2021年7月17日 U-24日本代表 対 U-24スペイン代表

2021/07/18(日)

2021/7/17(土)日本/神戸市・ノエビアスタジアム

U-24日本代表 1-1(1-0) U-24スペイン代表

 

――東京五輪2020に向けた最終調整の相手が優勝候補のスペインでした。最近の日本代表はどこと対戦してもボールを保持する展開が多かったのですが、スペインが相手ではそうはいきませんでした

賀川:日本の選手もうまくなっているし、お互いのレベルが高いので、ミスも少ない。非常にレベルの高い試合になりましたが、さすがにこれぐらいのレベルを相手にしては、思うようにはいきません。前半日本がボールを保持する時間は短かったのですが、自分のところのボールになって攻めに出たとき、スペインもさすがで守備に入る動きが早かったですね。すぐに攻撃に出れば有利になるのは間違いないのですが、相手の守備陣形が整うので、マイボールにしてからちょっとゆっくりしているようなところもありました。そこから1人でいくのか、2人がかりでいくのか、人数のかけ方がはっきりせず、一気に優位になる可能性があった局面がそうでなくなったケースもありました。自分の方に危険性があっても、人数をかけて攻めに出るとか、そういうシーンが増えれば、どうなったのかなとは思います。互いに中盤で自分たちのペースにもっていく駆け引きは非常におもしろかった。これぐらいの攻防を見せてもらえると見応えのある試合になりますね。

――先制点は日本でした。前半42分、久保が左サイドから崩して、堂安が左足で決めました

賀川:左サイドのスローインを受けた久保が左足でドリブルに出て、右腕で相手を抑えるような形で前に出ました。相手も体を寄せてきましたが、久保が右腕をうまく使って押さえるような形になり、体勢を崩したマーカーは、空を見上げるような形でゴロンと転びました。フリーになって余裕ができた久保は左サイドに侵入してから、スペースに張り込んだ堂安にピッタリと合わせて、先制点になりました。堂安は動きの量としては多くないですが、ここぞという場面をきっちりと決める選手ですね。ダイレクトで左足のインフロント部分でボールを巻き込むように蹴り、ゴール左上、GKの頭上を抜きました。決めて当たり前みたいな顔をしていました。ファーストシュートをしっかり決めるというのは簡単なことではありません。堂安にしても久保にしてもボール扱いが達者で、欧州の選手と試合をするのも慣れていますから。最終調整で最高の結果が出ました。

――久保のドリブルは大きな武器になる

賀川:これぐらいの相手に勝とうとするなら、どこかで無理をする必要があります。守備も堅いわけですから、ボールを回しているだけでは守備網を破れません。そういうときは個人の突破、久保のような強引なドリブルが、有効になります。久保は幼い頃からスペインでプレーしていたので、よく知っている相手ばかりなのでしょう。気後れすることもなかった。やってやろうとずいぶん意識もしていたようです。左足でボールを持ったときに、マークを外しにかかるときでも、わざと余分に時間を使うときがあります。そうすることによって、後ろから上がっていく選手が前線に到着するまでの時間を数秒稼ぐとか、チーム全体の攻撃の時間を調整する役割を自然と果たしています。スペインは強国のひとつですが、久保にとっては、いつもやっている連中なので、普通にできていた。いろんなことができる久保が危険な選手なのは明らかで、おのずと相手が引きつけられます。だから、堂安が割合楽にプレーでき、得点を取ることに集中できています。この左利きコンビは本番でも大いに期待しています。

――後半、スペインが意地を見せて、ドローに終わりました。スペインは欧州選手権に参加していたメンバーが加わったばかりで、チームとしての調整はこれからのようでしたが、後半主力を出してきてからの攻撃はさすがでした

賀川:彼らにとっては完全な調整試合だったのでしょう。とはいえ、さすがに日本に負ければバツが悪いので、引き分けならばスペインにとっても上出来だったのでは。格が上の相手に、試合開始からボールを支配されることになっても、数少ない得点機を決めて、ゲームは負けないというような試合をしょっちゅう見せてもらえるようになれば、日本も欧州レベルに近づいたということになるのでしょうね。ただスペインは日本が守備ラインでボールを持っているときの、前の選手のつぶしがそれほど激しくありませんでした。本番のように前の選手が死にものぐるいでガリガリとつぶしに来ていれば、スコアも違っていたかもしれません。この試合はそういう試合ではありませんでした。

――いよいよ開会式の前日の22日、南アフリカとの初戦を迎えます、25日にメキシコ、28日にフランスと対戦します。

賀川:ワールドカップでも五輪でもそうですが、大きな国際大会は何においても最初の試合がもっとも大切になります。強豪国であっても、初戦に負けて、そこから勝ち上がるというのは本当に難しいことになります。勝ち点うんぬんでなく、結果、引き分けになっても初戦で勢いづくゲームをすることが、勝ち上がるための絶対条件です。1964年の東京五輪は駒沢競技場でアルゼンチンと対戦し、32で勝ちました。デッドマール・クラマーをコーチに迎え、強化を図って臨んだオリンピックでしたが、当時のサッカーの関係者にはお祭り気分はありませんでした。サッカーは世界で最も人気があるスポーツですが、日本国内ではまだまだマイナースポーツの域を出ておらず、自国開催の五輪で結果を出さないと置いていかれるのではという悲壮感でいっぱいでした。五輪は陸上、水泳がメジャーですが、実はほとんどの競技がマイナーで、普段はあまり関心を持ってもらえません。プロが参加しているとの疑惑が持ち上がったイタリアの辞退で2試合となったファーストラウンドは初戦のアルゼンチンに32で逆転勝ち。2試合目は負けたのですが、初戦の奮闘があり、2位で準々決勝に進みました。4年後の1968年メキシコ五輪も初戦で釜本邦茂がハットトリックを決めて、ナイジェリアに勝ち、大いに自信をつかんで、銅メダルまで駆け上がりました。ワールドカップや五輪で優勝経験はまだない日本ですが、この20数年は欠かさず両大会に出場しており、経験を積んできました。初戦の重要性は森保監督も熟知しているでしょう。だから、このままいけば番狂わせの可能性があったこの試合でも、後半7人もメンバーを入れ替えて、調整を優先させました。1年延期されたことで、選手は大変だったと思いますが、このチームに関してはしっかりとした準備ができたのではないでしょうか。大会が無観客になったのは非常に残念ですが、このコロナ禍の状況下で、五輪の開催そのものについても、さまざまな声が寄せられる中、自分たちができることに向き合い、取り組み、まさにコロナと戦ってきた1年間だったと思います。今回の五輪では、サッカーに限らず、アスリートのみなさんが持つ、本当の人間の強さを見せてもらえるような予感がしています。

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2021年7月11日 U-24日本代表 対 U-24ホンジュラス代表

2021/07/13(火)

