度、彼女たちの諦めない戦いを見せてほしいものです。

――なでしこが一段上のレベルに上がるチャンスでもあるでしょう。その技術的、戦術的な話を本番でも、語り合いたいものです。   

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2015年5月28日 日本女子代表 対イタリア女子代表

2015/06/01(月)

キリンチャレンジカップ2015
5月28日 長野
日本女子代表 1(0-0、1-0)0 イタリア女子代表

――強化シリーズの第1戦、対ニュージーランド戦では澤穂希が代表に復帰しました。

賀川:得意のボレーシュートで唯一のゴールを決めましたね。

――第2戦の対イタリアがキリンチャレンジカップとなりました

賀川:対ニュージーランドが香川の丸亀で、キリンチャレンジカップは長野市でした。四国はかつてはサッカーの後進地でしたが、女子の日本代表を迎えて盛り上がりました。

――丸亀は、その四国では古い時期の女子のサッカーがあったとか?

賀川:第一次世界大戦のときに日本が中国・山東省の青島(チンタオ)にあったドイツ軍港を攻撃し、多くのドイツ人捕虜が日本に来ました。香川県にもその収容所があってドイツ人たちがサッカーをした影響で大正年間に女子校の運動会でもサッカーをしたということです。広島が似島の収容所のドイツ人たちのおかげでサッカーのレベルがアップしたのと似ています。

――信州にはそういう話はない?

賀川:第一次世界大戦のドイツ人捕虜の話は、収容所の多くが長野以西でしたからね…。長野県の松本山雅というJリーグ1部のチームが人気を集めているときに、なでしこジャパンが長野の新しいスタジアムで試合をしたのは、JFA(日本サッカー協会)のヒットですね。

――なるほど

賀川:信州は昔から文化人を多く生み出し、新聞の編集者たちも輩出しています。こういう土地でサッカーが市民の間に浸透してくれればとてもうれしいことです。なんといっても北アルプスや上高地という名勝もありますからね。その長野県で松本と張り合う長野に立派なスタジアムができたのですよ。長野県に二つのサッカースタジアム…人口の多い、スキー発祥地の神戸を持つ兵庫県と比べてみてもすごいことですよ。

――その長野の5月29日の試合では
賀川:丸亀では澤さんの復活、ここでは大儀見のストライカーの証(あかし)でしょう。

――そういえば、多くの新聞も大儀見のゴールがトップでした

賀川:相手のイタリア代表は今度の女子ワールドカップ・カナダ大会には欧州の予選で敗退して出場しません。だから次の代表への立て直しの時期で、若い選手もいて、それだけにボールを取ると攻めに出てきました。したがって互いに攻めあうことになり、とても楽しかったのですが、その中で唯一のゴールが大儀見のシュートでした。

――後半6分でした

賀川:クロスを相手DFがヘディングで防いだのを①澤さんがペナルティエリア外側で拾って、落として、弾んでいるのをしっかりコントロールし、②グラウンダーのパスを右サイドにいた宇津木に渡しました。③宇津木はドリブルし、5歩目の右足を大きく踏み込んで左足サイドキックで中央へパスを送りました。

――宇津木は左足はうまいですからね

賀川:宇津木にボールが渡ったときには日本の菅沢と大儀見はその前のクロスに備えてゴール前につめていたから、相手DFよりもゴールの近くにいた。

――オフサイドのポジション、相手DFの背後ですね

賀川:④宇津木がドリブルする間に大儀見はすばやく、CDFリナリの背後に近づき⑤宇津木の速いパスがリナリの前に落下する直前にリナリの前へ右足を出し、その右足アウトサイドでボールをとらえました。⑥飛んできたボールは鋭く方向を変えてゴールへ、⑦GKジュリアニの右手側を抜いてポストギリギリにゴールへ飛び込んだ。

――賀川さんは、これまで大儀見の進化を強調していました

賀川:ポルトガルでのアルガルベカップをはじめ、国際試合では、女子日本代表の試合ぶりは必ずしも良くはなかったが、昨年から今年にかけての彼女のレベルアップはとてもうれしく見ていましたよ。日本のセンターフォワード的なストライカーとして、男、女と通じて歴史的にもレベルの高い方だろうとまで書いたりしていました。

――24日は良くなかった?

