2015年6月11日 日本代表 対イラク代表(続)

2015/06/14(日)

――GK川島、DFが右から酒井宏、吉田、槙野、長友、MFが柴崎、長谷部、本田、香川、宇佐美、FWが岡崎という先発メンバーで、後半20分まで来て21分に武藤、原口、永井がそれぞれ宇佐美、賀川、本田に代わりました。28分に岡崎に代えて大迫が、31分に長谷部の交代に谷口、40分には山口が柴崎の交代で入りました。MF6人はすべて代えたわけですね。

賀川:ディフェンスはすでに前の試合で出場しているメンバーもいて、今回は吉田、槙野の2センター、それにケガで長く休んでいた長友と、酒井宏も90分プレーしました。監督さんは候補選手のプレーを自分の目で確かめたのでしょう。メンバー変更の手順もなるほどという感じですね。

――原口が攻め込んでのこぼれ球をシュートして得点しました

賀川:前半のメンバー以外にも交代できるメンバーがいること、つまり代表チームにレギュラークラスにも競争相手がいるのだということをチーム全体に改めて知らせた。

――競争させるわけは?

賀川:これまでの代表だった者への刺激だけでなく、新しいメンバーもレベルアップすれは代表に入れる気持ちを強く持ってほしいと考えているのでしょうね、監督さんは。

――前半のFKでもいつもの本田が蹴ると決まっていなかった。吉田麻也のFKという珍しいものも見ました

賀川:FKのチャンスがあると思えば、プレースキックの練習にも力が入るでしょう。キックは気持ちのこもった練習の回数や量が多ければさらに上達します。

――そういう考えもありますかね

賀川:いまの日本代表はもともと幼年期、少年期からボールタッチが上手な、いわば技術レベルの高いプレーヤーが多く集まっています。それが、その技術を生かすために体を強くし、耐久力をつけ、走るスピードを上げ、そしてチームに役に立つプレーヤーになってもらいたいと監督は願い、そのチームの方針を常に選手に語りかけ、実際の練習でも行っているのでしょう。練習の日数から言って、それほど戦術的な人の動きやボールの動きに時間をかけていないはずですが、前半の選手たちは互いの意思は通じていると思う場面が再三ありました。

――アジア予選第2ラウンドという本番を迎える前としてはチームはいい状態になってきたと?

賀川:ハリルホジッチ監督もそう思っているでしょう。ただし監督は予選の各試合を通じて、あるいは大会までの3年間を通じての代表チームの強化を考えているはずです。そのひとつひとつのステップを確かめながら私たちは日本代表が上のレベルのチームへと変わってゆくのを見つめていきたいと思います。宇佐美貴史という新しいプレーヤーが働く攻撃陣も見ました。柴崎というバルサのシャビばりのパサーの成長も知りました。もちろんアジア予選は気候の変化も大きく、生易しいものではありません。この点ではヨーロッパ人の経験ある監督にとっても課題となるはずです。いろいろな困難を克服して行くためにチームは何より監督、選手の団結が大切ですが、それもこのキリンチャレンジで見えた感じもありました。これからの長い予選の期間、一喜一憂しながらであっても希望を持って入って行けることが、いまの私たちにはとてもうれしいことだと言えます。

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2015年6月11日 日本代表 対イラク代表

2015/06/12(金)

キリンチャレンジカップ2015
6月11日 横浜
日本代表 4(3-0、1-0)0 イラク

――4-0快勝でした

賀川:横浜スタジアムの6万余人もテレビの前のファンも楽しい試合だったでしょう。私にもとてもうれしい90分間でした。

――宇佐美貴史がいいプレーをした。柴崎も決定的なスルーパスを何本も出しました

賀川:かつての遠藤と同じ背番号7をつけていて、遠藤のようなスルーパスを出していた。ボランチのポジションで長谷部と組んだが、パスを出す位置や、タイミングが素晴らしかった。

――2018年ワールドカップ、アジア最終予選の第2ラウンドをひかえた日本の強化試合のキリンチャレンジカップとしては、とても良かったと言えるでしょう

賀川:ハリルホジッチ監督の就任後の3試合目で、チームが変わっていく過程を見事にファンに見せてくれた。前半の選手起用も、後半の新しい顔ぶれの投入も、とても良かった。

――本田の先制ゴールが5分、CKからの2点目(槙野)が9分と初めの10分間で2点を取りました。あれ、イラクはもう少し強いのじゃないかと思いましたが

賀川:国内が日本と比べると大変な事情で、代表チームの編成も、私たちよりは苦労があるでしょう。しかしワールドカップアジア予選の第2ラウンドではイラクはFグループに入っていて、インドネシア、台湾、タイ、ベトナムと戦います。そのための準備としてイラク側にもこの試合は大切なのでしょうが、日本がこれまでとは違うスタイルになっていたので驚いたのかもしれません。

――1点目も速攻、スルーパス1本を本田が決めました

賀川:日本の攻めが続いたあと、日本のスローインからチャンスは始まった。柴崎がスローインを長友に返し、長友が前方へ送る、①イラクがヘディングで返してきたのを長友が相手DFと競り合い②ボールが柴崎の前へ落下した。③ワンバウンド目が高く上がったのを、柴崎は2バウンド目まで待って、体の向きを前にし、2バウンド目のボールが落下してくるところを右足のサイドキックのボレーで前方へ送った。④そのボールが中央前方にいた本田の前へ出た。

――本田と岡崎がこの時は2トップのように前方にいました。岡崎はオフサイドのように見えました

賀川:本田をマークしていたイラクのDFは本田をもオフサイドトラップにかけようとしたように見えた。本田はその時に前にスタートしたから、相手は遅れてのスタートとなった。

――ふーむ、細かく見ましたね

賀川:あとで、もう一度スロービデオで確かめたのですが、スルーパスはまずタイミングが問題。この場面では2バウンドまで待って正確に出したことと、柴崎が前を向いてボレーで蹴ったのがミソでしょう。

――ボレーキックのパスやシュートは相手は見にくいといつも言っていますね

賀川:柴崎はそういうところも心得ているプレーヤーでしょう。

――本田にもパーフェクトなタイミングでボールが出てきた

賀川:そうは言ってもDFの裏へ走り込んでスルーパスをシュートして決めるのは、そう簡単なことではありません。

――本田は足が速い方ではないから

賀川:永井のように速くなくても、彼は体の「シン」が強く、バランスが良いという長所があります。DFの追走を受けながら、真っ直ぐの突進からボールを少し左へずらせて自分の左足キックの得意な角度へ移しながら、右手のハンドオフで相手が体をぶつけてくるのを防いでおいて左足でシュートしました。