2021/7/11(月)日本/大阪市・ヨドコウ桜スタジアム

U-24日本代表 3-1(2-0) U-24ホンジュラス代表

――東京五輪初戦の南アフリカ戦の10日前。B組で出場するホンジュラスとの対戦でした。第1ラウンドA組の第2戦で対戦するメキシコを想定したゲームだったようですが、結果も内容もいい試合でしたね

賀川:これだけの技量を持ったチーム同士が戦うと、見ていて面白い試合になりますね。キックオフから6分間ぐらいは、両チームをあわせて、3つぐらいしかミスらしいものはありませんでした。その間、何十回とボールを触っているのに。それぐらいレベルが高かった。日本は無理して攻撃を仕掛けるわけでなく、全体でボールを回して、散らして、つないで、最後に誰かがノーマークになって、点を取っていました。強引にならなくても、ボールを回しているうちにスペースをつくって、危険なエリアに侵入していました。パス交換だけでなく、時には個人の技術と判断で、瞬時に相手のマークを外して、守備陣を破って一気に優位な場面を作るシーンが何度もありました。常に相手ゴールに向かっていく姿勢がありました。だから、見ていて面白かった。こういうトライを続けながら、得点も取れるようになると、期待が持てます。日本のサッカーファンは目が肥えているのですが、そういったみなさんも満足できる内容だったのではないでしょうか。森保監督としても、チームとしてもいい調整ができているようです。ホンジュラスも技術の高い選手が揃っていました。本番が楽しみですね。

――先制点はセットプレーから。田中がフェイクをした後、久保が左足でやや緩め、大きく弧を描いて落ちるボールをDFラインとGKの間にうまく入れ、吉田が合わせました

賀川:セットプレーということはキッカーがフリーになるので、思ったところに蹴ることができます。それに対して、チームメートも想定したところに入っていけます。田中が蹴るフリをしたのでホンジュラスの守備陣がいったん前に出たところ、後ろから走り込んだ吉田に久保がピタリと合わせました。吉田は右足のアウトサイドで流し込むだけでしたね。CKではショートコーナーを多用していました。あらかじめ決めていたのではなく、相手の守備陣形が整わないと判断して、やっていたように感じました。五輪では大柄な相手選手と対戦するので、いろんなバリエーションを準備しているのでしょう。

――2点目は前半40分、堂安が利き足とは逆の右足で追加点

 

賀川:日本の攻撃が弾き返されて、相手ボールになりそうになったのですが、冨安が激しくプレッシャーを掛けて、すぐに奪い返しました。相手が前がかりになっている局面で攻守が入れ替わると、攻撃側にとっては大きなチャンスになります。冨安は久保に預けたあと、さらに左サイドを駆け上がっていきました。オーバーラップする選手に対するマーカーはいないので、なかなか捕まえられません。久保から再びボールを受けた冨安が左サイドで右足に持ちかえて低いクロスを入れ、三好がスルー、中央でゴールを背にして受けた林が、前を向いて準備万端、文句無しでノーマークだった堂安の前に落としました。丁寧なラストパスを堂安は落ち着いて、GKの逆を狙ってゴール左へ。ダイレクトプレーの連続にGKは対応できませんでしたね。遠藤も田中も中盤で思い切りよく激しくチャージして、相手ボールを奪い返していたので、そこからチャンスをつくるシーンがありました。森保監督が目指すスタイルのひとつなのでしょう。

――堂安は背番号10を背負っています。同じ左利きの久保も注目されています。やはり意識しているのでしょうか

賀川:どうなんでしょうね。久保は同じ左利きですが、堂安の方が年上ですし。後半40分の3点目もうまく、左からのクロスに飛び出し、GKの前で少しだけ触ってコースを変えて、ゴールに流し込みました。チームとしては、つないで、つないで、走って、走って、そして最後に一番いい場面を持っていくのが堂安なのかもしれません。2点目も落ち着いて、サイドキックで狙ったところに蹴っていました。そういう選手はチームに必要です。この日のスタメンには堂安、久保、三好、中山と左利きの選手が多かった。得点を取るには、サイド攻撃が重要になりますし、左利きで正確なキックを蹴ることができる選手が複数いるというのは、日本にとって大きな強みになりますね。

 

――仕上がり具合はどうですか

賀川:守備陣はオーバーエイジ組が入って安定していますし、コンディションもよさそう。もう少し緊張感があった方がいいかとも思いますが、今の選手は大舞台慣れしていますから、心配していません。ましてや東京五輪はホームですから、移動も時差もありません。17日のスペイン戦も楽しみです。

――男子の五輪代表は大阪で合宿を行い、最終調整しています

賀川:ヨドコウ桜スタジアムは、長居スタジアムのとなりにあり、改修前は人工芝でアメリカンフットボールやホッケーが行われていた球技場でした。トラックがないので、スタンドが近く、臨場感があります。長居スタジアムは2002年日韓W杯など、数々の国際試合を行ってきた立派な器なのですが、陸上競技場なのでピッチとスタンドの間に距離があります。ヨドコウ桜スタジアムを新しくホームスタジアムにしたセレッソ大阪はいいところに目をつけましたね。1964年の東京五輪では、FIFA(国際サッカー連盟)と日本サッカー協会(JFA)が協力し、準々決勝で敗退したチームを大阪、京都に招く、5〜8位決定戦が開催されました。五輪の熱気を東京以外の都市にも広げ、競技の普及につなげるために関西サッカー連盟の関係者が尽力して実現した大会で、「大阪トーナメント」と呼ばれました。その会場のひとつが、長居陸上競技場でした。ユーゴ代表にはのちに日本代表の監督になるイビチャ・オシムがいて、FWで出場した日本戦で2得点しました。そういった経緯を考えると、長い年月を経ても、前回から今回の東京五輪へ、受け継がれているものがあるように感じます。

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2021年6月11日 日本代表 対 セルビア代表

2021/06/12(土)

2021/6/11(金)日本/兵庫県神戸市・ノエビアスタジアム
日本代表 1-0(0-0) セルビア代表

――2年ぶりに開催されたキリンチャレンジカップでした。セルビアはFIFAランク25位で28位の日本よりも上。最近のA代表としては、久々に力が拮抗したゲームとなりました

賀川:セルビアという国は旧ユーゴスラビア時代から、技術に秀でた選手が多く、個人でも組織でもボールをキープできるチームでした。今回来日したチームは若手主体のようでしたが、技術も高く、それでいて大柄な選手もいて、フィジカルも強い。一昔前ならば、このクラスの相手には優位に試合を進められていたものですが、この試合は日本がボールをしっかりと保持して、ゲームを支配する時間が多かった。ホームという利点はありますが、欧州の人が日本の戦いぶりをみれば、「ほほう」と思ったでしょうね。セルビア相手にこれだけアジアのチームがボールを持てるということは、それだけ日本のレベルが上がったということ。日本がW杯で8強、4強を目指すということになれば、チームとしてここからどうやって攻めて、点を取るかという、手順が必要になってきます。