賀川:欧州から戻ってきた時差の関係なのか、後半は多少よくなったが、彼女らしくなかった。相手のCDFが強かったせいもあったかも…

――イタリア戦では生き生きしていました

賀川:澤さんのいないなでしこジャパンでは、攻撃は宮間あやのパスと大儀見の決定力が大きな武器だった。しかしその大儀見を生かせる、横からあるいはゴールライン際からのクロスでなく、スルーパスが多かったのには首をひねりました。良いストライカーがいると相手DFの裏を狙いたくなるのだが、横からのパスの方が、ストライカーには相手DFのかけ引き、いわゆる「消えて出てくる」がしやすいこともあって点につながるのに、などと愚痴っていました。

――今回は斜め左からのパスでした

賀川:うーん、スロービデオを見直すと、オフサイドを取られても…という形だが、レフェリーにもそう見えないほど、パスに対する相手の背後からの動きが速く、したがってディフェンダーは完全に意表をつかれたのでしょう。

――右足アウトサイドでのシュートは

賀川:あれは右利きのCFなら、ひとつの型でしょう。大儀見は日本女子としては、168cmで大きく、リーチがある方だし、瞬間的に足を出すのが早いから生きますよ。

――宇津木もしっかりパスを出した

賀川:相手のDFのヘッドのクリア、いわゆるこぼれ球を拾った澤さんがすぐ前へ仕掛けず(2人のFWはオフサイド位置だった)左サイドの宇津木へボールを出したのが、このゴールを生む第1のポイントです。バウンドしているボールをコントロールして、全体の状況を察知して、一旦ボールを左へ送って(横パス)、2人のFWの体勢を立て直す時間の余裕を持たせたところは、さすがでしょう。宇津木のボールが渡ったときにファー(ボールから遠い方)にいた大儀見が内へ、菅沢がファーサイドへ動いたのも見事でした。この間、相手の2人のDFの視線は宇津木とボールに注がれていて2人の動きを見ていなかったはずです。

――いいゴールが生まれると賀川さんの口調も滑らかになりますね

賀川:もちろん、このキリンチャレンジカップでの満足、不満足はまだあります。宮間のパスについても、両サイドの攻めについても、もちろん澤さんについても…少し長くなるので今日はここまで。

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2015年3月27日 日本代表 対チュニジア代表

2015/04/01(水)

キリンチャレンジカップ2015
3月27日 大分
日本代表 2(0-0、2-0)0 チュニジア

――キリンチャレンジカップを27日大分で取材観戦したあと、いつものようにこのブログへのレポート掲載を催促したら、今度は第2戦とあわせて眺めてみたい、という話でした

賀川:昔から点が2つになると、2点を結ぶことで線ができる、そこで方向が見える――と言います。新しいハリルホジッチ監督が何を提唱し、どういうスタイルのチーム作りをはじめるのかと見るのにも1試合より2試合でと考えたのです。

それで、一口に言うと、キリンチャレンジカップ、つまり対チュニジア戦で申し合わせ試合規定の交代6人枠をすべて使いました。第2戦でも同様でピッチに立った時間は選手によってそれぞれ違ったが、招集した全選手を自分の目で確かめると言っていた監督の方針通りでした。

――フィールドプレイヤーは全員試合に出場しました。ゴールキーパー4人のうち2人がプレーしました。権田と川島でした。東口順昭と西川周作は試合に出ませんでした。対チュニジアのスターティングラインアップはGK権田修一、DFの右サイドの酒井宏樹、左が藤春廣輝、CDF(セントラルディフェンダー)は吉田麻也と槙野智章、MFが長谷部誠、清武弘嗣、山口蛍、FWが永井謙佑、川又堅碁、武藤嘉紀でした