――本田の個人的な強さと、柴崎のパスがピタリと合った

賀川:岡崎のオフサイドを含めてこれもひとつのチームワークですが最後には本田の強さが生きたゴールです。彼が得点への意欲を高めるのは代表にとって重要なことですからね。

――2点目は左CK、遠藤が参加しなくなってから、ここは香川が蹴っています。そのキックをニアで酒井宏樹と吉田麻也がジャンプし、どちらがふれたかどうか、ボールはファーサイドへ落下し、そこに槙野がいて足にあてて、ゴールへ送り込みました

賀川:その槙野のさらに外に本田がいました。香川のボールに合わせて4人が同一ラインに入ってきたことになります。プレースキック(FKやCK)は、練習し、いくつかの型を持てば大きな得点源ですからね。

――テレビでも、監督が3分の1の得点はFK、CKと言っていると説明していました

賀川:1930年代から、僕たちの中学生のころから、そういうことになっていました。今の代表選手のように技術の確かな選手が多ければ、守備が進歩した現代サッカーでもCK、FKはチャンスでしょう。

――ごひいきの宇佐美選手は左サイドでキープし、縦の攻めと仕掛け、ドリブルシュートをするなどガンバの時と同様に落ち着いているように見えました。3点目は彼のドリブルからのパスが決定的な役割を果たしました

賀川:右サイドのやや中よりで、本田、香川たちがパス交換をしたあと、柴崎が左から中へ入り込んできた宇佐美へパスを送りました。宇佐美が巧みなトラッピングからドリブルで相手をかわし、さらに前へ出て相手DFの目を集め、左へ (中央へ)開いた岡崎へ横パスを出した。まぁドリブルからパスを出す動作の滑らかさは見ていて惚れ惚れします。こういうパスをもらってフリーシュートとなると外すこともあり得るのですが、さすがに岡崎は左へ流れながら左足でシュートして決めました。

――GKは左手を伸ばして、手には当てたが防げなかった

賀川:シュートもしっかり蹴れていましたからね。ハリルホジッチ監督は、それまで右サイドにいた岡崎を彼が監督になってから中央のいわゆるCF(センターフォワード)の位置に持ってきたのは卓見ですね。

――香川真司が目立たなかった

賀川:ゴールしなかった、決定機を作らなかったというふうに見えるが、ともかく意欲満々で良く動いていた。前へ出る動きと本田とのペアプレーなどが生きて柴崎が良い位置でパスを出せる形になったと思います。

――両サイドの攻めもあったが

賀川:サイドから侵入してのクロスの成功は、クロスパスの精度と中央でパスを受けるプレーヤーの「動き」が合うこと、さらには相手DFに当たったボールへの予知などがからんできます。まぁこれは今後の課題でしょう。もちろんサイドからの攻めもあったことが柴崎たちのスルーパスが通りやすくなっていたということにもつながるのかもしれません。

――後半の新しい代表のプレー、その他についてはのちほどに

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2015年5月28日 日本女子代表 対イタリア女子代表(続)

2015/06/04(木)

――第1戦の対ニュージーランド、第2戦のキリンチャレンジカップ対イタリア、ともに1-0の勝ちでした。澤穂希の復帰があり、大儀見優季がストライカーとしての本領を見せたプレーもありました。カナダでのFIFA女子ワールドカップへの見通しは少しよくなってきましたね?

賀川:宮間あや主将のパスが必ずしも上々とは言えなかったが、FKやCKの精度は相変わらず高いものでした。少し長めのパスが多く、それが仲間とタイミングが合っていない点もあったが、彼女自身は自分で試したいようでもありました。

――ワールドカップでの優勝以来、その主力だったINAC神戸のプレーヤーに進化を見つけにくい、とよく言っていましたが…

賀川:今年に入ってINACの選手たち全体に動きの量が戻ってきました。それだけでもほっとしたのですが、折角神戸のいい練習環境にいながら、もう少しレベルアップが見られれば…

――それでも、その主力が少し上向きになってきたと…?

賀川: INACの7人だけでなく、阪口夢穂や岩清水梓、熊谷紗希といった選手たちの調子はよさそうだし、新しく加わった長身のゴールキーパーの山根恵里奈も、その背が高いという特性を自分で生かせるようになっています。

――宇津木留美といった左のキックのしっかりした大柄フィールドプレーヤーも加わりました

賀川:佐々木則夫監督はポルトガルでのアルガルベカップの9位という成績からチーム編成を考えてきて代表メンバーを選んだのでしょう。

――主力が4年前の優勝メンバー、それだけ年齢も高くなっていますが

賀川:経験ある彼女たちと佐々木監督は、本番の1次リーグの3試合で徐々にチームをまとめノックアウトシステムへ進む、と考えているのでしょうね。

――そううまくいきますかね?

賀川:ワールドカップは今回は24チームが参加となり、6月6日の開幕試合から6組のグループリーグで、各組上位2チームと3位の4チームが6月20日からのノックアウトステージに入ります。その1回戦(ラウンド16)が20~23日、準々決勝が26、27日、準決勝が30日と7月1日、3位決定戦が7月4日、決勝が7月5日に行われます。

――女子サッカーが世界に浸透したと主催のFIFA(国際サッカー連盟)が判断しての拡大政策でした

賀川:FIFAは4年前のドイツ大会を大きなステップと見ていた。その大会で、日本という新興国が優勝して、世界に大きな刺激を与えました。

――ロンドンオリンピックでも、日本とアメリカの決勝は8万の大観衆が集まりました

賀川:サッカーの母国イングランドの聖地ウェンブリーでの8万ですからね。

――ヨーロッパでは37カ国で51試合全部がテレビ放送されるそうです。北米大陸はもちろんです。日本でも全試合がテレビで放送されますね

賀川:女子のワールドカップは回を重ねるごとに世界へのアピール度を高めてきました。日本はそこに割り込んで行くのですが、気がかりもあります。

――人口芝のピッチですね

賀川;大会はバンクーバー、エドモントン、ウィニペグ、オタワ、モントリオール、モンクトンの6都市が会場となりますが、全部が人工芝です。北の気候を考えての人工芝の選択のようです。

――人工芝のピッチは初期のころから見るととても進歩していますが、それでもやはり天然芝と比べるとピッチが固く、選手に疲れなどの影響も出るという懸念もあるそうです。

賀川:アメリカのワンバック選手などは反対意見を述べていました。ボールのバウンドや転がる速さなど、日本選手も馴れなければなりませんが…。

――女子サッカーは日本でも急速に普及しています。ここで、やはりベスト4に進み、メダルを取ってほしいですね。

賀川:4年前は澤さんが120%働き、選手たちはすべての試合で100%の力を出したように見えました。それをもう一度するのは大変ですが、彼女たちの人生にとっても、参加する新しいプレーヤーにとっても、世界の舞台でのチャレンジはとても重要でしょう。もう一度、彼女たちの諦めない戦いを見せてほしいものです。