――前半はスコアレスでした

賀川:日本が攻撃するエリアが狭かったように感じました。両サイドを目いっぱい使って、幅を広げないと、ゴール前に入っていくスペースをつくることができません。最後にノーマークになって入っていく場所がなくなります。セルビアのように守りが堅いチームが相手ならなおさらです。これはどこと対戦しても同じですが。ピッチを広く使って攻めれば、守備側の選手もゴール前から引っ張り出されるので、侵入するスペースが生まれやすくなります。

――先制点は後半3分、鎌田の右CKからでした

賀川:ニアに走り込んだ谷口がうまく頭で方向を変え、ファーポストにいた伊東が走りこんで右足のインサイドで押し込みました。谷口が方向を変えたところで勝負ありの、きれいなゴールシーンでした。セットプレーは置いてあるボールを蹴るわけで、蹴り終わるまでは、相手にマークされません。日本のように個人技が高いチームは、正確に狙ったところにボールを蹴ることができるわけですから、セットプレーそのものが大きなチャンスになります。自分たちの計算通りにできるわけですから。セルビアのように背の高い選手が多い相手に対して、よく練られ、非常に有効なアイデアでした。ニアに2人いくとか、いろんなやり方があるでしょうね。

――そのまま1-0でした

得点がもっと多く入れば、テレビでみていた人は楽しめたでしょうが、1-0でも、非常に面白い試合でしたね。欧州勢と試合をするのは久しぶりですし、このレベルの相手と試合をすると、このような展開になります。お互いの守備もしっかりとしていました。日本はボールを保持しながら、なかなか前半は決定機を作れなくて、後半になるとダイレクトパスをつないで相手の守備ラインの裏に抜け出すチャンスを狙ったり、あえて相手にボールを持たせて、ショートカウンターを狙ったり、得点を生み出すために、いろんな策を講じていました。親善試合であっても、セルビアは勝負にこだわって、粘り強く戦っていました。最後まで気合が入っていました。得点はたくさん入りませんでしたが、1点差ゲームというのは、緊張感が最後まで保たれて、それはそれで見ごたえがあるものです。

――セルビアの監督は名古屋でプレーし、監督としても名古屋をJリーグ制覇に導いたドラガン・ストイコビッチでした

賀川:昔から好きな選手でした。顔つきは変わらず精悍なままでしたね。彼が19歳でユーゴスラビア代表として出場した1984年の欧州選手権(フランス)で初めてみました。欧州の記者にはすでに情報が入っていたようで、ストイコビッチが途中出場すると、何やら小声で語り合っていたのを覚えています。ドリブルもボールキープもパスもうまい。プレーは知的でエレガントですが、すぐ怒る(笑)。チャンスを創造し、最後にゴール前に現れて、攻撃を完了させるフィニッシャーでもありました。本当に負けず嫌いで魅力的な選手。名古屋の試合もたくさん見に行きました。彼のように本来、高い報酬を得て欧州でプレーを続けることができた選手が、日本で長くプレーしてくれたおかげで、ここ数年、日本では顔なじみの監督や指導者が欧州や南米で増えてきました。今回、コロナ禍の中、セルビアが来日してくれたのも、日本のことをよく知っているストイコビッチ監督の存在があってのことでしょう。以前のように代表チームの往来が簡単でなくなり、日本代表は最近強い相手と試合をする機会がなかったので、本当にありがたいことです。親日家のサッカー関係者が世界中に増えれば、日本サッカーの発展に間違いなくつながるでしょうし、今回のような楽しみも増えていくでしょうね。セルビアは残念ながら、まもなく開幕する欧州選手権の出場は予選で敗退して逃したそうですが、前半反転して左足で惜しいシュートを放った9番(FWデヤン・ヨベリッチ)のような楽しみな若手も多くいました。代々技術も高く、手を変え、品を変え、いろんなことができる国です。現役時代のピクシーのように、ゴール前で変化をつけたり、相手の裏にズバッと抜けたり、決定的な仕事ができる選手が出てくれば、楽しみです。これから本格化するW杯の欧州予選で、どんなチームに仕上げてくるのか、興味深いです。W杯でピクシーが率いるセルビア代表の戦いぶりを見るのが、今から楽しみです。

 

 

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2019年12月28日 U-22日本代表 対 U-22ジャマイカ代表

2019/12/31(火)

2019/12/28(土)日本/長崎県・トランスコスモススタジアム長崎
U-22日本代表 9-0(5-0) U-22ジャマイカ代表

――お誕生日おめでとうございます。この試合の翌日の12月29日は賀川さんの95歳の誕生日でした

賀川:ありがとうございます。忘年会を兼ねて神戸FCの友人や古いサッカー仲間に集まってもらい、お祝いをしてもらいました。この年齢までサッカーに関わることができて、本当にありがたいことです。

――若い選手が奮起して、最近では珍しいゴールラッシュでした

賀川:選手の顔にシワが全然ありませんね(笑)代表で多くのゴールが決まる試合を観るのは、お客さんにとっても楽しいものです。やっている選手も自信をつけることができます。試合の最中に思い切ったプレーをして、成功すれば、試合中に上達することができます。U-‐22日本代表は前回のコロンビアとの試合で納得のいかない試合をしていました。アジア選手権(タイ)のメンバー発表を翌日に控えていたこともあり、選手はそれぞれ、この試合に懸ける強い思いがあったのでしょう。個人的な競り合いでも、グループでのボールキープでも日本の方が上でした。すべての選手がアジア選手権にいくわけではありませんが、大会に向けて調子を上げていく上で、いいゲームになりました。

――中山の直接FKが前半6分に決まり、ゴールラッシュの幕が上がりました

賀川:FKはチームにとって大事な武器ですから。こういう試合で決めると大きな自信になります。スピードにしてもコースにしても素晴らしいゴールでした。前半から前の選手の動きに対して、中盤からきっちりとボールが出ていました。前の選手もしっかりと競り勝っていました。FW前田大然が試合開始から前線で走り回って、プレッシャーをかけたこともあり、主導権を握ることができました。彼は足も速いし、ボールキープを見ても体が強い。得点は9点ですか。前半に5点も取ると、後半は選手の気持ちが緩むときもありますが、そういうこともなく、同じように攻めました。ひとつひとつの競り合いも取って、終始攻撃的でした。森保監督の性格やチームづくりに対する考え方が表れていましたね。どんな相手に対しても、全力でやるということが徹底されていました。攻撃はサイドに開いて、逆サイドにスペースをつくるということを意識しているようでした。どうやって得点を取るかということを選手が自然とやっているように感じました。選手は動く量も質も落とさずプレーしたのがよかったのではないでしょうか。今回チャンスをもらった選手がこれだけ結果を残すと選手層が厚くなりますね。五輪はトップの11人、ベストメンバーの11人だけで戦うわけではありませんから、実りの多い試合になりました。相手がもうすこし歯ごたえのあるチームでしたら、なおよかったでしょうが。