賀川:日本代表の攻撃といえば本田圭佑、香川真司、岡崎慎司が欠かせないことになっていたのだが、ハリルホジッチ監督は、あえて先発メンバーから外したでしょう。

――少し驚きましたが

賀川:第2戦の先発メンバーと、後半に交代した6人の合計17人。第1戦の17人の交代の手順などを見てもチームとして試合をして行く上での、それぞれ組み合わせもよく考えてあるように見えました。そして何より、監督が掲げる縦へのテンポの良いパス攻撃や選手ひとりひとりの運動量、動きの早さなどがチーム全体に浸透し始めているように見えました
――別に目新しいことでもないことを監督さんが言っているようにも見えます。

賀川:1930年ごろに日本代表が身につけた日本のサッカー。それは外国選手には体の大きさや骨組みの強さでは劣るところもあるが、「敏捷さ」と技術を生かして対抗しよう、短いパスをつなぎスルーパスを背後に送り込んでチャンスをつくり決める。そのためには相手以上に走る、ということでした。

――ブログでも言い、書き物にもよく書きましたね

賀川:ここしばらくの日本代表はボールテクニックの向上とともにチームでボールを保持する「ボールポゼッション」を重視するようになった。それは悪くはないのだが、ゴールを奪うためには、速攻――相手の守りが手薄なときには手数(てかず)をかけないで攻め込むことも大切なのだが、ここしばらくそういうプレーは遠のいていた。

――ユーゴスラビアの選手で、ヨーロッパやアフリカのチームを指導して国際的にも知られた監督に来てもらって日本式のサッカーに戻るとは…

賀川:監督さんも、日本の多くのコーチも、昔の先輩たちがそのようなサッカーをしていたとは知らないのでしょう。しかし、国際的な視点からみれば、自ずから日本代表のやり方は決まってきます。

――賀川さんはサッカーはいろいろなプレーの組み合わせが面白いと言っています

賀川:ハリルホジッチ監督の目標はアジア予選を突破して、2018年ロシアでのワールドカップでいい成績、少なくとも1次リーグを突破して、ノックアウトシステムのステージへ進むことになります。時間的に言えば、3年しかありません。

――うーん、高校生のチームを作るようなものですね

賀川:まずアジア予選までの短い間にチームの考えをひとつにすること、そして予選を戦いつつ、チームの熟成を図っていかなければなりません。

――だから

賀川:今回は、まず2試合にフィールドプレイヤーとして自分が選んだ選手を全員ピッチに送り込みました。

――その結果が、チュニジア戦の2-0、ウズベキスタン戦での5-1という勝ち試合になった。日本よりFIFAランキングの上のチュニジアから点を取ったこと、また第2戦では大量5点を取ったのでサポーターが大喜びです。ただし、チュニジアの2点も後半、ウズベキスタン戦も4点が後半でした。

賀川:遠くからやってくるアウェイチームにとって、後半に動きが鈍るのはよくあること。相手にも6人交代のルールはあってもホーム有利は当然です。ただし新しい監督がハリルホジッチ流の厳しさを打ち出し、選手に前への指向、早い動き、運動量を要求し、それに選手たちが応えようとしたことは見ていて良かった。

――個人的には

賀川:岡崎慎司が相変わらず意欲満々でゴールを狙う姿勢を続けていて、さらに進化していることを示してくれたこと。チュニジア戦の後半の1点はジャンプヘディングでもいいボールであったが、相手のDFがまともに向かってくるジャンプをしてきている中でしっかりヘディングゴールを決めています。

私にとってはガンバの宇佐美貴史がチュニジア戦でも後半に投入されて、本田や香川、岡崎たちのなかでパス交換やボールキープなどを正確にこなしていたこと、香川にスルーパスを要求して出してもらい、ノーマークシュートをして決まらなかったが、第2戦はゴール前の密集で大迫からのパスを受けてドリブルで抜け出してシュートを決めました。第1戦のシュートのボールが弱かったのに気付いたのでしょう。しっかり叩いていましたからね。