――なでしこが一段上のレベルに上がるチャンスでもあるでしょう。その技術的、戦術的な話を本番でも、語り合いたいものです。   

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2015年5月28日 日本女子代表 対イタリア女子代表

2015/06/01(月)

キリンチャレンジカップ2015
5月28日 長野
日本女子代表 1(0-0、1-0)0 イタリア女子代表

――強化シリーズの第1戦、対ニュージーランド戦では澤穂希が代表に復帰しました。

賀川:得意のボレーシュートで唯一のゴールを決めましたね。

――第2戦の対イタリアがキリンチャレンジカップとなりました

賀川:対ニュージーランドが香川の丸亀で、キリンチャレンジカップは長野市でした。四国はかつてはサッカーの後進地でしたが、女子の日本代表を迎えて盛り上がりました。

――丸亀は、その四国では古い時期の女子のサッカーがあったとか?

賀川:第一次世界大戦のときに日本が中国・山東省の青島(チンタオ)にあったドイツ軍港を攻撃し、多くのドイツ人捕虜が日本に来ました。香川県にもその収容所があってドイツ人たちがサッカーをした影響で大正年間に女子校の運動会でもサッカーをしたということです。広島が似島の収容所のドイツ人たちのおかげでサッカーのレベルがアップしたのと似ています。

――信州にはそういう話はない?

賀川:第一次世界大戦のドイツ人捕虜の話は、収容所の多くが長野以西でしたからね…。長野県の松本山雅というJリーグ1部のチームが人気を集めているときに、なでしこジャパンが長野の新しいスタジアムで試合をしたのは、JFA(日本サッカー協会)のヒットですね。

――なるほど

賀川:信州は昔から文化人を多く生み出し、新聞の編集者たちも輩出しています。こういう土地でサッカーが市民の間に浸透してくれればとてもうれしいことです。なんといっても北アルプスや上高地という名勝もありますからね。その長野県で松本と張り合う長野に立派なスタジアムができたのですよ。長野県に二つのサッカースタジアム…人口の多い、スキー発祥地の神戸を持つ兵庫県と比べてみてもすごいことですよ。

――その長野の5月29日の試合では
賀川:丸亀では澤さんの復活、ここでは大儀見のストライカーの証(あかし)でしょう。

――そういえば、多くの新聞も大儀見のゴールがトップでした

賀川:相手のイタリア代表は今度の女子ワールドカップ・カナダ大会には欧州の予選で敗退して出場しません。だから次の代表への立て直しの時期で、若い選手もいて、それだけにボールを取ると攻めに出てきました。したがって互いに攻めあうことになり、とても楽しかったのですが、その中で唯一のゴールが大儀見のシュートでした。

――後半6分でした

賀川:クロスを相手DFがヘディングで防いだのを①澤さんがペナルティエリア外側で拾って、落として、弾んでいるのをしっかりコントロールし、②グラウンダーのパスを右サイドにいた宇津木に渡しました。③宇津木はドリブルし、5歩目の右足を大きく踏み込んで左足サイドキックで中央へパスを送りました。

――宇津木は左足はうまいですからね

賀川:宇津木にボールが渡ったときには日本の菅沢と大儀見はその前のクロスに備えてゴール前につめていたから、相手DFよりもゴールの近くにいた。

――オフサイドのポジション、相手DFの背後ですね

賀川:④宇津木がドリブルする間に大儀見はすばやく、CDFリナリの背後に近づき⑤宇津木の速いパスがリナリの前に落下する直前にリナリの前へ右足を出し、その右足アウトサイドでボールをとらえました。⑥飛んできたボールは鋭く方向を変えてゴールへ、⑦GKジュリアニの右手側を抜いてポストギリギリにゴールへ飛び込んだ。

――賀川さんは、これまで大儀見の進化を強調していました

賀川:ポルトガルでのアルガルベカップをはじめ、国際試合では、女子日本代表の試合ぶりは必ずしも良くはなかったが、昨年から今年にかけての彼女のレベルアップはとてもうれしく見ていましたよ。日本のセンターフォワード的なストライカーとして、男、女と通じて歴史的にもレベルの高い方だろうとまで書いたりしていました。

――24日は良くなかった?

賀川:欧州から戻ってきた時差の関係なのか、後半は多少よくなったが、彼女らしくなかった。相手のCDFが強かったせいもあったかも…

――イタリア戦では生き生きしていました

賀川:澤さんのいないなでしこジャパンでは、攻撃は宮間あやのパスと大儀見の決定力が大きな武器だった。しかしその大儀見を生かせる、横からあるいはゴールライン際からのクロスでなく、スルーパスが多かったのには首をひねりました。良いストライカーがいると相手DFの裏を狙いたくなるのだが、横からのパスの方が、ストライカーには相手DFのかけ引き、いわゆる「消えて出てくる」がしやすいこともあって点につながるのに、などと愚痴っていました。

――今回は斜め左からのパスでした

賀川:うーん、スロービデオを見直すと、オフサイドを取られても…という形だが、レフェリーにもそう見えないほど、パスに対する相手の背後からの動きが速く、したがってディフェンダーは完全に意表をつかれたのでしょう。

――右足アウトサイドでのシュートは

賀川:あれは右利きのCFなら、ひとつの型でしょう。大儀見は日本女子としては、168cmで大きく、リーチがある方だし、瞬間的に足を出すのが早いから生きますよ。

――宇津木もしっかりパスを出した

賀川:相手のDFのヘッドのクリア、いわゆるこぼれ球を拾った澤さんがすぐ前へ仕掛けず(2人のFWはオフサイド位置だった)左サイドの宇津木へボールを出したのが、このゴールを生む第1のポイントです。バウンドしているボールをコントロールして、全体の状況を察知して、一旦ボールを左へ送って(横パス)、2人のFWの体勢を立て直す時間の余裕を持たせたところは、さすがでしょう。宇津木のボールが渡ったときにファー(ボールから遠い方)にいた大儀見が内へ、菅沢がファーサイドへ動いたのも見事でした。この間、相手の2人のDFの視線は宇津木とボールに注がれていて2人の動きを見ていなかったはずです。

――いいゴールが生まれると賀川さんの口調も滑らかになりますね

賀川:もちろん、このキリンチャレンジカップでの満足、不満足はまだあります。宮間のパスについても、両サイドの攻めについても、もちろん澤さんについても…少し長くなるので今日はここまで。