――いよいよ2020年東京五輪イヤーがやってきます

賀川:東京五輪はホームですから、大きな後押しをもらえますが、逆に選手が硬くなることもあります。選手の力を上げることは当然ですが、いろんな交代の策を持っておくことが大切になるでしょう。1964年の東京五輪はサッカーの取材にいきました。閉会式の原稿も書きました。記者席に巨人の長嶋茂雄と王貞治を連れて観戦記を書かせていた新聞社もありましたね。私は当時サンケイスポーツでデスクをしていましたが、会社を抜け出して、会場の駒沢陸上競技場にいきました。顔なじみの記者から「賀川さん、えらいもんですな。五輪でデスクしないといけないのに、会社を抜け出して自分の好きな種目だけ見に来るなんて、大記者やないとできませんよ」と冷やかされました。「サッカーのええ試合ぐらい見させてもらわないと、何のために新聞記者やってるか、分からへんやないか」とこたえましたけどね(笑)。会場は日程の都合で、国立競技場ではありませんでした。組織委は当時のサッカー人気ではお客さんが満杯にならないと思ったのかもしれません。駒沢は満員でした。長沼健さんが監督で、初戦にアルゼンチンに3-2で勝ちしました。逆転勝ちでした。ノックアウトステージには進出できませんでしたが、あの逆転勝ちがあったので、翌年始まった日本サッカーリーグの第1戦に2400人ぐらいのお客さんが入り、俊さん(故岡野俊一郎氏=元日本サッカー協会会長)が「こんなにたくさんのお客さんが来てくれた」と喜んでいました。サッカー界の最初の盛り上がりをつくったのは、1964年の東京五輪で、1968年のメキシコ五輪の銅メダルにつながったわけです。当時を思えば、東京五輪が終わった後、あらゆるスポーツが盛んになったわけではありません。野球人気一本のところに迫っていこうという存在になったのがサッカーでした。2020年の東京五輪でも、日本のサッカーがもう一段上の厚みをつけるために、代表チームには頑張ってもらいたいですね。

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2019年11月19日 日本代表 対 ベネズエラ代表

2019/11/21(木)

2019/11/19(火)日本/大阪府・パナソニックスタジアム吹田
日本代表 1-4(0-4) ベネズエラ代表

――昨年11月16日の対戦では1-1のドローでしたが、今回は今風に言えばボコられた感じでしょうか。特に前半は一方的にやられました。前半で4失点は1954年のアジア大会以来、65年ぶりだそうです。当時の監督は竹腰重丸さんでした

賀川:65年ぶりですか。ホームでここまでやられるのは最近の日本代表ではありませんね。ベネズエラというのは南米でいえば、中堅クラスですが、ボールを処理するテクニックが上手でした。ボールを止めて次の動作に移るのが、日本よりちょっとだけ早いわけですよ。試合が始まり攻め合っているうちに、そのちょっとの差が広がってきた。ベネズエラはこれはいけると踏んで、どんどん攻めてきました。日本はこれではアカンと感じただろうし、そう感じたならば、しっかり引いて人数をかけて守るとか、試合をやりながら何か手立てを考えなければいけませんでした。相手と同じように広いところに攻めていっていったので、ボールを取られた瞬間から、前に大きなスペースがあるので、相手がずいぶん有利になりました。ホームですから初めから守るつもりでやるわけにはいかないでしょうが、試合を進めながら、自分たちと相手との力の差がちょっとずつ分かってきたでしょう。その差を埋めるにはいつも言っているように、相手より余計に走るしかありません。それを試合の初めからできなかったら、しんどい展開になります。日本のサッカーは進歩していますが、南米も進歩しているわけです。進歩している相手に勝つためには、日本は運動量で勝ることです。しんどいことですが、それをやることで、戦いの土俵に上がることができます。そのやり方で勝つ味を覚えると、選手の気持ちも変わってきます。相手が日本もよくやるじゃないかと思えば、こちらは気分的に楽になります。相手に、日本はたいしたことないと思われると楽に試合を進められるわけで。そこがスポーツの面白いところです。

――W杯予選では吉田、長友、南野らが抜けて、先発は8人入れ替わりました。前線には浅野、鈴木武蔵ら守備ラインには植田ら、試したい選手が並んでいました

賀川:W杯予選でいきなり新しい選手を試すのは難しいでしょうから、キリンチャレンジはいつも貴重な機会になります。鈴木武蔵はJリーグで結果を出していますが、硬さがあったのかもしれません。

――後半、森保監督は今季神戸で頑張っている古橋、このスタジアムが本拠地の三浦(G大阪)を投入しました

賀川:古橋が入って後半開始すぐにいいカウンターが生まれました。初代表らしく意欲的にゴールを狙っていきました。裏への飛び出しとか、積極的で、ムードを変える存在になりました。中島とうまく連係して、チャンスが多く生まれるキッカケになりました。日本は2列目の選手はタレントが豊富ですね。Jリーグでも目を引く選手が多いです。

――代表復帰の山口が一矢を報いました

賀川:後半18分、左サイドでの起点から、永井がグラウンダーの速いパスを逆サイドに攻め上がった山口に通し、ダイレクトで放ったシュートが相手選手の足に当たって入りました。山口はミドルシュートが上手ですね。後半から投入された永井が足の速さを生かして、前線から相手ボールを目いっぱい追いかけ回したおかげで、中盤でボールを奪い返すことができるようになりました。日本はやっぱり長い距離を走らないといけません。後半の内容を試合開始からできていれば、もっと拮抗した試合になっていたかもしれません。経験のある選手が抜けているからこそ、立ち上がりからフルスロットルでいかないとこのレベルの試合では簡単にはいきません。

――前半が終わったときにサポーターからブーイングが起きましたが、後半は見せ場が何度かありました。

賀川:かなりの回数、攻め込みましたが、結局シュートまでいかないことも多かった。シュートを打たないと、ゴールに入らないわけですよ。こういう試合もいい経験です。何事も教訓にして、それぞれのクラブに戻って、日々の練習で個人個人がレベルアップをしてもらいたいですね。

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2019年11月17日 U-22日本代表 対 U-22コロンビア代表

2019/11/20(水)

2019/11/17(日)日本/広島県・エディオンスタジアム広島
U-22日本代表 0-2(0-0) U-22コロンビア代表

――U-22日本代表は先月アウェーでU-22ブラジル代表に勝ちました。フル代表に定着している堂安と久保が加わったことで、サポーターの期待は大きかったようですね

賀川:いよいよ来年の東京五輪に向けて臨戦態勢に入りました。このスタジアムは愛称「広島ビッグアーチ」の名の通り、山の中にある大きな会場ですが、お客さんはほぼ満員。期待の高さが表れていましたが、チームとしては、課題が多かったようです。