――彼には代表初ゴールですね

賀川:もともとボールタッチという点では少年期から有名だったが、それがいま体もしっかりしてJのレギュラーから代表で仕事できるまでになっているのです。もちろんまだ不満もありますが…彼の成長ぶりが見られただけでも、今度のキリンチャレンジカップを含む強化シリーズはとてもうれしいものでした。

――柴崎も第2戦でいいプレーを見せました

賀川:柴崎のクレバーさにはいつも膝を打つ思いがします。あのGKの上を抜く40メートルのシュートは大したものですが、それを追ってゴール下まで走り、相手にカバーリングさせなかった岡崎には拍手をしましたよ。

――若い選手には一応及第点?

賀川:もちろんアウェー条件下の相手(こちらが走って疲れさせた事情も加わって)の状態もあって、手放しで喜べないけれど昔からの日本流を思い出したこと、いつも27人の代表のレベルかつてないレベルでそろっていること、それを新監督がハードワークによって効果を高め、さらなる進化をしてゆこうという、代表の姿勢は誠にうれしいものでした。

――体格の劣る75年前の神戸一中にいてハードワークを強調して朝鮮地方代表や2歳年長の師範学校と渡りあった賀川さんですが、つい最近も取材にこられたベテラン記者が昔の技術の話を聞く前に体力強化のことを聞かされたのには驚いたと言っていました

賀川:90歳にして新しい監督さんのおかげで古きを思い出しました。温故知新、だからサッカーは面白い。

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2014年11月18日 日本代表 対オーストラリア代表(続)

2014/11/26(水)

――ここのところ、レッズ対ガンバのJリーグトップ争いをはじめ、好試合が多く、海外からもテレビでいい試合が届けられて、サッカー人は楽しみが多いですね。

賀川:テニスの錦織選手、日米野球もあり、まさにスポーツの秋です。Jリーグをふくめ、そちらの話も楽しいけれど、キリンチャレンジカップの日本対オーストラリア戦の続きを語り合いましょう。

――アギーレ監督はシンガポールでのブラジル戦を含めた6試合での最終戦の対オーストラリアで代表チームの姿をファンの前に見せました。2−1の勝利だから、まずは成功ですね。

賀川:いまの日本サッカーの勢力からゆけば、普通に考えれば代表はブラジルワールドカップ組に何人の新顔が入るか…と考えるはずですが、アギーレさんは全く新しい選手を登用することから始めました。最終的にはブラジル組にプラスαが加わる形になった。

――ヨーロッパで働くもの、あるいはガンバの遠藤、今野たちを含めてのブラジル組は6月の不本意な成績の後、捲土重来の意気込みがあったはずだが、6試合の終盤になってはじめて彼らの顔を揃えたところが、監督らしいということ?

賀川:多分新しい顔ぶれ、それも自分が選んだプレーヤーをテストしておきたかったことと、ブラジル組を起用する時期をいつにするかを考えていたのでしょう。

――1月のアジアカップという、当面まず成果を出さなければならない試合を控えてのことですからね

賀川:ザッケローニ前監督はチーム全体に攻撃志向という大命題を用意して、その高い目標に選手を導いてゆこうとして、ある程度成功した。しかし2013年のコンフェデ杯に出場した時の初戦のブラジル戦を見て、こういう強敵と戦うための選手のモチベーションの上げ方に不満が残った。

――そういう心の中のことは、言葉の問題もある?

賀川:今度のアギーレさんは選手にとっての反復練習の重要さを説きつつ、体のコンディションとともに選手の心理を読み、試合に出場するにあたって強い気構えになるように仕向けているように感じたね。

――記者会見での受け答えもしっかりしているとか

賀川:まあ、サッカーのプロ監督だから当然ではありますが、サッカーをよく知っていて、同時にメディアの対応もなかなかのものですよ。

――特に感じたことは

賀川:岡崎慎二をFWの中央で使ったことですね。ザックさんは攻撃展開についてチーム全体の質的向上を図ったが、最後にまたCFポジションの選手選考に迷ったように見えた。新メンバーで、岡崎は確か4試合続けてこのポジションだった。

――岡崎に合っていた?