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2015年3月27日 日本代表 対チュニジア代表

2015/04/01(水)

キリンチャレンジカップ2015
3月27日 大分
日本代表 2(0-0、2-0)0 チュニジア

――キリンチャレンジカップを27日大分で取材観戦したあと、いつものようにこのブログへのレポート掲載を催促したら、今度は第2戦とあわせて眺めてみたい、という話でした

賀川:昔から点が2つになると、2点を結ぶことで線ができる、そこで方向が見える――と言います。新しいハリルホジッチ監督が何を提唱し、どういうスタイルのチーム作りをはじめるのかと見るのにも1試合より2試合でと考えたのです。

それで、一口に言うと、キリンチャレンジカップ、つまり対チュニジア戦で申し合わせ試合規定の交代6人枠をすべて使いました。第2戦でも同様でピッチに立った時間は選手によってそれぞれ違ったが、招集した全選手を自分の目で確かめると言っていた監督の方針通りでした。

――フィールドプレイヤーは全員試合に出場しました。ゴールキーパー4人のうち2人がプレーしました。権田と川島でした。東口順昭と西川周作は試合に出ませんでした。対チュニジアのスターティングラインアップはGK権田修一、DFの右サイドの酒井宏樹、左が藤春廣輝、CDF(セントラルディフェンダー)は吉田麻也と槙野智章、MFが長谷部誠、清武弘嗣、山口蛍、FWが永井謙佑、川又堅碁、武藤嘉紀でした

賀川:日本代表の攻撃といえば本田圭佑、香川真司、岡崎慎司が欠かせないことになっていたのだが、ハリルホジッチ監督は、あえて先発メンバーから外したでしょう。

――少し驚きましたが

賀川:第2戦の先発メンバーと、後半に交代した6人の合計17人。第1戦の17人の交代の手順などを見てもチームとして試合をして行く上での、それぞれ組み合わせもよく考えてあるように見えました。そして何より、監督が掲げる縦へのテンポの良いパス攻撃や選手ひとりひとりの運動量、動きの早さなどがチーム全体に浸透し始めているように見えました
――別に目新しいことでもないことを監督さんが言っているようにも見えます。

賀川:1930年ごろに日本代表が身につけた日本のサッカー。それは外国選手には体の大きさや骨組みの強さでは劣るところもあるが、「敏捷さ」と技術を生かして対抗しよう、短いパスをつなぎスルーパスを背後に送り込んでチャンスをつくり決める。そのためには相手以上に走る、ということでした。

――ブログでも言い、書き物にもよく書きましたね

賀川:ここしばらくの日本代表はボールテクニックの向上とともにチームでボールを保持する「ボールポゼッション」を重視するようになった。それは悪くはないのだが、ゴールを奪うためには、速攻――相手の守りが手薄なときには手数(てかず)をかけないで攻め込むことも大切なのだが、ここしばらくそういうプレーは遠のいていた。

――ユーゴスラビアの選手で、ヨーロッパやアフリカのチームを指導して国際的にも知られた監督に来てもらって日本式のサッカーに戻るとは…

賀川:監督さんも、日本の多くのコーチも、昔の先輩たちがそのようなサッカーをしていたとは知らないのでしょう。しかし、国際的な視点からみれば、自ずから日本代表のやり方は決まってきます。

――賀川さんはサッカーはいろいろなプレーの組み合わせが面白いと言っています

賀川:ハリルホジッチ監督の目標はアジア予選を突破して、2018年ロシアでのワールドカップでいい成績、少なくとも1次リーグを突破して、ノックアウトシステムのステージへ進むことになります。時間的に言えば、3年しかありません。

――うーん、高校生のチームを作るようなものですね

賀川:まずアジア予選までの短い間にチームの考えをひとつにすること、そして予選を戦いつつ、チームの熟成を図っていかなければなりません。

――だから

賀川:今回は、まず2試合にフィールドプレイヤーとして自分が選んだ選手を全員ピッチに送り込みました。

――その結果が、チュニジア戦の2-0、ウズベキスタン戦での5-1という勝ち試合になった。日本よりFIFAランキングの上のチュニジアから点を取ったこと、また第2戦では大量5点を取ったのでサポーターが大喜びです。ただし、チュニジアの2点も後半、ウズベキスタン戦も4点が後半でした。

賀川:遠くからやってくるアウェイチームにとって、後半に動きが鈍るのはよくあること。相手にも6人交代のルールはあってもホーム有利は当然です。ただし新しい監督がハリルホジッチ流の厳しさを打ち出し、選手に前への指向、早い動き、運動量を要求し、それに選手たちが応えようとしたことは見ていて良かった。

――個人的には

賀川:岡崎慎司が相変わらず意欲満々でゴールを狙う姿勢を続けていて、さらに進化していることを示してくれたこと。チュニジア戦の後半の1点はジャンプヘディングでもいいボールであったが、相手のDFがまともに向かってくるジャンプをしてきている中でしっかりヘディングゴールを決めています。

私にとってはガンバの宇佐美貴史がチュニジア戦でも後半に投入されて、本田や香川、岡崎たちのなかでパス交換やボールキープなどを正確にこなしていたこと、香川にスルーパスを要求して出してもらい、ノーマークシュートをして決まらなかったが、第2戦はゴール前の密集で大迫からのパスを受けてドリブルで抜け出してシュートを決めました。第1戦のシュートのボールが弱かったのに気付いたのでしょう。しっかり叩いていましたからね。

――彼には代表初ゴールですね

賀川:もともとボールタッチという点では少年期から有名だったが、それがいま体もしっかりしてJのレギュラーから代表で仕事できるまでになっているのです。もちろんまだ不満もありますが…彼の成長ぶりが見られただけでも、今度のキリンチャレンジカップを含む強化シリーズはとてもうれしいものでした。

――柴崎も第2戦でいいプレーを見せました

賀川:柴崎のクレバーさにはいつも膝を打つ思いがします。あのGKの上を抜く40メートルのシュートは大したものですが、それを追ってゴール下まで走り、相手にカバーリングさせなかった岡崎には拍手をしましたよ。

――若い選手には一応及第点?