――前半はスコアレス。堂安、久保が合流して日が浅く、まだまだチームにフィットしていないようにも見えました

賀川:攻撃の形をつくろうとしていましたが、相手のプレッシャーが強くて、中盤や最終ラインの選手が孤立して、ボールを失ったり、つなげそうな場面で蹴ってしまったり、どこか落ち着かない展開でした。日本の場合は、サイドに重点を置くなら、どちらかのサイドに人数を集めてボールをキープするとか、試合中に自分たちのプラスになるところをみつけて、攻撃の形をつくれればよかったのですが、まだチームとしての形ができあがっていない部分がありました。チームの中心になる選手がいるはずなんですけれど、それがまだはっきりしなくて、機能していない感じでした。だから見ていても、チームとしてボールをどこに運ぶか、よく分からなかった。日本の場合は伝統的にフルバックも攻撃に参加して、サイドからある程度の時間、ボールを持って攻めるという形にしないと、いい攻撃の形はつくれません。早く中央にボールを回してという形では、なかなかうまくいかない。中央に、早い、強い、うまい選手がいれば、そのやり方でもいいし、いるときは強いのですが、センターフォワードも前半と後半で変わりました。実際にやってみて、この選手を中心にやるんやというところまでいってないですよね。ただ日本は五輪開催国なので、予選が免除されます。予選敗退の可能性がないので、じっくりとチームをつくることができます。コンビネーションは練習だけではなかなかできあがりません。実戦を重ねてお互いの特長が分かってきて、熟成されるものです。

――コロンビアは出足が早く、日本は中盤でボールを失ったり、ミスパスもあったりして、苦しい時間帯が長かった

賀川:コロンビアには昔はバルデラマ、最近ではハメス・ロドリゲスらズバ抜けた選手がいましたが、ブラジルのように毎年スーパースターが出るような国ではありません。南米の上位クラスと対戦する場合は、日本特有の動きの量を増やして、人数をかけて相手のボールを取らないといけないのに、この日は動きの量が少なかった。フィジカルが強い欧州、個人のうまさやずるさがある南米に勝とうと思ったら、チーム全体で動きの量を増やさないといけません。相手よりも余計に1・3倍、いや1・5倍ぐらい動くつもりでないと勝てないわけですよ。

――後半に2失点。修正できませんでした

賀川:後半2分に相手が先制。相手が普通に左からクロスをあげて、こぼれたところを詰める、難しいことをやられているわけじゃないのに、失点してしまった。ひとつひとつのプレーを相手に先にやられているから、こうなってしまいます。そうならないためには人数をかけて、相手がボールを回しはじめたり、左右にボールを振られる前に止めてしまわないといけません。1人ずつでやっていては止められないので、どこかで1人半、余計に動かないといけない。日本のレベルは確かに上がりましたが、自分たちがうまくなったと思わないで、心の奥では自分たちは下手なんやと思ってやらんといけませんね。攻撃でも、いけると思ったらバックでもどんどん上がっていくとか、危ないと持ったらフォワードでもゴール前まで戻ってくるとか、長い距離を走る場面が少なかった。長い距離を走ることで数的有利が生まれ、おのずと道がひらけてくるわけです。日本はなんやかんやいうても、相手よりも走りまわる、そのやり方で今まで戦ってきたわけですから。それは何十年前から決まっているわけです。その原則を忘れたら、強い日本はできません。個人的な技術が上がっているといっても、そろってズバ抜けてうまくなっているわけではないですから。実際、この試合でコロンビアは少ない人数の局面でも余裕たっぷりでプレーしていました。

――堂安、久保はいかがでした?

賀川;堂安は相手のボールを取りにいったり、よくやっていました。球際も強い。A代表の中でもうまい方なのだから、相手の並の選手よりも、ひとつ上に出ないといけない存在です。それぐらいの気構えでやってほしいですね。中心選手ですから、自分の中でこれぐらい動いたからエエかと思ってはいけません。もっともっと動いてボールに絡めば、もっと展開が開けてきますよ。堂安が21歳で久保が18歳ですか。すでに能力が高く、欧州のトップリーグでプレーしている、いうなれば、このアンダーエイジ2人を森保監督がどう使いこなすか。オーバーエイジの起用も重要ですが、こちらも注目していきたいですね。森保監督はキルギスから帰ってきて広島で五輪世代を指揮し、終わったら今度はすぐに大阪に移動して、再びA代表を指揮ですか。このわずかな期間に何が足らなくて、今後何を植え付けていくか。A代表と五輪代表の兼務は本当に大変ですが、がんばってほしいです。

――新しい日本代表のユニホームはいかがですか

賀川:上下ともに青ですね。今回のユニホームはちょっとくすんだ感じカラーでしょうか。サポーターの評判はどうなんでしょう。1989年から91年まで、日の丸の赤にした時期もありましたが、それ以降はブルーに統一されていました。ユニホームというのは派手なものが多いですが、どちらかというと地味な感じでしょうか。サポーターは東京五輪に向けて、買い直さないといけませんね。

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2019年9月5日 日本代表 対 パラグアイ代表

2019/09/06(金)

2019/9/5(木)日本/茨城県・カシマサッカースタジアム
日本代表 2-0(2-0) パラグアイ代表

――パラグアイといえば、2010年南アフリカW杯のノックアウトステージ1回戦で対戦しPK戦の末、敗れた相手です。守備が堅くて、一筋縄でいかない相手という印象でしたが

賀川:南米といえば、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイのいわゆる御三家がAランクで、パラグアイは列強を追うBランク相当のチームになりますね。決してCクラスではない。一昔前の南米のチームは、テクニックもあって、体も強い。サッカーをよく知っていてずる賢いプレーもできるので、簡単な相手ではありませんでした。しかし、この日の試合内容が証明するように、日本の一人一人の技術が上がり、欧州でたくさんの選手がプレーするようになったので、ホームで試合をするとなれば、南米勢が相手であっても、これだけ押し込む試合ができるようになりました。日本サッカーの進歩を再確認できた試合でした。


――日本はスタメン11人中10人がいわゆる海外組でした

賀川:日本も欧州でプレーしている選手が多いので、長距離の飛行機移動で帰国して、すぐに試合となります。ホームといっても、相手同様に時差などの体力的な負担があるはずです。それを差し引いても、海外組、特に大迫、中島、南野、堂安ら前線の選手の動きがよかった。欧州のクラブは開幕してすぐ。日本はこの夏、猛暑で大変でしたが、欧州のクラブはアルプス山脈の麓の涼しい高地などでキャンプを張ることが多い。それぞれの選手が、いい練習、調整ができたのでしょう。動きの量を比べてもパラグアイと遜色なかった。昔は中堅国であっても、相手が南米勢となれば、一目置くようなところがありましたが、この試合を見る限り、まったく引けをとらなかったですね。