賀川:ゴールを常に狙う選手が、ゴールに最も近い位置にいるのは当たり前のことだが、日本では本田というストライカーがいても彼をCFの位置に置くよりは右サイドの方が効果的なことはすでに知られている。岡崎は背も高くないし、CDFを背にしたプレーがとても上手というわけではないが、体を張って、ボールを受けてくれる選手で、同時にいつもゴールを狙ってチャンスをうかがっている。アギーレさんはおそらく岡崎のストライカーとしての最も大切な「気性」の素質を買ったのだと思います。

――後方からのボールを受けるのも上手になった。何よりヘディングが強く、高いバウンドのボールなどの競り合いに強い。ある時期は彼が右サイドに入ることが守備面―相手の左からの攻撃を抑えるメリットも語られていた

賀川:岡崎を中央に置いて、彼の特性を生かすこと。ボールを受けるにせよ、左右に走って展開のきっかけをつくるにせよ、彼の特徴を周囲が知れば、自然に連係プレーが出来てくる。

――本田と香川は

賀川:この2人はブラジルでの不振について強く責任を感じているはずですよ。イタリアでもドイツでも自らの新しい面を切り開こうとしているようです。

――本田は自らゴールを奪う意欲をさらに強めているようです。香川はロングパスの精度が上がりましたね。

賀川:ドイツサッカーの広い動きのなかで、プレーしていますからね。視野の広さは、時には感心しますよ。ゴール前へ入り込む動きも大したものですが、ぼつぼつ得点するためには、時に大雑把の方がよいことを覚えるべきでしょう。

――というと

賀川:前半の終わり頃に素晴らしいスルーパスがあって、香川がペナルティエリア内に進入したでしょう。

――右ポスト近くに持ち込んで、岡崎にパスをしようとしたが、DFの足に当たってCKになった

賀川:あの狭いスペースで、なお岡崎へのパスコースをさがし、そこへボールを送ろうとするところは、いかにも真司らしいのですが、あの場面はパスでなく中にいたDFと岡崎の合計6本の足のどれかに当たればよいと、強いシュート性のボールを送り込んだ方がよいでしょう。もちろん、あの位置からフワリとGKライアンの上を越えるボールを送ることも選択肢のひとつです。

――ふーむ

賀川:私は本田の意表をつくスルーパスと香川のそのパスを受けての見事なプレーをこうして話題にできるようになっただけでもうれしいのですが、折角ここまで来たのだから、その見事なパスワークの後、ゴール!と叫びたいものです。

――それには?

賀川:彼自身の心の持ち方もあるでしょうが、いつも言うように、香川があのポジションでの経験、ゴールすぐ近くでのプレーを重ねることです。試合ではそれほどできないですが、シュート練習などでも、ゴール近くへ走り込んでシュートすれば、ゴールやゴールキーパーの見方を体で覚えるでしょう。

――アギーレ流で、ともかく6試合を重ね、成果をあげて、アジアカップに乗り込みます。ここまでのところは、多くのメディアも納得した?

賀川:試合はアギーレさんがするのではなく、選手がするのですよ。DFのサイドは左右複数の選手がいます。CDFは数が少ないのが心配ですが、まだまだいい素材も出てくるでしょう。ベテランのボランチに新しい選手が加わり、攻撃陣も手薄だが各パートは揃いました。

――岡崎と豊田のCFでしょうか

賀川:南半球のオーストラリアでの夏の大会となるアジアカップは決してやさしい大会ではありませんが、選手たちがまず2015年の初頭の高いを勝ち抜き、ステップアップしてほしいと思います。

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