賀川:もちろんアウェー条件下の相手(こちらが走って疲れさせた事情も加わって)の状態もあって、手放しで喜べないけれど昔からの日本流を思い出したこと、いつも27人の代表のレベルかつてないレベルでそろっていること、それを新監督がハードワークによって効果を高め、さらなる進化をしてゆこうという、代表の姿勢は誠にうれしいものでした。

――体格の劣る75年前の神戸一中にいてハードワークを強調して朝鮮地方代表や2歳年長の師範学校と渡りあった賀川さんですが、つい最近も取材にこられたベテラン記者が昔の技術の話を聞く前に体力強化のことを聞かされたのには驚いたと言っていました

賀川:90歳にして新しい監督さんのおかげで古きを思い出しました。温故知新、だからサッカーは面白い。

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2014年11月18日 日本代表 対オーストラリア代表(続)

2014/11/26(水)

――ここのところ、レッズ対ガンバのJリーグトップ争いをはじめ、好試合が多く、海外からもテレビでいい試合が届けられて、サッカー人は楽しみが多いですね。

賀川:テニスの錦織選手、日米野球もあり、まさにスポーツの秋です。Jリーグをふくめ、そちらの話も楽しいけれど、キリンチャレンジカップの日本対オーストラリア戦の続きを語り合いましょう。

――アギーレ監督はシンガポールでのブラジル戦を含めた6試合での最終戦の対オーストラリアで代表チームの姿をファンの前に見せました。2−1の勝利だから、まずは成功ですね。

賀川:いまの日本サッカーの勢力からゆけば、普通に考えれば代表はブラジルワールドカップ組に何人の新顔が入るか…と考えるはずですが、アギーレさんは全く新しい選手を登用することから始めました。最終的にはブラジル組にプラスαが加わる形になった。

――ヨーロッパで働くもの、あるいはガンバの遠藤、今野たちを含めてのブラジル組は6月の不本意な成績の後、捲土重来の意気込みがあったはずだが、6試合の終盤になってはじめて彼らの顔を揃えたところが、監督らしいということ?

賀川:多分新しい顔ぶれ、それも自分が選んだプレーヤーをテストしておきたかったことと、ブラジル組を起用する時期をいつにするかを考えていたのでしょう。

――1月のアジアカップという、当面まず成果を出さなければならない試合を控えてのことですからね

賀川:ザッケローニ前監督はチーム全体に攻撃志向という大命題を用意して、その高い目標に選手を導いてゆこうとして、ある程度成功した。しかし2013年のコンフェデ杯に出場した時の初戦のブラジル戦を見て、こういう強敵と戦うための選手のモチベーションの上げ方に不満が残った。

――そういう心の中のことは、言葉の問題もある?

賀川:今度のアギーレさんは選手にとっての反復練習の重要さを説きつつ、体のコンディションとともに選手の心理を読み、試合に出場するにあたって強い気構えになるように仕向けているように感じたね。

――記者会見での受け答えもしっかりしているとか

賀川:まあ、サッカーのプロ監督だから当然ではありますが、サッカーをよく知っていて、同時にメディアの対応もなかなかのものですよ。

――特に感じたことは

賀川:岡崎慎二をFWの中央で使ったことですね。ザックさんは攻撃展開についてチーム全体の質的向上を図ったが、最後にまたCFポジションの選手選考に迷ったように見えた。新メンバーで、岡崎は確か4試合続けてこのポジションだった。

――岡崎に合っていた?

賀川:ゴールを常に狙う選手が、ゴールに最も近い位置にいるのは当たり前のことだが、日本では本田というストライカーがいても彼をCFの位置に置くよりは右サイドの方が効果的なことはすでに知られている。岡崎は背も高くないし、CDFを背にしたプレーがとても上手というわけではないが、体を張って、ボールを受けてくれる選手で、同時にいつもゴールを狙ってチャンスをうかがっている。アギーレさんはおそらく岡崎のストライカーとしての最も大切な「気性」の素質を買ったのだと思います。

――後方からのボールを受けるのも上手になった。何よりヘディングが強く、高いバウンドのボールなどの競り合いに強い。ある時期は彼が右サイドに入ることが守備面―相手の左からの攻撃を抑えるメリットも語られていた

賀川:岡崎を中央に置いて、彼の特性を生かすこと。ボールを受けるにせよ、左右に走って展開のきっかけをつくるにせよ、彼の特徴を周囲が知れば、自然に連係プレーが出来てくる。

――本田と香川は

賀川:この2人はブラジルでの不振について強く責任を感じているはずですよ。イタリアでもドイツでも自らの新しい面を切り開こうとしているようです。

――本田は自らゴールを奪う意欲をさらに強めているようです。香川はロングパスの精度が上がりましたね。

賀川:ドイツサッカーの広い動きのなかで、プレーしていますからね。視野の広さは、時には感心しますよ。ゴール前へ入り込む動きも大したものですが、ぼつぼつ得点するためには、時に大雑把の方がよいことを覚えるべきでしょう。

――というと

賀川:前半の終わり頃に素晴らしいスルーパスがあって、香川がペナルティエリア内に進入したでしょう。

――右ポスト近くに持ち込んで、岡崎にパスをしようとしたが、DFの足に当たってCKになった

賀川:あの狭いスペースで、なお岡崎へのパスコースをさがし、そこへボールを送ろうとするところは、いかにも真司らしいのですが、あの場面はパスでなく中にいたDFと岡崎の合計6本の足のどれかに当たればよいと、強いシュート性のボールを送り込んだ方がよいでしょう。もちろん、あの位置からフワリとGKライアンの上を越えるボールを送ることも選択肢のひとつです。

――ふーむ

賀川:私は本田の意表をつくスルーパスと香川のそのパスを受けての見事なプレーをこうして話題にできるようになっただけでもうれしいのですが、折角ここまで来たのだから、その見事なパスワークの後、ゴール!と叫びたいものです。

――それには?

賀川:彼自身の心の持ち方もあるでしょうが、いつも言うように、香川があのポジションでの経験、ゴールすぐ近くでのプレーを重ねることです。試合ではそれほどできないですが、シュート練習などでも、ゴール近くへ走り込んでシュートすれば、ゴールやゴールキーパーの見方を体で覚えるでしょう。

――アギーレ流で、ともかく6試合を重ね、成果をあげて、アジアカップに乗り込みます。ここまでのところは、多くのメディアも納得した?