――前半23分の先制点は長友のクロスから大迫が決めました

賀川:相手を引きつけてからの中島-堂安のダイレクトのパス交換で、マークの選手をうまく、一気に2人かわすことができました。その結果、長友が左サイドでフリーになった。大事に入れたクロスは相手に当たってしまいましたが、幸運にも大迫のところに流れてきた。相手に当たって方向が急に変わったボールに合わせるシュートは難しいものですが、大迫は左足で合わせました。さすが技術力の高いストライカーですね。最初の決定機を決めることができたので、主導権を握ることができました。

――前半30分の2点目は中島が右サイドの酒井に展開し、ダイレクトで中央に折り返して、フリーの南野が決めました

賀川:中央でドリブルをしていた中島が、右サイドをフリーで駆け上がった酒井の動きを見逃しませんでした。いくつかの選択肢が考えられたシーンでしたが、わずかに空いたペナルティーエリア内のスペースを斜めに使いました。サイドに使って左右に揺さぶって崩す、攻撃で最も効果的なプレーを選択しました。南野も落ち着いて決めましたね。あれだけフリーだとかえって難しいものですが、サイドキックで確実に押し込みました。

――短いダイレクトパスの交換が目立ちました。前半24分、少々強引なカウンターから、堂安がシュートまでもっていったシーンが象徴的でした

賀川:その場面に限らず、短いダイレクトパスを多用していた印象がありますね。森保監督の指示なのか、日本の選手の技術が上がっているので、ボールを持っても1対1でそう簡単に負けません。技術も判断力も上がっているので、南米勢を相手にしてもこういったプレーができるようになったのでしょう。

――前半で2-0となったので、森保監督は後半から原口、久保、上田の3人を入れました。注目の18歳久保はいかがでしたか。堂安に代わっての登場でした

賀川:18歳でA代表のメンバーに入ってもまったく見劣りせず、堂々とプレーできるところに、若い選手のレベルアップを十分感じ取れました。ずば抜けてうまい、ああいう選手が、南米の代表チームとの試合で臆せずやっていた。この夏、レアル・マドリードで毎日練習していたのだから、当然かもしれませんが。シュートに対しても意欲的でした。もっともっと図々しくなってもいいと感じました。久保ここにあり、こんなプレーできる、点も取れるんだよというところを日本中に売り込んでほしい。それぐらいのレベルの選手。もっともっと厚かましくていいですよ(笑)

――後半右サイドバックに入った冨安もいいプレーをしていました

賀川:彼は久保が意図するプレーについていっているように見えました。センターバックでのプレーしか見たことがなかったですが、移籍したボローニャではサイドバックをやっているそうですね。攻め上がりも効果的で、久保の時折見せる、周囲が予想できないプレーにも反応していました。この選手のいわゆるのびしろの大きさを感じました。彼と組み合わせることで面白いコンビネーションが生まれそうですね。お互いの選手の気の合い方というのは大切です。

――しかし後半はノーゴール

賀川:後半はボールを相手から奪って攻勢に出たときに、きちんとした攻めが少なかった。前半はできていた。それぞれ自分をアピールしたいという気持ちは分かるが、チャンスを作るという姿勢をみせてもらいたかったですね。

――前線は1トップ大迫、堂安、南野、中島は決まりでしょうか。そこに久保は絡んでくるでしょうか

賀川:久保がA代表に入っても遜色ないプレー-ができることは、森保監督はもう分かっているでしょう。しかし、積み上げてきた大迫、堂安、南野、中島のコンビネーションによる攻撃力も捨てがたい。難しい選択を強いられるでしょうが、これはうれしい悩みというものです。同じ右サイドの堂安が久保に刺激を受けているのは明らか。それよりも大迫がけがや出場停止で出られないときの備えが必要でしょうね。中央でボールを収めることができる大迫と、スピード自慢の永井とはタイプがまったく違い、戦い方が変わります。中盤は人材豊富ですが、センターフォワードはいつの時代も日本の課題になります。

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2019年6月9日 日本代表 対 エルサルバドル代表

2019/06/11(火)

2019/6/9(日)日本/宮城県・ひとめぼれスタジアム宮城
日本代表 2-0(2-0) エルサルバドル代表

――久保建英の話はのちほど、たっぷりお伺いします。2戦続けて3バックで臨み、この試合では追加招集のFW永井謙佑が2ゴールを挙げました

賀川:永井はとても脚が速い選手で、2012年のロンドン五輪代表でしたね。このクラスの選手は本当にレベルが上がっています。自分たちの年齢層の日本代表のサッカーというのを彼らなりに持っているような印象を受けます。これまでの代表からメンバーが入れ替わっても、自分たちの特長、個人技に合わせたやり方を周囲が理解しています。従来の日本代表のサッカーの中に彼らなりの力に合わせたプレーがありました。永井のスピードもそのひとつ。だから見ていて安定感がありました。新しい日本代表だから、コンビネーションプレーがどうこうというのでなく、彼らの世代なりの呼吸というのが自然に出ている感じがしますね。

――前半19分の永井のゴールは冨安からのフィードを受けたカウンターでした

賀川:1点目も前半41分の2点目もサイドから縦に、ペナルティーエリアの根っこの深いところまで入り込んで、そこから中に入っての決定機でした。定石的ではあるけれども、定石的なことが新しいチームになって、顔ぶれが変わっても、できている。これまでの代表のサッカーのやり方に対する積み上げを感じますね。安心して見ていました。

――代表のFWはロシアW杯で活躍した大迫が抜け出ている感じで、次の名前が出てこないような状況でした。追加招集で得たチャンスを生かした永井は期待できますね

賀川:相手が遅すぎるのか、永井が速すぎるのか、とにかく自分の特長を出していました。あれだけの走力があって、国際試合でも一歩一歩、常に優位に立てれば、自信になるでしょう。単に速いだけでなく、トップスピードでボールを受けるときでも、あまりミスをしません。個人的な技術力も上がっているのでしょう。サッカーはこういうときは、やっている選手はおもしろいものです。見ている我々もそうです。相手は大変ですが。スピードがあるので、代表では途中出場の切り札タイプに分類されそうですが、2ゴールと結果を出したわけですし、スタメンを狙う気概でやってほしいですね。もちろん本人もそのつもりでしょう。