賀川:試合はアギーレさんがするのではなく、選手がするのですよ。DFのサイドは左右複数の選手がいます。CDFは数が少ないのが心配ですが、まだまだいい素材も出てくるでしょう。ベテランのボランチに新しい選手が加わり、攻撃陣も手薄だが各パートは揃いました。

――岡崎と豊田のCFでしょうか

賀川:南半球のオーストラリアでの夏の大会となるアジアカップは決してやさしい大会ではありませんが、選手たちがまず2015年の初頭の高いを勝ち抜き、ステップアップしてほしいと思います。

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2014年11月18日 日本代表 対オーストラリア代表(下)

2014/11/21(金)

――2点目もCKからでした

賀川:その前に一言付け加えたいのは、今野が遠藤と代わってうまくいったからといって、今野と遠藤を比べて云々するのではありません。今の日本には、今野、長谷部、遠藤というそれぞれ特色を持ったすばらしい3人のベテランMFがいるということを強調しておきます。

――後半23分に今度は岡崎慎司のゴールで2-0となりました。

賀川:1-0となってオーストラリアは少し気落ちした感じになった。前半飛ばした疲れも出てきたかもしれない。日本が攻めこんだ後のセカンドボールを取れいるようになった。21分には本田がハーフウェイライン手前で相手ボールを奪い、前を走る岡崎にパスを出して、岡崎がドリブルしノーマークでシュートした。GKライアンに防がれたが…

――惜しい場面でした。しかし、この後の左CKが得点を生みます

賀川:岡崎の長い突進の後のシュートが入らなかったのは惜しいが、この時パスを出した本多、後方から右前方へ駆け抜けたすばらしいダッシュを見て、彼らの士気の高さに感心したんです。

――左CKは本田が蹴りました。今度はニアポストでした。吉田が飛び込んだが、彼と相手の2人の間を抜けてボールはゴール前に落ち、そのままペナルティエリアの右外へ転がった。先にボールへ行ったのが森重でした。

賀川:左CKの時、今度は彼はファーサイドにいた。ボールに追いついてゴールの方を向くまでに余裕があった。オーストラリア側がゴール前に固まってしまい、またボールへの寄せも遅かった。森重は前方から来る長身のウィルキンソンにキックフェイントを交えたドリブルで仕掛け、浅く切り返してその股下を抜いて、内へ持ち込んだ。

――森重、やるなぁという場面!

賀川:そのままエリアまで直進し、ウィルキンソンの前を横切ってゴールライン手前4メートルで中へパス(グラウンダーの短いクロス)。ボールは迎えうちに来たDFの足間を抜けてゴールエリアへ。

――そのゴールエリア右ポスト前、4メートルに岡崎がいました

賀川:岡崎はセインズブリーにマークされていたが、自分の後方へきたボールを右足を伸ばしてヒールキックで方向を変えた。ゴールキーパーは右手を伸ばしたが届かずゴール中央に飛び込んだ。

――クリスティアーノ・ロナウドも時々見せる両足間のヒールキックですね。

賀川:少し後ろ目に来たボールを右足を大きく開いてヒールに当てるのだが、この場合は少し強めだったのだろう、ボールが浮いた分GKライアンには難しかった。

――不器用とひたむきさが売り物の岡崎のヒールキックに拍手喝采でした。

賀川:本人は気持ちで押し込んだと言っていたが、同じヒールシュートでも彼らしい“気”のこもったものでしょうね。記者席からは赤い靴を履いた森重のドリブルが見事だったのと、やはり赤い靴の岡崎の瞬間の動きがとても印象的でした。

――直前のドリブルシュートは逃したが、そこで生まれたCKからのチャンスをものにしました。岡崎はこれで代表でのゴールが40点。釜本邦茂、三浦知良に次ぐ、歴代第3位になるはずです。

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2014年11月18日 日本代表 対オーストラリア代表(上)

2014/11/20(木)

キリンチャレンジカップ2014
2014年11月18日 19:20 KickOff 大阪/ヤンマースタジアム長居
日本代表 2-1(前半0-0) オーストラリア代表

――いい試合でした。

賀川:当日のスタジアムに集まった46,312人にも、テレビ観戦のサポーターにも、とても面白い試合だったと思います。最後まで緊迫感がありましたからね。

――アディショナルタイムで1点を奪われた時、記者席で「ヤバい」と叫んだとか

賀川:相手の右からの攻めの後、左へボールが流れてペナルティエリアの外でベヒッチが左足でクロスを蹴るときでした。ベヒッチは右でボールを止め、ゆっくり左に置き換えて左足でクロスを送った。日本側は少し離れたところに3人がいたが、誰も妨害にゆかなかった。FKと同じくらいベヒッチはしっかり狙った。その時、叫んだというより声が出た。
――前半16分にオーストラリアの右からのクロスにレッキーがヘディングシュートした。この時は川島が高いボールを防いでいますよ。

賀川:前半と違って今度ヘディングをしたのは、ケーヒルです。この日は後半28分に交代で入っていた。

――ケーヒルにはこれまでの日本代表も痛い目に合いましたね。

賀川:2006年ドイツW杯の1次リーグの初戦で、1-0とリードしていたのを、3-1に逆転されたのだが、同点ゴール、勝ち越しゴールを決めたのがケーヒルだった。この時は、足のシュートだったが、彼はヘディングもうまい。172センチと小柄なのにジャンプ力があり、ヘディングの技術も高い。その彼がゴール前にいたから、相手の左からクロスが送られる時に思わずヤバいと声が出たのですよ。2-0とリードしてアディショナルタイムに入った安心感もあったし、疲れてもいたのだろうが、残念でした。

――いまでも記者席から全体の動きはしっかり見ることができるのですね

賀川:いや、何といっても90歳ですから双眼鏡なしには背番号の判別も難しくなっています。しかしゲームの流れはつかめます。このクロスの時もそうでした。

――日本の2得点はCKからでしたね

賀川:アンジェ・ポステコグルー監督が記者会見で、「選手たちは89%よく戦っても、残り11%が悪ければ痛い目に合うことを学んだ」と2つのCKの対応のまずさを指摘していました。

――前半は相手の激しいプレッシングに日本側はタジタジとなっていた。35分ごろからこちらのペースとなりチャンスもあったが…

賀川:ホンジュラス戦で成功した長谷部のアンカー守備の形がこの試合では適応していなかった。途中から長谷部、遠藤の2ボランチにして香川真司をトップ下にしてからチームに落ち着きが出るようになった。

――ともかく、前半を0-0で終わり、後半に入ると日本の攻勢が多くなった。そして16分にCKから先制ゴールが生まれた。

賀川:後半のスタートから遠藤に代えて、今野泰幸を送り込んだ。

――若い柴崎岳ではなく、ガンバでの遠藤のパートナーであり代表経験の長いベテランが入ってきた

賀川:今野はいまさらテストの必要のないほどの選手だが、アギーレ監督としては実戦で見ておきたかったのだろう。今野と長谷部のボランチでチームに安定感が増し、ボールを狙って奪えるようになった。香川と本田の働きが冴え始め、5分に香川のと岡崎のシュートがあり、GKライアンが防いだ。

――CKで得点する4分前に乾貴士が武藤に代わって投入されました

賀川:監督にすれば、初登場の豊田での試合で2得点して乗っている乾を再度見ておきたかったのでしょう。ピッチに出て、2分後に乾は右からの酒井のクロスをヘディングした。左サイドから侵入してのヘディングはボール一つ分バーより高かったが、15分には右サイドにあらわれ、スルーパスを受けてエリア右外をえぐってクロスを蹴り、右CKを奪った。

――このCKが先制ゴールとなります。

賀川:CKのキッカーは本田です。相手のエリア内には、吉田、森重、乾、岡崎と今野が入っていた。スロービデオで確認すると、本田の左足が振られた時、吉田がニアポスト(この場合は攻撃側から見て右ポスト)へ走り、森重も同方向へ動きました。ゴールエリア一杯へ動いた吉田、その背後へ動いた松重をマークして、オーストラリア側もニアへ走り、その日豪5人を越えて、ボールはゴール中央に落下した。

――キックの直前にゴール前にいた他の3人のオーストラリア選手もニアへ動いた乾と岡崎に気を取られてボールにタッチできず

賀川:落下したボールはファーポスト側へバウンドした。そこに今野がいた。

――彼はキックの瞬間はどこに?

賀川:ペナルティキックマーク近くに岡崎と並んでいた。岡崎や乾の動きとは反対側、ファーポスト側へ移動し、バウンドして上がってくるボールを左ポストの前5メートルで待ち受けた。流れるボールをダイビングするように低い姿勢のヘディングでとらえた。

――GKライアンが両手を伸ばそうとしたが、ボールはそれより早く下から飛び込み、上部ネットを叩いた

賀川:今野はヘディングもシュートも上手で、Jリーグでも得点している。選手たちが今野の上に折り重なって喜んだ。それまでが苦しかったから喜びも大きかった。

――このCKは練習の型にあったのでしょうね。

賀川:ニアサイドへのけん制の動きで相手をひきつけ、ファーサイドで合わせるのはごく常識的なCKの得点形のひとつですが、図式は簡単でもタイミング、キックの正確さと的確なフィニッシュが要求されます。このゴールは、本田のカーブ(あるいは曲がって落ちるボール)といい、長身で相手DFに警戒されていた吉田、森重の2人のニアへの動き、さらに中央から右寄りへ動いた乾、岡崎の第2列の動きに引きずられて相手側はヘディングに失敗、ノーマーク地点にボールが落下し、それを予知し待ち構えていたのは今野だけだったというわけです。

――テニスの錦織の試合で、相手の予想外のところへ打ち込むテニスのストローク戦と心理の駆け引きを解説者は説明していましたが、サッカーのCKにも同じように陽動作戦があるのですね

賀川:それをチームとして集団で組織的に行うのがサッカーの面白さで、もちろん試合の流れの中での攻撃にもそのことは見られますが、CKのような停止球からのプレーは、そのキックの前の気配や、キッカーの目の動き、あるいは踏込のクセなどでその意図を探ることもあります。こういう停止球(プレースキック)からの駆け引きやゴールは、今の日本代表の得意技のひとつ。なでしこジャパンが先のワールドカップの決勝で左CKを宮間が蹴り、澤が右足のアウトサイドで決めたゴールもありました。

――今野が決めたことも意義があるのでしょう

賀川:また詳しくお話ししますが、今野は守備的MFとしてはおそらく日本の歴史上トップランクの選手だと私は思っています。彼はこのポジションならデシャン(フランス代表監督、1998年ワールドカップ優勝チームの首相で守備的MF)と並ぶ素材だと前々から申し上げていたのですが、ディフェンスのポジションをCDFでもサイドDFでもどこでもこなせるところから歴代の代表監督は穴埋め的に起用してきました。本来のこのポジションなら、それぞれの特色は違っても、長谷部、遠藤と同じように高い素材なのです。年齢が高くなっていますが、もう一度今野の真骨頂を見たい私には、彼がもう一度このポジションで代表に入ってほしいと思っていました。

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2014年11月14日 日本代表 対 ホンジュラス代表(続)

2014/11/17(月)

――18日、長居での対オーストラリア戦は「勝ちにいく」と17日の記者会見でアギーレ監督が言いました

賀川:試合をするのですから、「勝ちにいく」のは当然ですが、これまでのアギーレさんの選手起用について、いろいろな見方ができるので、どう戦うかを記者たちが質問したのでしょう。

――とすると、18日はホンジュラス戦のメンバーが主となる?

賀川:そうみてよいでしょう。選手ひとりひとりのコンディションの問題もありますが…

――内田はホンジュラス戦でいい働きぶりでしたが、足を痛めているとか

賀川:日本代表がアジアでの強敵オーストラリアを相手に、対ホンジュラス戦のような試合を見せられるかどうかです。

――ホンジュラスを相手にして、押し込まれる時間もあったし、ゴール前でシュートまたシュートというピンチの時間もありましたからね

賀川:オーストラリアは体格や体力の点でホンジュラスよりも上です。しかしそれに対する守りの備えも練っていることでしょう。

――当たりが強く空中戦も強いはずのオーストラリア相手に、ホンジュラス戦のような攻撃展開が見られれば楽しいが

賀川:6ゴールで注目すべきは、このうち4点がペナルティエリア内でのシュートということです。

――そう言えば先制ゴールは左CKをニアで岡崎があわせ、それをファーポストすぐそばで吉田が頭で押し込みました。

賀川:2点目は相手が攻めに出ようとした時にミスパスがあり、長谷部が奪ったボールがダイレクトでトップラインにいたノーマークの本田にわたり、彼がドリブルでエリア内に持ち込んでシュートし、GKエスコバルの左を抜いた。相手のバックラインの裏へ出て、GKと1対1になった時は、案外得点にならないことが多いのだが、本田は落ち着いていました。

――3点目はペナルティエリア外からの遠藤のシュートだった

賀川:左サイドで3人がかかわってバスを交換し、本田が正面のオープンスペースにボールを送って、遠藤が決めた。この時の遠藤の間(ま)の取り方が実にすばらしかった。彼の本領発揮というところ。

――賀川さんの好きな遠藤のタイミングをずらせるプレーについては、別の機会にしましょう。後半の3点はすべてエリア内のシュートでした。

賀川:4点目は、後半のスタートから入っていた乾が最初にからんだ。相手の右サイドからの攻めを防いで、左タッチライン際の深いところで乾にボールがわたり、そこから乾はドリブルで前進して右内側の遠藤にわたした。遠藤は右へボールを送り、本田へ。本田がドリブルで内へ持ち込む。このとき左の乾、右外の内田、右サイド内側の香川が走り上がる。本田はさらに内にドリブルし、エリア前方からエリア内左へボールを送り込んだ。フワリと上がったパスが落下したところへ乾が走り込んで落下点でシュート。バウンドにあわせたサイドキックシュートで、GKの右を抜いた。見事なカウンターだった。複数の仲間がスペースへ走り込むことで、相手もそれにつられる。したがって、本田は最も交換的なパスを選ぶことができた。乾の運動量もすごいが、内田や香川のランもこのゴールにからんでいた。