――FC東京の先輩、永井が前半で2点を奪ったので、森保監督は18歳久保建英を出しやすくなったのでは。後半22分からの登場でした

賀川:もっと久保を見たかったと思った人が多かったかもしれませんね。森保監督なりによくよく考えて、うまくA代表デビューさせましたね。

――94歳からみた18歳はいかがでしたか

賀川:落ち着いていますね。後半28分、右サイドでボールを受けた最初のプレーでドリブルをしかけて、左に持ち替えて、シュートまでいきました。シュートもインステップで蹴っていました。あの角度で低いボールならば、だいたいGKの守備範囲にいくので、引っかけ気味に、もう少しボールの下を蹴って、GKから遠いサイドのゴールの上を狙うような余裕があれば、たいしたものでしたが。そこまでできるかと思っていましたが、そこまで求めるのはぜいたくで、欲張りというものでしょうね。ファーストタッチからとにかく落ち着いたプレーの連続でした。ソツがない。入ってから20数分、ほとんどミスがなかった。うまいです。

――出てからしばらく久保にボールが集まってきませんでしたが、そのシュートを打ってから久保を経由しての攻撃が増えました

賀川:代表でレギュラーを争う同じような立場の選手は競争しているわけですから、自分がシュートを打って点を取ってアピールしようと思っているでしょう。久保のことなんか考えていないでしょう。もうひとつ上の世代で実績のある大迫らは久保にボールを渡して、どんなプレーをするのか見たいというような考えがあったかもしれませんね。

――長くサッカーをみておられます。久保のような若い選手で印象に残っている事例は

賀川:釜本邦茂の10代のときと比べてどうや…という話になりますが、日本のレベル全体が上がっているので、単純に比較しにくいですね。釜本の場合は身体能力がずば抜けていた。体が強くて、ヘディングも負けない。グラウンドにドーンという存在感があった。天性のボールをとらえる力はありましたが、技術的にはこれからの選手だった。この素材をサッカー界としてどう伸ばしていくか、という存在でした。久保はサイズ的には普通の大きさですが、技術面で今のA代表の連中と比較すると、ボール扱いならば、上回るぐらいうまい。その上落ち着いていて、判断もよくて、常に周りを見ている。若いのに守備力もそこそこあって、相手のボールを奪い返しにいく。見ていて楽しいですね。と言ってもまだ18歳ですよ。23、24歳の代表レギュラーの中に入って普通にプレーしているわけですから。並の選手ならあそこに入っただけで、ボールを止め損なったり、ミスの1つ2つをやってもおかしくないです。ブラジルのネイマールも2014年のブラジルW杯のとき、チームで最年少でしたが、彼が引っ張っていました。どこの国にもそういう選手がいましたが、これまで日本にはいませんでした。久保のおかげで日本のサッカーの楽しみが広がりました。長生きするものですね。森保監督はがらりとメンバーが替わる南米選手権では中心選手として起用するのでしょうか。本気の南米勢を相手にどんなプレーを見せてくれるのでしょうか。楽しみですね。

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2019年6月5日 日本代表 対 トリニダード・トバゴ代表

2019/06/06(木)

2019/6/5(水)日本/愛知県豊田市・豊田スタジアム
日本代表 0-0(0-0) トリニダード・トバゴ代表

――お住まいがある神戸で開催され、久々に取材に出かけられた3月26日のボリビア戦以来の代表戦でした

賀川:ボリビア戦の試合後の記者会見で、森保監督から花束をいただきました。しばらく部屋に飾っていました。2週間ぐらい咲いていたのかな。上等な花だったんでしょうね(笑)

――0-0でした。サッカーは得点がなかなか入らないスポーツなので、代表戦でもこういう結果になることがあります

賀川:ひとつひとつのプレーをみれば、得点が入りそうなムードはありましたが、90分を通して振り返ってみると、相手のペナルティエリア奥深くまで入り込んでのチャンスというのは、少なかったですね。シュートシーンはありましたが、近くに相手がいることが多かった。相手の前でずっとボールを回していましたが、シュートチャンスを作る前のところで、相手の逆を取るプレーなどをしていないから、ボールはずっとつながっているけど、最後のシュートのところでも相手がちゃんといました。入らないわけです。日本は、新しいチームになっても、誰が入っても、ボールを回してつないで…というやり方はある程度できますが、最後のところという課題は常にありますね。これだけ押し込んでボールをキープして攻め込んでいるわけには、スリリングな場面が少なかった。相手のゴール前にパスが通るとか、誰が見てもチャンスというような、思わず腰を浮かすようなチャンスのシーンが、案外少なかった。攻めているときに全部相手をパスで交わしながら攻めているわけですが、誰かがそこで個人の力でこじあけるという気構えを見せない限りは、相手のDFに変化は起きないわけですよ。パスサッカーのうまさは見せたけれども、それだけではなかなか点が入りません。

――トリニダード・トバゴはいかがでしたか?

賀川:うまかったですよ。これだけ日本に走られても1人1人がついてきているわけですから。終盤に脚をつる選手が多く出たのも、それだけがんばって走っていたからで、決して弱いチームではなかった。向こうのCK、FKは3、4本ちゃんとヘディングで合わせていました。日本が圧倒的に攻めてチャンスの数も多かったけれど、ちゃんとシュートまでいったかと考えれば、スコア通り五分五分といえる試合でしたね。それでも相手はアウェイのチームなので、見ている側とすれば、日本はもうひとつ崩してもらいたかった。もうひとつ崩す場合には、どこかで無理しないといけない、個人的に逆を取るとか、1対1で勝負するとか、相手の意表をつくプレーが2つぐらい続くと最終的なマークがずれるわけです。味方もえーっと思うようなプレーをしないと膠着状態をやぶることはできません。パスを回しているうちに最後誰かがフリーになるなんてうまいことはなかなか起きないわけですよ。サッカーのおもしろいところとはそういうところです。

――森保監督になって初めて3バックを試しました

賀川:3バックというのは相手が2トップできたときに有効で、2人のFWを2人のDFでマークした上に1人守るDFが余るシステムで、どちらかといえば、しっかり守った上で両サイドから攻めることに重きを置いたシステムです。今の代表クラスの選手はクラブで3バックも4バックもやっているし、戦術理解度も高い。3バックだからどうだということはないでしょう。代表に帰ってきた昌子、売り出し中の冨安、Jリーグ代表の畠中は1対1でしっかりと守っていて、負けることはほとんどなかった。ディフェンスというものは、1対1で相手をつぶせばいいわけですから。日本の中盤でミスがなかったのでやられたというようなカウンターを食らうこともありませんでした。

――堂安は不完全燃焼のようでした

賀川:堂安ら森保監督が使っている若手はチームに溶け込んでいますね。堂安はもう2年ぐらい代表でプレーしているような雰囲気があります。後半14分、大迫からいいボールをペナルティエリア内でもらいましたが、タイミングが合わず、シュートまでいけませんでした。技術がある選手なのでどんどんチャレンジしてくれたらいいと思います。個人的な強さやボールの持ち方ひとつで、どこかに穴をあけられる選手だと思います。

――前半は中島の積極的なシュートが目立ちました

賀川:チームで一番たくさんシュートを打つ選手ですが、シュート力というところで、もう少しレベルアップしてほしいと感じました。彼の体の強さもあるんでしょうが、あれぐらい試合中にシュートをチャンスを作れる選手ですから、今の代表にとって、彼のシュートがとても大切な武器になる。だからシュート自体をもっと練習する必要が出てくるでしょうね。彼に限らず、日本代表クラスの選手でも、ペナルティエリアの外から蹴ったシュートが、ゴールに近づいてやや失速することがある。ゴールに近づいてから、さらに伸びるとか、落ちるとか、変化球になったりしないと、日本人の普通の力で蹴ったのではなかなかミドルレンジから入らない。FWでもMFでもシュートの力量というものは自分で1日何十本と個人練習した数によって決まるものです。シュートにはそれぞれの選手の癖があります。その気になって練習して、こういう蹴り方をすれば、こういう軌道のボールが行く、といった具合に自分の癖を自分で使えるぐらいになれば、得点力はおのずと上がります。最近の日本人は高校時代ぐらいから戦術練習が増えるので、シュートの個人練習が多くないのかなという印象があります。

――18歳久保建英はベンチ外でした

賀川:楽しみにしていましたが、これからチャンスがあるでしょう。Jリーグであれだけのプレーをしていますし、注目もされています。森保監督なりの配慮なのでは。サポーターは見たいでしょうが、まだ若いし無理に出すこともない。それは監督の胸一つ。U-20W杯にもトゥーロン国際にも出さずにA代表に招集しているわけですから、9日のエルサルバドル戦(宮城)や南米選手権でプレーする機会はあるでしょう。楽しみは先の方がいいものです。

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2019年3月26日 日本代表 対 ボリビア代表

2019/03/27(水)

2019/3/26(火)日本/兵庫県神戸市・ノエビアスタジアム
日本代表 1-0(0-0) ボリビア代表


――ボリビア戦は賀川さんのお住まいがあり、生まれ育った神戸での開催。久々に会場で取材されました


賀川:スタジアムで日本代表を取材するのは、2014年ブラジルW杯以来ですから、5年ぶりになります。テレビでは欠かさず日本代表の試合は見ています。最近のテレビは画質がよくなっているので、試合の隅々までよく見えますが、スタジアムはやはりいいものですね。試合の全体像が見えるし、お客さんの反応もダイレクトに伝わってきます。このノエビアスタジアムはかつての神戸中央球技場で、当時は少なかった陸上トラックのない球技専用のスタジアムでした。芝生の手入れが行き届いていました。大阪万博があった1970年にエウゼビオがベンフィカの一員として来日し、日本代表に3-0で勝ちました。当時のエウゼビオの個人プレーはまるでマジックのようでした。


――森保監督はコロンビア戦から先発11人を入れ替えました


賀川:代表選手や代表候補クラスの選手のレベルは上がっているので、ガラッとメンバーを入れ替えても、大きな戸惑いや混乱はなかったようです。経験が豊富な香川がキャプテンマークを巻き、前線で多くボールに絡んでいました。ボリビアの守りが堅かったので、大きな見せ場はなかったですが、森保監督が試合後の記者会見で「相手を間延びさせたり、疲労させたり、嫌なところをついていくことはできていた」とコメントしたように、彼の特徴がよく出ていました。彼はペナルティーエリアの外でボールをもらって、チャンスをつくるのが非常に上手な選手です。さらに誰よりも速いタイミングでペナルティーエリア内に入ってきて、ゴールを奪うことができる選手でもあります。前半は香川がもう1人ピッチにいれば…と感じるシーンもありました。今回代表に復帰した香川を中心としたチームを作っていくのであれば、周囲との連係などを監督も含めて事前に話し合っていくことが大切になるでしょう。


――前半からボールは支配していましたが、決定機は作れませんでした


賀川:確かに最後のシュートをどうするかというのが、なかなか見えませんでしたね。相手のサイドに入ったら、少々無理をしないと、しっかりと守っている相手を打ち破るのは非常に困難です。狭いところからでも、強引に1人で抜きにかかって、ドリブルを仕掛けるとか、突然スピードアップするとか、ダイレクトのパスを2、3本通すとか、敵陣で摩擦を起こさないことには、変化は生まれません。日本の選手は技術が上がり、ボールの扱いが達者になりました。しかし、サッカーは足でボールを扱う競技。手でボールを扱うようにきれいに時間をかけて攻めると、その分、相手も時間と人数をかけて守ることができるわけです。GKは心構えもできます。足でボールを扱う競技なんですから、ある程度のところまで来たら、エエ加減にエイッと蹴ってもいいわけですよ。欧州の選手なんて結構そういう形でゴールを決めています。


――中島、堂安、南野を投入し、試合が動きました


賀川:森保監督の起用が当たりましたね。ボリビアも複数のメンバーを代えてきたので、日本が優位だった試合の流れが一時的に止まり、チャンスと見たボリビアが攻勢に出て、試合の流れが変わりました。この試合初めてといっていいカウンターから後半31分の中島の先制点になりました。ペナルティーエリア左でボールを受け、右に切り返してもマークを外せませんでしたが、そのまま強引に打って、相手のまたの間を抜けていきました。こういった思い切りのよさは、こう着状態を打ち破る有効な手段になります。不十分な形であってもチャンスと見たら仕掛ける、今という時をつかむ…ということが、ゲームのどの段階においても大事なことになります。これはサッカーのうまいへたとは別の感覚で、そういう気構えで試合をしないと勝てません。


――サッカーはいくらパスをつないでも、ゴールにはなりません


賀川:だから、ある程度のところまで攻め込んだら、強引さも要ります。ボールを失っても、すぐに取り返せばいいわけで、敵陣で奪い返せば、相手は前がかりになっているので再びチャンスになりやすいわけですから。相手も防ごうと必死なわけで、パスをつないでいるうちに、いつかスキができるというものでもありません。


――お疲れが出ていませんか


賀川:少々寒かったですが、大丈夫です。楽しかった。日本サッカー協会の関係者や懐かしいライター仲間に久々に会って話をすることができました。後輩の若い記者やライターさんにもたくさんあいさつしてもらいました。記者会見が終わると、森保監督からは花束をいただきました。取材にきて花束もらうなんて不思議な感じでしたが、お心遣いに感謝しています。広島は東洋工業(サンフレッチェ広島の前身)のころから、代表選手がいなくても、勝つためにチームでしっかりと守って点を取るサッカーをして、日本代表の選手が半分ぐらいいる東京や大阪のチームと張り合ってきました。いい選手や指導者が出てきた土地柄でもあります。その広島から生まれた代表監督なんですから、大いに期待しています。サッカーは地球のどこでもやっていて、世界で一番人気があるスポーツ。それがおもしろくないはずがない。そのおもしろさをどうやって伝えるか。それがこの仕事もおもしろみであり、難しさでもあります。

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