5点目は交代で入った豊田が決めた。香川が本田からのパスを受けて、エリア内で相手の2人にからまれ、ボールがこぼれたのを豊田が決めた。

――この日は攻めだけでなく、守りへの動きの量も多かった

賀川:2点目の長谷部からの本田へのパスの前に、香川が相手DFにプレスをかけ、そのミスパスを長谷部が取ったのだが、チーム全体にこういう動きが多かった。

――6点目もエリア内、本田からのパスを豊田が相手DFが競り合ってボールのバウンドにうまく合わせた。本人は「ごっつぁんゴール」と言っていましたが…

賀川:その位置へ来ている。いないと点は取れないからね。相手が期待していたより弱かった感じもあるが、全員が守る意識を持ち、攻めにゆこう、前へゆこう、という気持ちが強かったのがよかったといえるでしょう

――1月の暑いオーストラリアでの試合は、困難もあるでしょう

賀川:それだけに18日のオーストラリア戦はしっかりやってほしい。

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2014年11月14日 日本代表 対 ホンジュラス代表

2014/11/16(日)

キリンチャレンジカップ2014
2014年11月14日 19:29 KickOff 愛知/豊田スタジアム
日本代表 6-0(前半3-0) ホンジュラス代表


——快勝でした。6-0、前半9分の左CKからの先制点にはじまり、41分の本田のドリブルシュート、44分の遠藤のエリア外からのミドルシュートで3-0。後半も交代出場の乾が2得点、豊田が1ゴールしました

賀川:豊田スタジアムへ集まった42,126人もテレビ観戦の皆さんもとても気分の良い90分でしたね。

——ワールドカップのブラジル組がほとんど揃い、欠場した長友の代わりに左DFは酒井高徳、右は内田、中央のCDFは吉田と森重。二人のCDFの前で長谷部がアンカー役となり、賀川と遠藤が攻撃的MFに本田が右に開き、左には武藤、そしてトップ中央に岡崎を置きました。

賀川:ここしばらくの試合で、岡崎はトップのいわゆるCFの位置に入っています。長谷部をアンカーに置いたのは、2010年南アフリカ大会で岡田監督が阿部勇樹をアンカーに置いて成功した例もあります。日本の守備を強くするという点では、いい考え方のひとつです。これによってチーム全体に守りへの意識が高まったでしょう。

――本田がトップ下というより右サイドで起用されました。

賀川:ほとんどがブラジル組ですが、多少役割の違いがあり、それがこの日のホンジュラス相手に見事に適合したということでしょう。

――大勝の割にメディアの喜び方は控えめなのが多かった

賀川:さあ、メディア全部を見たわけではないが、テレビの解説でも押さえた感じもありましたね。

――あまりのゴールラッシュにとまどったのかな

賀川:アギーレ監督にとっては、チームづくりの過程のなかで、まず一番近い1月のアジアカップにどういうチームで優勝へ持ってゆくかがひとつのステップでしょう。そのためには11月18日の対オーストラリア(キリンチャレンジカップ、長居)の前に、ブラジル組でひとつの結果を出すことは大事だったのでしょうね。その意味では、よかったでしょう。

――いいポイントをあげると

賀川:ザック監督はブラジル大会で攻撃を強調しましたが、弱点の守備面では改良が少なく、結局成果は上がらなかった。

――今度は長谷部をボランチで攻守両面というよりアンカーで少し守りに重きを置いた?

賀川:彼自身もチーム全体も守備の意識が強くなったはずです。もちろん選手たちもブラジルの後、ひとりひとりが自分たちに不足していたものを反省したでしょうからね。

――それでいて、前へ出てゆこうという意識が前より強かったようにみえた

賀川:長谷部のアンカーで後方の中央部が固まるとなると、攻めに出るのも安心するものです。

――気候もよかったと言っていましたね

賀川:豊田も寒かったけれど、サッカーをするのには、暑いよりはいいコンディションです。先ほどの代表個人の反省のなかでもブラジルでは走らなかったという「無念」があったはずです。

――気候の上でも、ブラジル組の気構えの上でも、代表チームに動く、走るという気分が満ちていたと?

賀川:日本サッカーはまず運動量と運動の質が上がらなくてはいけません。それに本田が久しぶりに攻撃の際のボールキープというところで、役割を果たしました。4年前の南アフリカでの新しい驚きであった本田が、当時の強さの上に経験を積んでいるのだから、ホンジュラスの選手たちにはとても「やっかいな」相手だったでしょう。

――その後ろに、やる気満々の内田が控えていました

賀川:ウッチーが気のせいか、体が大きく見えましたね

――岡崎のCFは?

賀川:センターフォワードタイプとしては上背に乏しいけれど、空中戦に強いという本人の特色が、後方からのボールの受け方の上達にもつながっています。監督は日本でのCFタイプを試してきたが、トップもサイドもできる岡崎に、この顔ぶれではCFの役割を期待したのかもしれません。なんといっても、彼はこの試合の先制ゴールにからんだ殊勲者ですからね。

――前半9分の1点目、左CKを遠藤がニアポストへ蹴り、岡崎がヘディングしてボール前へ流し込み、GKが防いだボールをファーポスト側にいた吉田がヘディングでゴールへ流し込みました。やはり先制ゴールは大きい?

賀川:ホンジュラスはブラジルで1勝もできず3戦3敗で、その時の選手が数人いました。日本とあまり変わらない実力といえるでしょう。アメリカ、ヨーロッパでプレーしている選手もいますが、中米のホンジュラスのリーグの選手もいます。アウェーのうえに、この日の寒さもあったから、ホームの方が有利なのは言うまでもありません。5分ならホームが勝つのは当たり前のようですが、それでも先制ゴールはチームに落ち着きを与え、その後の展開に大きく響きます。

――岡崎がニアで合わせるヘディングがいきたわけですね

賀川:遠藤も久しぶりの代表で気持ちが入っていました。香川もドイツでのリーグ戦出場で、調子を取り戻し、新しい自分をみせようという迫力があった。そういったそれぞれの選手の気持ちを高めた点でも、先制ゴールを得意の停止球から取ったのはよかったと思います。

――あとの5ゴールも代表の歴史に残る攻撃展開のようにみえました

賀川:そのひとつひとつを楽しむことにしたいのです。相手がどうであっても、自分たちのチームがいい連係プレーで、すばらしいゴールを奪うのはとてもうれしいことです。

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